南沙良 – いつもより素直な自分で
国内外で撮影された写真に、南自身による手書きの言葉が添えられ、さらに書き下ろしのエッセイやプライベートな日記まで収録されており、現在の彼女の素に近い部分が感じられる一冊となっている。
渋谷PARCOのGALLERY X BY PARCOにて開催された同名の写真展を訪れた南に、写真集に込めた思いを聞いた。

sara minami

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芝居や文章を通じて、自分のことを改めて見つめ直せる
― 南さんにとって初となる写真集『不安定な安息』の刊行おめでとうございます。
ありがとうございます。
― 刊行を記念した写真展も開催(現在は終了)されていますが、特にこだわった点はありますか?
壁に書かれた言葉はほとんど全部、写真展用に新しく書いています。でもなかなか書けなくて、「まだですか」って毎日急かされていました(笑)。
― 写真はすべて、写真家の石田真澄さんによる撮り下ろしとなっています。石田さんとは面識が?
以前、『yom yom』という文芸誌で連載していたときに石田さんに写真を撮っていただいていたのが出会いで。そしてこの写真集のお話をいただいたときに、私は『わかっていても the shapes of love』というドラマの撮影中だったのですが、そこにスチールで石田さんが入られていたんです。そんなご縁もあり、今回ご一緒させていただきました。
― 運命的ですね。撮影はいかがでしたか?
国内と台湾の2パートの写真で構成されているんですけど、台湾がとにかく楽しかったです。
― 台湾には写真集の撮影のために?
そうですね。初めて行きました。2泊3日だったと思います。
― 台湾の楽しかった思い出を、ちょっとシェアしてもらいたいです。
私、台湾の食べ物が楽しみで行ったんですけど、めっちゃおいしかったですね。スイーツがおいしくて、豆腐じゃなくて……豆花(トウファ)!
― たしかに食べている写真が多いかも。とくに印象深い写真があれば教えてもらえますか?
朝ごはんを食べているときの写真は印象に残っています。
― そのときの思い出も相まって?
そうです。本当に眠かったんですけど、朝ごはんがおいしくて。いつもの休日には滅多に早起きしないので、良い朝活ができました。
― すごくナチュラルというか、飾り気がない写真です。
完全に寝起きでした。メガネは私物で、普段犬の散歩をしているときの私みたいな感じで。これ載せて大丈夫なのかな(笑)。
― これまでのイメージが崩れちゃうかもしれませんね(笑)。台湾の写真には南さんの手書きのテキストも添えられています。
台湾で、その場その場で思ったことをメモに残していて。それを写真にあわせて散りばめました。
― 国内パートではどんなストーリーが表現されていますか?
最初はシンプルな白のドレスで自然の中にいるところから、都会に出ていくなかでいろんなものを身にまとっていく。だから最後にはすごくボリュームのある衣装になっていって。
― 台湾での自然体な姿とのコンストラストもおもしろいです。とくに印象的な衣装は?
猫をモチーフにした服がすごく好きです。スタイリストの伊賀大介さんが、私が考えていることや思っていることから発想して作ってくださった衣装で。
私、猫がすごく好きなんですよ。飼っているのは犬なんですけど。
― ちょっとややこしい(笑)。2つの写真パートの間には書き下ろしのテキストも収録されていますが、南さんは文章を書くこと自体が好きなんでしょうか?
好きです。でも、久しぶりに書きました。日記も最近はあんまり書けてなくて。
― それはなぜ?
犬に気を取られすぎて、日記を書く暇がなかったので。本に載せているのは犬を飼う前の日記です。
― 普段お芝居で表現することと、文章で表現することは、重なる部分もあるのでしょうか?
自分のことを改めて見つめ直せたり、もうちょっと理解できたり。そういうところは通じているかもしれません。
― たしかに自分と向き合わないと、お芝居も文章も表現するのは難しいですよね、きっと。
そう思います。
常にちょっとの不安を抱えていないと落ち着かない
― 『不安定な安息』というタイトルには、どんな思いを込めましたか?
