どこか不規則だけれど愛おしい、ドバイを拠点とするニットウェアブランド|Ugly Sweater Club
素材や編み方によって風合いが変化するのがニットの魅力
—おふたりはファッションについてどちらで学んだのでしょうか。
アンジェリカ:私はアントワープ王立芸術アカデミーで学び、さらにイタリアの大学院にも進学しました。その後はモスクワなどのウールファクトリーでインターンを経験し、ニットウェアの会社でデザイナーとしての実績を積んで<Ugly Sweater Club>を立ち上げました。
アリーナ:私が大学で専攻したのはPRやマーケティングについてです。<Ugly Sweater Club>では主に国際的な流通などを担当しています。
—ファッションブランドを姉妹でやるのは最初から決めていたことですか。
アンジェリカ:ブランドをやるというのは私のアイデアだったので最初は一人でした。アリーナは他の仕事をしながらも立ち上げ段階からいろいろとサポートしてくれていて、ブランドが成長したこともあり二人で一緒にやっていくことにしました。
アリーナ:私はドバイで、アンジェリカはイタリアで、離れた国で暮らしていますけど共同設立者としてスタートさせたのが2019年です。
—別の国に住んでいたらコミュニケーションは大変ではないですか。
アリーナ:コミュニケーションは24時間欠かしていませんよ(笑)。
アンジェリカ:小さなチームではありますがサンクトペテルブルグに生産の拠点を構えているので、私もアリーナもロシアに帰国する機会は割と多いです。制作スタッフともコミュニケーションはしっかりと取っています。
—<Ugly Sweater Club>はその名の通りセーターに特化したブランドですが、それには何か理由があったのでしょうか。
アンジェリカ:素材や糸、編み方によって着心地も手触りも変化するセーターにずっと魅力を感じていました。インターンシップではニットブランドで働いたこともあって興味がさらに深まり、あらゆる素材に手を広げるのではなくてウールなどの限られた素材だけで服を表現したいと思ったんです。
—お二人にとってセーターは馴染み深いアイテムだったのでしょうか。
アンジェリカ:ロシアでは幼少期にお母さんの手編みのセーターを着る子供たちが多くて、私たち姉妹も小さい頃から着ていました。ニットに興味を持ったことも私にとっては自然なことだと感じています。
ロシアには少なかったコンテンポラリーなファッションを
—最初はアンジェリカさんが<Ugly Sweater Club>を始めたとのことですが、ブランドを設立することは夢だったのでしょうか。
アンジェリカ:ファッションに携わる仕事をやりたかったのでブランドで働きたいと思っていましたが、自分で立ち上げることまでは考えていなかったです。ただ、ロシアにはコンテンポラリーなファッションが少なくて、やってみたいクリエイティブを実現できるブランドがなかったので独立を決めました。
—ブランドは立ち上げるのも継続させるのも大変なことだと感じますが、妹のアリーナさんは姉のアンジェリカさんの決意をどう思いましたか。
アリーナ:ファッションの勉強をしていた頃から将来的にはブランドをやってほしいと思っていました。特にロシアのファッション業界はバラエティに富んでいないので、姉がブランドを立ち上げると聞いて嬉しかったです。
—ブランド名についている「Ugly」は直訳すると「醜い、不恰好な」といった意味がありますが、なぜこのようなブランド名になったのでしょうか?
