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音を纏い、服を聴く|STORAMA 谷田浩 × UNISON SQUARE GARDEN 鈴木貴雄 特別対談 <前篇>

Feb 29, 2020 - FASHION
STOF、bedsidedramaを手掛ける谷田浩が2010年に立ち上げ、毎シーズン、実験的なアプローチでコレクションを発表している人気ブランド「STORAMA(ストラマ)」と、キャッチーなメロディラインと鮮烈なライブパフォーマンスでオーディエンスを魅了し続ける実力派3ピース・ロックバンド「UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)」のドラムを務める鈴木貴雄とのコラボレーションで生まれた【SESSIONS BY STORAMA】の初コレクションが誕生した。QUIでは本コレクションの予約販売を記念して、独占対談を企画。両者のクリエイティビティにフォーカスした。
Profile
谷田 浩
Fashion Designer

STOF/bedsidedrama/STORAMA/VOY/Waltermatiefなど多くのブランドを手がけてる人。旅と漫画と柴犬と垢抜けないポメラニアンとエキゾチックショートヘアが好き。

Instagram
@byestof
@bedsidedrama_jp

鈴木 貴雄
UNISON SQUARE GADEN / Drums

キャッチーなメロディーラインと3人が織りなす鮮烈なライブパフォーマンスでオーディエンスを魅了し続ける実力派3ピース・ロックバンド。2019年に結成15周年を迎え、大阪・舞洲スポーツアイランドにて記念ライブ「プログラム15th」を成功させた。UNISON SQUARE GARDENのドラム。ゲーム好き。

ファッションデザイナーとミュージシャンの化学反応

 

ーまずは今回のコラボレーションにおけるテーマやメッセージについてお聞かせください。

谷田:テーマに該当するかわからないんですが、メソッドとして、(ファッションの)専門じゃない人と組むことでどういう化学反応が起きるかというのがひとつの狙いでした。普段は自分でシーズンテーマを掲げて洋服を作ってるんですけど、今回はテーマごと鈴木くんに投げちゃって仕組みの部分を自分が考えたって感じですね。おそらく、出来上がった服を見る限りはテーマがあるんですけど、その辺りを明らかにはしていなくて、ちゃんと確かめてもいないですね。

鈴木:今回作ったアイテムひとつひとつの物語みたいなものは、それぞれ決まっていて、結果論ですけど、「戦い」と「精神性」がキーワードになっていると思います。精神性って言っちゃうとあれですけど、説明しやすいのは大きな穴が空いてるアイテムですね。心に大きな穴が空いているっていうのが自分の中にずっとあるんです。そんなに大げさな話ではなくて、誰しも多かれ少なかれあると思うんですけど。例えば、穴が空いたまま生きていくしかないみたいなことってあると思うんですけど、そういうものを表現したいなって。それでも戦っていかなければいけない。生きていかなければならないみたいな。仕事に行くというのもある意味戦いだと思います。あとは、ファンタジーとか架空の世界が好きで、剣と魔法と盾と槍みたいな。そういう意味でも「戦い」はキーワードですね。ガンベルトTシャツも最初はナイフが収納できるようなポケットで提案していたんですが、ガンベルトの方が良いんじゃないかってことになりました。「戦い」がテーマになっているアイテムは多いですね。ガスマスクモチーフのアイテムについては、香港のデモに対して感じた部分を表現しました。そこまでシリアスなものにするつもりはなかったんですけど、結果的にほとんどのアイテムが「戦い」の気分を纏っています。

谷田:そうだよね。そこまで大層なテーマにするつもりはなかったよね。

鈴木:うん、そんなに大層なものにはしたくなかったですね。あとは、僕がゲームが好きなのでそこから着想を得たり。出来上がってみたらどこかピースフルな部分もあり、結果的に好きなものばっかりになりました。

 

ーライフスタイルだったり、生き方、社会との向き合い方を一つ一つアイテムに落とし込んだ?

鈴木:そうですね。最初は何からやればいいかわからなかったんですけど、とりあえず色々考えていた中で、カッコつけたくはないなとはまず思っていて。STOFがずっと好きで、谷田さんのセンスが大好きだから、一ファンとして今もこうしてつきあわせてもらってるんですけど。そこに対して自分が背伸びしてしまったら失礼というか、よくないことになるなと思って。なので、その背伸び部分を谷田さんに下駄履かせてもらって、自分は単純に自分のままで好きなものだけぶつけようと思っていて。結構恥ずかしいものもたくさん提出しましたね。下手くそな絵とか。

 

ー各アイテムの原案になってるアイデアソースのことですよね。

鈴木:そうですね。谷田さん、僕のアイデアどうでした?