収録したエッセイでも触れているんですけど、私は昔から不安だと安心するんです。逆に言うと、安心が不安になる。
― じゃあ不安定という言葉も、ネガティブな意味でなく?
はい。常にちょっとの不安や心配を抱えていないと落ち着かなくなるんです。何かきっかけがあったわけじゃないんですけど。
― その感覚、わかる気もします。たとえばなにもない真っ白な部屋に1人ポツンといるのも結構きついですよね。ちょっとざわざわしたノイズや不安定さがないと落ち着かない、みたいな。そして安心感があったらあったで、それが壊れてしまうことへの不安もあるし。
そうなんですよね。
― 夜が好きですか?
夜、好きですよ。
― 南さんの文章の中で、夜という言葉が印象に残りました。
昼も好きなんですけど、太陽が眩しくて。というのも、ちょっと眩しいとかじゃなくて、目の病気なんじゃないかというぐらい苦手で(笑)。
― それは小さいころから?
小さいころからなんです。色素が薄いとかじゃないんですけど。それで家も割と暗かったんですけど、やっぱり暗い家だと気分が落ちますよね。人間にとって、日の光って大切なんだなと思いました。
だから去年、日当たりの良い新居に引っ越したんです。
― 眩しくないですか?
眩しいので、結局カーテン閉めています(笑)。
― 写真集を作っていく中で苦労したことはありますか?
昔書いた日記が汚い字だったので、全部書き直したんですよ。
― きれいな字で几帳面な方だなと思っていました(笑)。
本当にめっちゃ大変でした。最後のほうで一文字間違えて、「うわ、やっちゃった」って、全部丁寧に書き直したり。普段こんなに文字を書くことがないから、手を傷めながら頑張りました。
― その苦労を皆さん感じながら、ひとつひとつ丁寧に読んでいただきたいですね。日記といえども、ただその日に何をしたかという話だけでなく、南さんがそのときに考えていたことも伺い知れておもしろいので。
そうですね。普段自分の素を出す場所ってあんまりないから、自分にとっても良い機会になりました。写真でも文章でも、いつもより素直な自分が詰まった一冊になっているんじゃないかなって思います。
― QUIでは4年前の2021年以来、4年ぶりの登場となりますが、当時と比べてご自身にどんな変化を感じますか?
周りから暗いって言われることがすごく多かったんです。自分ではそんなことないって思っていたんですけど、今はより明るくなったと思います。
― たしかに南さんは暗いというか、おとなしいイメージがあったかもしれません。明るくなったというのは何かきっかけが?
もともと人と話すのは大好きだったんですけど、友達も少なくて、人と話すことに対して慣れていないというか、不安な部分がすごくあって、ちょっと怖かったんです。
でもあまりにもずっと1人の世界だったので寂しすぎて、誰かと話したいという気持ちが年々強くなっていき、それが現れて明るくなりました。
― すばらしいですね。ちなみに、2021年には好きなことをテーマに取材させていただいたんですけど、南さんの好きなことは変わっていないですか?
変わっていません。でも今好きな漫画は、1周回って『ワンピース』が激熱です(笑)。
Profile _ 南沙良(みなみ・さら)
2002年6月11日生まれ、東京都出身。映画「幼な子われらに生まれ」(2017年8月公開)で俳優デビュー。初主演映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(2018年7月公開)で、報知映画賞、ブルーリボン賞他、数々の映画賞を受賞。近年の出演作に、映画「女子高生に殺されたい」、映画「この子は邪悪」(主演)、Netflixシリーズ「君に届け」(主演)、NHK大河ドラマ「光る君へ」、DMMTVオリジナルドラマ「外道の歌」、ABEMA×Netflixドラマ「わかっていても the shapes of love」などがある。主演映画「愛されなくても別に」が7月4日に公開を控える。
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Information
南沙良ファースト写真集『不安定な安息』
2025年3月18日(火)発売
著:南沙良
写真:石田真澄
- Photography : Kenta Karima
- Styling : Kie Fujii(THYMON Inc.)
- Hair&Make-up : Shino Sakamoto
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)