QUI

BEAUTY

ランウェイと創造する新たな美のアプローチ、SHISEIDO HMA パリ・ファッションウィーク 2025 A/W のメイクアップ

Apr 7, 2025
ランウェイビューティーを語る上で欠かせない存在、SHISEIDO HAIR & MAKEUP ARTIST(SHISEIDO HMA)。株式会社資生堂が誇る約40名のヘアメイクアップアーティストで構成されたスペシャリスト集団は、東京コレクションやパリコレクションなど、世界のファッションシーンで確固たる地位を築いてきた。
本記事では、パリ・ファッションウィーク 2025A/WでSHISEIDO HMAが手掛けた3つのブランドにフォーカス。それぞれのコレクションのテーマと、それを通じて新たな美を創造したメイクアップチーフのアプローチをひも解いていく。

ランウェイと創造する新たな美のアプローチ、SHISEIDO HMA パリ・ファッションウィーク 2025 A/W のメイクアップ

Apr 7, 2025 - BEAUTY
ランウェイビューティーを語る上で欠かせない存在、SHISEIDO HAIR & MAKEUP ARTIST(SHISEIDO HMA)。株式会社資生堂が誇る約40名のヘアメイクアップアーティストで構成されたスペシャリスト集団は、東京コレクションやパリコレクションなど、世界のファッションシーンで確固たる地位を築いてきた。
本記事では、パリ・ファッションウィーク 2025A/WでSHISEIDO HMAが手掛けた3つのブランドにフォーカス。それぞれのコレクションのテーマと、それを通じて新たな美を創造したメイクアップチーフのアプローチをひも解いていく。

CFCL ー メイクによる意味づけを極力排除して、凛とした清々しい強さを表現

CFCL VOL.10 COLLECTION RUNWAY

2025年3月3日、<CFCL(シーエフシーエル)>がパリのポンピドゥー・センターに隣接するIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)でVOL.10コレクション「Knit-ware: Plotline」を発表した。サウンドアーティスト・細井美裕による、<CFCL>の衣服製造過程の音を再構築した立体的な音響がランウェイに響き渡り、エネルギッシュな色彩とグラフィカルなアウトラインでニットの可能性が表現された。社会人類学者Tim Ingoldの著作「LINES: A Brief History」に着想を得た本コレクションは、一本の糸が時代と共に絡み合い、線を描きながら広がっていく様を通して、<CFCL>の試行錯誤と進化の軌跡を描き出している。人類の進化の中で生まれた糸を紡ぎ編む作業を現代のテクノロジーと感覚でアップデートし、新たな時代への自由で力強い線を描く姿勢は、現代の多様性と革新を象徴している。

メイクアップチーフ 中村 潤

「コレクションルックのテクノロジーやクラフトマンシップを引き立てるため、メイクはあえてシンプルに仕上げました。メイクには、その加え方次第でさまざまな意味をルックに与える力があります。たとえば、強めのアイメイクでギラギラさせれば70〜80年代の女性像が浮かび上がりますし、ヌーディーなリップで血色感を抑えれば、男性的な印象が生まれます。今回は、そうした“メイクによる意味づけ”を極力排除し、すべてのモデルの肌色に合わせて、リップやチークを“ぼかす”ように加えました。これにより、<CFCL>の世界観に相応しい、シンプルながらも凛とした清々しい強さを表現しています。」

VICKI DANA

「スタイリストのブノワ氏の“朝の清々しさ、潤いのあるイキイキとした印象”というリクエストに応え、まぶた、頬の高い位置、唇の山に繊細なパール入りの下地を使用。ハイライト効果で肌にうるおい感をプラスし、自然な美しさを引き出しています。」

Runway Makeup Highlights

かなり濃い色のリップをあえて選び、それを指で軽く唇の中央にポンポンとぼかすことで自然な血色感を表現。

DEBORAH

上まぶた、頬の高い位置、唇の山にはハイライトの効果を狙ってパール感のある下地を塗布。

ANREALAGE ー アイシャドウやコントゥアリングで、顔の骨格感や陰影を強調

ANREALAGE 2025AW COLLECTION RUNWAY
Designer : Kunihiko Morinaga (ANREALAGE)、Stylist: TEPPEI、Hair: Kiyoko Odo、LED Costume Technology: MPLUSPLUS

2025年3月4日、パリのアメリカン・カテドラルで<ANREALAGE(アンリアレイジ)>が2025-26年秋冬コレクション「SCREEN」を発表した。黒い衣服を「SCREEN(スクリーン)」として、あらゆる色やメッセージを投影する動的なファッションを提案し、情報を映し出し続ける新しい衣服の在り方を示した。ロブロックスのアバターを思わせるブロックシルエットの衣服には、サステナブルなテキスタイルプリンター「FOREARTH」を用いたカラフルなパッチワークや、LED-LCD技術を組み込んだニットトップスが登場し、デジタルと手仕事の融合が際立った。自己表現と他者とのコミュニケーションをつなぐ「第二の皮膚」としての服を提示したこのコレクションは、個人のアイデンティティの多様性を映し出し、ファッションの新たな可能性を探求する試みとして注目を集めた。

