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あらためてクリエーションのルーツを探し求めた2026年秋冬コレクション|TAAKK 森川拓野

Feb 21, 2026
あまり記憶にないリアルレザーやファーという素材。<4℃ HOMME+(4℃オムプラス)>とのコラボレーションで生まれたブランド初となるジュエリーというプロダクト。何シーズンも見続けているQUI編集部にとってクリエーションに変化の兆しを感じた<TAAKK(ターク)>の2026年秋冬コレクション。デザイナーの森川拓野に何か心境の変化があったのか。コレクションを目にして思ったこと、感じたことをそのままぶつけてみた。

あらためてクリエーションのルーツを探し求めた2026年秋冬コレクション|TAAKK 森川拓野

Feb 21, 2026 - FASHION
あまり記憶にないリアルレザーやファーという素材。<4℃ HOMME+(4℃オムプラス)>とのコラボレーションで生まれたブランド初となるジュエリーというプロダクト。何シーズンも見続けているQUI編集部にとってクリエーションに変化の兆しを感じた<TAAKK(ターク)>の2026年秋冬コレクション。デザイナーの森川拓野に何か心境の変化があったのか。コレクションを目にして思ったこと、感じたことをそのままぶつけてみた。



自分が作りたい服の由来を探って辿り着いた「縄文模様」

—2026年の秋冬コレクションは「縄文模様」にフォーカスされていますが、森川さんの視点がそこに向かった理由はなんでしょうか。

森川:海外でコレクションを発表するときに感じるのは「日本らしさが宿る服」というのは受け入れてもらいやすいということです。日本特有のカルチャーからインスピレーションを得て、服のデザインやディテール、マテリアルに落とし込むというのが代表的な手法だと思いますが、自分がやってきた服作りはそういうことでもない。そんなことを考えているうちに自分が作りたい服の由来はどこなのかを見失ってしまいそうになったんです。それで自分が刺激を受けてきたクリエーションを洗い出していくうちに辿り着いたのが岡本太郎でした。

—岡本太郎といえば縄文土器の造形美をアートの視点で見出したことでも知られています。

森川:岡本太郎から縄文へとつながって、もしかしたら自分のクリエーションのルーツは「縄文」かもしれないと2026年の秋冬コレクションの着想源にしたんです。個人的に縄文土器の力強さには惹かれるものがありましたし、そこにフォーカスすれば自分の服作りの由来としても腑に落ちる気がしました。

—「縄文」というテーマは瞬間的に思い浮かぶとは思えませんでした。無意識だったとしても森川さんのなかにはクリエーションの源泉として存在していたんでしょうね。

森川:「日本らしさ」というものが求められたとしても誰にとってもわかりやすいカルチャーを落とし込んで服を作りたいという意識はなくて、自分が表現したいものを純粋に取り上げたいタイプなんです。だからブランドを始めた当初は<TAAKK>の服は属性が見えないからグルーピングしづらいとメディアからも言われていました。

—どこにも属さないというのはクリエーションとして褒め言葉のような気もします。

森川:芸術家だったらそうなのかもしれませんが、僕はあくまでもファッションデザイナーなので多くの人に共感されることも必要です。ファッションとしての属性や由来がわかりやすいことで安心して選んでくれる、着てくれる人もいるわけですから。時代が求めることは変わってきているかもしれませんが、僕がデザイナーになった14年前ぐらいは無属性というのは褒められることではなかったような気がします。

—無属性ってオリジナリティと訳すこともできると思います。

森川:もしかしたら属性が見えないというスタイルを続けてきたからこそ<TAAKK>だけの立ち位置を確保することができて、14年もブランドを続けることができたのかもしれないです。


縄文時代の文化度の高さをリアルレザーやファーで表現

—2026年の秋冬コレクションにはテープ刺繍やグラデーション素材など<TAAKK>のシグネチャーがふんだんに取り込まれていますが、素材のアプローチがいつもとは異なる印象でした。

森川:ファッション業界でリアルファーを使用することは悪のような風潮もありましたが、最近はハイブランドがファーを再び取り上げるようになっています。そうなると生産も過剰になって工場には大量のファーの残反が発生しているんです。動物愛護を叫んでいたと思ったら、廃棄されてしまうようなリアルファーを生み出している。その変わり身の早さに嫌気がさして<TAAKK>のファージャケットは工場に残されたいろいろな動物のファーをつなぎ合わせて作っています。見向きもされない残反が、こんなかっこいいジャケットになるんだぞって。

