The Actor — starring Ryo Tajima
そう教えてくれた人がいる。
もっとやれるよ。
そう信じてくれる人がいる。
田島亮。
俳優として、生きる。
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Others Stylist’s Own.
Interview with Ryo Tajima
田島亮インタビュー
— まず田島さんが、俳優という仕事に興味を持ったきっかけについて教えていただけますか?
僕は高校生のときに漫才をやっていたんです。漫才ってどれだけ時間をかけてネタを考えて稽古をしても3分間で終わるし、どれだけ頑張ってもつまらなかったら評価はされない。その残酷さが美しいと感じていて。
でもあるとき、フジテレビのドラマのディレクターだった父から「お笑いは向いていない」と言われちゃって。ただ何か表現はやりたいんだということを相談したら、俳優をやってみれば良いのではないかと。それで俳優の養成所に通ったら、1回目のレッスンからハマってしまいました。お芝居に一目惚れしたんだと思います。
— はじまりは漫才だったんですね。
そうです。お笑いをやっていたから、芝居のレッスンでも人と違うことをしたくなってしまい、アドリブを入れて先生にすごく怒られました(笑)。その発想力を、1つのセリフのなかにどれだけ人と違う裏側を作れるかということに注ぎなさいと。
そのことは今でもすごく覚えていて、それからセリフのなかにどういう意味があるのかを考え、一言一句変えないでどう演じるのかを考えることが面白くなりました。漫才の自由さよりも、芝居の自由さの方が自分に向いていると思った瞬間でした。
— その後、田島優成としてデビューして活躍されますが、2013年から4年間芸能活動を自粛することになってしまいます。役者業を再開するきっかけは何でしたか?
舞台で共演をしていた中嶋しゅうさんの舞台を観に行き、改めて謝罪しました。それと同時に、お芝居の癖がついてきてしまっているので数年間はお芝居から離れようと思っていることを伝えたら、「欠点は誰でも持っているんだよ」と。欠点から距離を置いても直らないからやり続けるしかない。やり続けて克服したら、また次の欠点がくるから続けなきゃダメだよと話をしてくださって。
— 素敵なアドバイスですね。
当時僕は、友人の不動産屋でアルバイトをしていたんですけど、社長さんにお願いをして、不動産屋の打ち上げパーティーの余興で芝居を披露させてもらったんです。そのとき、お客さんとしてその場にいた社長さんや従業員に良いものを観たと思わせたいという気持ちが生まれてきて。
自分に欠点があっても続けるということと、自分のためでなくお客さんを楽しませること。お芝居を何のためにやるのかという意識次第で、自分の演技や演出も変わっていくことを学びました。そこから復帰に向けて、どういう役者になりたいのかを地道に考えながら活動していきました。
— その後、映像制作のBABEL LABELでも働くことに。
きっかけは藤井(道人)さんです。27、28歳までに自主映画の監督と脚本を短編2本と長編1本やったんですけど、それですごく借金をしてしまって。監督は諦めて、いつか俳優に戻るためにどう生きていくかということをBABELの社長に相談し、弁当発注の仕事からはじめさせてもらいました。
— 藤井監督との出会いについて教えていただけますか?
藤井さんが日本大学芸術学部3年のころに実習で映画を撮ることになって、そのころ僕は俳優の養成所にいたんです。そこに藤井さんの同級生がいて、紹介されて知り合いました。
今では珍しくないですが、彼は昔から若手の俳優を集めてワークショップで映画を撮っていて。藤井さんがそのシステムを考えたときに、僕に相談が来て…という流れで仲良くなっていきました。
— そして今回、藤井監督が手掛ける『アバランチ』で8年ぶりのドラマ出演を果たしました。
もう二度とできないと思っていたので、藤井さんから連絡をいただいたときはすごく嬉しかったです。藤井さんの作品を観ていても、俺は使われなそうだと思っていたし、一緒に映画の話をしても、好みが合うわけではないし(笑)。
— そうなんですね(笑)。『アバランチ』ではどのように向き合っていったんですか?
