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セレクトショップの次なる視線 | fernweh 溝口翼

Mar 2, 2024
その名の通り、オーナーやバイヤーの審美眼がフルに発揮される「セレクトショップ」。
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は世界観の拡張を意識した幅広いラインナップが特徴の「fernweh(フェアンヴェー)」の溝口翼さんにお話を伺った。

セレクトショップの次なる視線 | fernweh 溝口翼

Mar 2, 2024 - FASHION
その名の通り、オーナーやバイヤーの審美眼がフルに発揮される「セレクトショップ」。
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は世界観の拡張を意識した幅広いラインナップが特徴の「fernweh(フェアンヴェー)」の溝口翼さんにお話を伺った。
Profile
溝口 翼
fernweh オーナー

世田谷区梅丘のコンセプトショップ「fernweh」代表。
自身が運営してきた下北沢の「KALMA」を閉店後、花屋「duft」のオーナーである妻と共に複合型ショップ「fernweh_duft」をオープンする。
また、同時期に宮城県仙台市にニューオープンしたセレクトショップ「FERN OST GALERIE」のクリエイティブディレクターに就任しており、現在は全く異なるコンセプトと地域性の2つのショップでクリエイションを行なっている。

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@tsubasa_mizoguchi

自らがプレイヤーとなって発掘する古着をメインに

ー お隣はフラワーショップなんですね。入口も同じですが「二つでひとつ」のショップのような考えなのでしょうか。

溝口:フラワーショップは妻のお店なんです。併設ではありますが洋服などを扱う僕のお店とはコンセプトが異なります。空間デザインや空気感の演出に繋がるような部分は2人で考えていますが、「二つでひとつ」のようことを特に強く打ち出しているわけではないです。

ー 溝口さんといえばセレクトショップ好きにとっては下北沢の「KALMA(カルマ)」だと思いますが、そちらを閉店させて「fernweh」をオープンさせた理由は?

溝口:「KALMA」は自分が22歳の時に入社した会社で任せてもらっていたお店で、雇われ店長のような立場ではありましたがショップの方向性も商品の買い付けもすべて自由にやらせてもらっていました。

ー それだけ自由に一任されていたならどうして独立をされたのでしょうか。

溝口:いちばんの理由は子供が生まれたことなんです。特にフラワーショップは重労働で仕事と育児を両立させていくことは難しそうだと。それでも自分たちのショップであれば面倒を見てくれる手がないときにも子供をお店に連れてきやすいと家族経営のようなスタイルに切り替えたんです。

ー セレクトショップの店長という立場は同じですが、「KALMA」と「fernweh」で変わったこと、変えたことなどはありますか。

溝口:古着とデザイナーズブランドの新品を取り扱うのは同じなのですが、その比率が「KALMA」の頃と「fernweh」では大きく変わりました。古着と新品では自分も向き合い方が異なっていて、古着は自らの勘などを頼りに発掘してくるので自分がプレーヤーそのものの感覚なのですが、新品は作品とギャラリーのような関係で作り手の意思や意図をセレクトを通じて世の中に発信している感覚です。そういう考え方の結果、「fernweh」では古着がメインになっています。

ー それはシンプルにファッションとして古着が好きということでしょうか。

溝口:自分の表現方法の根幹がヴィンテージにあるんです。「fernweh」のショップコンセプトの一つでもある“自分の表現をする”という構想にも基づいて、古着の比率を大きくしています。ただ、これからのデザイナーを応援したいという気持ちもずっとあるので新しいデザイナーの発掘にも力を入れていて、自分がセレクトした新品は仙台のお店に多く置くようにしています。

ー 仙台にもショップが?

