千葉県大多喜町に「大多喜有用植物苑」がオープン、有用植物を暮らしへと編み直す複合施設
本施設のテーマは「有用植物」。ハーブの和訳ともいえる言葉だが、ここで指すのはローズマリーやミントといった葉物に限らない。木や染料、建材として活用されてきた植物も含め、暮らしの中で“使われてきた”植物全体を指す。

江戸時代、日本の生活は衣食住の多くが植物によって支えられていた。循環という言葉を掲げる以前に、生活そのものが循環の中にあった。本施設は、その関係性を現代の暮らしの中でどう編み直せるかを探る場だ。
GREEN HOUSE 温室

内庭。右手には「軒下リビング」の竹屋根が覗く

地中リビング

軒下リビング
植物を“鑑賞”から“滞在”へ
温室空間「GREEN HOUSE」は、展示にとどまらない。常緑で有用性のあるアジアの植物を中心に構成し、年中滞在できる“リビング”として設計されている。
中央には高さ約5mのガジュマルを配置。隣町・いすみ市の竹で設えた「軒下リビング」、イベント時にはステージにもなる「高床リビング」、地表より一段低い位置から植物を見上げる「地中リビング」を設け、身体の高さや視点を変えながら植物と向き合う構成とした。
日本と同じ温暖湿潤気候(Cfa)に属するアジア地域の植物を選定することで、植生の共通性を体感できる環境を整える。植物は装飾ではなく、空間の主役だ。
OUTDOOR GARDEN & PARK 外庭・公園

季節を取り戻す場所
4月1日(水)完成予定の屋外エリアでは、落葉樹や花木、果樹を中心に四季の移ろいを体感できる庭を展開。畑やドッグランも備え、ワークショップや栽培体験を通じて植物との距離を縮める機会を設ける。
都市生活では、季節の変化を意識せずに一年が過ぎてしまうことも少なくない。本施設は、年に数回訪れるだけでも旬や風景を身体に刻める“季節の保管場所”のような役割も担う。
CAFE & RESTAURANT 食堂


思想を、食べられる形に
温室内にひらかれる食堂は、有用植物の思想を最も具体的に体験できる場だ。
監修は<maruta(マルタ)>元ヘッドシェフ石松一樹氏。全体ディレクションは<Raw Sugar Roast(ローシュガーロースト)>小田政志氏。ドリンクはBar Straw主宰の赤坂真知氏が担当する。

烏山椒の野草カレー ¥1,500

大多喜サラダ ¥2,000

猪肉のかつサンド ¥1,800

モミ香るノンアルコールジントニック ¥900、よもぎフロートココナッツミルクパンチ ¥1,100
野草や薬草は、健康志向の文脈に閉じ込められるのではなく、満足感のある料理として再構築される。理念を語るのではなく、味覚として提示する点が特徴だ。
SHOP ショップ


空間そのものも有用植物で構成
ショップは「裾分けの縁台」をコンセプトに、施設での体験を暮らしへと持ち帰るための場として設計されている。有用植物の苗やフレッシュハーブに加え、焼菓子やブレンドスパイス、ジャムなどのオリジナルグロサリーを展開。さらに家具やアートピースも揃え、植物を“育てる”“使う”“飾る”といった多面的な関わり方を提示する。
単なる物販ではなく、ここで得た感覚や知識を日常へ接続するためのセレクトだ。
その思想は空間設計にも及び、土に藁を混ぜて固めたブロックなど植物性素材を用いる。日本の土壁技術を現代的に再解釈したもので、藁がつなぎとなり強度を生む。竹炭や竹積みを活用したエントランスなど、かつて竹の産地であった土地性とも呼応する。
植物は商品であると同時に、建築をかたちづくる素材でもある。
OHG Scent Research 有用植物調香室

香りとして再構築する植物の記憶
苑内での研究をもとに展開される香りのプロダクトライン「OHG Scent Research(オーエイチジー セント リサーチ)」。有用植物を視覚体験から、香りというかたちで生活空間へと広げる試みだ。
ディレクションはHOLONの堀江麗氏。季節のお香やルームスプレー、ディフューザーなどをラインナップし、蒸留や調香のプロセスを通じて植物の可能性を探る。
有用植物は、食べる・建てる・染めるといった用途だけでなく、香りとしても生活に深く関わってきた。本ラインでは、土地で育つ植物を素材に、記憶や風景を抽出するように香りを構築する。
植物を観賞対象としてではなく、生活の素材として捉え直す。
大多喜有用植物苑は、有用植物を暮らしへと編み直す複合施設。
その実践が、ここから始まる。
施設概要
大多喜有用植物苑
開業日:2026年2月20日(金)
住所:〒298-0201 千葉県夷隅郡大多喜町小土呂2423
敷地面積:6,000㎡
営業時間:10:00〜17:00(フードL.O 16:00、ドリンクL.O. 16:30)
※一部エリア先行オープン。4月1日(水)全エリア開業予定
入場料:
【2月20日(金)〜3月31日(火)】
・大人 500円
・こども 300円(小学生以上・中学生以下)
・犬 無料
【4月1日(水)以降】
・大人 900円
・こども 500円(小学生以上・中学生以下)
・犬 300円
URL:https://otaki-herbgarden.jp/
Instagram:@otaki_herbgarden
- Text & Edit : Y.O(QUI)