街では流れないクリスマスソング 2025 | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 25
連載第25回目となるテーマは、「街では流れないクリスマスソング 2025」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し”が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
平成が生んだ、隠れたクリスマスの名曲「嘘も本気でピュアなハートで/BLUE」
recommend by ディスクユニオン 日本のロック 新福 美桜さん
主にWEBを担当。変わった音楽が好きで、最近は邦楽に加え、フレンチポップとC-POPも聞きます。
アーティスト名:Jelly Beans
アルバム名:嘘も本気でピュアなハートで/BLUE(1997年 / イーストワールド)

スタッフのおすすめコメント:
私が紹介するのは、1997年2月5日発売のJelly Beans『嘘も本気でピュアなハートで』に収録されている「BLUE」という楽曲です。今回は街では流れないクリスマスソングということで、真っ先にこのカップリング曲が思い浮かびました。Jelly Beansは、女優の浅野ゆう子さんと田中美佐子さんによる知る人ぞ知るユニット。心躍るイントロから織りなす音楽は、まるで物語のように様々な表情を見せます。浅野ゆう子さんの安定感抜群の透き通った歌声と、田中美佐子さんの柔らかく愛らしい歌声の調和が、何度聴いても心地よく親しみやすく素晴らしい。また歌詞も、イブの冬の情景描写と繊細な女性の心情が美しく描かれています。平成初期の良さを醸し出しながらも色褪せることない、煌びやかでアップテンポなクリスマスソングに、ハマること間違いなしです。
ミュージカルが語る“クリスマスの孤独”とやさしさ「Christmas Is My Favorite Time of Year」
recommend by ディスクユニオン 横浜西口店 濱田さん
最近は、かまいたちのラジオとYouTubeに生かされています。
アーティスト名:Original Broadway Cast
アルバム名:Christmas Is My Favorite Time of Year(2011年 / Ghostlight Records)

スタッフのおすすめコメント:
ブロードウェイミュージカル「Catch Me If You Can」OSTの中1曲。日本だとレオナルド・ディカプリオ主演の映画が有名な作品です。実在の天才詐欺師とそれを追うFBIという関係だけれど、“孤独”という共通点から妙な友情関係が芽生えていく2人。孤独な者達が電話越しに歌う「クリスマスは1年で一番お気に入りの季節。」という歌詞に、強がりと憂いがあって素晴らしいナンバーです。作品自体は、アップテンポでダンサブルな曲とともにスピーディーに進んでいきますが、このナンバーが加える切なさもこの作品の醍醐味です。ホリデーシーズンの浮かれた街も良いですが、そんな雰囲気に疲れた時にぜひ聴いてみてください。今作でトニー賞主演男優賞を受賞したノーバート・レオ・バッツと、ミュージカル好きに知らない人はいないアーロン・トヴェイトの掛け合いが染みわたります。
粉雪舞う夜にリアムが届けてくれた“信じていい”というメッセージ「ALL YOU'RE DREAMING OF」
recommend by ディスクユニオン お茶の水駅前店 棟方 明穂さん
ムナカタです!好きなバンドはオアシスと台風クラブ。ブリットポップが大好きです。サッカーも大好きです。好きな選手はエジルと松田直樹とヴォルテマーデ。
アーティスト名:LIAM GALLAGHER
アルバム名:ALL YOU'RE DREAMING OF(2020年 / WARNER)

