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FDATとともに切り拓くファッションブランドビジネスへの道

Feb 18, 2026
世界で活躍するファッションデザイナー育成のために東京都が令和4年から始動させた「Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT)」。ブランドビジネスについて学べる専門的な講義の講師にも、「FDAT」へとつながるコンクールの審査員にもファッション業界の第一線で活躍するデザイナーやディレクターが名を連ねている。「本気度が高く、野心を持つ若い才能にエントリーしてほしい」と声を揃える東京都の事業推進担当課長の左古将典さんと総合ディレクターの山地保さんに「FDAT」の役割、使命、展望ついて話を聞いた。

FDATとともに切り拓くファッションブランドビジネスへの道

Feb 18, 2026 - FASHION
世界で活躍するファッションデザイナー育成のために東京都が令和4年から始動させた「Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT)」。ブランドビジネスについて学べる専門的な講義の講師にも、「FDAT」へとつながるコンクールの審査員にもファッション業界の第一線で活躍するデザイナーやディレクターが名を連ねている。「本気度が高く、野心を持つ若い才能にエントリーしてほしい」と声を揃える東京都の事業推進担当課長の左古将典さんと総合ディレクターの山地保さんに「FDAT」の役割、使命、展望ついて話を聞いた。

東京都が支援するファッションプログラム

「Next Fashion Designer of Tokyo」と「Sustainable Fashion Design Award」という東京都が主催しているふたつのコンクール。このコンクールの受賞者には「Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT)」というブランド立ち上げに向けたカリキュラムを受けることができる。コンクールの審査だけでなく、カリキュラムの講師にも第一線で活躍する現役デザイナーが名を連ねているためファッションブランドビジネスやモノづくりにおけるリアルな教育やアドバイスを受けることが可能となっている。

2種のコンクール

Next Fashion Designer of Tokyo:https://nfdt.metro.tokyo.lg.jp/
Sustainable Fashion Design Award:https://sfda.metro.tokyo.lg.jp/

アクセラレートプログラム

Fashion Designers Accelerator Tokyo(FDAT):https://fdat.metro.tokyo.lg.jp/

「FDAT」で受講できるブランドビジネスを学ぶ10講座

—「FDAT」が支援の対象者としているのはどのようなブランド、デザイナーでしょうか。

左古:ひとつがこれからブランドを立ち上げたいと考えている「Next Fashion Designer of Tokyo」もしくは「Sustainable Fashion Design Award」の受賞者。もうひとつがすでにブランドを立ち上げているがまだビジネスの規模が小さい新進ブランドです。

—受賞者に対する支援というのは基本的にブランドを立ち上げることを前提としているのでしょうか。

左古:基本的にはそうです。カリキュラムの最後には合同展示会を開催するので、そこに向けて1年間、ブランドビジネスについて学ぶことができるプログラムを用意しています。

山地:「Next Fashion Designer of Tokyo」または「Sustainable Fashion Design Award」の受賞者のなかにはアパレルに就職したり留学されている方もいるので、全ての人がカリキュラム後に独立をするわけではないですが、ブランドの立ち上げに向けて展示会を目指しましょうというスタンスです。展示会の翌年にはパリでの作品発表の機会も用意されています。

—そもそも東京都が「FDAT」を立ち上げたのはどういう目的からだったのでしょうか。

左古:文化学園と共催していた「TOKYO新人デザイナーファッション大賞」が「FDAT」の前身になるのですが、それは令和3年度で一旦終了しました。ですがビジネススキルやマインドを育成する支援がとても好評だったので、より裾野を広げて若手デザイナーの底上げを図る事業として令和4年度から「FDAT」をスタートさせました。

—「FDAT」になってからカリキュラムの内容などがより充実したということでしょうか。

左古:ブランドビジネスについて学ぶ講義数が増えましたし、数を増やしたことで講義内容も細分化され、より専門的になっています。

—講義は主にどのような内容なのでしょうか。

左古:ファッションデザイナーを目指すというとどうしてもモノづくりを重要視しがちかもしれませんが、ビジネスとして継続させていく、事業を大きくしていくにはクリエーションを磨いていくだけではうまくいきません。バイヤーとの交渉術、効果的なPR、合理的なECの構築など、目を行き届かせないといけないことはたくさんあります。講義は主にそれらについて学ぶ内容になっています。

—日本が世界に誇るカルチャーはいろいろあると思いますが、東京都がファッション支援に乗り出したのはどういう理由からでしょうか。

左古:ファッションはモノづくりだけでなく、裾野が広いので観光やサービスなど経済波及効果が大きいと考えています。ファッション産業は東京の産業力と都市の魅力を高める力を持っているので都として振興しているんです。

山地:国も支援を行なっていますが、デザイナー向けのファッションビジネスを目的としたサポートでは東京都はかなり充実していると思います。

—ファッションビジネスというとショップの運営や在庫管理など事務的なことをイメージしますが、「FDAT」は展示会やショーなどもサポートしているのが驚きではありました。単なるアパレル支援に留まらないというか。