溝口:そちらは自分のお店というわけではなくて、ディレクターとして関わらせてもらっています。

ー ショップで取り扱うアイテムの構成に変化があってお客さんの反応はどうですか。

溝口:ありがたいことに「僕がセレクトしたものを信頼している」と言ってくださって、「KALMA」の頃からのお客さんもお店や場所が変わってもいらしてくださる方は多いです。僕が古着に最も力を入れていた初期からのお客様の中には、バランスが新品に傾いたことで一部離れていた方もいらっしゃったのですが、僕が古着を提案するのを待ってくれていたようで、「fernweh」になってからまたきてくださるようになったことはとても嬉しかったです。

自分の好きを突き詰めた結果の多彩なラインナップ

ー ブランドやアイテムをセレクトするときに大切にしていることはありますか。

溝口:古着のセレクトはアメリカが中心なのですが、海外に買い付けに行ったら必ず自分が知らなかったデザイナーのアイテムをひとつは日本に連れて帰ろうと思っています。僕が古着に惹かれる理由として「未知なるもの、見たことがないもの」というのがあるんです。買い付け前にリサーチをするわけでもなく、現地のコレクターなどに未知なるブランドを紹介されてそれが勉強になり、買い付けのたびに自分の中にいろいろと蓄積されていくのが楽しいです。店名の「fernweh(フェアンヴェー)」も「旅をしたくて仕方がない」といった意味があるんです。

ー 「フェアンヴェー」は馴染みのない言葉なのですが、どんな想いを込めてショップ名としたのでしょうか。

溝口:これはドイツ語なんです。買い付けは日本だけでも完結させることはできるのですが、「フェアンヴェー」と名乗るからには積極的に海外にも足を運ばないといけない。「服を探しに旅をしたくて仕方がない」という店名なのだから「海外への買い付け、サボるなよ」と自分自身に言い聞かせるような気持ちで選びました(笑)。

ー 「fernweh」をオープンさせるときに「こんなお店にしていきたい」という方向性のようなものは明確だったんですか。

溝口:洋服だけに固執することはやめようと思いました。店内にはイラスト画もあればハンドバッグや陶器、書籍も置いていますが、これらはすべて販売しています。最初にフラワーショップとの関係をお話ししましたが、別のお店ではあっても相乗効果のようなものを考えていないわけではないんです。お花がある、服がある、その間を埋めていくものまで提案したいと思っています。

ー ライフスタイルの広がり、そんなイメージでしょうか。

溝口:世界観の拡張ともいえます。「fernweh」では自分の好きをもっと突き詰めたいという思いは最初から持っていました。僕の「これが好き!」という熱量を原動力としてセレクトしているものばかりなので、服もバッグも陶器もどこかでリンクする部分はあるはずなんです。総合的に心地いい空間を提供したいという思いはずっと胸に秘めていたのですが、以前の自分ではそれを実行に移せなかったんです。

ー その理由は?

溝口:まだ服のセレクトに関しても積み上げていかなければならないことがあるはずだと。そこをマスターしていないのに雑貨やインテリアにまで手を広げることに抵抗があったんです。でも、今なら大丈夫かもという意識がようやく芽生えてきました。

何ショップなのかわからないようなお店でありたい

ー 「fernweh」のお客さまはどんな方が多いですか。

溝口:年齢層でいえばかなり幅広くて、20代から60代までいらっしゃいます。お客さんのアイテムの選び方というのも変わってきていて、「fernweh」には上になると50万円近い服もありますが、お金があるから高価な服を選ぶというわけでもなくて、自分が好きだから、自分に必要だから選ぶという方が増えているような気がします。お金に余裕があっても気に入ったら1万円台のワンピースを購入される方もいますし、それが時代の価値観なんだろうなと。

ー ヴィンテージだと一点物も多いでしょうから「好き!」という出会いがあったら迷わず選ぶべきですね。

溝口:売れたら補充ということが一点物はできないので、「fernweh」ではお客さんが訪れるタイミングによってはディスプレイされている商品がまったく異なることもあって、それによって店内の雰囲気から景色そのものまで違うこともあると思います。その辺りも一般的なセレクトショップとは違うところかもしれません。

