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tiit tokyo × Daughters – 衣装から観る映画

Sep 16, 2020 - FASHION
tiit tokyo(ティート トウキョウ)のデザイナー岩田翔が、ファッションディレクターを務めた初の映画『Daughters(ドーターズ)』。日常の中で着られる服を作るブランドとして、スクリーンの中で着られる服とどのように向き合い、作りあげたのか。

東京という街に存在しうる色

— 今回、映画『Daughters』のファッションディレクターを担当されてみていかがでしたか?

自分のブランド「tiit tokyo」のコレクションでは、最初にストーリーや世界観を考え、そこから映画の描写のようなものまでイメージして洋服に落とし込むという一連の流れでデザインしているので、今回のような初めから世界観ができあがっている中で自分が表現するという形はなかなか難しいなと思いました。

しかし、ブランドとしてこういった取り組みは初めてでしたし、津田監督が作った世界観の中で、「ブランドとして参加することで何ができるか」というようなことを考えるのはチャレンジでもあり、なかなか面白かったです。ブランドとして参加する意義をしっかりと表現できてこそ、意味があるものになると思っていました。

— tiit tokyoでは、もともと映画にインスパイアされたコレクションも作られていたんですよね。

そうですね。数年前初めて津田監督と会ったときに、デザインプロセスの中で映画の描写を作るようなことを取り入れているとか、いつか映画を撮ってみることにも興味はある、というようなニュアンスの話をしたようなんです。自分はそこまで覚えていなかったのですが、監督はその部分に共感して記憶してくれていたようなんです。そういうこともあり、今回呼んでくれたそうです。

— 今作の衣装に関して津田監督から、三吉彩花さん演じる小春はイエロー、阿部純子さん演じる彩乃はブルーという色の指定があったそうですね。そこからどうやってデザインやイメージを広げていったのでしょうか?

監督の意図はすぐにつかめました。しかし、理解はしましたが、それを表現するにあたり、色しばりって結構難しくて…(笑)。テリー・ギリアム監督のように、振り切って衣装をドンと出す映画も好きですけど、この作品はそうではなく、ファンタジー映画でもないので、東京の中で存在しうる色である黄色や青に色を絞りこみました。「tiit tokyo」でも、街の中で存在するというところを意識しているので、考え方は似ていました。

あと、監督の意向により、回想シーンは全部オリジナルで作ることが決まっていました。なので、そこの部分は、台本やプロットを読みながら、ラフ画のようなものを作り、監督に見せつつデザインしていきました。

— 小春と彩乃が東京で仕事も遊びも楽しんでいる感じが、衣装にも表れていた気がします。

例えば、当時の東京を外国人の視点からやや滑稽に描いていた『ロスト・イン・トランスレーション』は、普段目にしている景色よりも少し脚色されているというか、夢のあるような感じでしたよね。でも、脱線しすぎず保たれていたので、あれくらいのバランス感はいいなと少し意識はしました。

— 本作のスタイリストを務めた町野泉美さんは、もともとよくご一緒されていた方だったのでしょうか?

劇中で服をどう見せていくかって、実は非常に重要で、スタイリングひとつで印象がガラッと変わってしまうこともある。なので、そこは最初に全体的にどのような雰囲気のファッションにしていくかということを監督と話した後、スタイリストに関しては僕が10年くらいファッションショーをご一緒している町野泉美さんが一番良い表現法を知ってくれているんじゃないかと思い、監督に話をしたんです。

そうしたら偶然、町野さんは監督とも知り合いで(笑)。そんなご縁もあったので、今回は彼女と一緒にチームに加わりました。ある程度、最初に監督と話していたニュアンスは僕から伝えていたことはあったのですが、そもそも町野さんのテイストが本作にあうと思っていたので、その辺りは自由にやっていただきました。

 

理由の無いクリエイティブはひとつも無い

— tiit tokyoとして映画に関わるにあたり、意識されたところはありましたか?

まず、ブランドとして参加するということだけではなく、映画にどのようなメリットもたらせられるかというところまで考えたいと思いました。実際に作るということだけでなく、(映画を)撮り終わったあとに、メディアにちゃんと出ていくところがあってこそ、参加しているブランドとしての大きな使命になるかなと。この映画を現実とつなぐ架け橋のような。いつもファッションブランドでブランディングまで考えてやってる以上、そういった一連の流れはしっかりと抑えていきたいと思っていました。

— たとえばFASHIONSNAP.COMでの特集記事髙島屋や伊勢丹でのポップアップストアも、tiit tokyoだから実現できたことですよね。実際にファッションディレクターとして映画の制作に加わってみて感じたことはありましたか?

実は、僕は普段のコレクションを作るときも「全部自分でやりたい」という感覚ではなく、一人一人の役割がある、チームワークを尊重する派なんです。そこに関しては(映画制作と)似ているなと思いました。作品の完成度に関しては、作り手全員合わせて90%のところを作り、あとの10%は受け手の人のための余白として設計していると思っています。常にそういった客観的な余白は意識していて、自分もお客さんとして混ざり合っていく方が面白いですし。ファッションショーなんかも自分自身が観客目線で一番楽しみにしていて、ファンみたいな感じです(笑)。

この作品も、ある程度最初の部分は監督と一緒に、スタイリストはこの人で、こんなテイストで、色味はどんな感じかということとかを話しましたけど、その先はどんな感じになっていくのかな?という楽しみがありましたね。

