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桜田ひより – 視点を変えれば、道はつながる

Jul 11, 2025
世界が一変し、閉塞感に覆われた2020年を舞台に、それぞれの葛藤を抱えながらも前を向く若者たちの青春を描いた映画『この夏の星を見る』。
主演の桜田ひよりへのインタビューで、本作に込めた思い、役との向き合い方、そして芝居への情熱に迫った。

桜田ひより – 視点を変えれば、道はつながる

Jul 11, 2025 - FILM
世界が一変し、閉塞感に覆われた2020年を舞台に、それぞれの葛藤を抱えながらも前を向く若者たちの青春を描いた映画『この夏の星を見る』。
主演の桜田ひよりへのインタビューで、本作に込めた思い、役との向き合い方、そして芝居への情熱に迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前を向いて好きなことに夢中になっている姿はかっこいい

― 完成した作品をご覧になった、率直な感想を教えていただけますか?

とにかく感動したというのが最初の感想です。自分以外のパートの方々がどんなお芝居をされているのか、どんな映像が撮れているのか完成するまではわからなかったのですが、ひとつの作品としてつながった姿を観て、若い10代のパワー、そして夜空の美しさが心に響きました。

この作品ではコロナ禍がテーマとなっていますが、コロナに限らず人生で壁にぶつかったときに、少し角度を変えるだけで、道がつながって目的地にたどり着けることもある。目的地への軌道を変えたことで、より魅力的な景色が見られることもある。そこは誰もが共感していただけるポイントなのかなと思います。

― 劇中ではコロナ禍だからこそ得られた出会いが描かれていましたが、壁にぶつかったことさえ捉え方によっては無駄じゃなかったと思えるかもしれません。

困難な状況すらも楽しめると理想的ですよね。劇中でみんなが前を向いて好きなことに夢中になっている姿ってやっぱりかっこいいし、どの世代の方が観ても胸を打つだろうなと思いました。

― どんな状況でも人は前を向けるし、前を向いて踏み出すことで道は開けるんだなと改めて感じさせられる作品でした。桜田さんが演じた高校2年生・溪本亜紗と桜田さんは同年代ですよね。

同じ年齢で、同じコロナ禍を過ごしました。

― ご自身のコロナ禍の経験が演技に活きた部分はありましたか?

私の学校でも行事がなくなってしまったり、部活の大会がなくなってしまった方も周りにいたので、その頃の閉塞感や虚無感を思い出しました。

― あの頃は、撮影も一斉に止まってしまいましたよね。

そうですね。私もちょうど撮影中だったのですが、始まって1か月も経たずストップして、2か月くらい空いてしまいました。

― 当時はどういう思いで過ごしていましたか?

役のことを忘れないかがすごく不安でした。撮影中に2か月間も離れることはまずないので。

― 亜紗を演じる際に意識したことがあれば教えていただけますか?

亜紗はクラスに1人いたら絶対に楽しいし盛り上がるだろうなという子で。かといってただの盛り上げ役でなく、彼女が好きなことに向かうときの熱量や周りの人たちを突き動かす原動力を発信できたらいいなという思いでずっと向き合っていました。

― マスク着用でのお芝居は難しい部分もあったと思うんですけど、キャストそれぞれの個性あふれるマスク姿が印象的でした。

衣装合わせのときに、みんなフィッティングがありました。

― 亜紗のマスクは普通の白?

基本的にはそうです。

― 亜紗らしさを意識して選んだのでしょうか?

柄物も豊富にあったんですけど、監督と相談して、やっぱりシンプルな熱量が伝わったほうが良いということもありまして。でも実は、劇中でも何種類かマスクが変わっているんですよ。

 

役に寄り添って、見ている世界や視点を合わせていく

― 本作に限らず、普段からお芝居で意識していることがあればシェアしていただきたいです。

演じる役の理解度を深めることです。自分とはかけ離れた役が来ることもありますが、そういう場合はどうしても理解し難かったり、深く入れなかったりします。

でもその役にはどんな過去があって、どんな思考で、どんな感情が生まれているのかと寄り添っていくことで、見ている世界や視点を役と合わせることが重要なのではないかなと思っています。

― その考え方はお芝居に限らず、現実の社会でもすごく大切ですよね。他者の状況や事情に思いを巡らすことで、接し方も変わってくると思うので。桜田さんは役のことを深く知るために、どうやって想像しているんですか?

頭の中をすごく柔軟にさせます。否定から入ることはしたくないので。

― どうしても主観や固定観念が入って偏ってしまうので、なるべくそれを排除するために?

はい。自分が疑問に思ったことがあれば、なぜそれを疑問に思ったのか、自分自身とも対話しながらやっています。

― お芝居自体の楽しさ、おもしろさは感じていますか?

もちろんあります。それがなければ続けていないと思うので。

演じることももちろん楽しいですが、私は誰かと一緒にお芝居をして、自分が発したセリフで相手の方の反応が変わったり、吐き出すものが変わったり、そういう言葉や表情のキャッチボールがすごく好きなんです。

― 本作をどんな方に届けて、どんなことを感じ取ってほしいですか? 最後にメッセージをいただきたいです。

最初にもお話したようにコロナに限ったことではなくて、何か壁にぶつかったときにもちょっとした思考の変化でこんなにも道が広がるんだということを再確認できる映画になっていると思います。あのとき私たちと同じ経験をした中高生や、それを見守ってきた大人の方々、ぜひみんなの頑張りを見届けてほしいです。

― 夜のシーンが多いので、映画館だとプラネタリウムみたいな没入感もありそうですよね。

そうなんです。すごく綺麗なので、ぜひ映画館で観てください。

 

Profile _ 桜田ひより(さくらだ・ひより)
幼少期から役者として活動し、2014年にドラマ『明日、ママがいない』で注目される。主な出演作はドラマ『silent』、『あたりのキッチン!』、『あの子の子ども』、『相続探偵』など。映画『交換ウソ日記』では第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。映画は『バジーノイズ』、『ブルーピリオド』、『大きな玉ねぎの下で』に出演。7月4日公開の映画『この夏の星を見る』に主演。2026年初夏公開予定の映画『モブ子の恋』にW主演。
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dress ¥25,300 / eimy istoire (DOT ONE), ring on right middle finger ¥28,000・ring on left index finger ¥33,000 / SOLO, Other stylist’s own

 


 

Information

映画『この夏の星を見る』

2025年7月4日(金)公開

出演:桜田ひより、水沢林太郎、黒川想矢、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな、和田庵、萩原護、秋谷郁甫、増井湖々、安達木乃、蒼井旬、松井彩葉、中原果南、工藤遥、小林涼子、上川周作、河村花、朝倉あき、清水ミチコ、ビスケッティ佐竹、堀田茜、近藤芳正、岡部たかし
原作:辻村深月 『この夏の星を見る』(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:山元環
脚本:森野マッシュ
音楽:haruka nakamura
主題歌:「灯星」 haruka nakamura + suis from ヨルシカ (Polydor Records)

映画『この夏の星を見る』公式サイト

©2025 「この夏の星を見る」製作委員会

  • Photography : Yu Teramoto
  • Styling : Shingo Tsuno(impiger)
  • Hair&Make-up : Ayaka Sugai
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)