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人生の進化とともに変化するクリエーション|STAMPDが描く今後のブランド像とは?

Nov 15, 2024
アメリカ・ロサンゼルス発のストリートブランド<STAMPD(スタンプド)>。
その旺盛なクリエーションの領域は幅広く、ファションだけには留まらず、家具メーカーの<IKEA>やLAで活躍する寿司職人のノブ・マツヒサ(松久信幸)ともコラボレーションするなど各方面で大きな話題を振り撒いている。ノブ・マツヒサと取り組んだ「SUSHI CLUB」は、セレブリティの間で人気になるなどLAのカルチャーを牽引する存在となっている。
今回、2024年10月に日本公式オンラインショプをオープンしたタイミングで来日したデザイナーのChris Stampに、ブランドの始まりからキャリアとともに進化や変化を遂げているというクリエィションへの向き合い方を聞いた。

人生の進化とともに変化するクリエーション|STAMPDが描く今後のブランド像とは?

Nov 15, 2024 - FASHION
アメリカ・ロサンゼルス発のストリートブランド<STAMPD(スタンプド)>。
その旺盛なクリエーションの領域は幅広く、ファションだけには留まらず、家具メーカーの<IKEA>やLAで活躍する寿司職人のノブ・マツヒサ(松久信幸)ともコラボレーションするなど各方面で大きな話題を振り撒いている。ノブ・マツヒサと取り組んだ「SUSHI CLUB」は、セレブリティの間で人気になるなどLAのカルチャーを牽引する存在となっている。
今回、2024年10月に日本公式オンラインショプをオープンしたタイミングで来日したデザイナーのChris Stampに、ブランドの始まりからキャリアとともに進化や変化を遂げているというクリエィションへの向き合い方を聞いた。
Profile
STAMPD
デザイナー Chris Stamp

コロラド州で幼年期を過ごし、サンディエゴに移住後はサーフィンに没頭する。イラストレーターの母の影響もあり、大学進学後はデザインを学び、在学中にスニーカーカスタムのビジネスをスタート。その後<Dope>、<Stampd LA>などのブランドを経て、2013年に<STAMPD>をスタート。
2015年には、GQ(US)のベスト新メンズウェアデザイナーの1人に選抜され、2016年にはVogue/CFDAファッション基金のファイナリストにも選出される。
IKEA、Puma、Vansなど、数多くのブランドとコラボレーションを行っている。

<STAMPD>のクリエイティブは人生の進化とともにある

—まずは<STAMPD>の始まりについて教えてください。

<STAMPD>の始まりは大学時代のプロジェクトでした。ハンドバッグのデザイナーであり、イラストレーターでもあった母の影響で、芸術の分野で働きたいと思っていたので大学も芸術系でした。そこでビジネス学部の起業家プログラムに編入し、学位取得課程の最後の6か月間でカスタムシューズ会社として<STAMPD>の事業計画書を作成しました。まずはLAでシューズを作り始めて、2013年にブランドを再構築してからシーズンごとのコレクションをニューヨークとパリで発表するようになりました。

—ブランドとして立ち上げる際に意識していたことはありますか。

Tシャツでも帽子でも「日常生活で実際に着る」という視点から、ストリートウェアの本質的な表現を高めることを意識していました。自分たちが生み出す全てのプロダクトを高めていくというのは、ずっと変わらない視点です。<STAMPD>を一言で表すとしたら「僕の人生の進化」です。ブランドを始動させた時と現在ではインスピレーションを得るものも大きく異なっていて、その変化こそがクールでクリエイティブな進化なんです。

—ブランドが軌道に乗っていくことで気づきなどもありましたか。

どんな規模のビジネスでも成長させて軌道に乗せるのは大変なことですが、良いことは必ずあります。それに気づきました。耐えなければならなかった試練や苦難は多く経験してきましたが、素晴らしい瞬間も同じぐらいたくさんありました。それは趣味や好きなものと同じように、ビジネスの性質なんだと思うんです。

