仕事も釣りも状況を好転させるためにやるべきことをやる—俳優・浅香航大
1992年8月24日生まれ、神奈川県出身。2008年より俳優活動を開始。
近年の主な出演作品は、ABEMA「スキャンダルイブ」、テレビ東京「産まない女はダメですか?DINKsのトツキトオカ」、そして2026年10月7日より中京テレビ「仮面教師~妻を亡くしたその日から」でW主演を務め、10月10日から放送の日本テレビ「俺たちの箱根駅伝」の出演も控えている。
釣りをすると自分の中の野生的な感情が目覚める

—今日は天候が心配だったのですが晴れ間がのぞくこともありました。浅香さんは晴れ男タイプですか。
浅香:そう言われると釣りの予定が雨によって流れた経験は一度もないですね。
—釣りを無事に楽しむことができたのは浅香さんのおかげかもしれないですね。
浅香:そうですかね(笑)。
—浅香さんは釣りを始めてどれぐらいになるのでしょうか。
浅香:20歳ぐらいからなので10年以上です。
—何かきっかけがあって始めたのでしょうか。
浅香:僕は神奈川県厚木市の出身で、初めての釣りは地元の友達と横浜の海釣り公園に行きました。どういう理由で釣りをすることになったのかはよく覚えていないのですが、言い出しっぺは必ず僕なので友達を誘ったのも僕のはずです。

—なんとなくで始めたのかもしれませんが、釣りを10年以上も楽しんでいるのはどういう理由からですか。
浅香:海釣り公園で釣った魚を捌いてみんなで食べたのですが、それがすごくおいしかった。今でも「おいしい魚を食べる」というのは釣りの目的でもありますね。
—釣りが趣味で良かったと思うことはありますか。
浅香:釣りって自然と手軽に接することができますよね。堤防釣りは特別な準備をしなくても竿とクーラーボックスを持って、その場所に行けばすぐに始められる。僕は釣りに行って、そこで昼寝をしたりするのも好きなんです。目の前に海が広がって、場所によっては周囲に緑があったり、そんな自然の環境にスッと溶け込めるというのは釣りならではだと思います。

—浅香さんのプロフィールを拝見するとアウトドア全般が趣味のようですが、釣りに行きたくなるのはどんな時ですか。
浅香:自然に身を預けて無になりたいようなときは登山に行くことが多いですね。それに比べて「夢中になって楽しみたい」という気分が高まっているときに行きたくなるのが釣りです。釣りのときは目の前のこと以外は考えられなくなって、本当に集中しています。
—登山やキャンプなど他のアクティビティにはない釣りの魅力はなんでしょうか。
浅香:先ほども話しましたが「釣った魚をおいしく食べたい」という思いがあるので、自分の中の野生的な感情が目覚めるのが釣りです。魚がかかって釣り上げた瞬間にはアドレナリンが出ますし、それは狩りで生活をしていた時代の獲物を仕留めた瞬間の高揚感に近いものがあるんじゃないでしょうか。さらに釣りには夢があります。

—夢ですか?
浅香:いちばんワクワクするのは、準備をしている前日や車で釣り場に向かっている最中なんですよ。何が釣れるかなってシミュレーションして、狙った魚を釣り上げた自分の姿を想像したり。釣りを始める前には夢が広がります。結果がボウズだとしても最高の結果を思い浮かべて、ワクワクした時間が生まれたというだけで僕としては十分に釣りを楽しんだことになります。
—釣れても釣れなくても、浅香さんにとっての釣果があるんですね。
浅香:ファイトする感覚って、僕は釣りからしか得られないかもしれないです。でも、ゆっくりと時間だけが過ぎていくような釣りも好きです。「釣りのスタイルや楽しみ方は」と聞かれてもひとつには絞れないですね。

—今日は釣れたらすぐに次の餌をつけて、前のめりの姿が印象的でした(笑)。
浅香:釣れたら釣れたでやめ時がわからなくなります。もっと釣りたいって(笑)。今日のような海上釣り堀は初めてで、生簀のようなものなので釣りやすいのかなって思っていたのですが甘かった。魚たちは手強かったです。
ジタバタしても仕方がないのは俳優も釣りも同じ

—魚や自然に振り回される、翻弄される。思い通りにいかないのはストレスのはずですが、釣りに関しては「だからおもしろい」という意見もあります。浅香さんも同意見ですか。
浅香:「釣りは思い通りにいかないからおもしろい」ってすごく共感できます。釣りに限らず、悪条件が重なっても自分の知恵や努力でそれを突破することは、すごく気持ちいい。これは自分の俳優業にも通じますが「苦しみの中で生まれたもの」には美学を感じます。

—釣りを楽しむには忍耐力は必須かもしれないですね。
浅香:諦めの悪さは重要な気がします。同時に釣れないなら仕掛けやポイントを見直すといった柔軟性も大事です。
—試行錯誤があるからこそ記憶にも残るのが釣りのような気がしますが、浅香さんはご自身の釣り歴でいちばん印象に残っていることはなんでしょうか。
浅香:友達と行った最初の海釣り公園ですね。狙いは鯵ですが、稀に鯖がかかることもあるんです。僕も鯖が釣れたのですが、それがうれしかった。今でも当時のことを鮮明に覚えているのは、初めての釣りから本気で楽しんでいたんでしょうね。
—初めて釣りをした20歳の頃はすでに芸能活動はされていたんですよね。
浅香:芸能活動を始めたのは10歳ぐらいからです。親が事務所に履歴書を送ったのが芸能界入りのきっかけでした。

