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ART/DESIGN

アール・デコ博から100年、「バカラとアール・デコ」が語る時の輝き

Sep 5, 2025
特別展「バカラとアール・デコ ― 1925 年 パリ アール・デコ博覧会から 100 年 ―」が、バカラショップ 丸の内にて開催されている。会期は8月29日(金)から10月22日(水)まで。フランス・バカラ ミュージアム所蔵の名品7点が公開され、1925年のパリ アール・デコ博覧会から100年の節目を記念する特別展示となる。

アール・デコ博から100年、「バカラとアール・デコ」が語る時の輝き

Sep 5, 2025 - ART/DESIGN
特別展「バカラとアール・デコ ― 1925 年 パリ アール・デコ博覧会から 100 年 ―」が、バカラショップ 丸の内にて開催されている。会期は8月29日(金)から10月22日(水)まで。フランス・バカラ ミュージアム所蔵の名品7点が公開され、1925年のパリ アール・デコ博覧会から100年の節目を記念する特別展示となる。

パリ アール・デコ博覧会から100年、再び現れるクリスタルの噴水

1925年、パリで開催された「近代装飾芸術・産業美術国際博覧会」(通称アール・デコ博)は、芸術と産業の融合を高らかに謳い上げた壮麗な祭典だった。この舞台でバカラは、ジョルジュ・シュヴァリエをはじめとするデザイナーたちとともに「噴水」をテーマにしたパヴィリオンを展開。

1925 年アール・デコ博覧会における、バカラパヴィリオン 外観 ©Baccarat

そこで披露されたシャンデリアは、7020ものクリスタルピースが沸き上がる水のように配され、壮麗な光を放っていた。来場者を魅了したこの作品は、展示テーマを体現した象徴であり、アール・デコ初期を代表する重要な作例のひとつとされている。今回展示されるのはその縮小版で、高さは1.4メートル。100年前に人々を魅了した光の彫刻が、いまバカラショップ 丸の内に姿を現している。

バカラパヴィリオン 内観 ©Baccarat

バカラとアール・デコの交差点

1920〜30年代にかけてヨーロッパを中心に花開いたアール・デコ様式は、幾何学的なフォルムと洗練された構成美、そして時代の進歩を象徴するモダニティを融合させた芸術様式である。古典主義と前衛的感覚を調和させたその美意識は、建築からインテリア、装飾芸術に至るまで幅広く影響を及ぼし、20世紀初頭の近代化とともに独自の美の世界を築き上げた。

アール・デコ博におけるカタログ ©Baccarat

アール・デコ博におけるカタログ ©Baccarat

この時代、バカラはアール・デコを代表する担い手のひとつとして、革新的なデザインと卓越した技術を融合させた作品を次々に発表した。とりわけアーティスティック・ディレクターを務めたジョルジュ・シュヴァリエは、伝統的なクリスタルの美に幾何学性や洗練されたシルエットを持ち込み、ブランドに新たな息吹をもたらした。1925年のアール・デコ博覧会では「噴水」をテーマにしたパヴィリオンを構想し、壮麗なシャンデリアや数々の傑作を披露。世界の来場者を魅了し、バカラはアール・デコを代表するメゾンとしての地位を確立した。

ジョルジュ・シュヴァリエ ©Baccarat

一方で、ここに並ぶ作品は一様ではない。アール・デコの様式美を色濃く映すものもあれば、バカラが長い時間をかけて培ってきた伝統的なクリスタルの美のうえに、時代の要素がそっと重ねられたものもある。その幅こそが、今回の展示をより興味深いものにしている。そして100年前に生まれた作品でありながら、現代の空間に置かれてもなお自然に馴染む。その佇まいは、バカラが時代を超えて守り抜いてきた美学を物語っている。

出品作品

シャンデリア「ジェドー(噴水)」

1925年のアール・デコ博覧会で「噴水」をテーマにしたパヴィリオンを象徴したシャンデリア。その縮小版が、今回バカラショップ 丸の内に展示されている。

シャンデリア「ジェドー(噴水)」 ©Baccarat

花瓶「ポピー」

フランスのデザイナー、ジョルジュ・デュネイムによる作品。花の一生を象徴的に表現したとされ、丸みを帯びたフォルムは豊かなつぼみを思わせる。器の下部には様式化された満開の花があしらわれ、生命の移ろいをひとつの造形に凝縮している。

この装飾様式は、家具や織物、建築装飾などにも広く見られるアール・デコ期特有のもので、当時の時代感覚を鮮やかに伝えている。

花瓶「ポピー」 ©Baccarat

花瓶「no. 36 bis」

花瓶「no. 36 bis」 ©Baccarat

グラスセット「菱形カット」

ジョルジュ・シュヴァリエによるデザイン。バカラ独自の製法で、純金を配合して再焼成することで発色させた赤いクリスタルを、透明なクリスタルに重ねた二重被せガラスで作られている。

力強いフォルムに、幾何学的なラインで刻まれた側面。赤と透明のコントラストが際立ち、キュビズムの影響を映すアール・デコ様式の特筆すべき傾向がここに見て取れる。

グラスセット「菱形カット」 ©Baccarat

ボウル「スクウェア」

ボウル「スクウェア」 ©Baccarat

グラスセット「スクウェア」

1937年、パリで開催された「近代生活における芸術と技術に関する国際博覧会」のために制作されたコレクション。ジョルジュ・シュヴァリエがデザインしたこのセットは、四角い台座を特徴とし、ステム(脚部)を持たない独特の造形を備える。

当時大流行していたヨットに合わせ、重心を低くすることで洋上でも安定性を保つ工夫がなされていたという。1925年に端を発した創造的アプローチを発展させ、クリスタル表現の可能性をさらに押し広げた意欲作である。

グラスセット「スクウェア」 ©Baccarat

グラスセット「フロレアル」

グラスセット「フロレアル」 ©Baccarat

バカラショップ 丸の内に並ぶクリスタルの数々は、ただ美しく飾られるだけでなく、それぞれが時代の空気を映し出している。透明度の高いきらめきや、光と影が織りなす表情に目を向けると、100年前のパリの気配がそっと立ち上がってくる。

開催情報

展覧会名:バカラとアール・デコ ― 1925 年 パリ アール・デコ博覧会から 100 年 ―
会期:2025年8月29日(金)~10月22日(水)
会場:バカラショップ 丸の内(東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル 1F
開館時間:11:00~20:00
休館日:不定休
観覧料:無料
問い合わせ:バカラショップ 丸の内 Tel 03-5223-8868
出品:バカラ ミュージアム所蔵の7点
公式サイト:https://www.baccarat.com/ja_jp/
Instagram :@baccarat

バカラとは

バカラは1764年、フランス東部の小さな村、「バカラ村」で誕生した。職人たちは土、空気、火、水といった自然の四元素を操り、比類なきクリスタルを生み出すことに成功した。19世紀以降は万国博覧会や国際展示会に出品し、その卓越した技術とデザインで高い評価を受けた。こうして「バカラ」の名は、華やかな宴や特別な場を彩り、フランスを象徴する存在として世界に知られるようになった。

バカラは多くのアーティストやデザイナーにとってインスピレーションの源であり、その出会いから生まれるコラボレーションを通じてオリジナルコレクションを発表してきた。いまではパリからモスクワ、ニューヨークから東京、マイアミから香港まで、メゾンやブティック、レストラン、ホテル、バー、ラウンジを通じて特別な体験を届けている。260年を超える歴史を誇るバカラは、伝統に根ざしながら未来への挑戦を原動力に、グローバルな成長を続けている。

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