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南沙良 × 馬場ふみか – わかりあえなくても、そばにいる

Jul 3, 2025
不幸であることに囚われ、他者との関わりを避けてきたふたりの女性の出会いと変化を描いた映画『愛されなくても別に』に出演する南沙良と馬場ふみか。
重いテーマの中にも希望を見出す本作で、彼女たちが見つめ直した、愛されること、人と関わること、そして生きることについて。

南沙良 × 馬場ふみか – わかりあえなくても、そばにいる

Jul 3, 2025 - FILM
不幸であることに囚われ、他者との関わりを避けてきたふたりの女性の出会いと変化を描いた映画『愛されなくても別に』に出演する南沙良と馬場ふみか。
重いテーマの中にも希望を見出す本作で、彼女たちが見つめ直した、愛されること、人と関わること、そして生きることについて。

 

 

 

 

 

 

 

人生において愛されることがすべてじゃない(南)

― 不幸にしても幸福にしても、それを誰かと比べながら生きていく哀しさについて改めて考えさせられる作品でした。劇中のセリフにもありましたが、本当は「生きてるだけでえらい」のに。

南沙良(以下、南):本当にそのとおりですよね。そして何事も一概に自分の価値観で決めちゃいけない、人生において愛されることがすべてじゃないというメッセージも感じました。

馬場ふみか(以下、馬場):自分の生まれ育った環境や今いる場所が当たり前でなく、人それぞれがさまざまな状況に置かれているということを理解して生きるべきなんですよね。

― 作品の題材は重いですけど、観終わったあとには前を向ける感覚もありました。

馬場:撮影中にはもっと重苦しい作品になるかなと思っていましたが、実際に観てみると意外と爽やかな印象で。希望が見える終わり方で良かったです。

― 本作でおふたりが演じた役はどちらもヘビーな問題を抱えた大学生でした。

南:自分の中で自分が嫌だなと思っている部分が重なったので、最初は(自身が演じた宮田)陽彩を好きになるのが難しかったです。

たとえば陽彩は自分が不幸であることに重きを置いていて、不安が生きる実感につながっている子だと思うんですけど、その感覚は私にも通じるところがあって。彼女の気持ちがわかるからこそ、やりやすさもありながら少し嫌いにもなりました。

― 馬場さんは役とどのように向き合いましたか?

馬場:(自身が演じた江永)雅が置かれていた状況は、自分からはかけ離れたものだったので、いわゆる毒親を題材にしたエッセイなどを読んだりしました。

あと今回は、撮影前にアクティングコーチの元でそれぞれレッスンを受けさせていただいて。私は本編では描かれていないお母さんとのシーンを実際にやってみて、それが役作りに大きく影響しました。

― レッスンには何度か通って?

馬場:1回行って合わなかったら行かなくて良いよと言われていたんですけど、2回行きました。1回目は座学で、私の今までの作品を観てくださったうえで「こういう癖があるね」「こういうシーンが得意だよね」などと分析し、具体的な指摘をいただいて。あとは、撮影までにどういうふうに準備をしていくかのメソッドなども教えていただきました。

南:私も2回行きました。もちろん今までもワークショップに行ったことはあったんですけど、お芝居をちゃんと座学で学ぶことはなかったので、すごく新鮮でした。今後も勉強していきたいです。

― 演じるうえで特に意識した部分はどこでしょう?

南:セリフが多くないので、セリフ以外の部分で陽彩の不安定さを表現できるようには意識していたかもしれません。

馬場:陽彩と雅が出会って影響し合い、関係性が変わっていくさまがすごく大事だと思っていたので、その変化は意識していました。わりと順番通りに撮ったので、実際に沙良ちゃんと隣り合って座っていることがだんだん自然になっていく感覚とも重なりました。

― 現実の関係性の変化が、役の関係性の変化ともリンクしたんですね。お互いの印象は初対面とは変わりましたか?

馬場:撮影前はめっちゃ人見知りなイメージでした(笑)。私も人見知りなのでどうしようかなと考えていたけど、実際の沙良ちゃんは意外とそんなに構えてなくて、良い意味で飄々と現場にいる感じが良いなと思いました。

南:馬場さんと一緒だと自然体でいられる感じがして。

馬場:うれしい。

南:お会いする前は、すごい……

馬場:怖いと思ってた?

南:違う違う違う(笑)。クールビューティーなイメージがあったんですけど。

馬場:そんなことなかったね(笑)。

南:そんなことなくはないんです。でもかっこいいお姉さんで、憧れます。

― 気が合うというより、波長が合う2人なんだなと感じました。

馬場:そうです。一緒にいて楽な感じはします。

 

幸せも不幸せも、人生の価値を他人には委ねて生きたくない(馬場)

― 陽彩と雅の単純な友情でも愛情でもない、名前のない関係性が素敵でした。

馬場:ずっとべったりでもなく、ただ生活を共にして、お互いが救われていく不思議な関係。

― 彼女たちのように、自分にとって本当に必要な人に出会い、関係性を築けたら最高ですよね。おふたりは人と関わる際に気をつけていることはありますか?