—俳優という仕事に対して釣りから影響を受けていることはありますか。
浅香:「俳優は待つことも仕事」と言われたりしますが、そういうものかもしれないと思えるのは釣りをしているからかも。結果が出ないときにジタバタしても仕方がない、仕事が順調ではないようなときに焦っても仕方がない、と日頃から思っています。だけど状況を好転させるためにやれることは必ずあるはずで、釣りでいえば餌を変えてみるとか。僕はジムに通っているのですが、役作りなどに関係なく、体型をキープし続けるということも自分ができることのひとつだと思ってトレーニングを日課にしています。
—周囲に釣り好きの俳優もいらっしゃると思いますが、自分との共通点を感じることはありますか。
浅香:釣りが好き、始めてみたいという俳優さんはいますが、一緒に釣りをしたことはないのではっきりとはわからないです。ですが、釣り好きは誰もが凝り性なのかもしれませんね。わかりやすいのは道具にこだわるということですが、僕は糸の結び方によって変化する強度なども徹底的に調べます。釣り好きとはそういうディープな会話になりますね。

—ターゲットによって仕掛けを変えたり、作戦を練ったり?
浅香:もちろんです。釣れなかったとしても、自分がさまざまなリサーチのうえに立てた戦略は間違っていないと確信があれば、次もその次もあえて同じ仕掛けで挑んだり。正解に辿り着いていたとしても、その日に限って魚に見向きもされないのが釣りですから。
—浅香さんは日頃から理詰めで考えていくタイプですか。
浅香:そうかもしれないですね。ジムでも最も効率のいい鍛え方で身体を動かします。考えてもキリがないようなことを考え続けて、自分なりの結論を出していくのが好きです。始めたのは20歳と遅めかもしれませんが、性格的に釣りにハマる資質はあったということですね(笑)。
—付き合いの長い地元の友達でも一緒に釣りをしたら浅香さんの緻密な面を初めて知るかもしれないですね。
浅香:仕事では自分ではない誰かを演じますが、釣りをしているときは完全に素の僕なので、そう感じる友達もいるかもしれませんね。
遊びやレジャーよりも本気のエンターテインメント

—釣りの流儀はいろいろお聞きしたのですが、俳優業において大切にしていることはありますか。
浅香:その場で起きた予想もしなかったことに、いかに上手く対応できるかということです。映画でもドラマでも俳優は台本通りに演じているように思うかもしれませんが、実は転ぶシーンではないのに何かに躓いたり、沈黙の場面ではないのに言葉に詰まったり、そういうことは現場ではよくあって、そのまま使われていることもあるんです。
—台本や演出になかった俳優のやり取りが使われることもあるんですね。
浅香:アクシデントがあってもNGではなく、そのまま続行するということはよくあることです。相手にどのようなことが起きてもそれを拾って演技につなげるための準備は常に心がけています。そういうアクシデントは俳優としての経験値を高める、引き出しを増やすギフトだと僕は思っています。こうやって話していくと状況を察知することが大切というのは、釣りに通じるものがあるなって思います。
—浅香さんは全ての趣味に対して本気で向き合っている気がします。
浅香:僕にとって釣りは暇つぶしではないですからね。狩りであり、戦いですから、かなり本気です(笑)。

—新たなチャレンジには躊躇しない性格ですか。
浅香:自分がやってみたいことであれば躊躇は全くないですね。やりたいと思ったら即実行です。ただ、さらに趣味が増えると時間が足りなくなるのはわかっているので、今は新しいことに手を出すべきではないと自分で自分を止めています。
—休日にやることがないという人もいますが、浅香さんはそれとは真逆ですね。
浅香:僕は小学生の頃から芸能活動をしているので、カレンダー通りの生活とは小さい頃から無縁でした。そういったこともあり、仕事が入っていないから何もしないという考えを持ったことがないんです。仕事がない日であれば、仕事モードから完全に切り替えるために他のことをする。だからいつもの自分の居場所ではない別の場所に足を運ぶ釣りやアウトドアに夢中になるんだと思います。

—浅香さんにとって釣りとは。釣りから学んだようなことはありますか。
浅香:ビシッと言えたらいいのですが「どうして釣りが好きなのか」と聞かれたら「夢中になれるから」としか答えようがないですね。
—浅香さんは釣りにかなりエネルギーを注いでいますよね。
浅香:疲れますが、その疲れも心地いいです。最近、友達と釣り旅行をしたんです。まずは友達の出身地である島根県を目指して日本海で釣りをして、その後は四国に回って瀬戸内海で釣りをして。東京からの移動手段は車だったので目的地に着くにも10時間以上かかりました。そして釣果といえばクーラーボックスは必要なかった(笑)。それでも釣り旅行に注いだ時間は全て幸せでした。

—それだけ夢中になれたということですよね。今日も頭の中では緻密な戦略を立てていたのかもしれませんが、釣りをしている浅香さんは少年のようでした。
浅香:「少年のようでした」と言われたら、きっとその通りだったんだろうなって自分でも思います。それは、これからも変わらないでしょうね(笑)。
- Produce : Yusuke Soejima(QUI)
- Photo : Kaito Chiba
- Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
- Edit : Ryota Tsushima(QUI)