谷田:いや、なんか、鈴木くんらしいなって思いましたよ。

鈴木:本当に?意外と絵が下手だねって言ってたじゃないですか。

谷田:いや、まぁそれも含めて(笑)。でもこの前、鈴木くんがiPadでファンクラブ用に絵本を描いてたんですよね。あれ?意外と描けるじゃんって思った。アイデアソースは今日持ってきたの?

鈴木:持って来ましたよ。

 

ーありがとうございます。後でじっくり拝見させてください。

鈴木:勘弁してください。(笑)

 

ー鈴木さんの言葉や絵を見て、谷田さんはどういう感じで受け止めたんでしょうか?

谷田:・・・あるがままかなぁ。

鈴木:どこまで採用されるかは置いといて、原案は全て僕が描いて谷田さんに見てもらいました。

谷田:良くも悪くも、鈴木くんの世界観がはっきりわかったので、なるほどこういうコレクションねっていう認識はすぐに出来たかな。あと、個人的な付き合いも長いから、鈴木くんがどういうものが好きかもわかってるので。このアイデアを使ってコレクションをつくるならどう落とし込めばいいかを考えた感じです。

 

ー難しいなって感じたところは?

谷田:相性もあると思うんですが、あまり難しいとか思わないタイプなので、わりとスムーズにできたかなと。

鈴木:時間もなかったですもんね。

谷田:鈴木くんがずーーっと体調悪かったからね。

鈴木:そうですね。一番大切な期間にかぶりまくってしまって。風邪治ったら出来てたみたいなところがあります。谷田さん、僕が病気の時に家まで打ち合わせに来てくれましたもんね。

谷田:フルーツを持ってね。

鈴木:ザクロとドラゴンフルーツを持って来てくれた。セレクトがSTOFですよね。(笑)

谷田:食べにくいやつ。(笑)

鈴木:こうやって話すと花は咲くけど、食べづらいし酸っぱいし。ドラゴンフルーツはよくわかんない味というか、むしろ味がしないし。楽しかったですけど。(笑)

谷田:鈴木くんにはドラゴンフルーツ農家の皆さんに謝罪して欲しいですね。(笑)

 

ーSESSIONSというのは今回限りのブランド名でしょうか?そこにはどういった思いが込められてますか?

谷田:うーん、ブランド名といえばそうなるのかもしれないし。一応、STORAMAというブランド名はあるので、SESSIONSについては一つのスローガンみたいな感じでしょうか。鈴木くんがミュージシャンなので、掛け合いによってお互いを高め合うイメージでつけてます。漫画でいうとブルージャイアントが好きで、こういう関係性もいいなぁって感じですかね。

 

ー映画のセッションもイメージとしては近いですか?

谷田:あの映画は師弟関係のドラマなので高め合っているというイメージとは少し違ってきますね。ただ、映像の方には少し反映されているかも。あとは鈴木くんがドラマーなので、そういう意味では近いです。鈴木くんセッション観た?

鈴木:トレーラーだけ観たんですけど、今後観る予定はないです。たぶん、観る人によっては音楽のことを嫌いになってしまう映画だと思うんで。ミュージシャンの立場からするとちょっと好きになれないと思う。というのも、僕が小さい時に自分から習いたいって言ってピアノを始めたんですけど、教則本しか弾かせてもらえないから楽しくなくって。それからピアノとか音楽のことを嫌いになってしまった時期があるんですよね。だから「音楽をもっと楽しんで欲しい」っていう想いでミュージシャンをやってる立場としては、あまり興味がないんですよね。

 

ーそういった経験がある方、多いと思います。

鈴木:音楽における教育の問題はあると思っています。楽しさを実感してもらうことを最優先しなければいけないのに、技術を先んじている傾向があるので、楽しむっていう気持ちが置き去りにされてしまっている。それは本当に良くないなぁって思っています。

 

ーその点、普段の活動でも意識されていることは?

鈴木:すごく意識してます。(音楽が)楽しいものだっていうことは常に前面に出していたいので、インタビューなどを受けても日頃の練習が大変だとかそういうことは一切言わないようにしてます。実際、大変な練習はしてないですしね。練習自体を楽しむ工夫っていうか、楽しめる範囲でしかやらないと決めてるんです。

 

ー今回の谷田さんとのコラボレーションが決まった時もとことん楽しもうっていう感じでしたか?

