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FASHION

若くしてブランドビジネスに踏み出す - FDATから生まれた3ブランド

Feb 18, 2026
ファッションブランドも、若くして第一線に上り詰めることが可能になっている。モノづくりにおいてもビジネスにおいても、SNSやYouTubeの普及による情報収集や発信の容易さ、教育の進化など、あらゆる変化が追い風になっている。条件が整っているのであれば、夢のスタート地点に立つのは早ければ早いほうがいいだろう。そのために東京都は若いデザイナーたちのブランド立ち上げ支援を行い、この新たな道から着実にブランドが立ち上がっている。本企画では、東京都支援プログラム「FDAT」から生まれた3ブランドのデザイナーに話を聞いた。

若くしてブランドビジネスに踏み出す - FDATから生まれた3ブランド

Feb 18, 2026 - FASHION
ファッションブランドも、若くして第一線に上り詰めることが可能になっている。モノづくりにおいてもビジネスにおいても、SNSやYouTubeの普及による情報収集や発信の容易さ、教育の進化など、あらゆる変化が追い風になっている。条件が整っているのであれば、夢のスタート地点に立つのは早ければ早いほうがいいだろう。そのために東京都は若いデザイナーたちのブランド立ち上げ支援を行い、この新たな道から着実にブランドが立ち上がっている。本企画では、東京都支援プログラム「FDAT」から生まれた3ブランドのデザイナーに話を聞いた。

東京都が支援するファッションプログラム

「Next Fashion Designer of Tokyo」と「Sustainable Fashion Design Award」という東京都が主催しているふたつのコンクール。このコンクールの受賞者には「Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT)」というブランド立ち上げに向けたカリキュラムを受けることができる。コンクールの審査だけでなく、カリキュラムの講師にも第一線で活躍する現役デザイナーが名を連ねているためファッションブランドビジネスやモノづくりにおけるリアルな教育やアドバイスを受けることが可能となっている。

2種のコンクール

Next Fashion Designer of Tokyo:https://nfdt.metro.tokyo.lg.jp/
Sustainable Fashion Design Award:https://sfda.metro.tokyo.lg.jp/

アクセラレートプログラム

Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT):https://fdat.metro.tokyo.lg.jp/

<KANEI(カネイ)>デザイナー 山岡寛泳(やまおかかんえい)

—自分のファッションブランドを立ち上げようと思ったのは何かきっかけがあったのでしょうか。

山岡:僕は高校生のときにアートピースとしての鯉のぼりのブランドを立ち上げているんです。これまでの鯉のぼりのイメージを一新するようなデザインを目指して最初は自分で手染めをしていたのですが、京都の染色工場とも一緒に仕事をするようになり、その工場がコレクションブランドとも関わりがあったことで、さまざまなブランドのオリジナルテキスタイルに触れることができたんです。そこからテキスタイルへの興味が一気に深まりました。

—テキスタイルへの関心がファッションへの入口だったんですね。

山岡:テキスタイルだけではなく職人と一緒に仕事をすることで学んだクラフトマンシップにも感化されて本格的に服作りを学びたいという気持ちが強くなり、文化服装学院に進学しました。

—文化服装学院に進学したことでファッションブランドの立ち上げに本気になったのでしょうか。

山岡:服をやりたい、ブランドをやりたいというのはずっと思っていたことです。鯉のぼりのアートピースもテキスタイルで作品を作るという意味で服作りの予行練習のような感覚でした。

—文化服装学院を卒業したらすぐに自分のブランドをスタートさせたいという考えだったのでしょうか。

山岡:そこまで急いで立ち上げようとは思っていなかったです。そもそもブランドをやるためには何をしなければいけないのかもよくわかっていなかったので。ただ、2024年に東京都が主催するファッションコンクールの「Next Fashion Designer of Tokyo」で受賞したことで「FDAT」の支援を受けることができ、それがブランドを立ち上げる後押しになったと思っています。

—<KANEI>のブランドコンセプトを教えてもらえますか。

山岡:一着の服を完成させるための様々な工程も旅だと思っていますし、現代を旅する人のための服作りを目指しているので「旅人のコンパスとなる服」をコンセプトにしています。僕は理屈ではなく直感で「素晴らしい」と思えるようなプロダクトを生み出したいんです。だからこそモノづくりの本質を追求するような旅をし続けたいという想いも込めています。