—趣味にも変化などはありますか。

趣味といえるのはブランドをやることぐらいです。ただ、海や水に対する愛着はずっとあって、それはコレクションを始めたときからずっとインスピレーションのひとつになっています。(会場を見渡しながら)この空間と時間のために選んだグラフィックからも、ある種のニュアンスが反映されているのがわかると思います。

—<STAMPD>は「ラグジュアリーとストリートの融合」と表現されることもありますが、そのようなファッションカルチャーをどのように感じていますか。

ラグジュアリーカルチャーとストリートカルチャーの間に明確な境界線を引くのが難しくなってきているように思います。ヴァージル・アブローはストリートウェアからやって来て、世界最大のファッションブランドである<LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン>の舵を取りました。そして今はそのポジションにはファレル・ウィリアムスがいます。ストリートウェアのカルチャーをバックグラウンドに持つ人々がラグジュアリーセクターをリードしているのが現在の状況であり、今後その傾向はますます強まっていくのではないでしょうか。

—<STAMPD>はコラボレーションにも積極的ですが、印象に残っているものはありますか。

<IKEA(イケア)>とのコラボレーションアイテムは世界中の300店舗で展開され本当にクールでした。これほど大きな規模で取り組むことができたのは刺激的な経験で、その結果として物事を大きな視点で捉える能力が養われた気がしています。最近では<NIKE(ナイキ)>とのコラボレーションも特別でしたね。なぜなら<NIKE>は僕が子供の頃からリスペクトしてきたブランドであり、人生の一部ともいえるブランドだからです。

—コラボレーションをするうえで大切にしていることはなんでしょうか。

コラボレーションで大切なことは「意味を成すこと」と「本物であること」だと思っています。コラボレーションをする理由、その取り組みを通して伝えたいストーリーは意味を成すものでなければなりません。そして、そのコラボレーションが本物であればデザインのプロセスはずっと簡単になります。なぜなら、両者の繋がりが見つかることでアイデアが湧き始めコレクションが完成していくからです。

感性が共鳴し合った「SUSHI CLUB」のコラボレーション

—世界的に有名な寿司職人でもあるノブ・マツヒサ(松久信幸)とのコラボレーションである「SUSHI CLUB」について教えてください。このコラボレーションはどのように始まったのでしょうか。

ノブと出会ったのはLAで友人の紹介でした。コラボレーションは「クリス、どんなことをしたい?アイデアはある?」というノブの質問がきっかけでした。ノブは僕より年上ですが仲間のような存在で、僕たちの感性はとても近しいと思っています。なので、ノブとコラボレーションをするなら特別なものでなければならないし、<MATSUHISA>と<STAMPD>が単に一緒に何かをしたというのではなくて、そこに深い意味が必要でした。僕はデザインのプロセスにおいてノブがLAのカルチャーやLAの寿司カルチャーにもたらしたものについて考えました。その過程で「BEVERLY HILLS SUSHI CLUB」のアイデアを思いついたんです。元々は単発コレクションのつもりでしたが、あまりにも反響が大きかったために最初のコレクションから2年後に、<STAMPD>から派生した「SUSHI CLUB」として大規模に進化させました。

—「SUSHI CLUB」はビバリーヒルズ以外でも展開されていますね。

僕自身はロサンゼルスのコレクションに留めるつもりでした。それが、ある時にアスペンで展開してほしいという要望を受けたことで「BEVERLY HILLS SUSHI CLUB ASPEN COLORADO」の帽子を作りました。すると「僕たちが欲しいのはBEVERLY HILLS SUSHI CLUBじゃなくてASPEN SUSHI CLUBがなんだ」と言われたんです。コロラド出身でアスペン生まれの僕にとって、ビバリーヒルズの次の場所がアスペンなのはクールだと思いましたし、結果的にアスペンでのコレクションが完売したことで「SUSHI CLUB」のグローバルツアーというアイデアが生まれたんです。

