QUI エディターが惹かれた、陶芸家 エリス・ゲトリフの6作品
本展では、2025年に滋賀県・信楽のNOTA SHOPで約3カ月間にわたるレジデンス制作を通して生まれた新作など、約80点の作品を紹介。土地の素材や技法を取り入れた器やオブジェをはじめ、多彩な作品が並ぶ。
エリスは今回の作品をA〜Uのグループに分け、作品同士の組み合わせによって生まれる関係性も表現の一部としている。
今回は、そのなかから実際に作品を見て惹かれた4グループ・6点をセレクト。色彩や質感、ユニークな装飾など、それぞれの魅力とともに紹介する。(PHOTO:Hiroko Matsubara)
エリス・ゲトリフ(Elise Gettliffe)について

photo by mariell lindhansen
フランスを拠点に活動する陶芸家。アントワープ王立芸術アカデミーでファッションを学び、日本滞在中に陶芸と出会う。ファッションで培った造形感覚と、東京で学んだ陶芸技法をもとに制作を続けている。2022年にはARTS&SCIENCEでの展示販売、2023年にはデンマークのデザインブランド<FRAMA(フラマ)>とコラボレーション。近年では、<Meryll Rogge(メリル ロッゲ)>の2025-26年秋冬コレクションで空間デコールも手がけるなど、活動の幅を広げている。
Instagram:@elise_gettliffe
G8_Bottle — 土と和紙、その間に咲く花

G8_Bottle
今回の作品のなかでも、正面にあしらわれた大きな花と、どこかぽってりとしたフォルムにひと目で心を奪われたのが「G8_Bottle」。
高さ12cmほどの小さなボトルは、中央がきゅっとくびれ、表面にはごつごつとした土の質感が残る。そこに組み合わされているのが、デザイナー・畠中美緒(@mio_htk)による和紙の装飾。首元を囲み、花の後ろにも通されたリボンのような和紙が、軽やかさを演出している。

G8_Bottle
土を焼き固めた陶器と、植物の繊維から生まれた薄く繊細な和紙。質感の異なるふたつの素材が重なり合うなかで、ひときわ目を引くのが、土でかたどられた花の装飾だ。植物は和紙となり、咲いては枯れる花は陶器となる。本来は移ろいゆく自然のものが、形を変えて残されている。その不思議な組み合わせに惹かれた。
そのままオブジェとして飾るのはもちろん、一輪挿しとして楽しむこともできる。鮮やかな色の花を合わせても、小ぶりな山野草を添えても似合いそうだ。花を生ける楽しみまで想像が広がる一点。
G8_Bottle
サイズ:φ63 × H120mm
Eグループ — 花のような模様と、土が生み出す表情

左:E6_Plate 右:E1_Tall Cup
花のような模様が印象的なプレート「E6_Plate」。縁には花びらを思わせる起伏が連なり、その内側には小さな白い模様がぐるりと並ぶ。中央に広がる格子模様と相まって、一輪の大きな花のようにも、いくつもの小さな花が集まっているようにも見える。
白と茶色のはっきりとしたコントラストに、土のざらりとした質感。どこか素朴で愛らしく、食卓で使うだけでなく、そのまま飾っておきたくなる一枚だ。
中央の格子模様は、信楽で採集した植物などを格子状に組み、ステンシルとして施したもの。器の表面に格子を置いて液状のカオリンを吹き付け、格子を取り外してから焼成することで、白く発色した部分と土本来の色が残る部分によって模様が生まれる。

左:E6_Plate 右:E1_Tall Cup
同じグループから選んだ「E1_Tall Cup」も、白と茶色が織りなす色彩が印象的。縦に伸びる凹凸に沿って、まだらな模様が浮かび上がっている。
こちらは、籾殻などを入れたサヤ箱の中で焼く、炭化焼成による作品。焼成時の炭素や酸素の少ない環境の影響によって、表面に予測できない色の変化が生まれる。口縁もプレートと同様、花びらを思わせる形に波打っている。小さな花を生けて、花器として使ってみるのもいいかもしれない。
E6_Plate
サイズ:φ230 × H25mm
E1_Tall Cup
サイズ:φ80 × H100mm
Fグループ — 土肌に映える、青い菱形と植物の絵柄

左:F3_Cup 右:F1_Cup
写真で見ていたときにはもう少し大きいものを想像していたけれど、実物はひと口、ふた口で飲み切れるほどの小さな茶杯。
「F1_Cup」は、落ち着いた土の色合いに、鮮やかな青の菱形模様が映える作品。くっきりとした幾何学模様がアクセントとなり、和の趣がありながら、どこかモダンな雰囲気も漂う。この意外な色彩の組み合わせが面白い。
「F3_Cup」は、転写によって植物の模様が施されたもの。漆器の蒔絵を思わせる絵柄には、どこか昭和の食器のような懐かしさも漂う。表面には小さな白い粒状の釉薬も点在し、細部まで表情豊か。

左:F3_Cup 右:F1_Cup
お茶を楽しむのはもちろん、普段使いのアクセサリーや小物を入れておくのもよさそう。
F1_Cup
サイズ:φ60 × H40mm
F3_Cup
サイズ:φ60 × H40mm
K3_Bowl — 波打つような色彩のグラデーション

K3_Bowl
ひときわ色彩に惹かれたのが「K3_Bowl」。エリスが以前から制作しているフォルムを受け継いだ作品で、特に目を引くのが、側面に広がるグラデーションだ。
底に近い黒っぽい色から、土肌を思わせるベージュやオレンジ、そして淡いピンクを帯びた白へ。外側には幾重にも色が重なり、その境目は波打つような曲線を描く。その色の重なりは、どこか地層を思わせる。

K3_Bowl
内側に目を向けると、黒に近い深い色が広がり、青い釉薬による小さな丸い模様が等間隔に並ぶ。波打つような口縁と丸い模様は、波や泡のようにも見え、どこか水の情景を連想させる。
信楽焼の陶土には、かつてこの地に存在した古代の湖の堆積物に由来するものもあるという。そんな土地の歴史にまで想像が広がる、手に取ってじっくり眺めたくなるボウルだ。
K3_Bowl
サイズ:φ130 × H75mm
あわせて読む|陶芸家 エリス・ゲトリフ インタビュー
展覧会情報・作品の購入について
「One Way In, Other Ways Out」
会期:2026年10月16日(金)〜10月18日(日)
会場:R.ALAGAN store & gallery
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑103
開催時間:10月16日(金)13:00〜18:00、10月17日(土)12:00〜18:00、10月18日(日)12:00〜17:00
キュレーション:GALLERY ESCAPERS
Instagram:@r.alagan/@gallery_escapers
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