内田理央 – 人生が演技にいきる
演じることで、自分の経験をすべて肯定できる
— 内田さんが女優を志したきっかけはなんですか?
芸能界に入ったときには、自分がお芝居をするなんてことはまったく想定してなくて。どちらかというと、女優は手の届かない憧れの職業というイメージがありました。(2010年の)デビューはグラビアだったんですけど、そのうち小さな舞台に出させていただく機会が多くなって、そこで初めてお芝居というものに触れました。まだ自分が女優だという意識はなくて、チャレンジさせていただいているという感じでしたが。
— 舞台が最初だったんですね。
はい。そして(2014年に)ドラマ『仮面ライダードライブ』のオーディションに受かって、ヒロインを1年間やらせてもらうことになったのがお芝居に本格的に取り組むきっかけになりました。
— その後は舞台にドラマ、映画と数多くの作品に出演されていますが、メディアによる違いってありますか?
映画もドラマも観られる環境で違いはあるのですが、自分がやることがそこですごく変わるということはありません。でも舞台はまだどうしていいかわからないんです。この夏も舞台が控えているんですけどすごくドキドキしています。
— 『物語なき、この世界。』ですね。セリフ覚えはいいほうですか?
悪くはないと思います。ただナマでやる緊張感というのは舞台ならではなので……そこを楽しめれば。今回の『物語なき、この世界。』は一ヶ月半ぐらい公演があるんですけど、そんなに長いのは初めてなので自分がどんな気持ちになるのか楽しみです。
— 演じるということの魅力をどんなところに感じますか?
目の前にある役を全力でやっているうちに、いままでの人生でよかったこともつらかったこともすべてがお芝居にいかせるんだと気づいて。自分の経験をすべて肯定できるところに魅力を感じます。
昔のわたしは毎日暗くてネガティブで、なんで自分にはこんなに嫌なことばかり起きちゃうんだろうって。でもいまは「まあ、お芝居に繋がればいいや」って、それぐらいポジティブに感じられるようになりました。
— いろんなことがお芝居で昇華できているんですね。
そうですね。自分の人生がお芝居にいきるなら、いろんなインプットをしようと。生きる力にも影響している気がします。
— いまはもう自分は「女優」だという意識でいますか?
それがあんまりなくて(笑)。肩書きとして「女優でモデル」と紹介していただくことが多いんですけど、いまだに女優に対して憧れのイメージがあって、自分で女優とはまだ言えないです。
— そうなんですね。では理想とする女優像は?
いつもいろんな役にトライしている方には憧れます。わたし自身も役のキャラクターでやりたい、やりたくないを決めたくないし、小さな役でもいろんな経験をしていきたいと思っています。
— では、いまチャレンジしてみたい役はありますか?
んー、なんだろう。わたしが男だったら、『東京リベンジャーズ』とか『HiGH&LOW』の不良みたいな役をやりたいです。アクションシーンもやってみたいんですけど、オファーがこないだろうなって(笑)。
声の質やトーンで、人の内面を想像する
— 8月11日(水)からは内田さん主演のドラマParavi『来世ではちゃんとします2』が始まりますね。シーズン1を観させていただいたんですが、なかなか際どいストーリーなので、コミカルな部分とリアルな部分のバランスが難しいだろうなと感じました。
そうなんです。下ネタや過激な内容も含まれているので、女の子が観ても下品だなって思われないように気をつけています。あんまり攻めると女性に敬遠されちゃうし、でもリアルにやらないと共感してもらえないし。自虐のセリフもやわらかさがないと痛い人になっちゃうし。
(内田理央さん演じる主人公の)桃ちゃんはセフレが5人という一見過激ではあるんですが、とってもやさしくて愛されるキャラクターだったのでとても大切に演じました。
— 役に対してどのようにアプローチしていますか?
まずその役がどんな人物なのか台本から読み取って、セリフを声に出す前に声の質やトーンをすごく考えます。
わたしは、声にその人にある何かが出ると思っていて。声とか言葉のセンスとか、しゃべり方でその人の内面を想像することが多いんです。役の外見は衣装さんやメイクさんが作ってくれるので、わたしにできる自己紹介は声なのかなって。桃ちゃんどんな声だろうということはすごく考えましたね。
— 声からなんですね。桃ちゃんの声ってどんな声ですか?
