絵画に留まらない後期のマティス作品が集結「マティス 自由なフォルム」が国立新美術館にて開催
後期のマティス作品にフォーカスした展覧会
マティスといえば「フォーヴィスム」のイメージが強い画家だ。フォーヴィスムとは、ゴッホやセザンヌの作品に影響を受け、「抽象的な表現」と「鮮やかで激しい色彩」で描く画風のことである。
しかし、フォーヴィスムとしての活動は1900年代初頭の数年間でしかない。今回の展覧会ではフォーヴィスムとしての活動を終え、フランス・パリからニースに拠点を移した後のマティス作品に焦点を当てている。なかでも最後にたどり着いた「切り紙絵」がメインテーマだ。
2023年、東京都美術館で開催された「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」は、30万人以上の観客を集めた。「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」がマティス入門編だとすると、「マティス 自由なフォルム」は「もっとマティス作品の理解を深めたい」という方にもおすすめだ。
陶芸、舞台装置、祭服……絵画以外の作品が楽しい
マティスは、絵画作品以外にもデザインに関する仕事をしていた。本展では、そんなマティスのクリエイティブも多く紹介されている。
まずは、陶芸群だ。本展ではマティスが制作した銅像が10体以上展示されている。色彩にフィーチャーされがちだが、彼は長年にわたって陶芸や彫刻を続けてきた。これは「人体を正確に捉える力」という意味ではデッサン力とつながるスキルだ。
会場風景 © Succession H. Matisse
またマティスは1920年にパリ・オペラ座にて公開されたバレエ作品「ナイチンゲールの歌」の美術制作の仕事もしていた。本展ではその衣装を再現したものが展示されている。また、祭服のデザインも多数展示されており新鮮だった。
バレエ「ナイチンゲールの歌」ための衣装。1999年の再制作(モンテカルロ・バレエ団蔵) © Succession H. Matisse
マティスがデザインする服はとてもユニークだ。独特な柄(パターン)があしらわれており、シンプルにかわいい。アート性の高い画家のイメージが強いが、彼はデザイナーとしても優れた能力を持っていたことが分かる。
会場風景 © Succession H. Matisse
ニース市マティス美術館の協力で来日が実現!マティス愛用の道具の数々
また、本展ではマティスが使っていたパレットや椅子、棚なども見られる。パレットや棚には約100年前の絵の具がまだ残っている状態だ。
会場風景 © Succession H. Matisse
今回の展覧会は数多くのマティス作品を所蔵している「ニース市マティス美術館」の全面協力があったからこそ実現した。
なかでも『ロカイユ様式の肘掛け椅子』はマティスの作品を理解するうえで、おもしろい。実際にモデルに使った椅子と一緒に作品を展示している。マティスが対象をどのように脳内で抽象化させて絵に落とし込んだのかを確認できるのが楽しい。
会場風景 © Succession H. Matisse
会場風景 © Succession H. Matisse
大作《花と果実》をはじめとした切り紙絵の数々
本展の目玉の一つが4.1×8.7メートルの巨大な切り紙絵作品『花と果実』だ。実際に見ると、その巨大さに圧倒される。
《花と果実》(1952-53、ニース市マティス美術館蔵) © Succession H. Matisse
画家として色彩を極めると同時に、デッサンに課題を感じ続けていたマティスが到達したのが「切り紙絵」だ。本展ではパリのフォーヴィスム時代から始まり、ニースの時代を通過した後、終盤になって、切り紙絵の作品群が登場する。
「マティスが何をやりたかったのか」「最終的になぜ切り紙絵にたどり着いたのか」を考えながら見ることで、この作品の意義がわかってくる。こうした作家の人間性を理解することは醍醐味の一つだ。
最大の目玉は「ヴァンスのロザリオ礼拝堂の再現」
本展の最大の目玉は、最後に登場する『ロザリオ礼拝堂』の再現だろう。マティスは晩期の仕事として、ヴァンスにある「ロザリオ礼拝堂」の装飾をした。ステンドグラスや室内装飾画などで彩られた礼拝堂は、神秘的であり可愛らしさも感じる。
本展では、そんなヴァンスのロザリオ礼拝堂を見事なまでに再現している。
「ステンドグラスを通した色とりどりの光」が見どころだ。再現にあたって24時間にわたってヴァンスのロザリオ礼拝堂をカメラで撮影し、光の移ろいなどを調査したそうだ。そのうえで、室内照明とプロジェクターを動的に操作し、朝から夜までのヴァンスのロザリオ礼拝堂の雰囲気を再現している。
光溢れる朝や日中は、ステンドグラスを通した光が美しい。一方で夕方から夜にかけて照明が落ちることで、ロウソクの灯りが際立つ様も綺麗だ。神秘的な雰囲気を感じられる。
本展監修者であり、前ニース市マティス美術館館長であるクロディーヌ・グラモン氏は「マティスは礼拝堂を見た人の感情そのものが安らぐことを考えて建設した。本展に訪れた人にも同じ感情になってほしい」と言う。
デジタル技術を駆使することで、まさにその通りの場所に仕上がっている。マティスが描いた装飾画も相まって、ゆったりと落ち着く空気感を再現できている。ここには脱帽した。
「マティス 自由なフォルム」は2024年2月14日(水)から5月27日(月)まで、国立新美術館 企画展示室 2Fで開催される。
マティスがなぜ「切り紙絵」という結論にたどり着いたのか。そして、彼が芸術家人生で成し遂げたかったことは何か。作品を通して考えてみるのも楽しいはずだ。
またフラットな目線で作品を自由に解釈するのも楽しいだろう。あえて写実を避けて抽象的な表現をしてきた画家だからこそ、作品を解釈する余地が広い。マティスの作品がどう見えるかを自分なりに定義してみるのも楽しいはずだ。
マティス 自由なフォルム
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
休室日:毎週火曜日 ※ただし4月30日(火)は開館
開室時間: 10:00 ~ 18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館
住所:〒106-8558 東京都港区六本木7丁目22−2
公式サイト:https://matisse2024.jp
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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鑑賞チケットプレゼント:2月22日(木)締切
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- ライター : ジュウ・ショ