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平井亜門 – 自分だけの色

Mar 16, 2022 - FEATURE
映画コンペティション「感動シネマアワード」のグランプリ受賞作であり、2022年3月19日に公開を控えた映画『階段の先には踊り場がある』。ユーモアあふれる会話劇で印象的な演技を見せた俳優・平井亜門に迫る。

ナメられてるぐらいの方がラク

― 映画『階段の先には踊り場がある』で平井さんが演じられた“先輩”なんですが、役の名前はないんですか?

台本には高橋って書いてありました。

― つかみどころがないっていうか、飄々としたキャラクターで。悪いやつではなさそうなんですけど……

悪いやつじゃないけど、無意識のうちに人間関係引っ掻き回すというか。たぶん人に好かれるたちなんでしょうね。

― 人たらしでしたね。平井さんなら友達になりたいタイプですか?

うーん、深い関係にはならなくていいかなぁ(笑)。知り合い程度で「こいつおもろいな、アホやな」っていう距離感で見ときたいです。

― 先輩という役に対して、どこからアプローチしましたか?

まだ短い俳優人生ですが、今までで一番セリフが多かったので、まずしっかり覚えないと、というプレッシャーがありました。だから受験勉強みたいな感じで、1日1回は口に出して頭に入れ込むみたいな刷り込み方式で台本を入れて。でも、役作り的なことはあんまりやってなくて。わりと自分に近いなっていうところがあったので、無理なく演じられました。

― ご自身とも近いっていうのは、ちょっとモテちゃうところとか?

いやいや(笑)。軽いノリっていうか、あんまり深く考えずしゃべるとことか。でも、(植田雅さん演じる)ゆっこのことを思って「そんな簡単に人生考えたらあかんで」みたいなことをアドバイスしたり。なんも考えてなさそうやけど、こいつなりに考えてんのか、みたいな絶妙なバランス感がちょっと似てるのかなって個人的には思います。

僕は事実あほなんですけど、あほに見せたいみたいなところもあって。ナメられてるぐらいの方がラクやん、と。でも先輩はそれを自然にやってるから、僕の方がちょっと性悪ですね。

― 先輩とゆっこは別れてからも同棲を続けていましたが、それも平井さん的には共感できましたか?

たぶん今の大学生ならあったりするんやろうなっていう想像はできますね。

― 自分はちょっと無理かなと?

そうですね。付き合って、別れて…でしょう? いや…現実的にお金のこととか考えると、割り切れるならありなのかもしれやんなって。お互いが無理してないならいいんじゃないかなっていう気も。うん…ありなのかもしれない。考え方を広げてくれてありがとうございます(笑)。

― お互い勝手も知ってるから、ストレスをかけない良い同居人になれる可能性はあるかもしれないですね。

先輩はたぶんストレスフリーなんじゃないですか。ゆっこは何かしらあるかもしれないですけど。

 

撮影時からおもしろくなる自信があった

― 先程セリフが多いという話が出ましたが本当に多くて、しかも会話の大部分が長回しですよね。

特に大変やったなぁっていうのが、ゆっこと一緒に真っ暗な部屋でホラー映画を観ながら話すっていうシーン。ワンカットで百十何行みたいな、こんなん見たことないな思て。

― 実際に使う尺に合わせてワンカットで撮っているんですか?

そうですね。あれ8分ぐらいあったかなぁ。セリフがつまったりするとまた頭からやり直しやったから、何時間もかかって。あと数行だってところでミスったり、部屋の置物がラップ現象みたいにボーンって落ちたり。そういう細かい事故があって大変でした。

― 8分のシーンの最後の1分とかもうバクバクですよね。

そうですよ。演技に没頭している頭と、これ大丈夫かなってすごい客観の頭と、脳みそが2つあるみたいな状態で。

― でも、観ている分にはその緊張感はまったく感じさせず、緩い空気感でした。

それは意識していましたね。

― 植田雅さんと手島実優さんとの会話が中心でしたが、お2人の印象をお聞かせください。

雅ちゃんは天才タイプやなぁって。自分では意識してないのに微妙にまわりとずれているところがあって。そういうところが本当に可愛らしくて、おもろいなって思える子で、一緒に撮影していて退屈しなかったです。

対照的に手島さんは論理的というか、すごい真面目な印象でした。僕が不安やったんで、何度か撮影の合間の時にセリフ読みに付き合ってくれて。あとは監督にディレクションをもらったことは、もう次のテイクでは修正をかけてる。逆に雅ちゃんは天才肌やから毎回同じことをするってわけじゃないがゆえに、事故的にすごいおもろいことが起こったりとか。

― 全然タイプが違うんですね。完成した作品をご覧になって、感想は?

