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irojikake 紗羅マリー × イリエナナコ − THE MULTISENSE vol.4

Oct 30, 2021
ファッションデザインとは異なるバックグラウンドを持ったアーティストだからこそ生み出せるファッションの新たな価値に、自身も映画監督やコピーライターとして活動しながらワンピースブランド<瞬殺の国のワンピース>を手掛けるイリエナナコが迫る連載“THE MULTISENSE”。

第4回のゲストは、モデル・女優の紗羅マリー。5人編成のバンドLEARNERS(ラーナーズ)のヴォーカルとしても精力的に活動しながら、自身のファッションブランド<irojikake(イロジカケ)>も手がけるなど、幅広いジャンルでマルチな才能を発揮している。

irojikake 紗羅マリー × イリエナナコ − THE MULTISENSE vol.4

Oct 30, 2021 - FASHION
ファッションデザインとは異なるバックグラウンドを持ったアーティストだからこそ生み出せるファッションの新たな価値に、自身も映画監督やコピーライターとして活動しながらワンピースブランド<瞬殺の国のワンピース>を手掛けるイリエナナコが迫る連載“THE MULTISENSE”。

第4回のゲストは、モデル・女優の紗羅マリー。5人編成のバンドLEARNERS(ラーナーズ)のヴォーカルとしても精力的に活動しながら、自身のファッションブランド<irojikake(イロジカケ)>も手がけるなど、幅広いジャンルでマルチな才能を発揮している。

 

裸よりキレイに見えるものを作りたい

イリエナナコ(以下、イリエ):<irojikake>のスタートは2017年秋冬シーズンですよね。まず、ブランドを立ち上げたきっかけについて教えてください。

紗羅マリー(以下、紗羅):かわいいものってたくさんお金を払えばいくらでも手に入るんですけど、ちょうどいい値段で、意気込まずに買えるようなブランドが当時は全然なくて。だったら自分で作ってしまおうというのがきっかけでした。

イリエ:その気持ち、わかります!13歳でデビューして以来、モデルとして服を着ることに関しては長いキャリアがありますが、服を作ること自体への興味は昔からあったんですか?

紗羅:なかったですね。昔はもう少し尖ったデザインで、形やバランスを気にしているブランドが多かったので、それで満足していました。今はお客さん側の意見を取り入れているブランドが多い気がしていて。

イリエ:オリジナリティの強いものに惹かれるんですね。

紗羅:小さい頃は母親のマネキンみたいに服を着せられていて、それが窮屈になって自分の好きなものしか着たくないという気持ちが生まれてきたのかもしれません。

イリエ:<irojikake>という名前やブランドの世界観がすごくユニークなんですが、どのように作りあげていったんですか?

紗羅:もともと頭の中に「irojikake」という言葉があって、自分のなかで勝手に映画ができていたんです。秘密結社「irojikake」の女の子たちがそれぞれ特技や殺し方を持っていて、たとえばカメラのフラッシュで人を殺すカメラマンの子とか、殺される人の血液型の統計を取っている子とか。

イリエ:いろんなキャラクターの女の子がいる。

紗羅:はい。その子たちが着ている服を作りたいと思って始めたのが<irojikake>です。

じつは最初は、私の名前を出さずに販売していたんです。少数でしたけどありがたいことに毎回即完していたので、だったらきちんと名前を出して展示会をやって卸先を見付けてブランドにしようと進めていきました。

イリエ:2022年春夏で10シーズン目を迎えますが、変化してきたことはありますか?

紗羅:だいぶ変わりましたし、表現できる幅が広がりましたね。工場さんとか染師さんとか職人さんを、探して調べて電話してアポをとって。そうしていくうちにいろんなつながりが増えて、本当に息の合うパタンナーさんがついてくれて。そのおかげで、今では自分の思っていることをそのまま服に表現できるようになってきました。

イリエ:紗羅さんの思いを具現化してくれるメンバーが揃ったんですね。デザイン面での変化はありましたか?

紗羅:デザインは変わっていないかもしれないです。服を脱いだ裸が一番キレイだということが、ものを作っている側としては悔しくて。メイクでもすっぴんの方がキレイだと表現されることってあると思うんですけど。なので、裸よりキレイに見えるものを作りたいと思っています。

 

<irojikake>の服は、私の子供みたい

イリエ:今季、2021秋冬のテーマについて教えてください。

紗羅:「daydream forever」というタイトルをつけて、そこからデザインをしていきました。「抜け出せない白昼夢」という内容で、恋をしてしまって、妄想が続いて、そこから抜け出せなくなってしまう…ということをイメージしながら。

イリエ:ストーリー性があるんですね。テーマやコンセプトは、いつもどんなところから着想を得ていますか?

紗羅:その時の精神の状態だったり、世の中の状態だったり。自分が聴いている音楽や、観ている映画から影響を受けることもあります。最初にタイトルを考えてからコラージュを始めて、できあがったコラージュから派生させていきます。

イリエ:コラージュからコレクションへと広がっていくんですね。ブランドを立ち上げてから今までで苦労したことはありますか?

