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長澤樹 × 窪塚愛流 – 答えがないからおもしろい

Mar 1, 2024
映画『愛のゆくえ』で、残酷なまでの運命に翻弄される14歳を演じた、長澤樹と窪塚愛流。
新世代の俳優として際立った存在感を放つ2人に、作品に向かう姿勢や演じることへの思いについて話を訊いた。

長澤樹 × 窪塚愛流 – 答えがないからおもしろい

Mar 1, 2024 - FILM
映画『愛のゆくえ』で、残酷なまでの運命に翻弄される14歳を演じた、長澤樹と窪塚愛流。
新世代の俳優として際立った存在感を放つ2人に、作品に向かう姿勢や演じることへの思いについて話を訊いた。

14歳で世界が変わり始めた(窪塚)

― 窪塚さんは2022年に『麻希のいる世界』でもインタビューさせていただいたんですが、あのころはまだ18歳で、これから上京するというタイミングでしたよね。

窪塚愛流(以下、窪塚):はい。今は上京して2年経ちました。

― もうお酒も飲めちゃう。

窪塚:飲めます(笑)。

― 長澤さんはまだ飲めないですが、18歳なのでもう成人ですね。

窪塚:おめでとうございます。

長澤樹(以下、長澤):ありがとうございます。愛流くんは、成人式やりました?

窪塚:式はもうやりました。

― なにを着て行ったんですか?

窪塚:上下白のスーツでした。せっかくなので華やかにしたくて。

― かっこいい。他にも真っ白な方はいましたか?

窪塚:いなかったですね。いつもお世話になっているスタイリストさんにお願いして、おしゃれなネクタイ付きシャツみたいなのを合わせて。

― 長澤さんは成人式でなにを着たいですか?

長澤:私は赤い振袖を着たいです。

― さて、映画『愛のゆくえ』がまもなく公開となります。北海道ロケということもあり、観ているだけでも撮影の過酷さが伝わってきました。

窪塚:1月の撮影で、本当にカイロを肌身離さず持っていないと立っていられないぐらいで。

長澤:家の中まで、とにかく寒かったです。

― 体力的にはもちろん、精神的にもきつそうな役だなと感じました。

長澤:(長澤さんが演じた)愛は頭の中ではすごくいろんなことを考えているけど、それが言葉や表情には出ないんです。芯があるんだけど、14歳という年齢も含めて不安定なところもある女の子でした。

― セリフも少なかったですよね。しゃべらない芝居というのも難しそうです。

長澤:そうですね。なかなか難しかったです。

窪塚:(窪塚さんが演じた)宗介は愛と同い年ですが精神的には幼く、自分の気持ちに正直になれないんです。母親や父親からまっすぐな愛を受けずに育ったこともあり、自分自身を守るのに精一杯なんだろうなと。14歳という年齢は、僕も自分の中の世界が変わり始めたタイミングでもあったので、だからこそ丁寧に演じたいと思いました。

― ご自身の14歳を振り返ると、思ってもいないことを言ったり、反抗したりしたこともあった?

窪塚:14歳ぐらいのときに感情的になって、母親を突き飛ばしたことがあって。それを今でも後悔している自分がいます。実際に自分もいろいろなことで悩んでいた歳だったので、宗介と重なる部分もありました。

― 14歳って、本当に多感で不安定な時期ですよね。長澤さんはいかがでしたか?

長澤:私は反抗期がなかったんですよ。

― 今どきっぽい。

長澤:でもやっぱり子供でした。後先考えず、そのときに自分がしたいことがそのまま言葉や行動に表れちゃうみたいな。それも悪いことではなかったなとは思っていますが。

 

100%役になりきりたい(長澤)

― 今回『愛のゆくえ』で共演して感じた、お互いの印象をお聞きかせください。

窪塚:自分が2歳年上なんですけど、当時も今も精神年齢は絶対に僕のほうが低いです(笑)。話していても落ち着きがあって圧倒されるし、お芝居もとことん突き詰めるタイプだと思うんです。その姿を見て、ハッとさせられることがたくさんあって。慣れない土地で寒さが厳しくても、雪が眩しくても、いつでも作品に没頭している樹ちゃんの姿が雪と相まってすごく美しかったのを覚えています。

長澤:ありがとうございます。照れます(笑)。

― 長澤さんから見て、窪塚さんはどんな存在でしたか?

長澤:今になってみると、私は愛流くんのことをお兄ちゃんみたいに思ってたんだなって。たくさん話すというより、なにも言わなくてもそばにいるだけでいいという感覚が、家族に近いんです。監督ともそんなに年齢が離れてないので、スタッフさんも全員家族みたいな感じでした。

― 宮嶋風花監督もまだ20代ですからね。現場では若いチームならではの活気を感じることもあったのでは?

窪塚:はい。皆さん心やさしくて、ちょっとした時間でも集まってお話したり。本当に大家族で動いているような気分でした。

長澤:すごく楽しかったですし、信頼感がありました。たとえばカメラマンさんだったら、この人に撮ってもらってるから大丈夫だって思えたので。

― 完成した作品をご覧になった感想を教えていただけますか?