わたしのイメージなんですけど、まずキンキンしてなくて耳障りじゃない。だから息を多めにしています。ふんわりしてやさしそうだな、パーソナルスペースがばがばだなという、男性が話しかけやすい声の高さと柔らかさで。あんまり音程が高すぎるとブリッ子になってしまうのでちょうといいバランスになるよう気をつけています。自分の中でしかわからない自己満足レベルなんですけど、いままでやったどの役よりも繊細に作りました。
シーズン2の撮影初日はすごい緊張しちゃって。その理由がシーズン1で作った声のトーンやしゃべり方に上手くチューニングできなかったから。何度も何度もシーズン1を見返して、同じようにしゃべれるように準備しました。
— そもそも桃ちゃんという個性的なキャラクターを演じることは難しくなかったですか?
難しかったです。『来世ちゃん』は原作の漫画がすごくおもしろくて、桃ちゃんというキャラクターがすごく好きだったのでそれをなるべく崩したくないという気持ちがあって。でも実写化するにあたって変えなきゃいけないところもあって。漫画では描かれていないリアルな生活感、動きであったり声であったりを肉付けすることで、桃ちゃんをみんなに嫌われるようなキャラにしちゃいけないという責任感はすごく感じていました。
死ぬほど台本を読み込んで、まっすぐ前を走る
— 『来世ちゃん』ではシーズン1から主演を務められていますが、主演ということで重責ややりがいを感じることは?
はじめて主演だと聞いたときは、「主演ってなんだ、なにをすればいいんだ」って焦ったんですけど、周りから言われたのが、逆に主演は何にも考えなくていいということ。プロデューサーさんや監督さんにも負けないくらい、死ぬほど台本を読み込んで、まっすぐ前を走れば自然とみんなが後ろからついてきてくれるよと。だからヘンに責任感を感じたり余計なことをしたりしなくても大丈夫と。その言葉を胸にやっています。
— 背中を見せるという。
まず自分が一番全力で走るということは気をつけていますね。
— やりがいはありますか?
やりがいはあります!
— シーズン2の台本を受けとったときの感想は?
そういえばこんな感じだったなって、懐かしくてニヤニヤしちゃいました。原作も続いているしシーズン2もできるなとは思っていたんですが、まさかこんな早くできるなんてすごくすごくうれしいです。
— シーズン2ではどこに注目してほしい?
『来世ちゃん』は、ほっこりエロラブコメディ。引き続きほっこりしながらも前回よりも切なさが多めになっていて、セフレの誰かと深い関係になってしまったり……。小関(裕太)くん演じる松田と、塩野(瑛久)くん演じるAくん、そして桃ちゃんの三角関係もバチバチになるので、シーズン1よりもラブ強めだと思います。
今回は桃ちゃんがずっとメインでなく、キャラクターを一人ひとり深掘りしていく話も多いです。シーズン1から観ている方はもっとみんなのことが好きになるし、逆にシーズン2から観る方でもすごく楽しめるようになっています。
— 登場人物の人間味も増しそうですね。
『来世ちゃん』に出てくるキャラクターってみんな個性的でいろんな悩みや癖があったりするけれど、それを否定しない世界観で。人それぞれ違うということを認めて肯定してくれる物語なのかなって。みんないろんなことがあるけれど、でも来世ではちゃんとしようと最後には前向きになれるところが素敵なところ。観た人も「ま、いっか」と前向きになっていただければと思います。
Profile _ 内田理央(うちだ・りお)
1991年生まれ、東京都出身。雑誌『MORE』レギュラーモデル。2018年放送のドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で主人公の幼馴染・ちず役で人気を博し、同作で第22回日刊スポーツ・ドラマグランプリ助演女優賞を受賞。その他、ドラマ『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ系)やドラマ『海月姫』(フジテレビ系)などに出演し、ドラマ『向かいのバズる家族』(日本テレビ系)やドラマ『来世ではちゃんとします』(テレビ東京系)では主演を務める。2020年8月には舞台『星の数ほど星に願いを』にて舞台初主演を務め、NHK BS時代劇『明治開花 新十郎探偵帖』(2020年12月)ではヒロイン役として、時代劇に初挑戦。2021年には、6月に映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』、写真集『PEACH GIRL』が発売、7月に舞台『物語なき、この世界。』、主演ドラマ『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京系)の放送が決定している。
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Information
内田理央さん主演 ドラマParavi『来世ではちゃんとします2』
2021年8月11日(水)スタート
毎週水曜深夜0時40分から放送、テレビ東京系
恋愛と性をこじらせたイマドキ男女の赤裸々ラブエロコメディが帰ってくる!
出演:内田理央、太田莉菜、小関裕太、後藤剛範、飛永翼、小島藤子、ゆうたろう、中川知香、浦まゆ、塩野瑛久、平田雄也、野村尚平、富田健太郎、おばたのお兄さん
- Photography : Naoto Ikuma(QUI / STUDIO UNI)
- Styling : GOTO KANAE
- Hair&Make-up : Midori
- Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)