紗羅:自分の周りの個人でやっている人たちを支援したいという気持ちで作っている“タイダイシリーズ”というのがあるんですけど、納得のいくタイダイがあがってこなくて大変なことになってしまって…。<irojikake>では絶対に1枚も破棄しないと決めているので、大量のB品を布草履にするために今も一人で編んでいます(笑)。でも、何か問題が起きた時は自分のなかでワクワクするときでもあるんです。

イリエ: 1枚も廃棄しないというのは?

紗羅:もちろん服が廃棄される数が減れば良いとは思うけど、どちらかというと自分が作ったものを捨てられないという方が大きいですね。<irojikake>の服は、私の子供みたいな感覚なので。捨てるくらいだったら寄付をすればいいし、セールにして赤字ギリギリでもみんなが着てくれた方が嬉しいです。

イリエ:一方、2021年の5月からは新たにハンドメイドアクセサリーのライン<irojikake homemade>もスタートされました。

紗羅:もともと<irojikake>は、全部一人でやっていたんです。でも、少しずつ大きくなっていくうちに一人では手に負えなくなったので、発送を倉庫の方にお願いしたり、展示会のお手伝いをお願いしたりするようになって。どんどん他の人に任せられるようになってきたので、家でできることをはじめようかなと思いhomemadeラインを作りました。

イリエ:<irojikake homemade>では売上の20%をNPO団体への支援にあてているんですね。

紗羅:この前、友達から「農家さんが余ったお野菜を近所の方に配って物々交換する感じに似てる」って言われてすごくしっくりきたんです。自分からあふれたものをあげているだけなので、私が儲ける意味はないというか。買った人はかわいいものを身につけられて、20%は子どもたちへの寄付になって、私はいつもより少し高いお菓子が買えたり、アクセサリーをもう1つ作ったりできるので、みんなハッピーになるなって。

 

服作りは何年続けても超楽しい

イリエ:服作りをするとき、モデル業や音楽活動をやっていて良かったことはありますか?

紗羅:モデル業に関しては、これまで死ぬほどたくさん服を着てきているので、きれいなシルエットとか、どこにタックを入れたらいいかといった知識は役に立っていますね。音楽活動に関してはそんなに無いですけど、ライブでこんな服を着れたらかわいいなとかは思います。

イリエ:最近は女優としても精力的に活動されていますよね。どんな役柄を演じてみたいですか?

紗羅:これまで出させて頂いた役は結構ダークなものが多かったんです。それを極めたい気持ちもあるし、真逆の、コミカルな笑いたっぷりの役も演じてみたいです。

イリエ:モデル、音楽、女優、服作りの他にもやってみたいことはありますか?

紗羅:歌とは別で言葉を扱ってみたいですね。歌詞はメロディにのっているので、一文字消したり足したり、絶対的に何ミリかの嘘が入っているので純度が100%では無いんです。だからその純度を生かせるものに、何か携わってみたいと思っています。暗い言葉も並べてみたいし、言ってはいけないことも言ってみたいですし。

イリエ:では最後に、これから<irojikake>としてチャレンジしたいことを教えてください。

紗羅:毎回チャレンジばかりしているんですけど、やっぱりコロナ禍ということもあるので、最近は長く着ていてもストレスにならないように着心地や素材感にこだわりが強くなってきています。

<irojikake>では狙って何かをするということはあまりせず、その時の気持ちや時の感覚で進めていくことが多いですね。WEBサイトの商品説明がポエムのようなものもありますし(笑)。ブランドというよりは、お客さん含めて紗羅マリーと仲間たちという感じで、全てを楽しんでくれている感じがしています。

イリエ: 6年もの間ブランドを続けても、服を作るのが楽しいという気持ちは変わりませんか?

紗羅:超楽しいです。私の脳内が再現されているので、毎回考えていることも違うし、作るものも違うから。大きな話をすると家を建てるのと一緒の感覚というか。たぶん映画監督が構想を練って、俳優を決めて、スタッフを決めて、作品を作り上げていくのとも興奮や快楽の部分が近いかもしれませんね。

 

 

Profile _ 紗羅マリー(さら・まりー)
モデルとして活動を始め、これまで数多くのファッション誌やファッションショーに出演、日本のみに留まらずアジアでのショーやイベントにも出演している。一方、自身のアパレルブランド「irojikake」のデザイナーを務めながら、バンド「LEARNERS」のボーカルとして、年間30本以上のライブ活動も行っている。また、映画「ニワトリ★スター」では映画初出演にしてヒロインを熱演、ミュージカル「RENT」ではメインキャスト・モーリーン役、映画「花と雨」では売人組織の女ボスを好演するなど、女優としても活躍の幅を広げており、待機作として、2022年公開予定の映画「ニワトリ★フェニックス」への出演が決まっている。

Instagram Twitter irojikake

 

Profile _ イリエナナコ
東京生まれ。コピーライティング、クリエイティブディレクション等の仕事のほか、映画制作、絵の作品「図」シリーズの発表、言葉の作品の展示等、作家活動を行なっている。映画監督作に『愛しのダディー殺害計画』など。次回作『謝肉祭まで』の製作が決定。2021SSよりワンピースブランド<瞬殺の国のワンピース>スタート。

Instagram Twitter www.irienanako.com 瞬殺の国のワンピース

  • Photography : Nobuko Baba(SIGNO)
  • Styling : Sara Mary(irojikake)
  • Hair&Make-up : Mariko Adachi
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Interview : Nanako Irie
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)

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