長澤:観終わったあとに、言葉にできない感情がありました。感無量というか、達成感というか。いち観客として、愛と一緒に旅をしているような目線で観ていました。

窪塚:大人ですね。自分の芝居をどうしても観てしまうので、「ここはもうちょっとできたな」とか悔しい部分もあって。ただ、撮影のときには見えていなかった細かいところまで描かれていて、宮嶋監督の不思議な世界観に魅了されました。

― アニメーションや監督の子供時代のホームビデオも編集で組み込まれていて、撮影時の印象とは変わってきそうです。

窪塚:あと僕は北海道のシーンしかなかったんです。樹ちゃんは東京のシーンもあったので、脚本でしか知らなかった都内のシーンが観られたのもおもしろかったです。

― 東京のホームレスの方々と過ごすシーンが、愛にとって唯一和やかな時間でした。

長澤:そうですね。愛が笑うシーンって、そこぐらいしかなくて。だから結構悩んだんですけど、監督からは私が思うようにと言っていただけました。

― 本作に限らず、普段から理想とするお芝居ってありますか?

長澤:私は撮影に入る前の準備段階、役作りの時間がすごく好きなんです。たとえば愛という役と長澤樹という人は、100%同じではないじゃないですか。でも愛を演じるんだったら100%愛になりきりたい。そこに長澤樹はいちゃいけないと思うんです。

― どうやったら役から長澤樹を外せるんですか?

長澤:「自分はこう思う」という考えをなくすことでしょうか。自分の主観を入れちゃうと自分になっちゃうので、あまり良くないなって。正解がないので難しいですが、最終的にはなにをしていても愛だよねってところまで役作りができたらいいなと思っています。

― 窪塚さんはどんな芝居を目指していますか?

窪塚:自分は脚本に書かれていないところまで、役の隅々にまで寄り添えるようになりたいと思っています。『愛のゆくえ』では、愛や宗介の育ってきた経歴や環境を監督が資料にまとめてくださったので演じやすかったですが、そうでなくても自分なりに役の過去や未来を想像してあげることで、本当にその世界の中で生きているような深みのある芝居ができるんじゃないかなって。

でもさっき樹ちゃんの話を聞いて、自分も前までは同じように思っていたのですが、最近はひとつひとつの役のオリジナリティも出したほうが良いのかなとかいろいろ考えていたので、また悩み込んじゃいます(笑)。

― 難しいですよね。窪塚愛流という人間が演じる意味というのもあるでしょうし。

窪塚:その答えがない部分こそ俳優のおもしろさかもしれません。悩んだ分だけ次にもつながっていくと思って、マイナスには受け取らないようにしています。

― お二人それぞれ、作品の見どころを教えていただけますか?

長澤:ひとつは一番最後の小屋のシーン。撮影後にもう1回別日に撮り直すぐらい監督も私たちもこだわったシーンだったので、ぜひ観ていただきたいです。

あとは愛が北海道に帰ってきて、家の前で泣いているシーン。セリフもなにもないんですけど、自分でも不思議な芝居をしているなと思ってて。今じゃもうできないですし、あのときなんでそれができたんだろうというのも曖昧な感じなんです。

窪塚:僕は全体を通してお客さんがこの映画をどう受け取ってくれるのか一番気になります。一生懸命がむしゃらに、本気でぶつかり合ったからこそ、演じることで精一杯だったから、この作品を初めて観た方がどういうふうに受け止めてくださるのかすごく気になります。お客さんの感想を聞いてみたいです。

 

【Extra Questions】一問一答

― では最後に、作品から離れて一問一答で締めくくりを。

Q. 犬派? 猫派?
長澤:犬です。
窪塚:犬です。

Q. 子供のころの夢は?
長澤:女優です。
窪塚:短距離の陸上選手です。

Q. 自分の性格を一言で表すと?
長澤:マイペース。
窪塚:考えすぎ。

Q. 特技は?
長澤:バレエ、フルート、ピアノ。
窪塚:おしゃれ。

Q. 蒐集しているものは?
長澤:本。
窪塚:自分で撮った写真。

Q. 好きな映画は?
長澤:『ダンサーインザダーク』。
窪塚:今さらですが、最近『ジョーカー』の芝居に震えました。

Q. 最近ハマってることは?
長澤:歌うこと。
窪塚:勉強。

 

Profile _

右:長澤樹(ながさわ・いつき)
2005年10月24日生まれ、静岡県出身。2020年公開の豊田利晃監督作『破壊の日』で映画に初出演。CMに数多く出演し、東急ハーヴェストクラブ、CCCマーケティンググループブランドムービー、日本生命などがある。ドラマでは、「オレは死んじまったゼ!」(WOWOW)、時代劇「あきない世傳 金と銀」(NHKBS)に出演中。映画『光を追いかけて』(成田洋一監督)、『ハウ』(犬童一心監督)、『ちひろさん』(今泉力哉監督)などに出演する、注目の若手俳優。

左:窪塚愛流(くぼづか・あいる)
2003年10月3日生まれ、神奈川県出身。2018年の映画『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督)でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。映画では、『麻希のいる世界』(塩田明彦監督)、『少女は卒業しない』(中川駿監督)など、瑞々しくも躍動的な存在感を放ち、着実に出演作品を重ねている。2024年は初めて主演を務めた映画『ハピネス』(篠原哲雄監督)が公開される。

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Information

映画『愛のゆくえ』

2024年3月1日(金)より全国順次公開

出演:⻑澤 樹、窪塚愛流、林田麻里、兵頭功海、平田敦子、堀部圭亮、田中麗奈
監督/脚本/編集:宮嶋風花

映画『愛のゆくえ』オフィシャルサイト

Ⓒ吉本興業

  • Photography : Kenta Karima
  • Styling for Itsuki Nagasawa : Natsuki Takano(HITOME)
  • Hair&Make-up for Itsuki Nagasawa : Mai Kumagai(HITOME)
  • Styling for Airu Kubozuka : Kentaro Ueno(KEN OFFICE)
  • Hair&Make-up for Airu Kubozuka : Yae Nakayama
  • Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)