スタッフのおすすめコメント:
せっかくフランス語でクリスマスを意味する「ノエル」と名がついているので、ノエルのソロ曲を選ぼうかと思いましたが彼はクリスマスが嫌いで有名。怒られたくないのでやめました。そこで頭に思い浮かんだのがリアムのソロ曲である「ALL YOU'RE DREAMING OF」。
この曲はまさに5年前のクリスマス直前、2020年12月23日にリリースされました。少し厳かな雰囲気を感じるバラードで、胸がしめつけられそうなほど美しいメロディ、優しくホーンが鳴り、リアムの力強くも優しさいっぱいの歌声が聴こえる。一聴して「クリスマスソングぽい!」という印象を受けます。MVでは、暗く粉雪が舞う中をリアムがひたすらに進んでいきます。
この曲がリリースされたのは世界中がパンデミックによってふさぎこんでいた時期。そんな状況でも決して歩みを止めず、光がない中でも進み続ける。そんなリアム自身の決意が見て取れます。「君には価値がある」と真っ直ぐ伝えてくる歌詞に、わたしは本当に支えられています。大好きなリアムにそんなこと言われたら、そう信じるしかないのです。信じていいと思わせてくれる人なのです。
私事ですが、昨年のクリスマスはインフルエンザに罹患しており、ずっと寝込んでいました。昨年の分まで、今年のクリスマスはたくさん楽しみたいです。メリークリスマス!
ふざけきった真剣勝負が、聖夜を焼き尽くす「X-Mas Project」
recommend by ディスクユニオン 物流 稲垣 吉人さん
気になったものは何でも試しに聴いてみる者。メタルからパンク、フリージャズやアヴァン系、ニューウェーブ等。一番好きなミュージシャンは浅川マキ。
アーティスト名:X-Mas Project
アルバム名:X-Mas Project(1986年 / Aaarrg Records)
スタッフのおすすめコメント:
1986年にドイツのレーベルから発表された『X-Mas Project』は、HR/HMの全盛期であった85年に「クリスマス曲をメタル化する」というHR/HMの流行に乗る形で企画されたものでした。集まったのは当時の独シーンで活動していた腕利きの面々。本気で取り組んだ冗談が生み出した結果、出来上がったのは単なる余興盤ではなく、ジャーマン・スピード/スラッシュの文脈に深く根ざした、異様なテンションで繰り広げられる祝祭アルバムでした。
「Jingle Bells」の爆走アレンジ、「Silent Night」は厳かな前半から一転して行く構成は特に鮮烈。ドイツ語キャロルの数々も、パンク~ハードロックを跨ぐ〈呑めや騒げや〉的飲み会メタルとして再構築されるなど、街中や店頭でも自然に流れやすいクリスマスキャロルゆえに、聞き覚えのあるフレーズは耳に残るフックとして機能します。宴会ノリの軽さと、80年代メタルならではの明るさ、腕利きの面々の技量によるタイトな演奏が絶妙に噛み合い、〈ふざけつつ本気〉という独特の空気を生み出す事に成功しています。
メタル・クリスマス企画の先駆の一つであり、遊びと技術、茶目っ気と当時のシーンの要素がひとつの皿に豪快に盛りつけられた、極めて贅沢なオードブル。一度聞いたら忘れ難い当作をぜひこの機会に!(レコードの他、2度CD化されています!)
アンダーグラウンドな聖夜、鋭く歪んだラブソングたち「A Christmas Record」
recommend by ディスクユニオン 中野店 飯谷 真帆さん
オルタナ、NO WAVE、アヴァンギャルド、実験音楽などが好きです
アーティスト名:V.A.(ZE Records)
アルバム名:A Christmas Record(1981年 / ZE Records)
スタッフのおすすめコメント:
ポストパンク~ニューウェイヴ系レーベル『ZE Records』からリリースされたクリスマスコンピ。
1981年にリリースされ、その後様々なフォーマットでボーナストラックを追加したりなどして再発されています。
参加アーティストはスーサイド、マテリアル、ワズ、クリスティーナなど。
再発盤ではジェームスホワイトなども。
内容は言わずもがなZEです。ニューウェーヴ!ディスコパンク!
ですがいつものZEの攻めっぷりの中では、比較的ホリデーハッピー感が漂っている気がします。
私のお気に入りはアランベガ「No More Christmas Blues」。
The Waitresses「Christmas Wrapping」もキュートで最高です。
誰かの勇気になれたらいい、12月のGOING STEADY「青春時代/惑星基地ベオウルフ」
recommend by ディスクユニオン 川崎店 鈴木 由加里さん
先月に引き続き川崎店スタッフの鈴木です。最近フライトキャップを編み始めました。楽しい。
アーティスト名:GOING STEADY
アルバム名:青春時代/惑星基地ベオウルフ(2003年 / 初恋妄℃学園)

スタッフのおすすめコメント:
ゴイステ解散後に発売された最後のシングルの収録されていた惑星基地ベオウルフ。実は解散ライブとなった渋谷ラママでのライブで会場で無料配布された音源でもあるんですよね…クリスマスイブの夜に素敵なプレゼントすぎます…。「クリスマス・イブまでにあの娘に告白できるかな」クリスマスイブってやっぱり昔から男女にとっては特別だと思うんです、この言葉を言われる“あの娘”はきっとあなたかもしれないしあなたかも。ぜひ、クリスマスに気になるあの娘にこの曲を共有してくださいな、あなたの告白を応援してます!クリスマス一色の街中で、この曲は聴くことはなかなかないと思いますが私はこの曲を聴いて一人心を暖かくしてます。
ノイズのない夜をくれる、大人のためのキャロル「クリスマス・ソング」
recommend by ディスクユニオン 柏店 西川 昌志さん
J-POP担当です。今一番の楽しみは、大谷選手のホームランを動画で観ることです。
アーティスト名:ケニー・ランキン
アルバム名:クリスマス・ソング(2009年 / ビデオアーツ)

