永遠に愛することができる進化し続けるテックウェア|ELIMINATOR バイヤー 野澤圭介
ELIMINATORバイヤー兼ショップチーフ。某老舗古着店バイヤーを経て2002年からELIMINATORへ。過去にはJOHN LAWRENCE SULLIVANブランド初期にアクセサリーデザインを担当、加えて自身のブランド ” KUBRICK ” を展開した経歴がある。UKファッションスタイルは勿論、多くのブランド、アイテムがもつ背景や製作意図だけでなく、音楽、アートなど幅広いカルチャーの知識を持つ。
■ 詳細
ELIMINATORのショップ情報はこちらから
公式HPはこちらから
Instagram:@eliminator_tokyo
テックウェアのファッション性が注目されるようになったきっかけはなんだと思いますか
野澤氏: <C.P. COMPANY(シーピー カンパニー)>や<STONE ISLAND(ストーンアイランド)>などを立ち上げたマッシモ・オスティが70年代後半以降に手がけたウェアなどが代表的ですが、機能を保持するアーバンウェアは数十年前から存在していました。それが「最先端機能を纏う」という新しい価値観として一般的に広まってきたのはここ数年だと思います。
突発的なブームのように思われがちですが、テックウェアそのものの歴史は70年代から続いているということですね
野澤氏:現在は機能面、デザイン面、コンセプト面において圧倒的に個性のある<ACRONYM(アクロニウム)>や<ARC’TERYX VEILANCE(アークテリクス ヴェイランス)>がトップランナーの代表格といえます。この両雄以外にも様々なブランドが独自のアイデアや機能を提案していることで全体的に底上げされ、選択肢が増加していることが注目度が高まっている大きな要因だと思います。
ELIMINATORで初めてテックウェアを手にする方は、どこに関心を持っていることが多いですか
野澤氏:入口としては「テクノロジーへの興味」や「インテリジェンスを感じさせるかっこよさ」などが多いと思います。それが一度でも着用することで、ゲリラ豪雨や異常な暑さなど不安定な気候にも順応するパフォーマンスの高さに魅了されていく。コロナ禍では「一度外に着ていったらすぐに洗いたい」、「アフターケアが容易なのが望ましい」などの心情変化にもフィットしたのがテックウェアです。多くの方がそうだと思いますが、同じような価格帯ならば機能などの付加価値のあるアイテムを選びたくなりますよね。
着用することで魅了されるということはELIMINATORでもリピーターが多いのでしょうか
野澤氏:もちろん多いです。ELIMINATORのセレクトしているラインナップに興味を持って訪れる海外の観光客もいます。「既視感の無いオリジナリティにあふれるデザイン」、「新しい機能による未体験の提案」など日常のみをサポートするライフウェアに留まることなく、ブランド側が示すのはファッション的なアプローチまで熟考されているテックウェアです。そのために一着で終了するのでは無く、さらに良いもの、ニーズを満たすものを追求したいという行為が生まれ、ループしていく。新しい価値観のアートが人の心を動かすように、新しい感覚のファッションも人の心を掴むと思っています。
ELIMINATORがテックウェアに注目するようになったきっかけはなんだったのでしょうか
野澤氏:ELIMINATORの創業は2000年ですが、UKのファッションスタイルの一つである「CASUALS」を根付かせたいという想いは当時から変わっていません。創業時から<adidas(アディダス)>や<umbro(アンブロ)>などのスポーツブランドやスポーティーなアイテムなどは主力商品として取り扱っていました。その後、2009年に<ARC’TERYX(アークテリクス)>の最上位レンジであるアーバンファッションラインの<ARC’TERYX VEILANCE>が立ち上がったことから取り扱いを開始し、その付近からテクニカルなウェアは増えていきました。さらに<ACRONYM>などもラインアップに加え、世界最高峰の機能を有するアーバンウエア群をセレクションする現在のラインナップになっています。
<ARC’TERYX VEILANCE>のどこに惹かれましたか
野澤氏:2009年はテックウェアがまだまだ世の中に浸透していない時代でしたが、<ARC’TERYX VEILANCE>には未来を感じました。<ARC’TERYX>はクライミングウェアを主力とするブランドなのでヘルメットを被った状態でも対応するフードや腕の可動域を妨げないアームホールなど若干オーバーサイズなんです。それをタフな環境にも順応するスペックはそのままに、ミニマルにスタイリッシュに仕上げたのが<ARC’TERYX VEILANCE>です。都会的でありながら本格的なテクノロジーを搭載したウェアであることから、お客様に機能的背景を正しく説明するためにも自分たちも最初はかなり勉強しました。
<ARC’TERYX VEILANCE>はまさに「既視感の無いウェア」だったと思いますがお店での反応は?
野澤氏:作りの丁寧さ、機能性の高さを伝えるとお客様の顔色は変わりましたね。「最先端機能を身に纏う事は新しいファッションの形の一つである」というELIMINATORの提案は、すぐに受け入れられたと思っています。第一印象では「こんなにもミニマルな化繊のウェアなのに、どうして高額なのか」と疑問を持つ方もいらっしゃいましたが、テクノロジーについて説明することで皆さん納得されます。
ELIMINATORがテックウェアをセレクトする際に大切にしているポイントは?
野澤氏:ELIMINATORでテックウェアを購入されているのはデザインや建築などクリエーションに携わっている方、ハイファッションに慣れ親しんだ方、自己表現に強いこだわりを持っている方たちです。だからこそ「本物」であることはセレクトするうえで最も大切しているポイントです。生地も縫製もすべての条件を満たしたものだけが本物のテックウェアだと
思っているので、ブランドの生産背景はとても重要視しています。ファッションとして注目度が高まっているからこそ「テックウェアっぽい」ではダメだと思います。
これからテックウェアはファッションとしてどう消費され進化していくと思いますか
野澤氏:メーカーやブランドの使命としてテクノロジーとしてはますます進化していくはずです。ファッションとしても「無視できない利便性」があり、研究レベルで製作される「追求が尽きない興味深い分野」であり、そして確実に進化することから「体験したことのないプロダクト」が誕生する可能性がかなり高いと思っています。なので一過性のブームのようなものではなく、テックウェアは一つのファッションスタイルとして必ず継続していくはずです。
- Photograph : Junto Tamai
- Writer : Akinori Mukaino