坂東龍汰 × 髙橋里恩 × 清水尚弥 – 3人の若武者
主演は坂東龍汰、髙橋里恩、清水尚弥の3人。
映画界に革命を起こす(かもしれない)若武者たちによる鼎談を届ける。
『若武者』で起きた3人の化学反応
― 3人は以前から面識が?
坂東龍汰(以下、坂東):里恩は同じ事務所だったので、20歳ぐらいから知っていて。かれこれ7年ぐらいの付き合いです。歳も同い年で。尚弥は2個上か。
清水尚弥(以下、清水):今年29。俺は2人とも『若武者』ではじめましてでした。存在はもちろん知っていましたが。
― まずそれぞれの印象を伺いたいのですが、坂東さんと清水さんから見た「髙橋里恩」はどんな人ですか?
坂東:里恩は里恩なんだよな。
清水:そうそう。
坂東:こんなやつ他にいないって感じ。
― 劇中では血の気が多いキャラクターでしたけど。
坂東:全然。実際は普通に平和主義。お酒が入ると好戦的になるときはあるけど(笑)。
髙橋里恩(以下、髙橋):まあ、喧嘩腰で来られるとさ(笑)。
清水:やさしいんだけど、内側に秘めた切れ味を感じるよね。
坂東:感じるね。
清水:それがお芝居にも出てるし。
― それはある種の信念のようなもの?
坂東:里恩なりのポリシーがあるというか。いい意味でちゃんと尖がっているから、人として生ぬるくはない。
― 髙橋さん自身、普段から心がけていることはありますか?
髙橋:昔からあんまり人に対して開けなくて。それがすごいダメなのかなと思ってたんですけど。最近、それでもいいやって思えるようになってから、ちょっと心が安定しました。
― 無理して自分の心を開いていく必要はないんだと。
髙橋:そうですね。そう思うことで逆に、普通に話せるようになってきました。
― もともと感受性が豊かなんでしょうね。
髙橋:なのか、自意識過剰か(笑)。
― 次に「清水尚弥」はどういう人でしょう?
髙橋:ヘン。
坂東:ヘン。
清水:俺そんなにヘンなんだ。
髙橋:ヘンだよ。
坂東:ヘンだよ。
清水:まっすぐ言われますね。
坂東:でもやさしい。底抜けにやさしい文学少年。一緒にいると自分の知性のなさにがっかりする。
清水:そんなことないでしょ。
― 読書家なんですか?
清水:最近は全然。昔は年間200冊ぐらいは読んでいたんですけど。
坂東:ボキャブラリーの塊ですから。
髙橋:あと、炎はあるよね、心に。
坂東:勉強家でめっちゃ熱い。たぶん俺らの中で一番熱いんじゃん? こういう話をしてたら酒飲みたくなってきちゃった(笑)。
― 3人で飲みに行ったことも?
坂東:はい。こういう照れくさい話をずっとしていました。基本的には褒め合って、飲まない里恩はシラフでひたすらその話を聞いて。
清水:俺らがベロベロになって。
坂東:帰りの電車でもずっと褒め合ってたよね。
― では「坂東龍汰」のイメージは?
髙橋:バカ。
清水:バカ。
髙橋:なんか明るくなる、坂東がいると。
― 間違いないですね。
清水:無邪気でカラッとしてて。それがいいよね。
髙橋:なんか必要だよね。坂東みたいな人は。
坂東:この世に?
髙橋:この世に。
坂東:この世にバカって必要?
髙橋:うん。いろいろ考えている自分がバカに思えてくる、逆に。
清水:自分にない要素がいっぱいあって、見習いたいなって思うことは多いかな。
― 3人それぞれ個性が違っていて、『若武者』ではそんな3人が集まったことで化学反応が起きたのかなと。
坂東:それはあると思いますね。今回は特に。ぶつかり合っているようで、共存している3人だったから。
― 確かに。幼馴染みでいつも一緒にいるけど、慣れ合ってはいない。実際の3人がまとう空気感ともどこか通じているような印象を受けました。
坂東:そうですね。ひとりひとりが自由人で。
髙橋:でも俺は尊敬してるもん。2人のこと。
坂東:お互いにリスペクトはあるじゃん。関係性を作るうえで、それはでかいよね。
清水:間違いない。
― 髙橋さん演じる英治が、他の2人のことをすごく好きなんだろうなと感じました。好きだからこそ突っかかってくる。
坂東:英治が3人をつなぎとめていますよね。(坂東さん演じる)渉と(清水さん演じる)光則で話すことなんてないんだもん。
― 終盤に渉と光則が2人きりになるシーンもありましたが、なんともいえない空気でしたよね。
坂東:そう、2人になったとき、空気終わってんじゃんって(笑)。
髙橋:見たかったな、生で。
― 3人とも同世代ですけど、世代に対する意識ってなにかありますか?
