川栄李奈 – 怒りも力に
公開中の映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』に出演する川栄李奈へのインタビュー。
みんなで話しながら作りあげた作品
― 純度100%の痛快なエンタメ作品で、本当に楽しい120分でした。
ありがとうございます。まずコロナ禍の影響などで撮影が1年以上延びちゃったので、やっと完成したことがうれしくて。
私はほとんどが内野(聖陽)さんとのシーンで、撮影中は詐欺師集団の方々の雰囲気がわからなかったんですけど、映画を観たらみなさん個性あふれるキャラクターでおもしろかったですね。
― 川栄さん演じる望月さくらも、そこに仲間入りするのかなと思っていたんですけど……入りたかったですよね?
入ったら楽しそうだなと思いながら観ていました(笑)。
― どういう犯罪者として入りたいですか?
後藤(剛範)さんがめっちゃおもしろかったので、私も当たり屋がやりたいです。
― めちゃくちゃ体を張る役ですね(笑)。川栄さんが演じたさくらは、物語が大きく動き出す起点となるような重要な役でしたが、どういう意識で演じましたか?
本読みで「さくらは真面目で正義感が強く猪突猛進な子なので、それをカラッと演じてください」と監督から言われたんですけど、それがすごく難しくて。何回やっても「もうちょっとカラッとお願いします」「カラッと?」って。
現場に入ると内野さんがアドバイスしてくださったり、みんながやりやすく、かつ納得できるような動きを内野さんが提案してくださったり、すごく引っ張っていただきました。
― 内野さんとは初共演だったんですか?
はじめましてでした。
― 共演してどんな印象を受けましたか?
本読みのとき、内野さんの台本のほぼ全ページに付箋が貼ってあって、びっしり書き込みがされていたんです。私は普段台本に書き込まないタイプなので、自分のきれいな台本がすごく恥ずかしく感じちゃって、「隠そう」みたいな(笑)。
― すごいですね。もちろん書き込むことだけが正解というわけではないですが。
内野さんは全部のシーンに対して「ここはこうなんですか?」と丁寧に役作りをされていたので、本当にすごいなと思いました。
― 映画を観ていても圧巻でした。最高に情けなくて、かっこよくて。他にも撮影で印象的だったことがあれば教えてください。
吹越(満)さんのお芝居がうますぎました。ご一緒できてよかったです。
― うまいというのはどこで感じるものでしょうか?
セリフの掛け合いでちょっとずれちゃったり、私がセリフを間違えちゃったりしても、それをナチュラルに受け取ってお芝居を続けてくださって、すごくリアルにお芝居をされる方だなと。舞台の経験も多い方だからこそのテクニックだと思うんですけど。
―上田慎一郎監督の演出はいかがでしたか?
以前少しだけご一緒させていただいたんですけど、しっかりご一緒させていただくのは今回が初めてでした。とにかくやさしくて、自由にやらせてくださる印象です。今回は、本読みのあとにさくらのバックボーンはいただきました。
― それは資料として?
はい。基本的に現場に入っても自分の意思を押し通すのではなく、内野さんや小澤(征悦)さんがおっしゃることも受け入れて、それに合わせてまたそのシーンを作ってくださるイメージがあります。
― ディスカッションが活発な現場だと、キャストもより作品にコミットしていけそうですね。
そうですね。ガチガチに固めずに1回やってみて、「いや、ここはこうじゃない?」と話しながらみんなで作りあげていきました。
30代はひとつひとつの作品と丁寧に向き合いたい
― 本作ではタイトルにもあるように「怒り」が物語を動かす原動力となっています。川栄さんも「怒り」が原動力になることはありますか?
ありますね。怒りとはちょっと違うのかもしれないですけど、たとえばオーディションに落ちたら悔しいじゃないですか。だから「見てろよ」「あの子を使っておけばよかったと思われるようになりたい」と常に思いながら生きています。
― 怒りというか、負けん気というか、なにくそと。
そういう気持ちはありますね。
― へこたれてしまうこともあるのでは?
ないです。落ち込まないようにしています。
― 川栄さんは2010年にアイドルとしてデビューし、現在は俳優として活躍されていますが、長いキャリアの中で仕事に対する姿勢に変化を感じますか?
アイドルのときはグループで活動していたので、誰かが助けてくれるだろうと、人に頼る意識がずっとありました。でも役者として1人になり、自分自身が評価される立場になってからは、より強い意思を持って行動するようになりましたね。
― 俳優としてのキャリアを振り返っても、変化はありますか?
20代前半のころは本当にがむしゃらに、とにかく来たお仕事はやるという姿勢でしたが、でもここ最近は作品を同時に重ねすぎないようにしています。30代はひとつひとつの作品にもうちょっと時間をかけて、丁寧に向き合っていきたいです。
― お仕事を選ぶ基準はなんでしょう?
自分がやりたい役かどうかというのは大きいですね。「この役楽しそう」「こんな役は今までやってこなかった」と思える作品には惹かれます。
私は元気なイメージがあって、今までも明るくて前向きな役が多かったので、暗い役もやっていきたいですね。
― 俳優業を続けていくモチベーションはどこから?
観ていただいた方から、「おもしろい作品だった」と言ってもらえることが一番の原動力になっています。
― 芝居をすること自体に対してのおもしろさを感じることもありますか?
普段できないことができたり、違った自分になれたりすることは、すごく楽しいです。
― 俳優としてのビジョンがあれば教えてください。
自分が無理なく楽しく作品に取り組めていたらいいなって。それが一番ですね。
プライベートも頑張りすぎずに余裕を持って暮らすことを意識しているので、今は毎日が楽しいです。
― 川栄さんは意識しないと頑張りすぎちゃうタイプなのかもしれませんね。
そうですね。お仕事も気合が入りすぎてカラ回りしちゃうこともあるので、ラフに生きるようにしています。
― では最後に、これから『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』をご覧になる方へのメッセージで締めさせてください。
どんな方でも気を張らずに観られるスカッと痛快な物語で、二転三転の騙し合いにハラハラできる映画です。私は詐欺師集団の個性、キャラクターの強さがすごく好きで、たぶん皆さんそれぞれに好きなキャラクターが出てくると思います。ぜひたくさんの方に楽しんでいただけるとうれしいです。
Profile _ 川栄李奈(かわえい・りな)
1995年2月12日生まれ、神奈川県出身。2015年AKB48を卒業し、以降俳優として数々のドラマや映画などに出演。19年『人魚が眠る家』で第61回ブルーリボン賞助演女優賞にノミネート。近年の主な出演作に、ドラマ「とと姉ちゃん」(16/NHK)、「青天を衝け」(21/NHK)、「カムカムエヴリバディ」(21/NHK)、「となりのナースエイド」(24/NTV)、映画『変な家』『ディア・ファミリー』(24)、舞台『千と千尋の神隠し spirited away』(24)などがある。
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Information
映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』
大ヒット上映中
出演:内野聖陽、岡田将生、川栄李奈、森川葵、後藤剛範、上川周作、鈴木聖奈 / 真矢ミキ、皆川猿時、神野三鈴、吹越満 / 小澤征悦
監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎、岩下悠子
原作:「Squad38 (38사기동대)」邦題「元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜」
配給:NAKACHIKA PICTURES / JR西日本コミュニケーションズ
映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』公式サイト
©2024アングリースクワッド製作委員会
- Photography : Naoto Usami
- Styling : Marie Takehisa
- Hair&Make-up : KUMI
- Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)