最高のライブ盤を聴いてみよう !All you need is Live Album!| ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 7
連載第7回目となる1月のテーマは「最高のライブ盤を聴いてみよう !All you need is Live Album!」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
ソウルファンならライヴアルバムと聞いて真っ先に思い浮かぶ大名盤 ダニー・ハサウェイ「LIVE」
recommend by 商品部 ソウル担当 駒木野 稔さん
diskunion Soul / R&B / Rare Groove バイヤー
Kissing Fish Records 主宰。ライターとして『レア・グルーヴ A to Z』、『和モノ A to Z』、『City Soul ディスクガイド』などに寄稿。
アーティスト名:DONNY HATHAWAY
アルバム名:LIVE(1972/ATCO)
スタッフのおすすめコメント:
大方のソウルファンがライヴアルバムと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはこの作品ではないでしょうか。
1972年リリースの大名盤「LIVE」。1979年、33歳と言う若さで亡くなった(1月13日が命日)ソウルシンガー、ダニー・ハサウェイの代表作とされる作品ですが、A面は1971年8月にハリウッドのライヴハウス「トロバドール」。B面は同年10月ニューヨークのライヴハウス「ビター・エンド」で収録された音源からそれぞれ抜粋したものを収録。トロバドールのギターがフィル・アップチャーチ、ビター・エンドがコーネル・デュプリーとギタリストの違いを楽しむ聴き方もオススメ。
とはいえ、やはりこのアルバムの最大の魅力は”Jealous Guy”などで聴ける、観客とのコール&レスポンスではないでしょうか。がしかし…ご存知の方も多いと思われますが、実は歓声や大合唱はオーバー・ダヴィングが大量に施されております。私的には疑似的なものと知った時にはショックだったのと、プロデューサーやりおるなぁ「あっぱれ!」という何とも言えないやられた感で複雑でした。。試しに2014年リリースの『ライヴ・アット・ザ・ビター・エンド・1971』というライヴの未発表テイクが収録されたアルバムと(観客の熱量を)聴き比べてみてください。
などと色々書き綴りましたが、本作が後世に語り継がれる不滅の大名盤であることには変わりなく、これからも多くの人々に感動を与えることは間違いないでしょう。未聴の方は絶対に聴いて欲しい、聴きどころ満載な激推し盤です。
オアシスの歴史を繰り返すリアム、最高最強のロックンロール・ライブ・アルバム「KNEBWORTH 22」
recommend by ディスクユニオン新宿ロックCDストア 矢富 卓也さん
新宿ロックCDストアのCD番長。銀盤価値向上の為に日々もがき中。ターゲット・ラベルのデザイングッズ募集中。
アーティスト名:LIAM GALLAGHER
アルバム名:KNEBWORTH 22(2023/WARNER)
スタッフのおすすめコメント:
1996年の伝説公演”ネブワース”へ回帰した2022年6月3日公演のライブ・アルバム。オアシスから9曲、ソロからは7曲の計16曲収録(輸入盤)。ビッグマウスもとうとう50歳超え。とっくにジョン・レノンより長生きしてるリアムは何を想っているんでしょうか。リアムはもうずっとオアシスを繰り返すだけなのかもしれない。でも、そう、それでいいんです。例え薄毛になってもリアムは引き続きオアシスなままでいて欲しい。アニキがアテにならなきゃもっと演奏力があって気の合うメンバーとやればいいし、曲書くんならグレック・カースティン、アンドリュー・ワイアット等にサポートしてもらえばいい。
