pillings 2025秋冬コレクション、多面的な解釈を誘う普遍性への探究
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中央には木の板が敷かれ、その上をゆっくりと確かめるように歩くモデルが続いた。先日「LVMH プライズ」のセミファミナリストにも選出された村上デザイナーが手掛ける<pillings(ピリングス)>は、今回のコレクションで11回目を迎え、これまでブランドが創り上げてきた記憶と想像の断片から普遍性を探ったという。
発表後に配られたリリースには「ぼんやりとした古郷のようなものを作りたいという思いがあったのかもしれません。」とも綴られ、過去を振り返ることで村上デザイナーが自ら作り上げたブランドという城の存在を確かめる行為のように感じられた。それらは、過去のコレクションを彷彿とさせる会場の演出、今回初めてコンテンポラリーダンサーの山田うんを迎えてクリエイトされたモデルの佇まいや丁寧な足取りのウォーキングからも読み取れた。
ファーストルックはクラシックなボタン留めとフラップポケット、ほつれたディテールがブランドの美学を象徴する手編みのニットジャケットに裾に寄せられたシワが印象的なアシンメトリーなニットスカートが登場。続くジャケットやワンピースにも、歪なカッティングや立体的に浮かび上がったシワが装飾のように施されていた。
今回のコレクションでは全てのニットに強縮絨がかけられ、縮率の異なる素材がドッキングされたアイテムや縮絨によって本来の生地とは異なる肌触りを実現するなど、素材に対する実験的なアプローチが窺えた。
どこかノスタルジックな雰囲気を感じるのは、立体的に浮かび上がるデザインがスリッパや靴下にも見え実家を想起させたからかもしれない。玄関に当たり前のように並べられたスリッパや、無造作に置かれた靴下が広がるその何気ない光景に温もりを感じて安堵する。変わらない居場所に立ち返ることで見えてくる普遍性が自らをより強固なものにするように、11回目のコレクションを迎えた<pillings>にとって「古郷を創作する」という行為は、必然ともいえる自然な回帰だったのだろう。また、ここまで歩んできた道のりを振り返れば、さまざまな人の支えがあったことに気づく。人の手が絡み合うように見える立体的なデザインからは、常に誰かの存在を意識したものづくりを続けてきたデザイナーの想いの具現化と捉えられた。
ほつれたノルディック柄のニットや露わになった裾の裏地が印象的なスカート類は過去のシーズンを彷彿とさせながらも、偶発的にデザインされたシワによって新たな解釈が加えられている。深く刻まれたシワは、これまで辿ってきたブランドの歴史や物語の証として投影され、クラシックなスタイルへと昇華された。
見る人によっていろんな解釈が生まれる装置を創れるのがクリエイションとして大事なことなのではないかと思案する村上デザイナーは未まだ見たことのないものに対する強い好奇心と探究心で満ちている。これまでの<pillings> の歩みを振り返りながら、新たな挑戦に挑み続ける創意進取的な姿勢をこれまで以上に実感したコレクションであった。
pillings
2014年春夏、村上亮太と母・千明によって<RYOTAMURAKAMI>をスタート。2018年春夏にはデザインを村上亮太が手がける形となり、2020年にブランド名を<pillings(ピリングス)>に変更する。“ものづくりの愛おしさ、背景を創造創生を持って表現していく事”を背景に日本の手編み職人と共にハンドニットを中心にコレクションを展開している。
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- Edit : Miwa Sato (QUI)