馬場:他人であるということを忘れないこと。自分と違う人間だから、考えが違って当たり前だという良い意味の諦めを持っています。他人は他人だからこそ、自分にとっては嫌じゃないことも、相手にとっては苦痛かもしれないと考えながら接することを大事にしています。

― そういう思考だと、逆に「なんで私のことをわかってくれないの」という気持ちもなくなりそうです。

馬場:わかってくれなくて当たり前だよねって思います。

南:私も馬場さんと同じで、そこに意識を置くようにはしています。でも他人の本当のところはわからないから、自分も無意識に人を傷つけている瞬間がきっとあるはずで。それは仕方ないことではあるんですけど、どうしたら良いんですかね、本当に。

馬場:難しいね。逆もしかりで、無駄に傷つけられることもあるし。

― 人と関わるのって大変ですよね。

馬場:大変煩わしいものだと思います。それでも誰かと関わらないと生きていけないんだから不思議ですよね。

― 煩わしくても誰かとのつながりを求めてしまう感覚は、『愛されなくても別に』というタイトルとも通じるように感じました。その言葉の裏には、本当は愛されたいという気持ちがあるんじゃないかなと。

馬場:雅は特にあると思います。愛されたいけど、愛されていることを実感できなくて、それでも生きていくんだという強い生命力を感じました。かっこいいですよね。

― 本作を経て、愛すること、愛されることに対する、捉え方の変化はありましたか?

南:陽彩にとっては母親との生活が自分の居場所であって、反対に自分を縛るもの、呪いにもなっていて。自分にとって大切な人や環境が、時として自分を縛るものになる可能性を頭の片隅に置いておくこともすごく大切なんだなと思いました。その可能性が頭にあるだけでいろんな選択肢が出てくるし、一歩を踏み出しやすくなるのかなと。

馬場:私は自分の幸せも不幸せもすべて、人生の価値を他人には委ねて生きたくはないなと思いました。他人からの施しによって幸せになろうとせず、自分自身で幸せになる方法を探したいです。

― 今は自分自身の人生を、自分らしく生きている実感がありますか?

馬場:わりと自由にやっています。とはいえ、常に評価がつきまとうわけじゃないですか。評価がないと、仕事もない(笑)。だから半分半分、どちらも考えられることが大事かなと。評価に振り回されて道を見失わないように、自分の感覚や好きなことに向き合うことも気をつけています。

― 南さんはいかがでしょう?

南:私は新しいことに挑戦することがとにかく好きなんです。常に何かを考えていたいし、何かを知ることを楽しんでいたい。それが自分らしさでもあると思うので、挑戦し続けられるよう頑張りたいと思っています。

― 最後に、これから作品をご覧になる方にメッセージをお願いします。

南:生きるということは、それだけですごく難しいことなんですよね。悩みを抱えながら生きる登場人物たちの一歩前に踏み出す勇気が、観てくださった方にも寄り添えたら本望です。

馬場:10代の方から、お母さん、お父さん世代まで、各年代でいろんな感じ方ができる作品です。内容的にちょっと身構えてしまう方もいるとは思いますが、意外とポップに描かれている部分もあるので気負わず、ぜひ映画館でご覧いただきたいです。

 

Profile _ 南沙良(みなみ・さら)
2002年6月11日生まれ、東京都出身。『幼な子われらに生まれ』(17/三島有紀子監督)で女優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18/湯浅弘章監督)で、報知映画賞、ブルーリボン賞他、数々の映画賞を受賞し、その演技力が高く評価される。主な出演作に、ドラマ「ドラゴン桜」(21/TBS)、「鎌倉殿の13人」(22/NHK)、「君に届け」(23/Netflix)、「光る君へ」(24/NHK)、『女子高生に殺されたい』(22/城定秀夫監督)、『この子は邪悪』(22/片岡翔監督)に出演。現在は、DMMTVオリジナルドラマ「外道の歌」(24)、ABEMA×Netflixドラマ「わかっていても the shapes of love」(24)が配信中。

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Profile _ 馬場ふみか(ばば・ふみか)
1995年6月21日生まれ、新潟県出身。
『パズル』(14/内藤瑛亮監督)で女優デビュー。「仮面ライダードライブ」(14/EX)で敵女幹部・メディックを演じて話題となり、『黒い暴動』(16/宇賀那健一監督)で初主演を果たす。『恋は光』(22/小林啓一監督)では演技が評価され、第44回ヨコハマ映画祭にて最優秀新人賞を受賞。
主な出演作に、『劇場版コード・ブルー  ドクターヘリ緊急救命』(18/西浦正記監督)、『糸』(20/瀬々敬久監督)、『ひとりぼっちじゃない』(23/伊藤ちひろ監督)、『愛に乱暴』(24/森ガキ侑大監督)などに出演。
現在は、DMMTVオリジナルドラマ「外道の歌」(24)が配信中。

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dress ¥63,800 / PHOTOCOPIEU (PHOTOCOPIEU 03-6265-8322), earrings ¥95,700・right hand ring ¥117,700・reft hand ring ¥113,300 / Charlotte CHESNAIS (EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901), shoes [reference price] / PIERRE HARDY (PIERRE HARDY TOKYO 03-6712-6809)

 


 

Information

映画『愛されなくても別に』

2025年7月4日(金)全国公開

出演:南沙良、馬場ふみか、本田望結、基俊介 (IMP.)、伊島空、池津祥子、河井青葉
監督:井樫彩
原作:武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社文庫)
脚本:井樫彩/イ・ナウォン
主題歌:hockrockb「プレゼント交換」(TOY’S FACTORY)

映画『愛されなくても別に』公式サイト

Ⓒ武田綾乃/講談社 Ⓒ2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

  • Photography : Masato Otsubo
  • Styling for Sara Minami : Kie Fujii(THYMON Inc.)
  • Hair&Make-up for Sara Minami : Asuka Fujio
  • Styling for Fumika Baba : Masumi Yakuzawa(TRON)
  • Hair&Make-up for Fumika Baba : Conomi Kitahara
  • Edit&Text : Yusuke Takayama(QUI)