鈴木:そうですね。プレッシャーはもちろんありましたけど、気づかないふりをしていましたね。話をもらった時点で、「俺でいいの?」とか。服に対しては素人だし、ただのファンでしかないので。色んな言葉が頭の中で巡ってたんですけど、0.8秒くらいでねじ伏せて、「やります。」って言いました。ある種の覚悟は必要でしたね。

 

熱いセッションを可視化したPVの世界観

 

ー今回のPVの中で特にマスクが印象的だったのですが、あれに隠された意味について聞かせてください。

谷田:なんか、矛盾する部分が結構あるんですけど、鈴木くんって、もうけっこう売れてるし、有名じゃないですか。 僕はその有名な部分をどっかで隠したいと思っていて。なんて言うんですかね、これってちょっと複雑な気持ちなんですけど。鈴木くんとコラボしたからっていう売り方は違うかなって思っていて。もっと実質的な部分で、物としての良さや、物自体が気に入ったからっていう流れでアイテムを購入して欲しいんです。だから、匿名性を出すためにマスクを被ってもらって撮影をしようと。

鈴木:僕は最初は顔は出すものだと思ってたんですけど、ここはすでに谷田さんの中で意思が固まっているっていう印象でした。他の部分はわりと融通が利く中でここは譲れないポイントなんだなってすぐに分かりましたね。

谷田:タレントの仕事として売り出すのが嫌っていうか、粋じゃないなって。

鈴木:UNISON SQUARE GARDENの知名度っていうのを排除して、鈴木貴雄のドラムを好きでいてくれたってことですかね?

谷田:鈴木貴雄であること以前に、いちドラマーとして評価してるというか。なんかうまく言えないな。

 

ー鈴木さんはドラマーとして素晴らしいという記事を拝見しました。そういった見られ方と、もう一方ではアイドル的な見られ方もあると思うんですけど、どうゆう風に見られたいなというのはありますか?

鈴木:特にないですね。もちろん、アイドル性っていう部分はどこかで考えておかなきゃいけないところですが、僕自身もそういったイメージを排除した上で今回の服作りに臨みたかったので。今回、ファンの皆さんに対しても「鈴木貴雄がつくったものだから」という理由では買ってほしくなくて、そういう気持ちで買ってもらうのは嬉しくないっていう声明文も既に作っています。本当に気に入ったら買ってねっていう。

 

ーそういった流れでマスクの演出が生まれたわけですね。

鈴木:マスクについては一回、今みたいな話の流れで谷田さんから「どんなマスクがいい?」って聞かれたので、イメージを2つ描きました。アニメや漫画で言うところのドロヘドロみたいなのと、あと、もう1つは花です。花が好きなんだね、なんて言われて。最終的に谷田さんから上がってきたものが、花というか植物のマスクだったので、なるほどこうなったかっていう感じでした。

 

ーその発想の元みたいなのはどういうところから?

鈴木:個人的に好きなものですね。単純に。

 

ーこれがマスクになったら面白いな、みたいな。

鈴木:こうなったら面白いっていうよりも、単純に好きと言う気持ちから生まれたアイデアですね。RPGやファンタジー、神話が凄く好きなので。自然とそういう発想になりました。

 

ーもう一つPVの中で、印象的なのが壁画のような絵だったんですけど、こちらは何を暗示していますか?

鈴木:まさか、ムービーに入るとは思っていませんでしたね。元々は今回のコレクションの中の1アイテムであるパーカーの原案を描いたことがきっかけです。物語としては夫婦の話で、奥さんが服を編んで、それを旦那さんがドラムを叩いてお客さんを呼び込んで売ると。その服がすごく人気を博して、徐々に神聖化していって、最終的に兵士や王様とか、神々が奪い合うっていうようなお話です。

 

ー何かをアウトプットする時にストーリーと結びつけるっていうところはご自身の中でも大事なポイントなんでしょうか?