左古:「FDAT」は東京都の産業労働局が舵取りをしているので「産業振興」という目的で行っていて、ファッション産業の担い手である若手デザイナーの育成という側面も重視しています。

山地:山本耀司さんや川久保怜さん、三宅一成さんなどがヨーロッパでセンセーショナルなコレクションを発表されて「日本のファッションがすごいぞ」と世界を驚かせたわけです。あの方たちと同じレベルを目指すのは大変ではありますが、日本の新しい才能の存在を世界に示し続けることは大切です。そのためにはショーなどの支援も必要不可欠だと思っています。

—カリキュラムは座学だけではないということですよね。より実践的なものもある。

左古:カリキュラムには尾州のようなテキスタイル産地を訪問するフィールドワークも組み込まれています。

山地:カリキュラムは上半期で10講座用意されていて、それを受講された方の中から最大で5ブランドを選定し、販路開拓支援を行なっています。そのために私がマンツーマンで指導もしています。「どこに売りたいのか」、「誰に売りたいのか」をより具体的にしていくための個別面談です。

第一線で活躍するデザイナーからもアドバイスをもらえる

—今は検索すればブランドビジネスに必要な知識はいくらでも吸収できそうな気はしますが、受講者に対して「ビジネスを少し甘く考えている」と感じることはありますか。

山地:ファッション系の専門学校などではブランドビジネスについては教えないですからね。学生の皆さんは服を縫えるようにはなるんです。ですが、それをマーケットにどのようにして届けたらいいのかは教えてもらうことなく卒業します。コンクールの受賞者にしても小規模でもブランドをやられているデザイナーにしてもモノづくりの才能には何も問題ないんです。ですがコンクールで賞を獲ったらブランドビジネスが保証されるわけではないということをしっかりと伝えたいです。

—若くて才能にも恵まれると「自分だけは大丈夫」と思いがちなので、現実をしっかりと突きつけてくれる「FDAT」はありがたいのではないでしょうか。

山地:嫌われ役かもしれませんけどね(笑)。

左古:「Next Fashion Designer of Tokyo」は<ANREALAGE(アンリアレイジ)>の森永邦彦さんや<CFCL(シーエフシーエル)>の高橋悠介さんが審査員を務められていて、一次審査通過者は、森永さんから二次審査に向けて制作に関するアドバイスをいただくことができるんです。それはこれからデザイナーを目指すという方にとっては貴重な体験だと思います。

—「Next Fashion Designer of Tokyo」も「Sustainable Fashion Design Award」も「FDAT」もファッションの第一線で活躍されている方が名を連ねていますよね。

左古:森永さんはご自身の経験によって培われた知識などを包み隠さず、全く惜しみなく学生たちにも話しています。それは本当にありがたいことだと思いますね。

—コンクール受賞者で実際にブランドを立ち上げた<KANEI(カネイ)>、<Q+FLOW(キューフロウ)>、<ŌNAMENT(オーナメント)>の活躍をどう見ていますか。

山地:<KANEI>の山岡くんも、<Q+FLOW>の末永さんも、<ŌNAMENT>の岩間さんと赤塩さんも、「自分のブランドを立ち上げる」という熱量がすごく高かった。ブランドをやっていくためには何をしなければいけないか、誰とコミュニケーションを取らなければいけないかを真剣に考えて、実際に行動にも起こしていました。だからこそ結果を出せると信じていましたし、その通りになっていると思っています。

—「FDAT」としての未来の展望をどのように考えていますか。

左古:講義の内容もアップデートしていく必要はあると思っています。ブランドビジネスをやっていくうえで何を優先しなければいけないか、何を重要視しなければいけないか、それは時代によって変わってくるはずなので、そこは見極めていきたいです。

山地:現在はECやサステナブルについての講義もありますが、それもかつては存在しなかったセミナーです。ですが現在はEC抜きやサステナブルに無関心ではブランドをやっていけないですから。「FDAT」の受講者にファッション界でどんどん活躍してもらって、「FDAT」の存在を世の中に広めてほしいです。私たちも個人の強み、弱みに合わせたオーダーメイドの指導に力を入れていきたいです。

—東京都としてはどういった方々に「FDAT」にエントリーしてほしいですか。

左古:「自分は世界で活躍するんだ」という強い情熱を持ったファッションデザイナーに応募してほしいです。大きな志を持って、貪欲に知識を吸収したいという方に集まってほしいです。

山地:意欲を超えて野心があるぐらいのデザイナーにエントリーしてほしいですね。

 


左古将典
東京都産業労働局商工部事業推進担当課長
2024 年4月より現職。「FDAT」と「NFDT」、「SFDA」のほか、中小企業支援において、ファッション・アパレル産業の振興、伝統工芸品産業の振興、販路開拓支援などを所管。

山地保
合同展示会 IFF(主催:繊研新聞社)事務局長、Tokyo 新人デザイナーファッション大賞事務局長などを歴任。現在は、FDAT 総合ディレクター、日本アパレルファッション産業協会 PLATFORM アドバイザー、毎日ファッション大賞推薦委員などを務める。

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  • Edit : Shun Okabe(QUI)
  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • Photograph : Kaito Chiba

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