バンド・メンバーは固まりつつあって演奏は抜群の安定感です(カサビアンをサポートしていたジェイ・メーラーがギターに、またあのピートのベイビーシャンブルズのドリュー・マコーネルがベース!!更に10曲目”ザ・リヴァー”では息子ジーン・ギャラガーがドラム叩いてます)。変化は極力要らない。何ならもう最期まで懐メロでいい。世の中はもうずっと変化の連続。社会、価値感、常識、もう何でもどんどん変わっていく時代。だからこそリアムは変わらないでいて欲しい。もっと言うとそんな事ができるのはもはやリアムだけ。オアシスの歴史を繰り返しながらリアムはリアムを続ける。それでいい。
今回目玉の6曲目”ロール・イット・オーバー”を聴くたびに特にそう思えます。とにかく最高最強のロックンロール・ライブ・アルバムです。新しいものに日々拒否感を示しがちで自分は情けないなって思う中、リアム・ギャラガーはいつ観ても聴いても発言も相変わらずなので安心します。同じ家に帰れるカンジです。2024年リリースされる先輩ジョン・スクワイアとのコラボ作も楽しみ(ちなみにラスト曲”シャンペーン・スーパーノヴァ”で弾いてます)。
デトロイトテクノの巨匠であるジェフ・ミルズ大先生が2023年に発表した「EVOLUTION」
recommend by 商品部 ハウステクノ担当 猪股 恭哉さん
ハウステクノ担当バイヤー。HOUSE definitive改訂版に参加、DOMMUNE Private Vinyl Lessonなど
アーティスト名:TOMORROW COMES THE HARVEST
アルバム名:EVOLUTION(2023/AXIS)
スタッフのおすすめコメント:
DJミックスが多く、いわゆるLIVE音源を収録したアルバムはクラブミュージックだと少ない印象ながら、デトロイトテクノの巨匠であるジェフ・ミルズ大先生が2023年に発表したこちらをご紹介。JIL SANDER (ジル サンダー)のキャンペーンビジュアルからSF映画の古典メトロポリスのサウンドトラック、哲学や歴史、思考実験のようなものまで表現に取り込んできた彼が、近年取り組んでいるのがアフリカン・アメリカンと深く結びついている音楽ジャンルであるジャズやアフロミュージック。
2023年の春に来日した際に、渋谷PARCOのDOMMUNEにてDJパフォーマンスを行った際には、ジャズやソウルやブルース、ロックなどを披露するなど、テクノやエレクトロニック・ミュージックではない一面も垣間見せ、自身のルーツを強く聴衆に訴えかける内容でした。
本作は、アフロビートの伝説的アーティストである故トニー・アレンとのコラボレーションをきっかけに始動したプロジェクト。テクノとアフロビート、さらにはタブラもフィーチャー。ドラムマシンとキーボード、タブラが織りなす宇宙的スケールの多層的リズムと音のハーモニーによるグルーヴというゆらぎに酔いしれることができる、まさにLIVE作品の醍醐味がたっぷり詰まったアルバムです。メンバー3名での来日は果たされていませんが、ギリシャ・デロス島の古代遺跡で行われたLIVEを収録したYOUTUBEを見る限り、別次元に意識を飛ばされるパフォーマンスを敢行してくれることが期待できるので、オーガナイザーの方、何卒よろしくです。
テクノ・リスナーに絶大な衝撃を与えたジェフミルズ新宿リキッドルームでのライブDJ「Mix-Up Vol.2」
recommend by 商品部門商品部 ハウステクノ担当 子安 菜穂子さん
ハウステクノweb担当。90年代よりANiIIIIiiiKii名義でDJとしても各地で活動中。
アーティスト名:JEFF MILLS
アルバム名:Mix-Up Vol.2(1996/SONY)
スタッフのおすすめコメント:
“音楽が好き”という人たちは、音楽からもたらされる何かしらの情動や衝動、体験によってそれをもうどうにも引きはがす事ができず、結局人生をひん曲げられてここまできてしまったという層が少なからずいると信じているのですが、リスナーであれ制作側であれ現在までテクノという音楽周辺に関わってきた人々の一部に「それを知る前に戻ることはできない」絶大な衝撃をもたらした時間の記録という意味でも貴重な音源だと思う1995年10月録音/1996年リリースのJEFF MILLS新宿リキッドルームでのライブDJミックスCD。電気GROOVE石野卓球監修のDJ MIXシリーズ「MIX-UP」の第二弾としてSONYからリリースされた1枚です。
