パリ徒然日記 -Vol. 7 -|24-25秋冬 パリ・ファッション・ウィーク(メンズ)
1月15日、日本は暖冬の今年。極寒のヨーロッパへと向かいます。
長旅を終え、無事にパリ市内へ到着。感覚がわからなくなるような寒暖差…ですが、パリの空は綺麗で空気も澄んでいます。
初日は買い出しやアンパッキングなどをし、明日からに備えます。
翌日、早速メンズファッションウィークがはじまります。
今回、QUIとしては約10ブランドのショーに参加させていただきます。
6月に初めて訪れたメンズから2度目の今回。
出入りさせていただくブランドも増え、嬉しい限り。
1発目は、<KIDILL(キディル)>。
今回の会場も前回同様、ルーブル美術館地下でしたしたが、前回とは別のスペースでの開催。
今回の会場の雰囲気は、前回の路地裏の駐車場のようなアンダーグランドな雰囲気とは違い、光が差し込む明るい雰囲気で、隠と陽のコントラストを感じました。
ブランドとして10周年を迎える今回のコレクション。2020年の秋冬コレクションでコラボしたジェイミー・リードの訃報を8月に聞いた後のコレクションだったという事で胸にくるものがありました。
従来のポップかつパンクロックなイメージはもちろん残しつつも、フォーマルなものや、デヴィット・ボウイを彷彿とさせるデザインやヘアメイクも多数。
全体を通してパンクへの愛やこれからの10年を見据えた精神性を感じることができるコレクションでもありました。
目の前の階段を降りてくるモデルたちが纏う服に、ブランドとしての覚悟や挑戦心を改めて感じました。
ランウェイでは、このルックが一際存在感を放っており、素敵でした。
会場を後にし、ファッションプライズオブトーキョー(FPT)受賞によるサポートを受けて初のショー開催となる<MASU(エムエーエスユー)>へ。
会場はアートセンターの「Le Consulat」。
少し小雨が降っていた会場前には、多くのゲストやギャラリーが集まっていました。
中に案内されてまず驚かされたのは、外の天気とわざとマッチさせたのかと思わせる雨の演出。
巨大な傘が中央にレイアウトされており、破れた傘がダークな雰囲気もありつつ、BGMも雨にマッチした雰囲気。
前回のコレクションとは打って変わって、オールブラックスタイルでショー。基本的に漆黒のイメージが強い中、顔周りの装飾やシューズ、アクセやコレクションピースへの装飾が多岐に渡り、闇の中の宝物を探すような感覚でショーを見ていました。ジェンダーの概念には囚われず、多岐に渡るスタイルの中、ボリュームのあるボトムスのスタイルが個人的に刺さりました。
とても初めてのショーとは思えない堂々としたショーに拍手喝采。
可愛いお土産ももらって、本日は終了。
翌日、寒いですがカラッとした天気で気持ちの良い日。
<Louis Vuitton(ルイヴィトン)>のプレゼンテーションへ。
庭園で行われたショーの雰囲気がそのまま残っています。
ファレル・ウィリアムズが手掛ける世界観を存分に落としこんだ西部劇のような空間。
ここはパリ?と思うほどアメリカ西部の雰囲気が充満。
次回は、是非ショーに参加しようと夢が膨らむひとときでした。
西部劇の空間を堪能した後、向かったのは<sulvam(サルバム)>のプレゼンテーション。
今回はわたしの友人が全てのクリエイティブや演出に関わっているということもあり、とても楽しみにしていた<sulvam>。
オリジナリティーのあるなかなか見ない形でのプレゼンテーションでした。
音楽が再生されている時間のみ、モデルたちが動き出す演出で、そのシチュエーションも様々。
踊っているシーン、チェスを楽しむシーン、窓の外を眺める人、会話を楽しむ2人など。
まるで映画の撮影中のような空間でした。
またその模様が、別のフロアでライブ放送されており、今目の前で見ている世界が現実なのか、映像の世界なのか。
