どこにもないインストゥルメンタル入門 | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 16
連載第16回目となるテーマは、「どこにもないインストゥルメンタル入門」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
ミニマムでスタイリッシュなファンクサウンドは最高のダンスのお供「THE FEARLESS FLYERS IV」
recommend by 商品部 ソウル/ブルース担当 太田 康洋さん
4つのバンドでギター弾いてます。
アーティスト名:THE FEARLESS FLYERS
アルバム名:THE FEARLESS FLYERS IV(2024 / VULF RECORDS)
スタッフのおすすめコメント:
Vulfpeck(ヴォルフペック)とSnarky Puppy(スナーキー パピー)のメンバーからなるファンクプロジェクト“THE FEARLESS FLYERS”の4枚目となるEP。
Cory Wong(コーリー・ウォン)という天才に出会ってからバンドというよりかギターそのものの魅力と可能性の無限大さにすっかりやられてしまったわけなんですが、そんな天才が4人も集まっているとなるともうグルーヴの鬼なんですよね。タイトなリズム隊にキレッキレのカッティングリフ、もうグルーヴという要素に全振りしたかのようなミニマムでスタイリッシュなファンクサウンドは最高のダンスのお供だと思います。
歌がないどころか激しく主張するソロパートもほとんどない。だけどそんな究極の引き算スタイルだからこそ、楽曲の良さがより際立つんじゃないかなと。まずはアルバム通して聴いて、次は1曲ずつじっくりと、その次は各パートごとに、なんていう風に聴けば聴くほど深い沼にはまっていってもらいたいです。そして嬉しいレコード形態でのリリース。さすが、分かってますね。
熱力学の法則というアカデミックなコンセプトを背景に制作された「TRIPLE POINT」
recommend by 商品部 インディ・オルタナティブ・ロック担当 櫻田 健蔵さん
インディ・オルタナティブ・ロック担当バイヤー
アーティスト名:LOSCIL
アルバム名:TRIPLE POINT(2001 / KRANKY)
スタッフのおすすめコメント:
「深夜であればどんな情景にも溶け込む」という大きな特徴を持ったアンビエント・テクノ・アルバムへと仕上がっている本作。
熱力学の法則というアカデミックなコンセプトを背景に制作されたこのアルバムは、抑圧され暖かさを感じさせない音響処理を施されたビートの上を、ジャケットを象徴するかのような螺旋と青を彷彿とさせる無機質なメロディーが走り抜けることで、他では味わうことの出来ない没入感を感じさせてくれます。
どこかドリーミーでノスタルジーな匂いを漂わせる本作は、シューゲイザーやドリーム・ポップ愛好家の耳にもスッと溶け込む魅力を兼ね備えているのではないでしょうか。普段あまりアンビエント・テクノに馴染みの無いリスナーの皆様にもおススメできる1枚です。
雨音が心地よい休日の夜中。2024年に待望のLP化を果たした本作をターン・テーブルに乗せ、物思いにふけるのもあなたの人生をほんの少し彩るはず。
音だけで映画を見た気分になる EXPLOSIONS IN THE SKY「END」
recommend by 商品部 ロック担当 松坂 貴亮さん
もうすぐ年末な事に焦る絶賛ダイエット中インディ / オルタナバイヤー。
アーティスト名:EXPLOSIONS IN THE SKY
アルバム名:END(2023 / TEMPORARY RESIDENCE)
スタッフのおすすめコメント:
「ポスト・ロック」と一言口に出せば、トータス、シガー・ロス、スリント、toe、はたまたレディオヘッドと、皆それぞれ思い描く像が違うはず。そんなにも聴き手のイメージ力が問われるポスト・ロックで、私が定期的に聴いて情熱と感性をメラメラさせてくれる音のプロテイン、それはエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイなのです。
キャリア25年を迎え、もはやUSインディ自体の大御所になりつつある彼等。2023年リリースの最新作『END』は7年振りのオリジナル・アルバムというハードルをサクッと凌駕する音の百花繚乱盤!ギターのオーケストラ状態から一気にビッグ・バンへ持っていく得意技を軸に、先行シングル”Ten Billion People”の音だけで何か始まる感を演出するのは、もう名人芸の域でしょう。3回来日公演を見たのですが、全て「音だけで映画を見た気分にする」という彼等の評価そのものな内容でした。また行きたい。
サンプリング手法のみで多彩な素材を重ねて作り上げられ、当時のヒップホップファンに衝撃を与えた作品「ENDTRODUCING….. 」
recommend by 商品部 ヒップホップ担当 渚 雄一さん
最近は90年代のUSアングラを買い漁り、健康の為、毎日、一万歩を歩いてます。
アーティスト名:DJ SHADOW / DJシャドウ
アルバム名:ENDTRODUCING….. (1996 / Mo Wax)
スタッフのおすすめコメント:
私が感じるインストゥルメンタル作品の良さは、リリックが無い故に、聴き手それぞれがその曲に対して抱く感情や想像する事が自由なところだと思います。その時の自分の状況にピタッと当てはまるような曲に出会えた時は、無限リピートしてしまう程です。
今回ご紹介したい作品は、アブストラクト・ヒップホップの名作かつインストゥルメンタルの金字塔であり、DJ SHADOWが1996年にリリースしたアルバム『ENDTRODUCING…..』。本作は、サンプリング手法のみを用い、多彩な素材を重ねて作り上げており、それぞれのトラックのドラムやベースなどの素材は、別の楽曲から切り取っている事を考えるとより奥深さを感じられるでしょう。
