リトリートのススメ「hotel norm. fuji」– QUI編集部シャルルのホテル体験記
フランスと日本を行き来する生活の中で、改めて感じたのは、日本には「非日常」を楽しめる場所が驚くほど多いということ。観光名所を巡る旅とは違い、心の声に耳を傾け、ゆったりとした時間を味わう。そんな豊かなひとときを過ごせる施設が、全国に増えています。
今回は、そんな“とっておきの癒しの場所”のひとつとして、山梨県河口湖のプライベートホテル「hotel norm. fuji」を訪れました。せわしない日々を抜け出し、都市の中で自分を整えることができる、まったく新しい“リトリート体験”を共有します。
この連載も気がつけば3年目に突入し、旅行や観光を目的とするのではなく、自分自身と向き合い、内面的なリフレッシュを促す時間にフォーカスした体験を共有してきました。30代も半ばに差し掛かり、さまざまな出来事を経験してきたからこそ、年々「自分」と向き合い、問いかける時間の大切さを実感しています。
今回は、忙しない毎日を駆け抜ける私たちを優しく受け止めてくれる場所「hotel norm.」の中でも、最も広い宿泊施設「hotel norm. fuji」を体験。パリの友人たちを迎えたリトリートステイの様子をご紹介します。
何度も訪れている山梨・河口湖の自然に囲まれたこのホテルは、「観光するため」ではなく、自分の感覚を取り戻すために滞在する場所として設計されています。これまでに滞在した系列の「norm air.」や「norm ao.」の原型ともいわれる宿であり、他の施設同様、1日1組だけに許された特別な時間が流れます。チェックインした瞬間から、空間も時間もすべてが自分たちのものに。
他のゲストを気にすることも、スケジュールに追われることもない。自然の音に身を委ね、自分たちの呼吸のリズムに耳を澄ませる。喧騒から離れ、自然と自分自身に向き合うこの静かな時間が、普段はなかなか感じることのできない、深い余白をもたらしてくれます。
建物は、周囲の森や空の色に溶け込むよう設計されています。直線的でミニマルな佇まいでありながら、冷たさはなく、木材やファブリックの質感が空間にやわらかな温度を与えている印象。大きな窓から差し込む自然光は、時間帯によって表情を変え、朝・昼・夕方・夜と、それぞれ異なる「滞在のリズム」を生み出してくれます。ソファに身を沈め、ただ外の景色を眺めているだけで、思考がゆっくりと静まっていくのを感じられました。
「hotel norm.fuji」に併設される宿泊者専用のアウトドアサウナは、薪を焚いて温める本格仕様。じっくりと身体に熱を入れたあとは、森の空気を感じながら外気浴へ。水風呂も完備され、人工的な音のない環境だからこそ、鼓動や呼吸がはっきりと感じられ、身体が本来のリズムへと戻っていく感覚。サウナの中で、最近感じていることやこれからのことを友人たちと語り合う時間も、この滞在ならではの醍醐味でした。
予定を詰め込まないからこそ、心の奥に溜まっていた疲れやノイズが、少しずつほどけていきます。今回は早朝のカヤックも体験。目の前に広がる河口湖で日の出を眺めながら、ひんやりとした空気の中で味わったホットチョコレートが、とても美味しくて印象的な一杯でした。ゆったりと時間を過ごし、ときに昼寝をする。「こう過ごさなければならない」という決まりはありません。テラスでコーヒーを飲むこと、昼寝をすること、本を読むこと、星を眺めること、サウナに入ること、料理をすること。そのすべてが、この場所では「正解」です。
滞在を終える頃に残るのは、「たくさんのことをした」という記憶よりも、「きちんと休んだ」という感覚。「hotel norm.fuji」は、非日常へ逃げ込むための場所ではなく、自分の感覚へと立ち返るための場所、そんなふうに感じています。友人たちがリフレッシュしてくれたことも、何よりも嬉しかったです。
そんな「hotel norm.fuji」を運営する株式会社norm.から、今年新たに新棟が完成予定とのこと。次回の帰国時には、私もまたふらりと立ち寄りたいと思っています。それでは、また次の記事でお会いしましょう。
Merci.
hotel norm. fuji(ホテル ノーム フジ)
山梨・富士吉田の自然と街のあいだに佇む一棟貸しの宿。建築やインテリア、食、音楽といったカルチャーを横断する「norm.」の思想を体現し、日常の延長線上にある心地よさを追求している。大きな窓から望む富士の景色や、素材感を活かした静かな空間設計が、滞在者に余白のある時間をもたらす。観光地としての富士ではなく、暮らすように過ごす体験を通して、土地の空気やリズムを深く味わえる場所となっている。
〒401-0331 山梨県南都留郡富士河口湖町 長浜2109-1
Instagramはこちらから
@hotelnorm.fuji
- text : Charles Kawamoto(QUI)
- edit : Miwa Sato(QUI)