坂東:テレビを観ていて、学園モノをやっている若い世代の子が現れたときに感じました。もう俺はこの中には入れないんだって。
髙橋:ないない、そんなのまったくない。むしろ「ここじゃなくね?」というのがずっとあったから。
坂東:そうか、そもそも馴染まなかったんだ。キュンとかわかんないの?
髙橋:いや、キュンわかるよ。コンクリートの間から花が咲いてたりとか、キュンとするよ。
坂東:違うんだって(笑)。顎クイとかよ、壁ドンとか。
髙橋:でも花って不屈じゃん。すげえかわいいよ。
清水:キュンの話はもういいよ(笑)。俺も同世代を意識しすぎることはなくて。それぞれ元気で頑張ってくれればと。
― 「俺たちの世代で盛り上げていこうぜ」という連帯感もあまりない?
坂東:でも革命を起こしているから、俺らはすでに。『若武者』という映画で。
髙橋:……神社にいた猫にハートの柄があって、それにキュンとしました。
坂東:まだキュンの話してる! こいつの頭の中の時間が進んでない(笑)。
清水:絶対にまた来るなと思ってたけど。
坂東:ダメだ。この3人が集まるとインタビューにならないよ。
すべてが自由な映画
― 本作は「誰もが観たい映画ではなく、誰かが観たい映画を作る」をミッションに掲げる新レーベル、「New Counter Films」の第一弾作品として製作されました。
坂東:そういうことは意識せず作っていましたが、オリジナルの脚本であることはすごく意味のあることだなって思います。二ノ宮さんの中から映画として作るべくして生まれてきた脚本を、映画として世に送り出すことは僕の中では特別なんです。
― オリジナルの脚本で作られることの魅力とは?
坂東:映画でしかできないことがそこにあるからだと思います。たとえば漫画は漫画のために生まれてきた作品であって、実写化のために生まれてきた作品ではないと思うので。
清水:たとえばオリジナルのドラマや演劇と、オリジナルの映画の違いだとどうなの?
坂東:やっぱり映画館で観るというシチュエーションが、俺は特別だと思ってて。お金を払って観に来る娯楽と、自宅のテレビで観られる娯楽とは全然違うよね。もちろんお芝居をするうえでは全部同じ気持ちで取り組んでいるけど。
清水:俺は観る側としても、出る側としても、映画の特別さを常に感じますね。そこは絶対的なロイヤリティが……
坂東:あるよね。だって時間とお金をかけてまで観に行きたい作品って、なかなか出会わなくない?
髙橋:出会わない。
坂東:でしょ。だから『若武者』で衝撃を与えたいよね。
髙橋:すげえやばい監督とおもしろい俳優がこんなにいるんだってね。
坂東:同世代の俳優たちは、みんな歯を食いしばって観てほしい。
髙橋:トイレにこもっちゃうんじゃない?
坂東:こもっちゃうよ。俺だったら悔しくて2日間ぐらい歩き倒しちゃうかもしれない。本を読んだ時点でその確信があった。もしこの映画に俺が出られなかったら、誰がどう演じていようが観たときに確実にめちゃくちゃ悔しくなるなって。
― 髙橋さんは、最初に脚本を読んだときどう感じましたか?
髙橋:ずっとニヤニヤしながら読んでいましたね。僕は5年前にニノさん(二ノ宮監督)と舞台を一緒にやって、いつか映画を撮ろうという話があったんです。でもそれから5年経ってもうなくなったのかなと思っていたんですけど、今回やるってなった瞬間からニヤニヤが止まらなくて。
― いいですね。
髙橋:マジでずっとニヤニヤしていました。リハーサルの時点で全部セリフ入ってたもん。
坂東:そうだね。
― 清水さんはいかがでしたか?
清水:まず月並みですけどめっちゃおもしろいなと思って。すごく革新的だったし。あと内容は重めなんですけど、言葉がスッと入ってくるんですよね。二ノ宮さんの脚本だからだと思うんですけど。
― 言葉が入ってくるというのは?
清水:二ノ宮さんの言葉選びとか、言葉の並びがすごくきれいで。そこが気になることも多いんですけど、『若武者』の脚本は読みやすかったです。
― 生きている言葉というイメージですか?
清水:そうかもしれません。二ノ宮さんもご自身でお芝居をやられるから、そのときにアウトプットする前提でセリフを書いてくれているのかも。
髙橋:文字が踊ってるんだもん。
清水:そう。お芝居をしていて言いづらいなと思うこともなかった。
坂東:なかったね。
― できあがった作品をご覧になった感想をお願いします。
清水:情報量がすごく多くて、すげえ濃い空気のお芝居を観たなって。観終わってちょっと立つのが嫌な感じ。疲れたわけじゃないんですけど。
坂東:舞台を観たあとの疲労感というか。緊張感があるんだよね。
清水:みんなそうなるのかな?
