セレクトショップの次なる視線 | THE FOUR-EYED 藤田佳祐
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は新たなブランドを知るべく業界人も訪れるという「THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)」の藤田佳祐さんにお話を伺った。
1984年京都府生まれ。
大阪の古着屋・セレクトショップで小売の経験を積んだ後、2011年上京。その後、雑誌『STREET』『FRUiTS』の編集室に所属し、フォトグラファー・副編集長として活動後、2016年より歌舞伎町にセレクトショップ「THE FOUR-EYED」をオープン。2020年、「THE FOUR-EYED」での取り扱いをきっかけに事業拡大をしていったアジア圏のブランドの国内代理店 9fox LLC. を設立。現在は各会社のオーナー兼プロデュースを務める一方で、個人でもフォトグラファーとして活動している。
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@fjt_ksk
服は新しい人間関係までも生み出してくれるツール
ー THE FOUR-EYEDを立ち上げようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
前職はファッション誌のフォトグラファーだったのですが、その道で生きていくにもすでに先駆者がたくさんいて新たに入り込む余地も少なかったですし、出版社で学んだことをトレースしてビジネスを起こしてもそれは二番煎じにしかならない。自分だからできること、自分がこれまで培ったノウハウを活かせることはなんだろうと辿り着いたのがセレクトショップだったんです。
ー THE FOUR-EYEDのショップとしての方向性は最初から明確だったんですか?
マーケティングやマスを意識するというよりも、むしろそこからどれだけ離脱できるかという考えはありました。顔が見えるお客さんのために商売をしたかったです。これは僕の持論ですがファッションをやるなら「自分の好き」を追求して、自分が楽しまないと意味がないと思っています。お金を稼ぐことを目的にするならもっと効率的な仕事はあるはずで、ファッションを仕事として選択している時点で僕は裕福になることを半ば諦めています(笑)。だからといってファッションを特別視しているわけでもなく、僕は服は単なる道具のように捉えています。
ー ツールということですか?すごく割り切っている感じがしますが
コミュニケーションツールですね。RPG(ロールプレイングゲーム)でいえば武器や防具のようなものです。RPGって最強の武器や防具を買い揃えることが物語の目的ではないですよね。だけど物語の中で生きていくためにはなくてはならないものでもあります。僕はファッションがきっかけとなって生まれる人間関係に魅力を感じているんです。服の趣味が同じなら音楽やアートにおいても好きなものが近しいことが多くて、僕がセレクトをしたブランドや服が好きだと言ってくれるお客さんとは年代が違っても根本的なところではやっぱり気心が合うんです。そういう意味で「THE FOUR-EYED」は同じような嗜好の人が集まるコミュニティのようにもなっていますね。実際にリピーターはすごく多いです。
ー 人生をより豊かにしてくれたり、幸せにしてくれるツールということですね
そういう感覚がないと「THE FOUR-EYED」で服は買わないと思うんです。価格も決して安いとは思っていないですし。アートってものすごく高額のものもありますが、それを選ぶ方ってプロダクトそのものだけではなくてアーティストのアイデアや活動、生き様にお金を出しているような気がしているんです。豊かに生きていくための投資のようなものですよね。実はファッションがコミュニケーションツールという考えは僕は小学生の頃からぼんやりとは芽生えていました。
ー 小学生の頃からですか!?ずいぶん発想が大人ですね
僕は転勤族で小さい頃は学校を転々としていたんです。だから新しい土地に引っ越したときにまたゼロから友達を作らないといけなかった。その時にすぐに仲間に入れてもらうための最も有効なツールが見た目、つまりファッションだったんです。小学生の男の子はみんなスポーツブランドばかりですけど、それでもナイキなのかアディダスなのかプーマなのか、周囲と馴染んで溶け込むためにはちゃんと正解を選ばないといけないんですよ。そんな分析に長けた子供でしたね。当時は幼かったので服が好きという感覚はなかったですけど、ファッションへの関心という下地は小学生の頃から養われていたと思います。
新しい才能が誕生しそうな気配を感じている
ー THE FOUR-EYEDのオープン当時と現在で店内のラインナップに変化はありますか?
ここ数年は偶発的に誕生したようなインディペンデントなブランドが増えていて、その影響もあって「THE FOUR-EYED」のラインナップにも変化はありますね。コロナ禍のときに時間が生まれたことでファッションの世界とはあまり関係なかった人たちもブランドを立ち上げたり、自分で事業のようなことを始めた人って多かったですよね。さまざまなブランドが乱立しましたが、そこから「これは本物だ」というのを見極めてフックアップしていくのはセレクトショップとしてはすごくやりがいがありました。
ー ブランドやアイテムはどのような基準で選んでいるんですか?
新しいブランドはSNSで出会ったり、見つけたりすることが増えていますが、そこではプロダクトの良し悪しだけではなく、どう運用しているのかもチェックしています。SNSをブランドや商品のPRにうまく活用している方って、それだけ表現力にも幅を持っていると思いますし、そこから人間性というのも見えてきます。「THE FOUR-EYED」にはオープン時からずっと通ってくれているお客さんもたくさんいらして、最近はラインナップが変わってきましたねって言われます(笑)。それでも全体の3分の1ぐらいのブランドは初期から変わっていないんですけどね。
藤田氏がおすすめのひとつとして取り上げたのはpatience. written by のパンツ
ー これからTHE FOUR-EYEDで取り上げていきたいと考えているのは?
できることなら日本国内からももっとブランドを取り上げていきたいです。デザイナーという職業に対して志を高く持っている若い才能はたくさんいるとは思うんですけど、日本はそういう人たちが世に出るための環境がなかなか整っていないのが現状です。「THE FOUR-EYED」がその環境の一つになることができたら。「THE FOUR-EYED」で取り扱っている数少ない日本のブランドで<Ans Dotsloevner(アンス・ドッツローヴナー)>はデザイナーが学生の頃から知る関係で、2021年にローンチして現在に至るまで著しく成長し、来年はまたさらなる飛躍を期待で
ー <Ans Dotsloevner>のようなブランドを第2、第3と育てていきたい?
そうですね。”育てる”というのは大袈裟ですが、
藤田 佳祐 がリコメンドする3つのアイテム
Ans Dotsloevner | Jacket For School ¥79,200 (in tax)
<Ans Dotsloevner(アンス・ドッツローヴナー)>のジャケット
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Ans Dotsloevner | Side zipper pants ¥58,300 (in tax)
<Ans Dotsloevner(アンス・ドッツローヴナー)>のパンツ
購入はこちらから
Sky High Farm | 右:CHARM WAFFLE LONG SLEEVE T-SHIRT ¥24,200 (in tax)、左:CHARM WAFFLE LONGJOHNS MULTI ¥24,200 (in tax)
<Sky High Farm(スカイ ハイ ファーム)>のトップスとパンツ
右:購入はこちらから
左:購入はこちらから
ショップオープンは2016年9月。約30坪の店内にはオーナーの藤田氏とバイヤーの渋川氏が国内外からセレクトしたブランドが揃っている。ショップコンセプトは「Make the impact」「Make the blue rose」「Make the place to be」(衝撃・世にないもの・行くべき場所を作る)。
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-8-2 パレドール歌舞伎町1F
HP:https://www.thefoureyed.shop/
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@the_foureyed
- Photograph : Kaho Kikuchi
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)