鈴木:普段、詩や曲を作っているわけではないので、こういった作業は初めてかもしれません。自分から出てくるものがシンプルだなぁってのもわかりながらも、別に背伸びしたってしょうがないし、出てくるものをそのままさらけ出すしかないですよね。種さえ撒いてしまえばあとは谷田さんが発芽させてくれるし、花も咲かせてくれるのが分かっているので。安心してお任せしました。ストーリーについては、服づくりにおいてとても大切だと思っていて、僕が好きな服も一貫してストーリーがあるものです。谷田さんがそういった服をつくる方だったので、僕もここまでハマってしまい、今や谷田さんのつくる服しか着れない体にさせられてしまいました。(笑)そんな体になって5年が経ちます。谷田さんがつくる服には、言葉はないのに物語が伝わってくる感じがありますね。形やデザインからロマンが伝わってきて着たときに精神的にも鼓舞されるとか。着るだけで1.2倍くらい強い状態になれる。しかも物に比してプライスも抑えめっていう。

 

ー鼓舞で言えば、服もそうですし、音楽もそうですよね。自分の気に入った服を着て、好きな曲を聴きながら歩いてると、それだけで鼓舞されます。

鈴木:そうですね。ちょっとした無敵感というか。

 

ー谷田さんは今の話を受けていかがですか?そういった気持ちで服を着てもらえることについて。

谷田:いや、さすがよくわかってらっしゃるというか(笑)。個人的な服づくりのスタンスとして、ユーモアのない高い服はいらないと思ってるんですよ。ユーモアがあって、少し妙で、着ると気分の上がるような感じなのに、普通の人でも頑張れば手が届くようなリアリティをもった服をつくりたいという気持ちが強いです。

 

ー谷田さんは様々なブランドを立ち上げてらっしゃいますが、それはどのブランドに対しても同じスタンスでしょうか?

谷田:そうですね。基本的なスタンスは同じです。

 

ー今回お二人で服を作る上で、事前にこんな作り方をしようっていう段取りや打ち合わせはあったのですか?

鈴木:ひたすら言葉でも絵でもなんでもいいから描いて送ってって言われて、出来る範囲でやりましたね。

谷田:基本的には何回かキャッチボールをしようよみたいな。鈴木くんにイメージを送ってもらって、それを受けて僕はこうしたいと思うけどどう思う?みたいな。そんなやりとりを3往復、4往復しようと思ってたんですけど、結果的には2.5往復くらいで収まりました。

鈴木:そうですね。あんまり不要なやりとりはせずここまでこれたなって思います。僕が体調を崩しまくってたのもあると思うけど。

谷田:鈴木くんが元気だったらあともう1往復はあったかも。(笑)

 

ーコミュニケーションはスムーズにいった感じでしょうか?

鈴木:僕からしたらもう完全に信頼しきっているので。安心感しかないですよね。

谷田:もしかしたら険悪になるかもしれないよ、みたいなことを最初に伝えましたけどね。

鈴木:言ってましたね。でも険悪にはならなかったです。(笑)

 

ープロフェッショナル同士ですし、いい意味でのバチバチというか?

鈴木:そうですね。譲れない部分がかぶっちゃった場合とか、怖かったんですけど。全くなかったですね。

谷田:どちらかというと、鈴木くんはこだわりの強い男なので、警戒してました。

鈴木:あ、僕の方がですか?まぁそうか。確かに譲れない部分はあるかも。PVの撮影の時はちょっと危なかったですもんね。

谷田:そうね、暴走しがちだったもんね。ホナガさんから相談受けたもん。(笑)

 

ーどういった感じだったんでしょうか?

鈴木:僕は音楽の人間なので、音楽に対しては入ってきてほしくなかったんですよ。セッションと言いつつも。もちろん話も相談も出来るけど、最終決定権は自分に委ねて欲しかったんです。で、そこはちょっとまかせてもらえますかって言った感じですね。僕はあんまりまろやかに伝えるのが上手じゃないので、バチバチっとなりかけたところを、大人の皆さんに助けてもらいました。

 

ー演出上、こうしてほしいみたいな?

鈴木:そうですね。映像を見ていただくとわかるんですけど、編集的にもかなり凝った作りになっていて。映像ディレクターとしての個性がしっかり際立っていて、その部分はどうしたって音楽と絡んでくるんです。極端な話、定点カメラの方が音楽はわかりやすいし、極論映像がない方が音楽は耳に入ってきやすいんです。映像としての面白い部分は出して欲しいと思いながらも、ここまでは入ってほしくないっていうラインをあらかじめしっかり決めておきたくて。なので、そこは強い態度を示してしまいました。

 

ーちなみにホナガヨウコさん(今回のPVの映像ディレクター/ミシンの人の中の人)とのお仕事は初めてですか?