髙橋:俺も観終わって、本当に放心状態になっちゃって。ルカ・マリネッリというイタリアの俳優の『マーティン・エデン』って映画観たことある? それを観たとき俺、食らいまくったの。でもそれ以上のものがあった。
坂東:俺は、ヴィターリー・カネフスキーの『動くな、死ね、甦れ!』のラストも衝撃的過ぎて、しばらく劇場で「うーっ」てなってたけど、それに近いものがあったな。
髙橋:彼ら3人をすごく近くに感じられたし、慈愛が出てきて。いや、登場人物全員に対してかもしれない。
坂東:みんな生きてくれって思うよね。
髙橋:うん、全員に共感できるんだよな。
坂東:受け取り手によって本当に変わる作品だと思う。普段、世の中で言いづらいことだったり、蓋をしている部分だったり、自分たちが目を背けていたものを言葉として浴びせられるような。人間は自分を自由に表現していいんだよと、僕は受け取りました。
― 観る人によって受け取り方が違ってくるというのは同感です。
坂東:もちろん怖いと思う人もいるかもしれないし、かわいそうって思う人もいるかもしれない。
髙橋:それも含めて、すべてが超自由だよね。
坂東:自由、全部が自由。すごく自由な映画だなって思うよ、俺は。
Profile _ 坂東龍汰(ばんどう・りょうた)
1997 年、北海道出身。2017年俳優デビュー。『フタリノセカイ』(飯塚花笑監督、22)で映画初主演を務め、第 32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。主な出演作に映画『春に散る』(瀬々敬久監督、23)、『バカ塗りの娘』(鶴岡慧子監督、23)、『一月の声に歓びを刻め』(三島有紀子監督、24)、舞台「三人姉妹はホントにモスクワに行きたがっている のか?」(岩松了作・演出)、「う蝕」(横山拓也・作、瀬戸山美咲・演出)などがある。現在、4月期ドラマ「366日」(CX)、「RoOT / ルート」(TX)に出演中。『君の忘れ方』(作道雄監督、25)の公開を控えている。
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Jacket ¥66,000・sweater ¥30,800 / soduk (soduk customer support customer@soduk.co), pants ¥47,300 / Stockholm Surfboard Club (EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901), necklace ¥30,800 / BONEE (EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901), shoes ¥74,800 / ADIEU (BOW INC 070-9199-0913)
Profile _ 髙橋里恩(たかはし・りおん)
1997年、東京都出身。2016年俳優デビュー。主な出演作に『恋い焦がれ歌え』(熊坂出監督、22)、『ファミリア familia』(成島出 監督、23)、『映画 ネメシス ⻩金螺旋の謎』(入江悠監督、23)、 『東京リベンジャーズ 2 血のハロウィン編-運命-』(英勉監督、23)、『誰が為に花は咲く』(藤原知之監督、24)、舞台「世界が消えないように」 (タカイアキフミ作・演出)、ドラマ「家政夫のミタゾノ」(EX) などがある。現在、『陰陽師 0』(佐藤嗣麻子監督)が公開中。
Jacket ¥49,500・shirt ¥41,800・pants ¥27,500 / ATTACHMENT (Sakas PR 03-6447-2762), ring ¥61,050 / le gramme (BOW INC 070-9199-0913), shoes ¥15,400 / armee (03-6457-4114)
Profile _ 清水尚弥(しみず・なおや)
1995 年、東京都出身。2015 年『死んだ目をした少年』(加 納隼監督)で主演を務める。主な出演作に『ソ満国 15歳の夏』(松島哲 也監督、15)、『人狼 ゲーム プリズンブレイク』(綾部真弥監督、16)、『ある女工記』(児玉公広監督、16)、『ちはやふる-上の句-』(小泉徳宏監 督、16) 、 舞台「惡の華」(加藤拓也演出、16) 、「犇犇」(タカイアキフミ作・演出、21)、ドラマ『刑事7人』(EX)、『GARO -VERSUS ROAD』(TOKYO MX)などがある。主演を務めた短編映画『竹とタケノコ』(川上信也監督)が2024年春公開を控えている。
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Information
映画『若武者』
2024年5月25日(土)ユーロスペース、ロンドン、ニューヨークほかにて世界同時期公開
出演:坂東龍汰、髙橋里恩、清水尚弥、木越明、冴木柚葉、大友律、坂口征夫、宮下今日子、木野花、豊原功補、岩松了
監督・脚本:⼆ノ宮隆太郎
Copyright 2023 “Wakamusha” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED
- Photography : Hiyori Korenaga
- Styling : Yoshie Ogasawara(CEKAI)
- Hair&Make-up : Naoyuki Ohgimoto
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)