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阪急メンズ東京GARAGE D.EDITバイヤーが審査で感じたジャパンブランドの魅力|TOKYO FASHION AWARD 2026

Feb 20, 2026
東京の旬なファッションブランドを選定表彰し、海外での展開もサポートする「TOKYO FASHION AWARD」。その2026年度の審査員を務めた一人が阪急メンズ東京6階の「GARAGE D.EDIT(ガラージュD.エディット)」のバイヤー日比野智之。審査ではジャパンブランドならではの心意気や姿勢を重視したという日比野に、コンテストの意義や選出の過程について聞いた。

阪急メンズ東京GARAGE D.EDITバイヤーが審査で感じたジャパンブランドの魅力|TOKYO FASHION AWARD 2026

Feb 20, 2026 - FASHION
東京の旬なファッションブランドを選定表彰し、海外での展開もサポートする「TOKYO FASHION AWARD」。その2026年度の審査員を務めた一人が阪急メンズ東京6階の「GARAGE D.EDIT(ガラージュD.エディット)」のバイヤー日比野智之。審査ではジャパンブランドならではの心意気や姿勢を重視したという日比野に、コンテストの意義や選出の過程について聞いた。

TOKYO FASHION AWARD


世界をフィールドに活躍するポテンシャルの高い東京の旬なファッションブランドを選定表彰し、海外での展開をサポートする新しい形のファッションアワード。受賞8デザイナーへの支援として、パリファッション・ウィーク期間中に本事業単独のショールーム「showroom.tokyo」を開設。世界の有力なバイヤーとのビジネスマッチングの機会を設け、国内外でのビジネス拡大を目指す。

 

—日本でもファッションアワードやプライズなどが創設されるようになってきましたが、そのようなコンテストの意義をどう考えていますか。

日比野:コンテストは日本の才能あるブランドが世界での活躍を目指す際のサポートとなり得るものと捉えています。日本の多様なカルチャーから生まれるクリエーションと、世界が認めるクオリティの高い地場産業が織りなすジャパンブランドを支援していくことは、日本のアパレル業界を明るくすることにもつながるはずです。ブランドそのものを立ち上げることは難しくはない時代なので、才能があるにも関わらず日の目を見ない可能性もあるわけで、それを埋没させずに発掘したり、もしくは再評価するのもアワードやプライズのひとつの意義のような気がしています。

—新しいブランドがどんどん増えると、ブランドのモノづくりの本気度を服を選ぶ側としても見極めるのが難しくなります。

日比野:オンライン化が浸透している今のファッションシーンにおいては何かきっかけでもない限り、服の細部にまで込められた想いに触れることは難しくなっていると思います。だからこそ、自分も審査員として「いいブランドとはなにか」と本質的な価値から今の時代に求められる価値までを見極めなければならないという責任感はありました。

—受賞ブランドには主催者から海外でのショーなどのサポートもありますが、応募してくるのはやはり世界を見据えているブランドが多いのでしょうか。

日比野:技術でも感性的なことでもジャパンブランドだからこその魅力を世界に発信したいと考えているデザイナーは多いと思います。

—審査をするにあたって心構えのようなものはありましたか。

日比野:僕は他の審査員の方々に比べて業界歴も浅く、バイヤーとしての経験値もまだまだ未熟だと思っていますが、店頭に立ち続けていることでどのようなファッションが求められているか、お客さんと対峙して直接声を聞いたりしているので潜在的なニーズまで感じ取れることも多い。なので、そういったリアルな視点を活かしたいとは思っていました。

—日比野さんとしては審査ではなにを重要視しましたか。

日比野:何のために作ったのかというデザイナーが描くストーリー性や服作りの過程における創造力、付加価値となりえる要素を見出せるかどうかなど、審査という厳正なものでありながらブランドの発信する「想い」という少し抽象的なところに注目していました。実際のプレゼンテーションでは自分たちが洋服を作ることで消費者に喜んでもらうことだけでなく、未来のために継承すべき観点や、職人さんと工場へ還元する意識までを自分たちの価値や魅力としているブランドもありました。

—「想い」というのは審査において数値化も言語化も難しいところですね。

日比野:本当にそうなんです(笑)。ですがちゃんとモノづくりと向き合っているブランドは想いがあり、過程や背景まで見えてくる。受賞ブランドは僕一人の意見で決まるものではないですが、ストーリーを語ることができるブランドを見逃さず、世に出ていくお手伝いができたらいいなというのは審査をしながらずっと考えていたことです。