藤井さんと僕、それぞれの好きなゾーンがあるんですけど、その中で少しだけ交わる部分があるんです。僕はその部分を探していて、たぶん藤井さんもそこ探してくれる感じがしていて。自分の感覚を大切にしつつ、藤井さんはどのようなことを望んでいるんだろうかと考えながら演じていきました。
— 俳優として久し振りに藤井監督とご一緒して、現場の様子はいかがでしたか?
変わらないところは変わらないですね。藤井さんは役者への演出がすごく丁寧で優しくてわかりやすいんです。あと、スタッフワークの作り方やまとめ上げ方がうまく、これをやっておけば絶対に間違いない、絶対に良い画になるというイメージを見つけるのが早い。
スタッフは、ほぼ藤井組で知っている方が多く、すごく助けられました。舞台では、板の上に立ってしまったらある程度俳優が一人で勝負するしか無いんです。でも映像は、何人ものスタッフさんたちが助けてくれるし良く見せてくれるので、そこに対しての信頼がすごくありました。
— ご自身がスタッフとして現場でつんだ経験も、俳優業に活きていると感じますか?
そうですね。一番感じたのは「引き」と「寄り」です。体全体が映るときは1000人くらいの劇場でもわかる意識で、顔の寄りを撮るときはお客さん5人くらいの劇場という意識。引きと寄りでは次のシーンを撮るときの意識が、役者もスタッフも全然変わるんです。それが映像のめちゃくちゃ面白い部分だと思っています。
— 『アバランチ』では記者の遠山役を演じていますが、役作りなどは?
記者を演じるのは初めてだったので、スポーツ新聞と週刊誌の記者の方にお時間をいただいて取材させていただきました。でもお話を聞くと、イメージしていた仕事と180度くらい違っていて。
— どんな発見がありましたか?
彼らは“ニュースを伝える”ということにすごく重きをおいていて、スクープを出すときにも、ちゃんと本人の反対意見なり説明なりを聞いてから出すようにしていらっしゃいました。真実を本人の口から喋ってもらって、それを含めた記事にしたいと。その話を聞いて、すごく誠意があるなと思いました。あと、僕が話を聞いた人たちはみなさん礼儀正しく、真面目で、誠心誠意仕事をされていて、基本一匹狼なんです。今回取材したことで、記者の見方がすごく変わりました。
— いろんな情報や知識を持っていないと難しい仕事でもありますよね。
特に政治系の記事を担当している方は、すごく繊細に記事を書いていると思います。記事を書くことで民衆を扇動することにもなるので。好奇心で仕事をしていて、そこに正義は無いとも言っていましたけど。
— 正義といえば、『アバランチ』の内容にも繋がってきます。
ドラマのお話をいただいたとき、リアルにアバランチがいたらどうだろうか、とすごく考えました。裁いてくれる人や暴いてくれる人がいたら良いけど、実際に現れたら叩かれることもあるだろうし、大きな力に潰されると思うし。
でも、有り得ないものではないというか。視聴者がそれをどう観て、役者はそれにどうアプローチするか。そして今回僕が演じる記者が書いた記事で、アバランチの評価を左右できる。すごくやり甲斐のある役なので、かなり気合が入っています。
— 共演者からも刺激を受けていますか?
以前僕が過ちをおかしてしまったとき、小栗(旬)さんが励ましてくれたんです。その時に連れていってくれたのが、『アバランチ』で編集長役の山崎潤さんのバーで、潤さんは「まあ人生長いから」って言ってくださって。そして今回潤さんと編集長と記者役で共演することになり、そういう細かなキャスティングまで含めてドラマを作っているところが、藤井イズムだなと。
(綾野)剛さんもそのころお会いしていたんです。それで今回の主演が剛さんだったので、めちゃくちゃ嬉しかったです。僕を起用してくれた藤井さんをはじめ、受け入れてくださったキャスト、スタッフの方々全員に感謝しています。
— 現在は“中嶋将人”というお名前でも活動されていますが、“田島亮”とはどのように使い分けを?