どのトラックも良いですが、緊迫した映画サントラのような“Building Steam With A Grain Of Salt”や幻想的で夢心地な“Midnight In A Perfect World”、ダークな世界感にドラムのサウンドがハマった“Mutual Slump”が個人的にオススメです。サンプリングのアートを確立した重要作であり、当時のヒップホップファンにはかなりの衝撃を与えた作品なだけあって、リアルタイムで聴いてみたかったです。(リリース当時は1歳なので知る由もありません) ヒップホップの枠を超え、他の音楽好きの方々にも是非聴いてみて欲しい1枚です。
東洋的なサウンドとうねるアシッドシンセが特徴的、今聞いても色あせない名作アンビエント・テクノ「SPACE TEDDY COLLECTION」
recommend by 商品部 ハウス/テクノ担当 山口 幸平さん
ハウス/テクノ関連新譜の商品管理や仕入れを担当。水を1日2リットル飲むことを日課にしたところ痩せ始めている。
アーティスト名:EBI (SUSUMU YOKOTA)
アルバム名:SPACE TEDDY COLLECTION (2021 / Transmigration)
スタッフのおすすめコメント:
普段音楽を聴いていると、音楽と周りの景色や状況とが意図せずバチっとハマる瞬間ってありませんか?視覚や聴覚、その他の感覚にバランスよく意識がいっているような。個人的には歌詞のある楽曲よりもインスト楽曲(歌詞のない楽曲)の方が、そのようなことが起こりやすい気がするんです。
今回ご紹介するのは私がそんな体験をした1枚になります。この作品は、日本の電子音楽家・横田進が「EBI」名義で90年代半ばにリリースしていた作品を、リマスターし再発したもの。東洋的なサウンドとうねるアシッドシンセが特徴的な、今聞いても全く色あせない名作アンビエント・テクノです。
それはちょうど今ぐらい、夜風が心地よい季節だったでしょうか。友人とお酒を飲んだ後、このアルバムを聴きながら街の道を歩いていた時でした。辺りのビル群と白く輝く街灯、そして周囲の雑踏がこのアルバムと完全にマッチしたんです。風景にちょうどいいBGMがついたような。なにかの映画の世界へ入り込んだような。お酒が入っていたからかもしれませんが、それもそれでアリかなと。
以上、ほぼほぼ個人的な感覚の話になってしましましたが、皆さんも是非インストアルバムを聴いてこういった体験に巡り合ってみてください!
アンビエント/環境音楽の巨匠 尾島由郎の初レコード化されたアルバム「Club」
recommend by 商品部 物流担当 稲垣 吉人さん
気になったものは何でも試しに聴く者です。メタル、パンク、プログレ、フリージャズ、サントラ、実験音楽など。一番好きなミュージシャンは浅川マキ。
アーティスト名:尾島由朗
アルバム名:Club (2024 / WRWTFWW Records)
スタッフのおすすめコメント:
1970年代末頃から音楽活動を開始し、現在に至るまでにワコールアートセンターや三越池袋・新宿店、昭和大学病院といった集客施設の音楽制作や、サウンドデザイン・システムの開発の他、同じく環境音楽の草分け的存在、吉村弘や近現代ピアノ音楽家である柴野さつきの作品のプロデュースを手掛けるなど、現在に至るまでアンビエント/環境音楽に関する活動を続ける巨匠、尾島由郎が1983年にカセットテープでリリースした(事実上の)1stアルバム。
2024年に尾島氏監修の元、初めてレコード化されたものとなります。全体的な音数は抑えめで漂うようなかつDIYな質感、時には弾み、時には包み込むようなシンセの音色はポップな感覚が出ており、全編通してほのかに親しみ易さのある音作りです。曲の展開はミニマル性が強く実験的、クラウトロック/ハウス/テクノ/ニューエイジ/アンビエント/実験音楽と言った音楽性にリーチしており、ここではないどこか遠くの世界への誘いを想い起こさせる内容となっております。特にアルバムの初めから聴き通しての最終曲はその感覚をより強いものにさせてくれます。版元では完売、500部限定のリリースですのでお早めにどうぞ。
言葉はいらない、ノイズの反復が私の記憶を呼び起こす「WALKING CLOUD AND DEEP RED SKY, FLAG FLUTTERED AND THE SUN SHINED」
recommend by 商品部 日本のロック・インディーズ担当 山中 旭さん
日本のロック・インディーズ担当
アーティスト名:MONO
アルバム名:WALKING CLOUD AND DEEP RED SKY, FLAG FLUTTERED AND THE SUN SHINED (2004 / Temporary Residence Ltd.)
スタッフのおすすめコメント:
木を見て、友人と遊んだことを思いだす。同じ人いますか?唐突なフィードバックの理由を知りたくて、いつもインストゥルメンタルを聴いていました。16時44分の窓辺の気怠さと新車のムード。私にだけリフレイン。本当は言葉などいらないと思います。音だけの世界で十分。いつも彼方から聞こえている気がして、ノイズの反復が記憶に目を向かわせるんです。
音は動作についてきますよね。物に手を伸ばす、指で触る、つかむ。買うとか。どんな音色なのか、たまに想像することがあります。楽器はサックスでfの音を鳴らしたとか言って。他者が奏でた音でフィードバックされるときは、美しいとは限らないし、好きではないかもしれない。でもそれが一番、記憶に寄り添ってくれていました。このアルバムのギターの音もそうです。
聴く度に感じるアルバムのイメージは、“半歩前に落ちている枯葉”です。横目に踏んでいく人の視線、手袋はずした冬の終わりみたいな。音に飛び込むことはできないけど、2000年代の週末が見えました。わたしにはわからないですけど。飛行機に合ってない気がする。バスで聴くのがいいかも、、イオンモール見ながらとか。同じ人いますか?
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
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公式youtube:https://www.youtube.com/@diskunion_official
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