「今回はエントリーブランドのクリエーションのレベルが高い」という声があちこちから挙がったという「TOKYO FASHION AWARD 2026」。選出ブランドの<ANTHEM A(アンセムエー)>、<Kiminori Morishita(キミノリ モリシタ)>、<Kotohayokozawa(コトハヨコザワ)>、<MATSUFUJI(マツフジ)>を日比野はどう見たのか。3つの質問を投げかけた。

<ANTHEM A>

Brand profile

2021年秋冬にローンチし、メンズ・ウィメンズを展開。無骨で機能的なミリタリーの要素やテーラリングの技巧と、センシュアルなムード、エレガントなシルエットなど、対極性が交差し、調和する独特な「ミクスチャースタイル」が特徴。まとう人の自由を尊重し、個性を引き出し、讃える「アンセム」でありたいと願い、職人との親密な関係を尊重し、日本の伝統や技術、雇用を守り、長く継承できるものづくりのあり方を目指している。

Q1.どこにブランドの魅力を感じましたか。

日比野:色調や素材の質感はフェミニンですが、それをミリタリーやテーラードなどメンズライクな要素と融合させるのがとても上手なブランドという印象です。それが独特の色気につながっています。デザイナーのご両親が東京で縫製工場を営んでいたり、<ANTHEM A>以外にも外部の生産企画やOEMを行うなど、ルーツや経験値がデザインの幅の広さや落とし込む上手さに活かされていると感じます。

Q2.どういう服好きにおすすめしたいですか。

日比野:デザインがジェンダーレスなので性別も世代も問わず、着る人を選ばないのが<ANTHEM A>です。これまでのジェンダーレスはデザインをシンプルにしたり、サイズの概念を排除することで成立させていたことが多かったのですが、現代のスタイルやムードをファッションとして捉えながらメンズ、ウィメンズの対照的な要素を取り入れているところはブランドの個性として支持されるポイントだと思います。

Q3.今後、東京のファッションシーンでどういう役割を期待していますか。

日比野:製品開発や<ANTHEM A>としての哲学を発信するために工場や職人の存在が不可欠という意識が強く、その価値を再認識・重視しているブランドで、日本のファッション業界が発展していくうえで最も重要なマインドを持っていると思います。エシカルでありながらモードな表現に挑戦しているので、そこを貫いていってほしいです。

<Kiminori Morishita>

Designer profile

森下公則 Kiminori Morishita
広島県出身。アパレルメーカーにてチーフデザイナーとして数々のブランドを手がけ、2003年春夏シーズンより<kiminori morishita>をスタート。2007年からパリファッションウィーク、オフィシャルスケジュールにてランウェイショーを発表。世界約20カ国、70店舗にてコレクションを販売。本格的なメンズ仕様でありながら、ウィメンズとしても着用できるオールジェンダー視点も兼ね備えたコレクションが展開されている。

Q1.どこにブランドの魅力を感じましたか。

日比野:新しい服でありながら、時を超えてきたような経年の美しさと深みがあるのが魅力だと思います。土臭いかっこよさのなかに繊細さと色気があり、また素材や加工にこだわりながらハンドメイドを駆使してモチーフや装飾まで表現するという、ここまでクラフトマンシップを肌で感じるブランドは稀有だと思います。

Q2.どういう服好きにおすすめしたいですか。

日比野:<Kiminori Morishita>が好みかどうかに関わらず、服好きには一度は触れてほしいというのが願いです。人の手が加わらないと決して生まれない、さらには今後、服に落とし込むことができなくなるかもしれない技術が詰まっているというロマンがあり、きっとファッションに対する価値観を広げてくれると思います。

Q3.今後、東京のファッションシーンでどういう役割を期待していますか。

日比野:世の中に多くのブランドが誕生していますが、それに合わせてファッションに強く関心を持った人も増えていると言われるとどうでしょうか。おしゃれに興味を持つ人は増えていますが、濃度は昔よりも薄まっている感覚です。<Kiminori Morishita>のようなブランドに触れることで、日本のファッション業界の濃度が高くなっていくかもしれない。そんな役割を期待しています。