めっちゃおもろかったですね。いつも初号試写の時って不安やったりするんですよ。「どういうふうに切り取られてるのかな?」とか。でも、今回は撮影している段階から「あ、これは絶対おもろなるわ」っていう自信があって。見て納得、みたいな。「やっぱええ感じに撮れてるわ」ってすごい安心して観てました。

― 本当におもしろい作品でした。

ありがとうございます。

 

予測できないことにおもしろみを感じる

― 平井さん自身についてもお聞きしたいんですけど、芸能のお仕事は音楽をやりたかったことがきっかけで?

そうですけれども、そっちの才覚はマジでなくて、ただ好きなだけで。趣味程度に一人で楽器を触って歌ったり。ごくたまに、僕が音楽好きやっていうことを知っていただいて、「亜門君歌ってみる?」みたいなこともありますが。音楽は大好きやし、いずれちゃんともっと多くの人に見てもらえるような形になればいいなとは思います。

― 俳優業はそもそもやりたかったことの1つではあったんですか?

いや、初めはまったく考えてなくて。音楽の専門学校みたいなところに通っていて、そこで今の事務所の方から俳優業っていう道もあるよっていうことを提示していただいて。あ、やりたい、できるやろと、なめて入りましたね。俳優業界に。きっちり洗礼受けましたけど。全然できやんやん、みたいな。

― それでも続けられているということは、俳優という仕事におもしろみが?

さっき雅ちゃんが天才タイプや、みたいな話をしたんですけど、人とお芝居する時ってコントロールしきれないところがあると思っていて。事故的に誰も思ってなかった方向におもろくなったりするみたいなことが本当に楽しい。学生時代に戻ったような感覚というか、仲良い友達と遊んどる時の感覚というか。

― コミュニケーションから生まれるものが好きなんですね。

もちろん最低限の準備はするんですけれど、予測できやんことが起こった時にすごいおもしろみを感じます。あとは監督さんが撮りたかった映像が撮れて満足している顔を見たときとか。僕はマジで不器用で、なんもできない人間なんですけど、自分でも役立っているのかなって思えた時はすごい嬉しいですね。

― 俳優としてこうなりたいというビジョンはありますか?

作品にとって邪魔にはなりたくないなぁ。

― 邪魔?

キャスティングしていただいたんやけど、他の誰かの方が合うやんみたいなことになると嫌やなと。月並みですけど、僕やから出せる味なのか色気なのか、そういうものがどんな役をやっても出てきたらいいなって。

― ちなみにお仕事以外で楽しいことってなんですか?

たとえばこの白いベルト。最近スプレーで色塗るのにはまってて、「このアイテム形めっちゃいいんやけどこの色が惜しいな」って時にスプレーで色を塗るんです。このベルトも、もともと黒やったんですけど、白に塗って。あと最近はレトロゲーム。

― ファミコンとかそういう?

そうです。「メトロイド」の初代を年越しあたりでクリアしたのと、自分が小学生の時に流行ってた「ロックマンエグゼ」っていうのを。あとは、アニメにもはまってて。

― はまってること多いですね(笑)。アニメはどういった?

めっちゃ好きなんが今石洋之監督の『グレンラガン』とか『キルラキル』とか。最近おもろかったんが『宇宙パトロールルル子』。家で自炊したご飯を食べながらアニメとか映画を観るっつうのがマジで幸せです。あかん、これ絶対しゃべり過ぎや(笑)。

 

 

Profile _ 平井亜門(ひらい・あもん)
1995年9月28日生まれ。三重県出身。「smartモデルオーディション2017」でグランプリを受賞後、モデル・俳優として活動。主な映画出演作品に、『PとJK』(17/廣木隆一監督)、『セブンティーン、北斗夏』(17/冨樫森監督)、『36.8℃』(18/安田真奈監督)、『左様なら』(19/石橋夕帆監督)、『アルプススタンドのはしの方』(20/城定秀夫監督)、『うみべの女の子』(21/ウエダアツシ監督)がある。

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Information

平井亜門さん出演映画『階段の先には踊り場がある』

2022年3月19日(土)より、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

脚本・監督・編集:木村聡志
出演:植田雅、平井亜門、手島実優、細川岳、朝木ちひろ 他

『階段の先には踊り場がある』公式サイト

©LesPros entertainment

  • Photography : Yutaro Yamane
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)