ー お話を聞いていると「fernweh」はセレクトショップなのかヴィンテージショップなのか、はたまたライフスタイルショプなのか、と思います。

溝口:僕は自分のお店について「セレクトショップ」とも「ヴィンテージショップ」とも自ら口にしたことはないです。呼び方は来店されるお客さまや取材をしてくださるメディアに委ねています。むしろ「fernweh」は何ショップなのか、誰も答えられないようなお店でありたいです。

ー 溝口さんの思い描く世界観を具現化したコンセプトショップですね。

溝口:もちろん、そう言っていただいても僕としては異論はないです。

新しいアプローチに挑むクリエイターを応援していく

ー 「fernweh」のこれからについて描いているビジョンなどはありますか。

溝口:これからきっと世に出てくる新しいデザイナーの商品をセレクトするときは、見た目は最低限に当たり前のこととしてクリエーションとの向き合い方をすごく大切にしています。人柄であったり、姿勢であったり。才能はすごく感じる、でも発信に長けていない、そんな不器用なクリエーターほど惹かれるんです。そういう意味ですごくバックアップしたい日本のブランドがあります。

ー なんというブランドでしょうか。

溝口:<MST PAACS(エムエスティーパックス)>というバッグブランドです。3Dプリンターでバッグの型を制作して、それをベースにデザイナーが自らの手作業でレザーで作り上げているんです。手間も時間もかかるので量産もできないですし、ひとつを制作するのに4カ月近くかかるそうです。しかも、そのデザイナーはそのバッグで食べていこうとも思っていない、そもそも収納スペースも少なくてバッグとしての機能を果たしていない、2020年にファーストコレクションを発表したはずなのにそれ以降音沙汰もない(笑)。これはなんとかしてあげたいと。


MST PAACS

ー 溝口さんをそういう気持ちに突き動かしたのはなんだったのでしょうか。

溝口:ずっと古着を見てきているからかもしれないのですが、ファッションはやはり時代の繰り返しで、本当の意味で新しいことをやるのは難しいと思っています。でも「新しいアプローチ」には可能性があるはずです。モノづくりにはクラフトとデジタルが存在して、これから主となっていくのはデジタルです。ですが人の手が介在しないプロダクトに魅力を感じるかといえば僕は「NO」です。クラフトとデジタルのどちらも介在する、しかもユニークな発想がベースとなっている<MST PAACS>には新しさを感じました。

ー 「この感覚は新しい」と心を掴まれたわけですね。

溝口:「fernweh」では<MST PAACS>の展示販売会、オーダー会のようなポップアップを企画しているのですが、もしかしたら納期も1年後になるかもしれません。それでも「fernweh」のお客さまなら「それも良し」と思ってくださるのではないかなと思っていて(笑)。実験的と思われるぐらい新しいアプローチに挑戦しているブランドやクリエイターがいたら「fernweh」としては積極的に取り上げていきたいと思っています。

溝口 翼がリコメンドする3つのアイテム

1960-1970’s VINTAGE

VINTAGEの手編みニットアウター


比較的近年のアメリカのローカルアパレルブランドのもの

PVC素材のクロスボディバッグ

1970-1980’s VINTAGE

LAの日系アーティストYUKIO ONAGAによるセラミック作品

fernweh

2023年に下北沢のセレクトショップ「KALMA」を閉店後、同年の11月に梅ヶ丘にオープンしたセレクトショップ。フラワーショップ「duft」も併設された店内にはヴィンテージ、セレクトアイテムを中心に書籍や陶器、絵画なども販売されている。

〒154-0022
東京都世田谷区梅丘1-33-9 #201
13:00-18:00 定休日 水・木

Instagramはこちらから!
@fernweh__jp
@duft__jp

  • Photograph : Reina Tokonami
  • Writer : Akinori Mukaino

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