<Kotohayokozawa>

Brand profile

2015年にファーストコレクションを発表。日常でふと湧き上がる感情や出来事から着想を得て、「普段の自分以上に、自分を広げてくれる装い」を目指し、身につける人の感情と振る舞いのつながりを追い続けている。デザイナー自身のクリエーションを凝縮したメインライン。

Q1.どこにブランドの魅力を感じましたか。

日比野:2026年秋冬から本格的にユニセックスラインを展開することになり、メンズ部門にエントリーしてきたのが<Kotohayokozawa>です。デザイナーは日常の出来事からインスピレーションを得ることが多いこともあり、個性的に見えるのですが日常着として馴染みやすいのが特徴です。僕も試着したことはありますが着心地もいいですし、コーディネートにも取り入れやすいという印象です。

Q2.どういう服好きにおすすめしたいですか。

日比野:プリーツやグラフィカルな色彩はメンズにはあまり見られないので、ファッションに常に新鮮さを求める方にぜひ楽しんでもらいたいブランドです。自分のファッションは確立されていたとしても、<Kotohayokozawa>を着こなしに取り入れることでいつもの自分とは少しだけ違うスタイリングを完成させることができるはずです。

Q3.今後、東京のファッションシーンでどういう役割を期待していますか。

日比野:ウィメンズブランドとして10年のキャリアがあるので、新たにメンズのアプローチに挑むということには期待しかありません。自分が作りたい服、着たい服を作ってきたこれまでとは違って、ウィメンズからメンズへ挑戦する姿勢や活動、芯を持ちながらも多くの人に共感してもらうためのモノづくりは、他のブランドにとっても勇気を与えるものになると思います。

<MATSUFUJI>

Brand profile

権威と労働にひもづく衣服をヒントに、現代の技術と伝統的なクラフトを日常から受けたインスピレーションと組み合わせ、ファッションの視点から構築。「個人の特有性を認識できる衣服」をコンセプトにしている。

Q1.どこにブランドの魅力を感じましたか。

日比野:<MATSUFUJI>といえば上質なベーシックウェアです。ハイクオリティな素材を使用しているのですが、それを単にきれいに仕立てるわけではなくワークやモダンな要素をさりげなく忍ばせていて、そのバランス感が秀逸です。デザインとしても削ぎ落としているのですが、服としての存在感もしっかりと際立つブランドです。

Q2.どういう服好きにおすすめしたいですか。

日比野:「上質なベーシックウェア」を掲げているブランドなので、ワードローブに一着はほしいと思える服が揃っています。見た目は普通のようでも作りが丁寧で、上質感を漂わせる服がワードローブとして残り続けていきますし、服好きはそこのラインナップを充実させたいはずです。そのときにこそ<MATSUFUJI>という選択があると思っています。

Q3.今後、東京のファッションシーンでどういう役割を期待していますか。

日比野:<MATSUFUJI>は老舗の生地工場と一緒にオリジナルテキスタイルなども開発しているブランドです。縫製のクオリティも高く、職人への強いリスペクトを感じるので日本の地場産業と共創していくというスタイルはずっと続けてもらいたいです。ファッションとしてのわかりやすい派手さは少ないですが、モノづくりへの真剣さを応援していきたいです。

—今回の受賞ブランドについては2026年3月に阪急メンズ東京でポップアップが開催されます。お客さんにはどこに注目してほしいですか。

日比野:受賞ブランドが一堂に揃う機会は少ないと思いますし、ストーリーとして価値を帯びた四者四様のプロダクトに触れてほしいです。イベント限定商品の販売やデザイナーと直接接点を持てる機会も作りたいと思っていますので、ぜひ足を運んでいただけるとうれしいです。

 


TOKYO FASHION AWARD × Hankyu Men’s TOKYO 2026SS

メンズ部門の受賞4ブランドが一堂に揃うポップアップを開催。イベント限定商品の販売の他、デザイナーと直接接点を持てる機会も用意されている。

□2026年3月25日(水) ~3月31日(火)
□阪急メンズ東京1F メインベース
東京都千代田区有楽町2丁目5ー1
03₋6252₋1381(代表)
平日:12:00〜20:00・土日祝:11:00〜20:00
※最終火曜日19:00閉場

  • Edit : Shun Okabe(QUI)
  • TEXT : Akinori Mukaino (BARK in STYLE)

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