鈴木:初めてですね。去年、谷田さんにお招きいただいた忘年会でお会いして、谷田さんから「この人とやります」って言われて。僕も「よろしくお願いします」って言ったのが初対面。ホナガさんはその時「ナンジャモンジャ」っていうカードゲームをやられていたのが印象に残ってます。

 

ー有名なゲームですよね。

鈴木:キャラクターの名前を自分たちでつけてくゲームです。それを忘れたら負けみたいな。

 

ーちょっとやってみたいです。(笑)

鈴木:リンク張っておきましょう。(笑) <ナンジャモンジャ公式サイト

 

ー谷田さんはホナガさんとは長いのでしょうか?

谷田:そうですね、5年前に10周年のショーを開催したときに踊ってもらったり、環ROYさんと一緒に舞台をやるときに衣装をお願いされたりして仲良くなった感じです。

 

ー今回PVを一緒に作ることになった経緯は?演者としても出演されてますね。

谷田:グラフィックがもう先に出来ていたので、ドラマー鈴木貴雄の対になるものとして、シャーマニックな女性で裁縫をする人が必要ってことは決まっていました。誰だろうなって時に、ホナガさんしか出てこなくて。結果的にも彼女以外はあり得なかったと思っています。

 

ーどんな映像を作って欲しいと依頼したのでしょうか?

谷田:僕は映像について得意ではないし、音楽も絡んでくるのでさっきの話ともリンクするんですけど、あんまり触れると良くないだろうと思って1歩下がってましたね。ホナガさんと鈴木くんの調整役に徹しようみたいな。

 

ー結果出来上がったものを見られてお二人どうですか。

谷田:控えめに言って、最高の部類ですよね。

鈴木:超良かったです。僕は線を引きつつも、ホナガさんで間違いないなと思っていたので信頼してましたし。結果的にも最高だったのでホナガさんがディレクターで本当に良かったなって。今後、友達になれるといいんだけど。(笑)

 

ミュージシャン鈴木貴雄が紡ぐ物語

 

ー改めて、今回のアイテムの話を。特にこだわって作ったアイテム等はありますか?

谷田:特にって言われるとないですね。捨て曲のない1stアルバムって感じになったなって思ってます。

鈴木:僕もそうなんですよね。全部好きだし、全部話したいからこれって言われると本当に迷っちゃう。

 

ーせっかくなのでいくつかの商品についてコメントをいただけますか?

谷田:穴じゃない?結局、穴。穴とゲーマーじゃないかな?

鈴木:穴とゲーマー。そうですね。(笑)

 

ーでは、Big hole wool coatからお願いします。

谷田:穴については、展示会でもずっと話してたから話し飽きた?(笑)

鈴木:なんだか恥ずかしいというか、照れくさいっすよね。実は穴にもポケットが付いてたり、ファスナーがついてたりで、穴にさらに穴が開いてたりで、胸にぽっかり穴が開くっていう表現があるように、胸にぽっかりと穴をあけてみたっていうか。恥ずかしい話、自分は自分の心の闇のようなものに自覚的なところがあって、ずっと埋まらない穴があるんですよ。どうにも埋まらない虚しさというか、心の中のどこかが冷えてしまっている。でも、その穴があることで自分らしく生きていけるから、いいじゃん。っていう風に思っているんですけどね。そんな感情から生まれたアイテムです。結果的には、可愛く仕上がったなぁっていう喜びはありまして。僕が提案したのはあくまでこの胸の部分の大きな穴の部分だけなんですが、谷田さんはその穴に、更にポケットという穴を作ってくれた。そういう発想は本当に谷田さんじゃなきゃ出ないし、そこが谷田さんの好きなところです。

 

ー自分の心の中を服として可視化することでファッションになってるんですね。それを誰かが着ることでまた新たなストーリーが生まれたり。

鈴木:そのへんはまぁ、着てくださる方の自由ですよね。デザイナーからこだわりを押し付けられるのは僕だったら嫌なので。

 

ー分かります。

鈴木:自由なスタイルで着て欲しいんです。原画を考える時もそう想って書いてました。

 