何か特別な世界の中に迷い込んだようなプレゼンテーションでした。
会場を後にし、向かったのは<XIMON LEE(サイモン・リー)>の新しいアトリエ兼ショップ。
お洒落な若者で溢れていました。
<XIMON LEE>の新作を眺めた後、向かったのは<_j.l-a.l_(ジャン=リュック・アンブリッジ)>のレセプション。
こちらも私が到着した時にはすでに、大勢の人で賑わいを見せていました。
<Gold win(ゴールドウィン)>とのコラボラインの発表を兼ねたショートムービーが放映され、会場内は薄暗い演出と共に、DJ SsalivaがオフィスワーカーのようなDJブースで音楽を奏でていました。
音楽や映像に浸っていると、夜もすっかり遅い時間に。
そして翌日、この日は「SHOWROOM ROMEO(ショールームロメオ)」からスタートです。
ファッションウィークの期間はショー以外にも展示会やイベントが行われています。
はじめて訪れたこちらのショールームでは<08 sircus(ゼロハチサーカス)>を始めとした多くのブランドが広いショールーム内に展示。
新たなブランドとの出会いもありましたので少しご紹介します。
まず目を惹かれたのは、セネガル発のレザーブランド<Tareet(タリート)>。
エティオンヌ・ディオプによって設立されたブランドで、植民地時代の人種や宗教差別、過去の事実を視覚的に表現しており、文化的な影響を強く受けて発信をしているブランドです。
特にアシックスとのコラボシューズは、日本では見かけないスリッポンタイプで、リアルレザーの質感と民族衣装のようなソールの素材感に新しさを感じ、つい欲しくなりました。
こちらはカニエ・ウエストのブランドに技術を起用されたことがきっかけで、デビューに至ったブランド<Lara Severa(ララセヴェラ)>。
南ドイツ出身の28歳技術オタクの彼女のニットウェアへの愛は凄まじく、糸と親密な会話をして直感的に作品を作っているんだとか…!全て手作業で創り出されるニットは、機械では出せない繊細さと、創造性、1点1点の個性も光り、素晴らしいものでした。
そのほかにも、大学の教授のブランドやSDGを徹底的に考えているリサイクルから成り立つブランドなど、新しい出会いがたくさん。
これも、ショールームの魅力かもしれません。
「SHOWROOM ROMEO」を後にし、向かうは私も大好きな<MIHARA YASUHIRO(ミハラヤスヒロ)>
会場はもともと銀行だった、アングラな跡地。
受付を抜け、階段を上がり薄暗いどこか神秘的な雰囲気の会場へ…
ノイジーなDJ、キュートなチアダンサー達でショーはスタート。
後から分かったのですが、DJはテクノ界のレジェンド石井健さんだったみたいです。
もはやケープのようなルックのものから、ジェンダーには囚われないエレガントな物まで多数。シャイニーなファイバーのような素材のHUGEニットは、何処にいても目を惹くギラギラ感。バリエーションに富んだラインナップで<MIHARA YASUHIRO>が誘う夜の煌びやかな世界へ誘われました。
最後に登場するミハラさんがとてもチャーミングなパフォーマンスをされるのも毎回の楽しみです。
そんな<MIHARA YASUHIRO>のショーを後にし、次に向かうは<both(ボス)>のオープニングパーティーへ。
日本ではすでに表参道に店舗があるパリ発祥のシューズブランド<both>ですが、なんとパリには店舗がなく、今回が待望の店舗ということで待ちに待ったお洒落さんたちも多いのではないのでしょうか。
日本からも、秋元梢さんやDJのSHUZO、YAMATOの姿も。
ソールに定評があり、日本の数多くのブランドのOEMも手がける<both>
新作や定番の商品も並んでいました。
可愛いロゴがあったので、記念に私も撮影。
グッドミュージックに浸りながら本日は終了。
- text : Tetsu Charles Kawamoto