— お話をお聞きしていると、岩田さんはファッションという概念を広く捉えている感じがします。

こんなことを言うと誤解されてしまうかもしれないのですが、たぶん、熱狂的に洋服自体が好きというわけではないのかもしれません(笑)。

スポーツ選手になりたいとか、クリエイターになりたいとか、特殊な才能を生かした夢に憧れる時期ってありますよね。でもそういった特殊技能や表現力を職業として表現できている人って、世界中でもほんの数パーセントだと思うんです。

みんなどこかで、自分がどっちを選べる人なのかわかる瞬間の分かれ道に出会ってると思いますし、僕もそういった数パーセントには入れないうちの一人でした。僕は自分の世界観を好きなように表現するというよりは、もうちょっと「普通の人の視点」でどんなことを生み出すと面白いのか、ということを追求していってみたいなと考えるようになりました。

同じクリエイションという枠の中でも、ファッションでどう世の中と繋がっていけるのかということをより真剣に考えるようになりました。だから僕には、理由の無い思い付きやクリエイティブはひとつも無くて、全てちゃんと理由を考えるようにしています。だから、街の中で存在できる、ある種の「説得性」を持たせることができるのかなと思います。

— なるほど。先ほど「いつか映画を撮りたい」とお話されていましたが、岩田さんにとって映画とはどんな存在だったのでしょうか?

めちゃくちゃせっかちな性格なので、TVドラマがあまり好きではなかったんです。最近のトレンドだともっと短いですが、映画のように2時間くらいで無駄に説明されていないところが面白いなと思っていて。逆にその余白があることで想像を掻き立てられるので、映画は昔から好きでした。

デザインに関しても、映画のように全体の世界観を作ることや、そのアウトプットとしてファッションがあるという手法でデザインをしていく中で、だんだんと今のスタイルになっていきました。映画のワンシーンを切り取ったような具体的な描写をイメージして、可視化していくとチームにも伝わりやすい。いかにチームにわかりやすくできるか、ということを念頭に置いてデザインしています。

— 『Daughters』も想像力が掻き立てられる作品ですよね。

そうですね。全編を通して、何が正しいのかとか、かなり選択肢が問われるような映画ですよね。多くは語らず、みたいなところが面白いなと思いました。監督はそんなに狙っていないと言っていましたが、かなり計算して作られていると思います。

— 映画の衣装は、単に作品のクリエイティブとしてだけではなく、それを纏う俳優部や見ているスタッフのへの影響も大きいアイテムなのではないかと感じています。岩田さんがデザインした洋服を着て、三吉さんと阿部さんが演じている姿を見てみていかがでしたか?

セリフが入ったシーンに、洋服が合わさった映像ってやっぱりいいなと思いました。日本語ってどう捉えるか、どう理解するかという部分が受け手によって変化するじゃないですか。それがいい余白だなと思うんです。だから僕は日本語が好きで、クリエイティブも日本語のように表現していきたいといつも思っているんです。

— 今後また、映画の衣装に関わる機会があったらやってみたいことはありますか?

実は基本的にミーハーな性格なので、どんな仕事でもやってみたいという気持ちはありますし、今回のように初期のアイデア段階から関わることは面白いと思いました。

昔は『スター・ウォーズ』のコスチュームのような衣装を手がけるということも面白いと思っていたんですけど、やはり自分のブランドでその映画にプラスを与えられるような関わり方が一番キレイだと思いました。そういったところでは、親和性が非常に重要で、映画をブランドと絡める意味をしっかりと持たせることがキーだと思いました。

映画にブランドとして参加するという、こういった珍しい形でマーケティングやプロモーションをやっていくことは、既存ではあまりやらないというか、なかなかやれない手法ですし、ブランドが関わっているからこそできるできる方法なのかなと思いました。

— それでは最後に、『Daughters』の撮影現場の様子はいかがでしたか?

現場にはそんなに行けなかったんですけど、映画作りってやっぱり面白いなと思いましたが、監督をそばで見ていて非常に大変そうで、いつか自分で撮りたいかもという気持ちはなくなりました(笑)。頭の中に思い描いていることが簡単に表現できてしまう、みたいな感じだったらいいんですけど(笑)。僕にはきっとそれはなかなか難しいと思うので。

でも、今回監督の発案から公開まで、全てのプロセスをずっと近くで見せていただいていて、作品を一からチームで作り上げることは素晴らしいと思いました。その場のスタッフが作りだす熱とか、単純作業とはかけ離れた、ひとつの目的のために皆が凝らす創意工夫を見せてもらえたことは非常に貴重な体験となりました。

 

Profile _ 岩田翔(いわた・しょう)
1985年生まれ。株式会社KIDS-COASTER代表取締役。ファッションデザイナー/クリエイティブディレクター。2011年、滝澤裕史とともにファッションブランドtiit tokyoをスタート。国内外にて展開。翌年より東京コレクション公式スケジュールにてファッションショー形式で発表を続ける。また、株式会社KIDS-COASTERを設立し、様々なクリエイティブプロジェクトに関わる。
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Information

映画『Daughters』

2020年9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

同じ速度で歩んでいくと思っていた友人同士。
ひとりの妊娠によって訪れる、ふたりの人生の変化を『一方』の目線から描くヒューマンドラマ。

出演:三吉彩花、阿部純子、黒谷友香、大方斐紗子、鶴見辰吾、大塚寧々
脚本・監督:津田肇
主題歌 chelmico『GREEN』

『Daughters』公式サイト

ⓒ2020「Daughters」製作委員会

  • Model : Sho Iwata
  • Photography : Kei Matsuura
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Sayaka Yabe / Yusuke Takayama