ー次にこちらのGamemaster hoodie jacketについて。

鈴木:僕は相当ゲームをやり込んでいて、ドラムの次に人生を捧げているものがゲームなんです。だから、ゲーム関連の物は何か作りたかった。僕が憧れているプロゲーマーは何人もいるんですけど、プロゲーマーが着る服って企業ロゴがいっぱい入っているスポーティなものが多いんです。でも、あれずっとあまりカッコ良くないなって思っていて。本来アスリートのために作られたものだから、筋肉があって初めて映える服なんだけど、そうではないゲーマーの方々が着てもカッコイイ服があればいいなって思っていたので、どんな体型の選手が着てもゲーマーとして舞台の上に立てるものを作りました。その点から、谷田さんには極端な弛みとかは出さないようにしたいとお願いしていました。ディティールについては、刺繍にゲームのコントローラーが入ってたり、ボタンに十字キーのデザインをレーザーで掘ったりしてます。あと、これも谷田さんのアイデアなんですが、PLAYとPRAYの類似性言葉遊びの刺繍。「ゲームをプレイする」という意味のPLAYと、「祈り」という意味のPRAY。

 

ーたしかに。とても面白いアイデアですね。

鈴木:僕は毎日ゲームをする前と後で、銃の照準を合わせる練習をするんですけど、その時は無の境地みたいな感覚になっていて、ただひたすらに技術を研いでいます。それが何の意味もないものだとしても。それって、石を出来る限り丸くなるように近づけるように研いでいくとか、泥だんごを出来るだけ綺麗に丸くするとか、そういった意味のないことに本気で時間や魂を捧げる行為と似ていて。あ、これ「祈り」だなって思って。そんなことにも、気づかされて面白かったです。

 

ーおっしゃる通りですね。あと一点、RESPAWNというデザインについてもご説明お願いできますか?

鈴木:「RESPAWN」っていうのは普段の生活の中ではなかなか使わない言葉だと思うんですけど、ゲーム用語ですね。例えば、マリオ。クリボーにやられたら同じ場所からまた復活するじゃないですか。あの同じ場所からスタートする事をリスポーンっていうんですよ。生まれ直すっていう意味なんですけど。SPAWNっていうのは産卵するとかそういう意味らしいです。ゲームではマインクラフトとかスプラトゥーンでリスポーン地点っていう場所があって、現実世界ではあまり馴染みがない言葉ですけど「生まれ直す」っていい言葉だなって。

 

ー再出発みたいな意味合いですね。谷田さんの中でのこだわりポイントは?

谷田:僕は今回は鈴木くんにゼロ地点を担当してもらってるので、こだわりを聞かれると逆に難しいかなぁ。

鈴木:ゼロ地点やってたほうが楽なんですか?

谷田:ゼロ地点やってたら大体そこに対しては何かしらある。でも、そこがないと言えばないから、自分だけのものではないって感じですかね。逆に言うとこだわってないポイントもないんだけど。わりと息を吸うようにこだわってます。

鈴木:谷田さんは尋常じゃなくアイデアマンだと思いますよ、とにかく。こないだ飲んでるときに谷田さんて何なんだろうって話をしてたんですけど。「アイデアマンですよね?」って聞いたら、谷田さんも確かにそれが一番近いかもって。

谷田:でも、アイデアマンって言葉が嫌だよね。

鈴木:そうですか?羨ましいですよ。アイデアの量がえげつないじゃないですか。ポンポン出るし、枯れないし。

 

ー鈴木さんが投げたボールが飛んできた時に、どうやって打ち返そうかなみたいな気概はありましたか?

谷田:気概っていうと大げさになりますが、どこに着地させようかなって思ってましたね。

鈴木:着地?ですか?自分の感動なのか、人が喜ぶことなのか。どこを目標にするかってこと?

谷田:あるべきところに落ち着かせるみたいな感じかなぁ。例えば、仏師が木を見ただけで、あるべき姿がわかるみたいな意味での、着地。

鈴木:生地を見たらどんな服になるべきか分かるみたいな。

谷田:そこまでは言わないけど、生地とか形とか、いろんな要素があるけどそれをあるべきところまで整わせるのが着地のイメージ。

 

ーご自身の中でイメージが湧いて出てくる感じですよね。

谷田:自分の中でパーツを組み替えていくみたいな作業かもしれない。

鈴木:本来はゼロ地点から谷田さんがデザインするから最初から最後まで見えるんでしょうね。でも今回は僕がやったから逆にやりづらかった部分もありました?