メイクアップチーフ 武田 玲奈

「今回のメイクアップは、幅広くぼかしたグレーのアイシャドウをポイントにしたモノクロームルックです。頭部を黒いネットで覆うスタイリングに合わせ、アイラインなどのグラフィカルな要素はあえて排除し、アイシャドウやコントゥアリングで顔の骨格感や陰影を強調しました。」

「肌はほのかに白みがかったマットな質感で、ファンデーションとコンシーラーで色ムラを整え、ルースパウダーで仕上げています。ほお骨には肌の色より暗めのコンシーラーを使い、骨格を際立たせるようにぼかしています。眉はコンシーラーで色を抑え、スクリューブラシで毛並みを整えることで存在感を控えめにしました。唇もコンシーラーで輪郭と赤みを抑え、血色感を最小限にしています。
目もとはグレーのアイシャドウを眉頭の下からアイホールのくぼみに沿って広くぼかし、下まぶたにも同様に幅広くぼかして立体感を演出しています。全体的にミニマルでありながら、骨格や陰影を強調したメイクが、モノクロームルックの持つシャープで洗練された印象を引き立てています。」

Runway Makeup Highlights

グレーのアイシャドウを、眉頭の下からアイホールのくぼみに沿ってぼかす。下まぶたにも幅広くぼかす。

コンシーラーで眉の色を消し、スクリューブラシで毛並みを整える。

ヘアメイク仕上がり後、黒のネットで頭部を覆う。

grounds ー ミニマルの中に取り入れた意図的な「隙」で、独特の存在感を演出

2025年3月6日、<grounds(グラウンズ)>がパリで初のランウェイショーとなる2025年秋冬コレクション「uncannyvalley(アンキャニーバレー)」を発表した。パリの廃墟を舞台に、不気味でありながらも魅力的な「不気味の谷(Uncanny Valley)」の世界観を映し出し、ラディカルかつシュールなスタイリングが観客を魅了した。スタイリングを手がけたBetsy Johnsonは、<grounds>の誇張されたフォルムのフットウェアに、日常の怠惰さとセンシュアルなひねりを加え、従来の枠を超えた大胆な表現を生み出した。また、昨シーズンから続く未来的なアイウェアコレクションも登場し、「地面」と「足」というブランドコンセプトをさらに深化させている。人間とテクノロジーの境界が曖昧になる時代に、新たな人間像を提示する本コレクションは、現代社会の不確実性や変容を映し出し、未来に対する問いかけを投げかける試みでもある。

メイクアップチーフ 武田 玲奈

「今回のメイクアップは、肌と一体化したぼさぼさのまつ毛をポイントにしたスキントーンルックです。目周りのくすみやクマはあえてカバーせず、パープル系のアイシャドウで強調することで、無機質でペールな仕上がりを演出しています。血色感を抑えたミニマルなアプローチが、独特のクールな雰囲気を引き立てています。」

「まつ毛はマスカラ下地で束感を出し、あえて”だま”を作ることでクリーンすぎない印象に仕上げています。さらに肌の色と同じコンシーラーを重ねることで、肌と一体化させています。まつ毛が薄いモデルにはつけまつげを使い、同様のプロセスを繰り返して統一感を出しました。肌はファンデーションとコンシーラーで色ムラを整え、ルースパウダーでマットに仕上げていますが、目周りのくすみやクマにはファンデーションをあえて塗らず、ナチュラルな陰影を残しています。
眉はコンシーラーで色を抑え、スクリューブラシで毛並みを整えて存在感を消しています。唇もコンシーラーで輪郭と赤みを抑えつつ、無色のリップクリームで自然なツヤを加え、血色感を抑えた無機質な印象をキープしました。全体的に削ぎ落とされたミニマルなメイクでありながら、繊細な質感の違いや意図的な「隙」が、クールで独特の存在感を放つスタイルに仕上がっています。」

Runway Makeup Highlights

まつ毛の薄いモデルにはつけまつげを使用し、肌と一体化したぼさぼさのまつ毛を仕込む。

目周りのくすみやくまはカバーせず、パープル系のアイシャドウで誇張。

Editor’s Note

SHISEIDO HMAがコレクションを通じて提案するヘアメイクのアプローチは、日常のスタイルにも新たなインスピレーションをもたらしてくれる。ビジョナリーなメイクアップとデザイナーたちのクリエイティブなコレクションが織りなすシナジーは、美が単なるアクセントではなく、コレクションの本質そのものであることを強く物語っている。

SHISEIDO HAIR&MAKEUP ARTIST
https://www.instagram.com/shiseido_hma/?hl=ja

メイクアップアーティスト 中村 潤
https://www.instagram.com/jun.nakamura24/?hl=ja

メイクアップアーティスト 武田 玲奈
https://www.instagram.com/rena_takeda_mua/?hl=ja

  • Photo(behind the stage) : Yas
  • Edit : Yukako Musha(QUI)

NEW ARRIVALS

Recommend