セレクトショップの次なる視線|CHICKS 大久保美南
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は25歳の大久保美南さんがバイヤー兼ディレクターを務める「CHICKS(チックス)」。これからが楽しみな現在進行形のショップだ。
1999年生まれ、岩手県出身。文化服装学院のリテールプランニングコースのカリキュラムの一環として立ち上げた「CHICKS」を卒業後も継続。2022年からオンラインストアを立ち上げ、2024年3月に新宿にリアル店舗をオープン。
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授業の一環で立ち上げた「CHICKS」を卒業後も継続
— 25歳になられたばかりだそうですが、その若さでショップを運営しているんですね。大久保さんは文化服装学院を卒業されていますが、ずっとファッションに興味があったのでしょうか。
大久保:文化服装学院を選んだのはスタイリストになりたかったからです。ファンだった男性アイドルグループのステージ衣装に興味を持ったことをきっかけに、そんな衣装を担当したいと思うようになったんです。洋服そのものも好きだったので、昔からファッション雑誌で気になったスナップショットを切り抜いて集めたりしていました。
— ステージ衣装もそうですが、誰かのスタイリングが気になるのでしょうか。
大久保:スナップショットの切り抜きはスタイリングのチェックというよりも、その人が着ている服がどこのブランドなのかを知りたかったからです。「あのブランドは、こんなデザインも作っているんだ」と新しい発見があるのが楽しかったです。
— ブランドのリサーチということは、現在のバイヤーというお仕事に通じますね。
大久保:文化服装学院に通っていた頃に目指していたのはスタイリストで、ショップのバイヤーという仕事は頭の片隅にもありませんでした。それが2年次にリテールの基礎を学ぶリテールプランニングコースを選択したことで仕事内容として小売が向いているかもと思うようになったんです。
— どのような部分でそう感じましたか?
大久保:もともと分析したりすることが好きだったので、流通のためのマーケット分析というのが自分には合っていました。リテールプランニングコースには文化祭の期間中にオリジナルショップ運営をする「RE・TENT」というカリキュラムがあって、「CHICKS」はその時に立ち上げたショップでした。それをチームのみんなで運営したのがすごく楽しかったので、授業の一環として終わらせたくなくて卒業後もオンラインストアとして継続させたんです。
— 2024年3月に「CHICKS」のリアル店舗を新宿にオープンさせていますが、オンラインだけに留まらなかったのは理由があったのでしょうか。
大久保:オンラインの利点、リアル店舗の利点とそれぞれあるはずで、例えばお客さんとの接点が生まれやすく、私がセレクトしたブランドやアイテムについての感想を直接聞けるのはリアル店舗ならではです。ショップとしての幅をもっと広げたいと考えた時にリアル店舗の構想が浮かびました。
バイイングは「素敵!」と思った自分の直感を信じる
— どこかでセレクトショップについてのノウハウを学んだわけではなく卒業直後から「CHICKS」を続けたとのことですが、困った時に相談していた方はいたのでしょうか。
大久保:「THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)」の藤田さんには学生の頃からお世話になっています。私が「THE FOUR-EYED」で服を買っていたこともあってお話しするようになったんです。
— そうだったんですね、藤田さんはこの連載の記念すべき第1回目に登場してくれました。
大久保:私も記事を読みました!
— ブランドやアイテムをセレクトする大久保さんが20代ということで、お客さんも同世代が多いのでしょうか。
大久保:それがそうでもなくて、お客さんの年齢層は幅広いです。ショップに訪れるお客さんのスタイリングもさまざまなので、自分ではあまり思いつかないような着こなしをしている方を密かにチェックしています(笑)。
— 大久保さんはどんなブランドやスタイリングに惹かれますか。
大久保:私自身が明るい色を着ることが多いので、色使いが可愛いブランドやアイテムに惹かれます。あとは世の中にどれぐらい受け入れられるかわからなくても、自分が「洋服として素敵!」と思ったら、その直感を信じて買い付けることが増えました。
— デザイナーが同世代ということで私も個人的に注目している、<Ans Dotsloevner(アンス・ドッツローヴナー)>のアイテムが豊富ですね。
大久保:服の可愛さに、デザイナーの百瀬華乃さんの可愛らしさがそのまま表現されていて、私も好きなブランドです。
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自分の成長の証としてショップを大きくしていきたい
— ショップの内装やレイアウトも大久保さんが表現したい世界観を反映させているんですか。
大久保:そうですね。シルバニアファミリーのお家はインテリアとして必ず置きたいと思って購入しました。ジブリアニメも好きなので、そんな雰囲気も目指しました。
— 試着室のドアも丸いフォルムでドールハウスを彷彿させますね。
大久保:ドアはどうしても丸くしたかったんです。いろいろこだわりは詰まっているので内装はほとんどがDIYです。
— ショップとしては始まったばかりですが、将来的に「CHICKS」をこんなショップにしたいと考えたりすることはありますか。
大久保:今は自分一人で運営しているのでやりたいことがあっても手が足りなくなることもあります。なので一緒にやっていくスタッフを増やしたいのですが、そのためにもショップとしてしっかりと軌道に乗せないといけないと思っています。ご覧の通りスペースそのものも狭いですから、ショップが大きくなれば表現できることも増えるだろうなって最近は考えることが多いです。
— 店内ディスプレイのコーディネート提案もすごく素敵です。
大久保:SNSではブランドミックスのコーディネートで洋服を紹介することもあるのですが、トータルで購入してくださる方もいたりしてすごく嬉しいです。オンラインでやっている表現をリアル店舗でもやれるようになることが今の目標です。
— 大久保さんのキャリアとともにショップのスペースが広く大きくなっていくとしたら、ショップと一緒に人生を歩んでいるようですね。
大久保:自分自身もショップと一緒に成長をしている最中だと実感しています。いろんなことを経験して、私なりのセレクトショップの答えを探している段階です。そんな毎日が楽しくて、この仕事にずっと夢中です(笑)。
大久保 美南がレコメンドする3ブランド
<Ans Dotsloevner(アンス・ドッツローヴナー)>
「「CHICKS」の初期から買い付けていますし、取り扱いのアイテム数はいちばん多いブランドです。「自身の幼い頃の記憶、ときめきや憧れ」をベースしたコレクションを発表されていて、「女の子の心」を表現したクリエーションが私自身にすごく刺さっています。」
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<VeniceW(ベニスW)>
「タイ出身のデザイナーによるブランドです。ギミックのおもしろさがありながらファッション性もあって、バックパックなどの雑貨からウェアまで「CHICKS」では幅広く揃えています。ブランドのオンラインサイトもすごくおしゃれで、トータルでセンスを感じます。」
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<HAPPY 99(ハッピーナインティナイン)>
「最初に目にした時に「ゲームの主人公の衣装みたい」だと思いました。自分が日頃着ているファッションテイストは異なるんですけど、キャラクター感のある雰囲気の服が似合う方はいるはずだと思ってセレクトしました。」
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CHICKS
オーナーの大久保が文化服装学院のリテールプランニングコースのカリキュラムの一環として立ち上げたショップ。2022年からオンラインストアを立ち上げ、当初は古着をメインに取り扱う。2024年3月に新宿にリアル店舗をオープンした。
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- Photograph : Kaito Chiba
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)