—<KANEI>を最も象徴するようなアイテムといえばなんでしょうか。

山岡:現時点でのシグネチャーといえばファーストコレクションで発表した刺子織のジャケットです。たくさんのワッペンは旅先で出会ったものたちをイメージしています。

—ブランドとしての未来の展望をどのように考えていますか。

山岡:やはり海外には積極的に出ていきたいです。2026年の1月には東京都の支援によりパリのショーを開催することができました。ショーの演出は<ANREALAGE(アンリアレイジ)>の森永さんからアドバイスをいただきました。

—森永さんのアドバイスで印象に残っていることはありますか。

山岡:森永さんからは「プロダクトとしての完成度は十分だから、よりコンセプチュアルな作品的なアプローチも見てみたい」と言われました。枠を超えた世界観を生み出そうとする積極的な姿勢を支持してくれる方もいるはずだと、森永さんが背中を押してくれたので、パリのショーでは初めて高額なショーピースにも挑戦しました。森永さんは「Next Fashion Designer of Tokyo」の審査員をやられているので<KANEI>のことをずっと見続けてくれているんです。あとは「FDAT」のカリキュラムで<NONTOKYO(ノントーキョー)>の中川瞬さんからはモノづくり、ビジネスの両面でアドバイスをいただき、「作るだけではダメで、届けることも考えろ」と強く言われました。

—バイヤーへのアプローチ、プレゼンテーションも重要ということですね。

山岡:僕も服を作って終わりにはしたくはないので、全国のセレクトショップに営業するようにしています。ときには飛び込みのようなことも。それで取り扱いがスタートしたショップもあるのでブランドの認知度を高めるためにも服づくり以外も精力的でありたいと思っています。


KANEI(カネイ)
コンセプトは「旅人のコンパスとなる服」。旅を通じて出会う文化や色、素材、職人の手仕事を取り入れ、伝統とクラフトマンシップが織りなす服を展開。挑戦を続ける現代の旅人のコンパスの役割を担う服づくりを目指す。

公式サイト:https://kanei.tokyo/
Instagram:@kanei_design

<Q+FLOW(キューフロウ)>デザイナー 末永るみえ(すえながるみえ)

—<Q+FLOW>の立ち上げまでの経緯を教えてもらえますか。

末永:私はセントラル・セント・マーチンズとロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでファッションを学び、帰国後に東京都が主催する「Sustainable Fashion Design Award」で大賞を受賞することができました。コンクールに応募した時点から自分でブランドをやっていきたい思いは持っていましたが、受賞をしたことで「FDAT」のブランド立ち上げの支援を受けることができ、<Q+FLOW>がより現実的なものとなりました。

—ファッションに興味を持ったきっかけなどはありますか。

末永:高校生のときにロシアのレオン・バクストの衣装デザインを国立新美術館で目にして「ファッションの創造性ってなんて素晴らしいんだろう」って大きな衝撃を受けたんです。ファッションの世界に進もうと決意したのはそのときです。

—ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションはバック&アクセサリー科ですよね。最初は服のデザインに惹かれたとして、そこからバッグやアクセサリーに方向転換したのはなぜでしょうか。

末永:英国で学んでいるときに自分のデザインはプロダクト向きのように感じたのが理由のひとつです。あとは周囲は全員がファッションデザイナーを志しているのでクリエイティビティを競い合うのですが、お互いを高め合うというよりも自己満足をぶつけ合うような感じで少し疲れてしまったんです。それでセントラル・セント・マーチンズでの1年間のファンデーションコース後にロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのバッグ&アクセサリー科に進みました。

—東京都の「Sustainable Fashion Design Award」のことはロンドン時代から知っていたんですか。

末永:知りませんでした。ただ、卒業後は帰国して日本でブランドをやりたいと思っていたので、その道を切り拓くきっかけになりそうなコンクールやアワードなどはチェックしていました。