アンジェリカ:ニットブランドで働いていた時に制作過程のミスによって、不完全な状態のプロダクトができることがあったのですが、私はそれに魅力を感じていました。私にとってアグリーセーターは愛おしい存在だったんです。そんなセーターを「みんなで一緒に楽しもう」という想いから、コミュニティやサークルを作るようなイメージで「クラブ」と付けました。
—これまでにいろいろなアイテムを発表していると思いますが、ブランドのシグネチャーアイテムのようなものはありますか。
アンジェリカ:シグネチャーアイテムとして挙げるなら「アレルギー」というセーターがあって、ブランドの初期から作り続けています。デザインも変更していませんし、カラーも定番化しています。私としてはいろんなカラーで作ってみたいんですけどね(笑)。
—「アレルギー」という名前もユニークですね。
アンジェリカ:ブランドを始めた時にアイテムごとに名前を付けようとを決めて、アルファベットの「A」から順番に頭文字を選んでいます。これはファーストシーズンに作ったセーターだったので「アレルギー」としました。アグリーセーターをモチーフにしているので、ちょっと違和感があるようなネーミングにしたかったんです。
—カジュアルなデザインからクラシックな要素を感じるニットまで多彩な表情が見受けられますが、デザインのインスピレーションは何から得ることが多いのでしょうか。
アンジェリカ:難しい質問ですね(笑)。インスピレーション源というのはあまり意識したことがなくて、あるシーズンの袖のデザインを次のコレクションでもエレメントとして採用したり、最初に作った時はシンプルなデザインだったけれど、そこにフードを付けてアレンジしたり、新しいデザインを閃くというよりは気に入ったデザインやディテール、モチーフを継続させている感じです。
—ブランドとして「予測不能な要素や不完全さ」を意識しているそうですが、それはどういう意図なのでしょうか。
アンジェリカ:それはブランドとしてのコンセプトではなく、ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)の歌詞のことですよね。彼女の「予測不能な要素や不完全さ」という歌詞を知った時に自分たちがやっていることと近しく感じたんです。<Ugly Sweater Club>のセーターは糸がほつれているように見えたり、タグが外側に出ていたり、人によっては制作途中のように感じることもあるみたいです(笑)。
いちばんの夢である自分たちのショップの第一号は東京に
—マーケットとしては世界を視野に入れていると思いますが、日本でショールームを開催しようと思ったのはどうしてでしょうか。
アンジェリカ:ありがたいことに日本でもブランドの認知が広がってきていて、<Ugly Sweater Club>のモノづくりに共感してくださる方が多いのではないかと、東京でショールームを開催することにしました。デザイン面だけではなく編み方や素材選びなどのクオリティまでしっかりと見極めてくれるところも日本人ならではだと感じています。
—クオリティという面でのこだわりを教えてください。
アンジェリカ:使用しているウールはイタリア製で、ウールマーク認証にもこだわっています。私がイタリアに住んでいるのも素材を厳選したかったからで、イタリアではウールの展示会も開催されているのでそこにも足を運んで自分で納得できる品質を選ぶようにしています。
—Instagramではクリエイションの見せ方も印象的ですが、おふたりで決めているのですか。
アンジェリカ:Instagramの投稿は私が担当することが多いです。
アリーナ:SNSでのスタイリングはおすすめの着こなしでもあるのですが、「<Ugly Sweater Club>のセーターはこんな風にも着れますよ」という世界観を生み出すためでもあるんです。ニットウェアなのでデイリーファッションとしてカジュアルに着てほしいですし、クオリティにはこだわっているのできれいめにも着こなしてほしい。いちばんはエフォートレスに楽しんでほしいです。<Ugly Sweater Club>をクールに着こなしている方とはぜひお友達になりたいです(笑)。
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—Instagramでは多くの日本のセレクトショップをフォローされていたことにも驚きました。
アンジェリカ:フォローしているショップが全て取扱店というわけではないですが、取り扱ってくれる日本のセレクトショップは少しずつ増えています。日本のバイヤーさんからは「プロダクトとして面白い」と言われることが多いです。
—ブランドとして今後の展望のようなものはありますか。
アンジェリカ:街で<Ugly Sweater Club>を着ている人を見かけるようになったり、親や知り合い以外でも買ってくれるようになったり(笑)。そういう積み重ねによってブランドが大きくなってきている実感はあります。これからもやりたいことだらけです。今回だけでなく日本でショールームをまたやりたいですし、今はオンラインやセレクトショップでの取り扱いだけなので、自分たちのショップを持つことが今の大きな目標です。
—<Ugly Sweater Club>の第一号店はどこに出店しますか。
アリーナ:もちろん東京!アンジェリカは慎重過ぎるところもあるので、私が「大きな夢を日本で叶えよう」と出店に関しては強烈にプッシュしていきます(笑)。
—<Ugly Sweater Club>として日本に可能性を感じてくださっているならうれしく思います。
アリーナ:私は東京は2回目なのですが、初来日の時も今回も期待していた以上に素晴らしい街だという印象です。街の人もおしゃれですよね。
アンジェリカ:私は初めての日本ですが大好きです。
アンジェリカ:今日は初めての日本のショールームに足を運んでくださりありがとうございました!

Ugly Sweater Club
ロシアで設立され、現在はドバイを拠点とするニットウェアブランド<Ugly Sweater Club(USC)(アグリーセータークラブ)>。2019年に設立され、不完全なニットウェアに愛おしさや美しさ見出した遊び心の溢れるディテールが魅力。職人技やサステイナブルにも積極的な関心を寄せ、高品質なイタリア製の糸を使った大胆なデザインを多く展開する。
Instagramはこちらから!
@uglysweaterclub
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)