谷田:というか説明できなくなるよね。やりづらくは全然ない、むしろ意外とやりやすかった。普段そんなにしょっちゅう自分で柄を描くわけじゃないけど、今回は柄とかも自分でやったし。

鈴木:絵巻も描いてくれて。「描けるんだ!」て思いました。「めっちゃ上手いやん!」みたいな。

谷田:やったらできちゃうタイプなんだよね。

鈴木:腹立つ~。(笑)

 

ー素晴らしいスキルです。やりながらどうすれば着地するのかが分かっていくイメージでしょうか?

谷田:そうですね。セッションって、本来やりながら作り上げていくイメージなんで。「フリースタイルでやりあおうぜ!」みたいな感じでやりたかった。変に作り込むっていう感じではなくて、自ずと定まっていくような感じでしたね。

 

ー最初に谷田さんが鈴木さんにオファーされた時ってどんな雰囲気だったんでしょうか?

鈴木:STOFチームとゴールデン街で飲んでたんですけど、その日、僕が精神的にしんどい時期だったので、どちらかというと谷田さんに相談というか話を聞いてもらってたんですよ。2軒目がUNISON SQUARE GARDENのイラストをよく描いてくださってる方がたまにマスターをやっているバーだったんですけど、狭い店内にすごい数のお客さんがいて、僕そういう場でコミュニケーションをとるのが少し苦手なところがあって、隅っこで谷田さんと寄り添いあって二人で話してました。他のスタッフはもうお客さんたちと打ち解けていたんですけど、僕らは端っこで信楽焼みたいになってて。(笑)

 

ーすごいシチュエーションですね。(笑)

鈴木:そんな中で急に今回のコラボ話をいただいて。これ大事な決断だなと思ったんで、少しだけ迷ってやりますって返事しました。

 

ー決め手になったのは?

鈴木:本当に大事な決断だとは思いましたが、迷えば迷うほどカッコ悪いから即答したかったんです。プレッシャーや不安、想定できる失敗とか。いろいろとネガティブな気持ちをねじ伏せて出した決断ですね。

 

ー元々、鈴木さんの大好きなデザイナーさんですもんね。

鈴木:好きというか、もうストーカーに近いです。(笑)谷田さんの作った服以外は着たくないくらいなので。昔から服に対するこだわりも強くて、制服を着るのも嫌だったんですよね。

 

ファッションデザイナー谷田浩のクリエイティビティ

 

ー最初にSTOFの(谷田さんの)服に出会った時、どうゆうところに魅力を感じましたか?

鈴木:ゲームでいうところのバフ感や、ストーリー性はもちろん。あとは、意外とリーズナブル。有名なブランドなので当然それなりの金額はするんですが、意外とお財布に優しいなって思いましたね。あとはブランドから儲けようとする感じがあまりしない。ハイソな場所に事務所を構えてラグジュアリーな生活をしているような雰囲気がなかった。

谷田:おい。(笑)

鈴木:(笑)服にもクラフト感というか、手仕事の温かさのようなものを感じました。僕もバンドをやっている中で、チケットの値段や、グッズの値段を出来る限り安くしたいなっていう風に思っていて。例えば、6,000円が妥当な値段でも、5,500円にしたいなって。自分にもそういう想いがあったので価格設定に親近感が沸いたんだと思います。あと、実際に触りたくなるものが多い。

 

ー確かにそうですよね。触ったり着たりしてみることで新しい発見がある。

鈴木:そうですね。遊び心ががあるところも好きかな。先程、谷田さんのことアイデアマンって言いましたけど、アイテムの各所にアイデアが散りばめられてるなって思って。

 

ーたくさん褒められていますけど、谷田さんいかがでしょうか?

鈴木:褒め倒してます。(笑)

谷田:いいお客さんだなって(笑)。ファンとして、よく見て、正しい評価をしてくれているなと思います。

鈴木:こうして実際に会ってお話するようになる前からの感想ですからね。

 

ー谷田さんの想いが服を通して伝わっているのが素敵ですね。そんな中で、今回のコラボにおいて大変だったエピソードはありますでしょうか?