—<Q+FLOW>の立ち上げはいつですか。

末永:2025年の3月です。2025AWがファーストコレクションになります。

—ブランドのコンセプトを教えてもらえますか。

末永:<Q+FLOW>の「Q」は「Question」と「Quest」を意味していて、「FLOW」は「大きな流れ」です。ブランド名には「世の中の流れのなかで自問自答をしながら自分のクリエーションの存在意義を探求したい」という思いを込めています。先ほどの話にもつながるのですがブランドをやっていくなら表現を自己満足で終わらせたくないんです。たくさんの人に持ってもらえる、使ってもらえる、喜んでもらえるものを生み出していきたいと思っています。

—プロダクトはどれもデザインやフォルムが印象的です。

末永:たくさんのブランドがあるなかで埋もれないような独自性にはこだわりました。「メイドインジャパン」というのも掲げていて、バッグは国産の牛革ですし、縫製も国内で行っています。赤、青、黒の3色展開ですが、それは「東京の夜」をテーマにしていて都会の夜景やネオンカラーをイメージしています。

—シンプルなようで個性的で存在感もあります。

末永:私自身がシンプルなデザインが好きなのでシャープさを追求したのですが、同時に女性らしさも表現したかったんです。その結果、曲線を多用したようなフォルムに辿り着きました。「Sustainable Fashion Design Award」の審査員には<Children of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)の志鎌英明さんがいらしたのですが、「デザインの引き算ができている」と言ってくださって「引き算」というのはまさに私が目指していたデザインの方向性だったのですごくうれしかったです。

—現在の主な販路は?

末永:ポップアップがメインで大阪では阪急うめだ、東京では東急プラザで期間限定で取り扱ってもらいました。あとオンラインストアがようやくスタートしました。

—ブランドとしての未来の展望をどのように考えていますか。

末永:<Q+FLOW>はバッグとアクセサリーのブランドなので、様々な業種のクリエーションと融合しやすいのではと個人的には思っています。なのでコラボレーションは積極的にやっていきたという考えは持っています。そうやって自分の発想を広げたり、新しいデザインを開拓していきたいです。


Q+FLOW(キューフロウ)
「人生を川の流れに例え、一生の中でどのような事に価値を見出し、何に苦しみ、何を楽しむのか、何を為すべきかを常に自問自答し続け(Self-Questioning)、大きな流れ(Flow)の中で変化し葛藤しながらもそれを糧に成長していく」というデザイナーの信条をアイテムに落とし込む。幅広い年代を対象にしたジェンダーレスでアクセシブルなプロダクトを展開。

Instagram:@qplusflow

<ŌNAMENT (オーナメント)>デザイナー 岩間夢々(いわまむむ)・赤塩葉月(あかしおはづき)

—<ŌNAMENT>のスタートは2025年の3月ですよね。

赤塩:私と岩間は文化服装学院の同級生で、今はこうして一緒にブランドをやっていますが特別に仲が良かったというわけでもないんです。卒業後はそれぞれ就職したのですが、再会することがあって「またファッションをやりたいね」って話になったんです。

左:赤塩葉月(あかしおはづき)、右:岩間夢々(いわまむむ)

—文化服装学院を選んだということはお二人ともファッションをやりたい思いはあったんですよね。

岩間:もちろんありました。二人とも就職もアパレル関係ではありましたが、再会したときに「コンテストに一緒に応募しよう」となったんです。仕事をしながら応募作品を制作するのは大変ですが、一人ではなくチームでやればできると思ったんです。それで応募したのが「Sustainable Fashion Design Award」でした。

—コンテストに応募した時点でブランドを立ち上げることも見据えていたのでしょうか。

岩間:それは全く頭にありませんでした。

赤塩:私もそうです。

—「Sustainable Fashion Design Award」で受賞したことで「FDAT」のサポートもあったと思いますが、そこで<ŌNAMENT>をやろうという気持ちになったのでしょうか。

岩間:「FDAT」の支援の一環で開催される合同展示会に参加させてもらうことになったんです。展示会となるとブランドも必要になってくるので「二人でブランドをやっていく」という気持ちが固まりました。

赤塩:「FDAT」のカリキュラムでは<NONTOKYO>の中川瞬さんが講師を務めた「ビジネスとしてやっていくには」、「モノづくりと向き合うには」という講義もありました。「FDAT」もブランドとしてやっていくためのサポートをするということだったので、それが後押しになりました。

—<ŌNAMENT>のコンセプトを教えてもらえますか。

赤塩:「日々変化する女性らしさの探求」がブランドのコンセプトです。女性は気分の浮き沈みも激しいと思うので、気持ちがふさぎ込みがちのときでも寄り添ってくれるような服を提案したいと思っています。なので「日常とフェミニンの融合」がクリエーションのキーワードです。

—<ŌNAMENT>を女性の日常に欠かせない存在にしたい?

