玉城ティナ – 後悔の少ない人生を
父親から受け継いだ運命に翻弄されるマリアを演じた彼女が、改めて向き合った家族、そして幸せの意味とは。
この作品には、いらないものがない
― QUIでは前回、2022年に映画『窓辺にて』でインタビューさせていただいたのですが、それから3年で変化を感じることはありますか?
明確な変化は感じないんですけど、もう3年も経つんだなと。
― 歳を重ねるごとに時間の進み方が早く感じるような?
あっという間に歳を重ねるなと思いますね。30歳以降をどういうふうに過ごそうか、今まではモヤモヤとした雲の中を進んでいる感覚だったんですけど、自分で道を作らねばという思いが強くなってきました。仕事のことを第一に考えてきて、仕事を言い訳にすることもあったんですが、それがなくなったときに自分をどう説明できるかがこれから先は大事だなと。
― 自分自身の人生としっかり向き合いながら歩んでいく。そういうフェーズなのかもしれませんね。
20代後半ってまわりの女性たちもみんな「これからどうする?」ってざわつき始めているというか、ライフプランについて当たり前に話すような年齢で。
1人で生きていくのも楽しいし、誰かと一緒に生きていくのも楽しい。両方の良さがあるけど、どちらを選んだとしても後悔はつきものだとも思うんです。だから、できるだけ後悔が少ないようにしたい。
― 本作で玉城さんが演じたマリアとも通じる話かもしれませんね。彼女は結婚を控え、自身の運命と向き合うことになります。
原作では大人になったマリアは描かれていないので、そこをどういうふうに演じれば皆さんに納得していただけるのかなと。彼女をただ「不幸な子だよね」というだけでは終わらせたくなくて、彼女の持つ強さや、めげない姿勢を大切に演じました。
― 全編ヴェネツィアでのロケが行われたそうですが、お芝居にも影響はありましたか?
マリアは、イタリア人と日本人のミックスという役どころでしたが、すごくやりやすかったです。なんであんなにやりやすかったかはわからないですけど、イタリアの空気感が好きだからかもしれません。
スタッフの皆さんにとっても待望のヴェネツィアロケというタイミングで初参加させていただき、重要なポジションをいただけて、こんなに贅沢なことがあって良いのかと。この作品にとって、私がマリアを演じたことがプラスになっていれば良いなと思っています。
― 映画では物語を膨らませることで、キャラクターもより深く描かれていました。
原作から膨らませようとすると、結局「これいる?」みたいになってしまうパターンも少なくないですよね。でもこの作品には、いらないものがない。『岸辺露伴は動かない』という作品を作り続けてきた高橋(一生)さんやスタッフの方々だからこその説得力が感じられるんです。
― 岸辺露伴役の高橋一生さんとの共演経験は?
高橋さんとは初共演でした。他の皆さんもはじめましての方が多かったんですけど、(飯豊)まりえは高校も一緒で、昔から何回も共演させてもらっていて。今回、お芝居で絡むシーンはほとんどなかったんですけど、ヴェネツィアに3週間いる間に相談相手になってもらうなど、まりえに助けられた部分が本当にたくさんありました。
高橋さんは本当に露伴先生を体現されていますよね。「ヘブンズ・ドアー」をされるのが楽しみだったのでうれしかったです(笑)。
家族ってなんだろうと、改めて考えさせられた
― 本作への出演に際し、「家族の意味を改めて考え直し、自分なりの答えを見つけることができた」というコメントを寄せられていましたが、少し掘り下げてお話しいただけますか?
私が演じたマリアは、父親にかけられた呪いを受け継いで生きてきた子どもでした。常に何かに恐れながら成長してきて、そんな自分の運命を「もうしょうがないのかな」と受け入れ始めていたときに露伴先生と出会うことになります。それまでマリアは父親の言うことに従ってきましたが、親だって絶対に正解を持っているわけじゃないんですよね。もちろん逆に、親の言うことを聞いておいたほうが良かったなと、大人になってから思うこともあって。
今回は父と娘のお話ですけど、子どもは親を選べないし、親も子どもは選べない。でも結婚という、自分で選べる家族もある。タイミング的に自分が結婚したこともあって、家族ってなんだろう、不思議だなと思っていたところでこの作品に出会ったので、改めて考えさせられました。
― マリアは「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」という呪いに囚われますが、玉城さんはこれまでの人生で幸せの絶頂を感じたことはありますか?
うーん……幸せの絶頂みたいなことはないかな。いつでも幸せだなという感じ。
― いいですね。どんなことに幸せを感じますか?
おいしいご飯を食べたり、アラームをかけずにいっぱい寝たり(笑)。幸せって思える瞬間をどんどん増やして良いと思うんです。たとえば「表現を生む苦しみ」とか言ったりするけど、苦しみと同時に幸せも得られはずだから。どちらかを選ぶ必要はないんじゃないかなとは思います。
Profile _ 玉城ティナ(たましろ・ティナ)
1997年10月8日生まれ。沖縄県出身。2012年、講談社主催のオーディションにて初代グランプリに輝き、14歳で『ViVi』(講談社)の最年少専属モデルに。14年に女優デビュー。『惡の華』、『Dinerダイナー』、『窓辺にて』、「#ミトヤマネ」など数々の映画・ドラマ・広告に出演。22年、アクターズ・ショート・フィルム2『物語』で監督・脚本を担当。25年は映画「366日」が公開。NHK『藤子・F・不二雄SF短編ドラマシーズン3「ミラクルマン」』に出演。
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jacket ¥100,100・tops worn inside ¥20,900・dress worn inside ¥64,900・shoes / AKIKOAOKI (AKIKOAOKI 03-5829-6188), tights / stylist’s own
Information
映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
2025年5月23日(金)ロードショー
出演:高橋一生 飯豊まりえ / 玉城ティナ 戸次重幸 大東駿介 / 井浦新
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫
製作:『岸辺露伴は動かない 懺悔室』 製作委員会
制作プロダクション: NHKエンタープライズ、P.I.C.S.
配給:アスミック・エース
© 2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
- Photography : Kyotaro Nakayama(SIGNO)
- Styling : Yuuka Maruyama(makiura office)
- Hair&Make-up : Takako Imai
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)