谷田:まぁ、体調だよね。とにかく鈴木くんの体調がやばかったよね。服を作るときって、まず先に型紙を作るんですよ。で、その型紙を元にして、仮の生地で縫って修正点をチェックするトワルチェックという工程があるんですけど、その日に鈴木くんがフラフラで現れたんです。立ってられないみたいな。迷惑ですよね(笑)。

鈴木:そのトワルチェックで立ってサンプルを羽織っているだけでもしんどくて。息が整ってきたらまた次のアイテムを羽織ってみたいな感じでした。

谷田:そんな仕事相手は嫌でしょ(笑)。早く帰って休んでほしいなって思ってました。型紙をひいてくれたパタンナーさんも来てくれていたので、リスケも難しくって。本人がいけるって言ってるからまあやりますかみたいな。

鈴木:あれぐらいならやったほうがいいっすよ。

谷田:いや、普通は帰らせる。というか来ないで欲しいよね。(笑)

鈴木:本当はね。でも時間は待ってくれないから。ちょうど今(2月25日)から1ヵ月半前くらいの話。その時って何を着てましたっけ?穴かな?

谷田:穴だね。トワルって、最終サンプルとは全然違う生地で作るんでイメージが難しいんですよ。そのあたりは別に違和感はなかった?

鈴木:ああ、こうゆうもんなんだなって思って面白かったですよ。

 

ーそういった意味ではお互いに大変だったんですね。

鈴木:服の製作っていうよりは風邪が大変でしたね。ただPVを撮影するまでには痩せたいと思っていて、結果的に6キロ痩せられたので良かったですね。役作りの一環になりました。

谷田:撮影の時も限界までやってくれてて、ちょっと心配だった。

鈴木:でも、あの日はもう元気になっていってるところだったんで。逆にスタジオレコーディングの日はちょっとしんどかったですね。風邪が治ってからの初ドラムだったので。

 

ー実際に撮影シーンを見て、すさまじい熱量を感じました。先程ドラムの次に心血を注いでいるのがゲームということでしたが、音楽とゲームの共通点ってあったりするんでしょうか?

鈴木:特にないですけど、共通しているのは、自己分析して問題点を洗い出して、強みを伸ばして弱みを削るっていう行為。その行為が好きなんですよね。

 

ー確かにそうですね。

鈴木:ドラムのプレイなら外から見たときに自分がどう見えてるかを洗い出して、良くない部分を潰していくのが好き。ゲームに関してもそう。ゲームにも色んな好きな要素があるけど、勝ち負けがはっきりしているっていうのが音楽とは違うので、それがのめり込んでる理由です。音楽に勝ち負けがあれば、ゲームにここまでのめり込まなかったかもしれない。

 

ー勝ち負けをはっきりさせたい性格なんでしょうか?

鈴木:全力でぶつかり合って、勝ち負けをはっきりさせるっていう熱さ自体が楽しいですね。

 

ー谷田さんは普段ゲームされますか?

谷田:鈴木くんとはまた違う種類のゲームはやりますね。

 

ーボードゲームとか?

谷田:ボードゲームもやるんですけど、コツコツ系が好きかもしれないですね。

 

ー心理戦みたいなタイプのゲームでしょうか?

谷田:心理戦は嫌いなんですよ。誰かと競い合うのはそんなに興味がなくて、強者も時に負けるようなゲーム性のものが好きですね。

鈴木:人狼ゲームより脱出ゲームみたいな?

谷田:いや、でも人狼ゲームもわりと好きかも。あれって勝ち負けって感じじゃなくない?人の気持ちが入りすぎるゲームだから勝ち負けで考えるとバカバカしくなる。もっと無個性にならないと勝てない。

鈴木:ガチ勢の発言ですけど。(笑)

谷田:目立つと勝てないから、勝利を追求するにはルール的に無理があるよね。ところで、なんの話だったっけ?

 

ーゲームはお好きですか?(笑)

谷田:まあ好きです。アクション性のあるゲームはあんまりしないけど。

鈴木:1番好きなゲームは、マザーでしたっけ?

ーマザーって糸井重里さんがゲームデザインされていた作品ですよね。懐かしい。

谷田:1番はマザーかな。あとは、ファイナルファンタジータクティクスとか。太閤立志伝とか、ウイニングポストとか箱庭系が好きですね。

 

後篇に続きます


Credits
Model:Hiroshi Tanida / Takao Suzuki
Photography:Yasuharu Moriyama
Transcription:Takehiko Sawada
Production Assistant : Seiko Inomata
Art Direction/Edit/Text:Hiroaki Ubukata

 


 

Information

▼谷田浩が、Aquvii 川辺恭造、YEAH RIGHT!! 河村慶太と共同運営するコンセプトショップSAMVAの記事はこちら

▼SESSIONS BY STORAMAのアイテムの予約販売は終了いたしました。

 

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