赤塩:クローゼットにあるのがひとつのブランドだけというのは現実的にはあり得ないと思うんです。なので<ŌNAMENT>を毎日着てもらうことは難しいですが、クローゼットには常に存在するブランドであってほしい。<ŌNAMENT>というブランド名も「その時々の女性の気分に寄り添って、女性を飾り立ててくれる服」という思いを込めています。

—どんな気分のときに<ŌNAMENT>を選んで欲しいですか。

赤塩:ファーストコレクションの2025年秋冬でいえば「アウターを脱いで誰かに見せたくなるような服」というのが私自身の気分ではありました。なので外出するときに「今日はアウターを脱ぐこともあるからインナーは<ŌNAMENT>」と選んでもらいたいとコレクションに取り組みました。

—これからもお二人のその時の気分がコレクションに反映されるのでしょうか。

岩間:そうなると思います。ファーストコレクションは「瞬間の美」というテーマがあり、イメージは彫刻です。ドレープなども着ることで美しさが引き立つことはもちろんですが、立ち止まっている姿でも美しくあることを意識しました。今はとにかく夏が暑すぎます。だからどんなシチュエーションでもリラックスできるような服を私たちが欲していて、そんな気分が26年春夏コレクションに反映されています。

—ブランドとして大切にしていることはありますか。

赤塩:女性らしさですね。人によって捉え方はさまざまですが、私たちが思う女性らしさというものは表現の核として大切にしていきたいです。ですが私たちの考えだけを一方的に押し付けるのではなくて、お客様と一緒に女性らしさを探求できたらいいなと思っています。

—現時点での<ŌNAMENT>のシグネチャーを挙げるとしたら。

赤塩:アイテムというよりはディテールになりますが、今日穿いているパンツにも施しているスモッキングの技法です。ベーシックなアイテムでもアイコニックな存在にしたいので、Tシャツの襟元などにも採用しています。

—これから<ŌNAMENT>をどのようなブランドに育てていきたいなどの展望はありますか。

赤塩:ファッションは流行の服を何着も揃えるというよりも、自分にとって大切な一着を選ぶという時代になっている気がするんです。ブランドのストーリーや作り手のバックグラウンドも重要視されているので、私たちも<ŌNAMENT>の服作りへの想いをきちんと前面に押し出して、お客様に届けていきたいと思っています。

—目標としているような海外のブランドはありますか。

岩間:今はまだそういうことを言えるような段階ではないですね。いずれは追いつきたい、追い越したいというブランドも出てくるとは思いますが。

—ショーなども積極的にやっていきたいですか。

赤塩:やっていきたいですが、まずはセールスや認知度のアップであったり、バイヤーやスタイリストへのアプローチだったり、やるべきことがたくさんあります。

—2026年の1月には東京都の支援によりパリでショーを開催されましたね。

岩間:展示会もそうでしたがショーをやらせてもらえる機会もなかなかないので、本当にサポートに感謝しています。

赤塩:「FDAT」では「何事も続けていくこと」の大切さを教えてもらったと思っています。ブランドも服を作っているだけではお客様には届かない、ビジネスとして成立させなければ続けていくこともできない。では、どうすれば続けていくことができるのかを考えるというのをいちばん学ばせてもらったと思っています。


ŌNAMENT (オーナメント)
コンセプトは「日々変化する女性らしさの探求」。“女性一人一人の美しさとは毎日少しずつ変化している”という考えを軸に、日々洗練されていく女性たちの美しさをさらに引き立たせるファッションを提案し、共に新鮮な美を追求し続けることを目的としている。

Instagram:@onament_official

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  • Edit : Shun Okabe(QUI)
  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • Photograph : Kaito Chiba

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