—サステナブルを意識したということでもないのでしょうか。

森川:サステナブルというつもりはなくて、ジャケットが大量生産できるぐらいリアルファーの残りが余っているというメッセージです。

—レザーアイテムも<TAAKK>のコレクションではあまり記憶にないです。

森川:ほとんどやったことはないですね。

—10年以上も続くブランドにあって、レザーに手を出さなかったのは何か理由があったのでしょうか。

森川:僕がレザーをやっても他のブランドと大きな差を生み出すことは難しいと思い続けていたからです。レザーには素材としての魅力はずっと感じていたのですが、それでも<TAAKK>らしいレザーアイテムというのをお客さんに明確に示す自信がありませんでした。


—このタイミングで発表したのは「自分でもレザーを巧みに扱える」という自信が生まれたからでしょうか。

森川:自信というとちょっと大袈裟ですけど(笑)。ずっとやり続けている刺繍をレザーでもやれるかもしれないって、それぐらいの感覚ですよ。レザーでも<TAAKK>らしいオリジナリティを落とし込む道筋が見えたという感じですね。

—縄文時代といえば狩猟の時代でもありますが、リアルなレザーもファーも狩猟からの発想でしょうか。

森川:生きるための糧として獣を狩るというのは野蛮な印象もあるかもしれませんが、僕は縄文時代というのはすごく文化度が高いと思っているんです。土器の造形美や繊細な柄を見てもそれがわかります。狩猟の成果として革や毛皮というのがあるので縄文というテーマとも関連はありますし、<TAAKK>としても素材を広げたいという思いもあったので取り上げていますが、それらの素材を縄文時代の人々は荒々しく纏っていたとは思えない。きっと成熟していたであろう縄文の文化度を現代のファッションで表現したらどうなるかという試みです。



ブランド初のコラボレーションは原始的なジュエリー

—今回のコレクションにおいて<TAAKK>として最も新しい試みといえるのが<4℃ HOMME+(4℃オムプラス)>とコラボレーションをしたシルバージュアリーです。

森川:「縄文」をテーマにすると同時に「primitive」という言葉が浮かんだんです。今回のコレクションは縄文模様だけではなく、アフリカの身体装飾の「スカリフィケーション」からもインスピレーションを受けていて、僕のなかに「primitiveこそ世界共通の美意識」という考えがありました。それできれいなカッティングを施すのではなく、原石そのままのジュエリーを思いついたんです。


—ジュエリーは今シーズンだけの取り組みですか。

森川:それが制作してみると面白すぎたので続けたいなと(笑)。

—協業にあたって<4℃ HOMME+>と手を組んだのはどういう理由からですか。

森川:「primitive」をコンセプトにしたジュエリーをやりたいと声をかけたら、最初に面白がってくれたのが<4℃ HOMME+>でした。しかも歴史あるジュエリーメーカーなので独自技術も工房のクオリティも高くて、僕がやりたい表現が実現できると確信できました。老舗だけあって懐も深くて、本当に自由にやらせてもらうことができました。



—<TAAKK>のコレクションは長年見続けているつもりですが、素材もアイテムも大きな変化を感じたのが今シーズンでした。

森川:常に新しい表現を模索したいという想いは持っていますよ。

—2026年秋冬はクリエーションの領域を広げることができたという手応えはありますか。

森川:新しいことに挑戦したいと思っても人間の発想力には限界もありますから劇的に変えていくことは難しいというのが現実です。確かにジュエリーなどは初めてのプロダクトですし、レザーもファーも扱ってこなかった素材ではありますが、それでも同じようなことをやっているというのが自分の感想です。

—<TAAKK>らしさはありながら、これまでにはないアプローチが多かったのでその感想は意外でした。

森川:全く何も手応えがないというわけではなくて、グラデーション素材は化繊も使用していますが、これまで以上にナチュラルな表情に仕上がったと思っています。これは僕にとってはすごく新しいことですが、世の中にとってはわかりにくいことでしょうね(笑)。

—最後の質問ですが、<4℃>は「匿名宝飾店」という本質を問う取り組みが話題になりました。森川さんは本質を見極める審美眼をどうやって養っていますか。

森川:僕の服作りは<ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)>で学んだことを愚直にやり続けているだけです。デザイナーを続けることで審美眼が養われているのかどうかはわからないですが、モノづくりにおいては柔軟で寛容であり続けたいです。その意識はクリエイティブに対して何もかもOKを出してくれた<4℃ HOMME+>との取り組みによってますます強まったと思っています。



TAAKK 2026AW COLLECTION RUNWAY はこちら

  • Back Stage Photograph : Ko Tsuchiya
  • Installation Photograph : Kaito Chiba
  • Text : Akinori Mukaino
  • Edit : Yusuke Soejima(QUI)

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