中嶋将人という名前はBABLE LABELで監督をするときに、自分の名前で映画を撮ると迷惑をかけると思い、二十歳で亡くなってしまった友達2人の名前を足してつけました。僕はあんなに最低なことをしてしまったけれど今生きているし、これから後悔無く生きていくために、自分への戒めとして。現在はプロデューサー/ディレクター/キャスティングとして活動するときは中嶋将人、俳優として活動するときは田島亮と使い分けています。名前で頭を切り替えられるのですごく便利ですよ。
— これからの活動で目標はありますか?
演劇を義務教育に取り入れたいと考えています。そのために貢献できる人になりたいなと。今、子役とかお芝居をまだあまりやっていない人、60歳から演技を始めた方とかの演技講師もやっていて。役の気持ちを考えることとか、物語について考えることが教育にとってどれだけ良いことかを、身に染みて感じています。
例えば、いじめを題材にしたお芝居を子供にやらせたら、きっといじめられる気持ちやいじめる気持ちがわかると思うんです。セリフを覚えたり、みんなの前で発表したりすると、すごく心に残るので。
— 身体的な道徳みたいで素敵ですね。では最後に、今改めて感じる役者の面白さ、魅力はなんでしょう?
2013年に過ちをおかしてしまってから去年まで7~8年間、役者に必要な五角形の要素があるとしたら、僕は演技力だけを磨いてきたんです。他のことを全く考えずに、とにかく演技が上手くなりたくて。詩森(ろば)さんと一緒にやってきて、詩森さんに認めてもらいたかった。それでずっとやってきたんですけど、去年大きな挫折があって。それをきっかけにもう演技は辞めようと思ったんです。
でもそこでもう一度五角形に立ち戻って。演技でダメだったとしても、自分が持っているカードでどんな勝負ができるのかもう一回考えてみたら、また楽しくなってきて。演技が上手いだけが全てではないというところが、役者の面白さなんですよね。
— 演技を突き詰めたからこそ、その視点が見つかったんでしょうね。
やっぱり海外に通用する演技力を持ちたいとか、山田孝之さんや森山未來さんのような演技力を持ちたいと思ってこれまで続けてきたので。僕は自己評価が高く、いつまでも求めてしまうので、本当に通用しないことを人から言われないとわからなかった。
かなり落ち込みましたけど、その時期に藤井さんに会えたのが良かったのかもしれません。「そんなことないよ田島。もっとできることあるよ」と言ってくれて。その出来事が、きっと今に繋がっているんだと思います。
Profile _ 田島亮(たじま・りょう)
1987年8月27日生まれ。埼玉で生まれ神奈川にて育つ。熊林高弘演出「いさかい」で俳優としてのキャリアを始める。映像にも多数出演する傍ら、舞台を主戦場としてキャリアを積む。蜷川幸雄演出「ヘンリー六世」「じゃじゃ馬馴らし」「血の婚礼」ダニエル・カトナー演出「みんな我が子」等に出演。4年間の俳優休業の後、舞台にて俳優復帰を果たし2021年カンテレ/フジテレビ「アバランチ」にて記者・遠山役を演じ注目を集める。
Information
田島亮さん出演
月10ドラマ『アバランチ』 (カンテレ・フジテレビ系)
監督:藤井道人
出演:綾野剛、福士蒼汰、千葉雄大、高橋メアリージュン、田中要次、利重剛、山中崇、堀田茜/渡部篤郎(特別出演)、木村佳乃
©カンテレ
- Photography : Kenta Karima
- Styling : Sora Murai
- Hair&Make-up : Akira Nagano
- Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
- Text : Sayaka Yabe
- Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)