—「SUSHI CLUB」はコラボレーションを超えた融合だとおっしゃっていましたね。

僕は「SUSHI CLUB」でまったく違うレベルのインスピレーションを得たと思っています。レジェンドであるノブのことは尊敬していますし、感謝もしています。ノブと「SUSHI CLUB」のプロジェクトに取り組めたことは素晴らしいことでした。料理のことだけでなく芸術においても多くを学ぶことができたからです。

—この会場に展示されているのもアーティスト、Ryota Daimonさんとの新しいコラボレーションですが、どのように始まったのでしょうか。

彼は本当に素晴らしい絵を描いていて、僕はファンになりました。最初からコラボレーションの具体的なアイデアがあったわけではありませんが、彼とはクリエイティブな部分で意見が一致したこともあって、クリエイティブな主導権を渡した状態でいくつかの作品を提案しました。コラボレーションが実現したのはそこからです。

—こうしたアーティストとのコラボレーションは共感や友情がきっかけになったりするのでしょうか。

ブランド同士での取り組みとなると少し違いますが、アーティストとのコラボレーションの場合は確かに共感や友情がきっかけになっているかもしれません。相手がアーティストであってもブランドであっても必要不可欠なのは相互の理解です。クリエイティブが意味を成すためには本物の関係性が必要だと思っています。

コレクションは削ぎ落として作りたいものを明確にしていく

—ご自身のパーソナルな部分についてもお聞きしたいです。過去のインタビューで「個人としてはセンスとスキルを磨き、良いものを作れる人間になりたい」と答えていました。センスやスキルを磨くために意識していることはありますか。

センスにしてもスキルアップにしても意図的に起こせるものなのかどうかはわからないですが、それは人生の有機的な進化のようなものだと思います。デザインをするときでも自分の視点を信頼して、直感を信じています。そういうことを繰り返すことで自然に進化することが僕にとって大事なことです。

—意図したり計画したりすることはなく、あくまで有機的ということでしょうか。

僕たちはコレクションを計画するけど、それをなぜ作るのかというプロセスは大きなアイデアの網から始まります。そのアイデアを通して自分が惹かれるものを厳選し、より明確で計画的なアプローチに絞り込んで、コレクションを構築していきます。近々、モルディブで手掛けている大規模なプロジェクトについて発表する予定ですが、それは島を訪れたゲストにコレクションをどのように着こなすかという体験を提供するもので、実験的な製品と体験型のアイデアが融合したようなものといえます。

—新しいプロジェクトといえば2024年10月には日本公式ストアをオープンされました。

<STAMPD>の初期コレクションが日本で成功したこともあって、日本のファンから「どうすれば<STAMPD>のアイテムを手に入れられることができるのか?」という問い合わせがずっとありました。日本のファンが僕のコレクションにアクセスしやすくなることがより重要だったので日本公式ストアのオープンに至りました。

—ブランドとして考えている今後の方向性のようなものはありますか。

コレクションを洗練させることに尽きます。これまではコレクションを大規模に展開させてきましたが、これからは作りたいものをひとつひとつ明確にして、もっと削ぎ落としていこうと思っています。Tシャツやパンツのフィット感など、細部を掘り下げていくことに集中していきたいです。

—コラボレーションについても積極的に続けていきますか。

独自の方法で成功していて、新しい視点から刺激を与えてくれるような若いアーティストと一緒に仕事をするのが好きなんです。なので、アーティストとコラボレーションはこれからも続けていきたいと思っています。

 

-POP-UP情報
場所:BIRTH DAY FUKUOKA
日時:11月16日(土)・17日(日)
営業時間:11:00-20:00
住所:〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名1丁目2-37-1 セルバ西大名1F
電話:092-721-1125

場所:MAD BOLT GARAGE HARAJUKU
日時:11月23日(土曜)〜11月29日(金)
営業時間:11:00-19:00
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-11-1
TEL:03-6427-9668

-STAMPD日本公式オンラインストア
https://stampd.jp

-STAMPD instagram
@stampd

  • Photography : Kaito Chiba
  • interview : Hiroko Aoyama
  • edit : Yusuke Soejima

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