アメリカ・ミシガン州デトロイト出身、驚異のクイックミックスで80年代から既にラジオのDJとして”The Wizard”(魔術師)の異名を持ち人気を確立していたJEFF MILLS。MIKE BANKSとのユニットUR脱退後、1994年に単独初来日を果たした新宿リキッドルームに居合わせた筆者もまさしくひとりのDJによって一晩でダンス・ミュージックへの接し方が変わってしまった強烈な体験をしています。
ターンテーブル3台を用いた猛烈なグルーヴと猛烈な高速ミックス、猛烈なスピードの手さばきで捩じるイコライザー、にも関わらず表情には一切の”熱”を感じさせず淡々と連なっていく瞬時のピッチ合わせ。オール・ヴァイナル/ハードコア~ミニマル期のJEFFのDJミックスは次への展開のアクションで秒でも惜しいのかミックス後のレコードをその場で放っていた(!)衝撃のスタイル。この「MIX-UP」の録音は2度目の単独来日公演時のものと記憶していますが、初来日時の勢いと衝撃はそのままに、JEFF自身の当時の最新音源(代表曲”The Bells”を筆頭にのち展開していく”Purpose Maker”のものや主宰レーベルAXISの代表曲)も多数使用されており、より鋭く洗練された濃密な空気をオーディエンスの歓声と共にパッケージしています。
「あなたはグレイトフル・デッドのライブ音源で何が好きですか?」え、聞いたことがない?まずはこれを聴け「CORNELL 5/8/77」
recommend by ディスクユニオン平成J-POPストア 松岡 秀樹さん
古今東西のライブ音源が好き
アーティスト名:GRATEFUL DEAD
アルバム名:CORNELL 5/8/77(2017/RHINO)
スタッフのおすすめコメント:
「あなたはGRATEFUL DEADのライブ音源で何が好きですか?」という問いはロックの質問の中でも最も難しい部類に入るでしょう。「Europe ’72」? 「Without A Net」?それとも「DEAD SET」?全部正解!もちろん「LIVE DEAD」は聖杯ですね。
約2,500回のコンサートを行ってきたデッド。活動中からライブ盤は発売され、また「Dick’s Pics」シリーズや「Road Trips」シリーズといった蔵出しライブ音源も多数。またわざわざ見に来た観客用に録音ブース(テーパーセクション)を用意していた彼ら。当時からテープでの音源をシェアすることを推奨してきた彼らは現在ネットにも大量に音源がシェアされています。
その中で一つを選ぶことは極めて至難ですが、今回は「CORNELL 5/8/77」を紹介します。その名の通り1977年5月のコーネル大学でのライブを収録。1960年代のバンドスタートから休みなくライブを続けていた彼らは1974年で一旦ツアーを休止。1976年にツアーを再開。1977年はその翌年。長いライブの歴史の中でも1974年の休止前と休止後だと分水嶺のようにサウンドがより強力に変化することをファンは知っています。1974年までのライブとは異なり新たにレゲエな「Estimated Prophet」やダンサブルなアレンジで生まれ変わった「Dancing In The Street」のカバーを披露。アメリカンルーツ、カウボーイ、レゲエ、ダンス、長尺ナンバー、ロックンロールといったあらゆる音楽を内包した大海のようなサウンドにあなたは飲み込まれること間違いないでしょう。これで彼らは1974年につぐライブの全盛の一つを迎えることになります。
「あなたはGRATEFUL DEADのライブ音源で何が好きですか?」え、聞いたことがない?今まで聞いてきた音楽に飽きてきたり、新しい音楽を聴いてみたいと思っているそこのあなた、嘘だと思ってデッドのライブを聞いてみてください。人生が変わること間違いなしです!
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
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