スタッフのおすすめコメント:
ケニー・ランキンの『ピースフル・クリスマス』というアルバムをご紹介します。
この作品との出会いは去年、音楽愛好家の義父が聴いていたのを耳にし感銘を受けたことがきっかけでした。早速CDを買ってみよう!と思ったものの廃盤になっていることがわかり、案外入手が難しいことがわかりました。そうなると街で流れる確率は低いであろうと予測され、本テーマにふさわしいと思い今作を選びました。
伝統的な(王道?)クリスマスソングのカバー・アルバムです。ボーカルとギターのシンプルな構成なので、夜、外が静まった頃に聞くと落ち着いて聴けます。『サイレント・ナイト』を聴いていると、クリスマスの夜が目に浮かぶようです。個人的には、『クリスマス・ソング』(ナット・キング・コールのカバー)が、秀逸で心に染みます。クリスマスを穏やかな気持ちで過ごされたい方にお薦めです。
しゃがれ声とフェイクジャズがすれ違った、あの冬の音「12月」
recommend by ディスクユニオン 新宿ジャズ館 沖 昌宣さん
レスポール弾き。趣味ボクシング。好きなクリスマスケーキは「バタークリーム」。
アーティスト名:SION
アルバム名:12月(1987年 / BAIDIS)

スタッフのおすすめコメント:
1986年のデビューから長きにわたり活動を続けているシンガーソングライター「SION」の87年セカンドアルバム「春夏秋冬」。その独特の世界観と、トレードマークとも言えるしゃがれ声のヴォーカルはこの頃もうすでに完成している。そしてバックを務めるのはジョン・ルーリー、マーク・リボーの「ラウンジ・リザーズ」。新宿の片隅で生まれたフォークソングとニューヨークのバックストリートのフェイクジャズが見事に融合した一枚である。そんなアルバムの中の一曲「12月」を私はおすすめしたい。SIONは歌う。“あちこちから思い出したようにジョンの声”が流れるクリスマスの街で、俺はいつもこの季節になると”何かやり残したような柔らかな後悔をする”と。カレンダーが残り一枚となり、いよいよ年の終わりが近づいてきたこの季節、少なからずこの“柔らかな後悔”を感じる人も多いのではないだろうか。2025年12月。あなたは今年何をやり残しましたか?
木の響きに包まれた、ささやかな祝福のかたち「Merry Christmas From José James」
recommend by ディスクユニオン 買取センター M.F.さん
査定に係る事務手続き、カスタマーサポートなどをさせていただいております。
アーティスト名:José James
アルバム名:Merry Christmas From José James(2021年 / RAINBOW BLONDE)

スタッフのおすすめコメント:
アルバム全ての曲で、クリスマス・シーズンにゆかりのあるスタンダード・ナンバーをカバーしています。
木造の教会を改装したレコーディング・スタジオにてバンドが「せーの」で録音というシックなスタイルで制作されており、静かな空間で目の前の演奏を聴いているかのような錯覚を覚えます。
ホセさんの歌声は終始落ち着いていながらも温かみがあり、それを支える乾いた質感のジャズ・バンドの演奏を引き立てています。
ハーレムの子どもたちが届ける、声だけでつながる希望のかたち「The Sound Of Hope」
recommend by ディスクユニオン 買取センター M.F.さん
査定に係る事務手続き、カスタマーサポートなどをさせていただいております。
アーティスト名:The Boys Choir Of Harlem
アルバム名:The Sound Of Hope(1994年 / EastWest Records America)
スタッフのおすすめコメント:
アメリカ、ニューヨーク州ハーレム地区にて設立された少年合唱団のアルバムです。選ばれた近隣の都心部の子供たちは大多数がアフリカ系またはヒスパニック系でした。“Amazing Grace”、“This Christmas”を少年たちによるゴスペル・スタイルの合唱で堪能でき、心洗われます。
現代的なサウンドにゴスペルを乗せる事にも積極的に取り組んでおり、“Overjoyed”では先頃惜しくも亡くなられたD'Angeloが“Brown Suger”発表の前に、“This Christmas”ではBrian McKnightがそれぞれトラックを提供、歌で参加しています。他にも“I Need To Know”、“Children Of The World”など佳曲を多数収録しています。
いずれの曲にも「希望」、「感謝」のメッセージが通底して感じられ、信じる者同士が協力し作り上げる力強い歌声に胸を打たれます。それでは素敵なクリスマス・シーズンをお過ごしください。
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い

世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
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前回の記事はこちらから
「音の温度や湿度で選ぶアルバム」をテーマにおすすめアーティストをご紹介
- Edit : Yusuke Soejima(QUI)


