いまぜったい観るべきコントユニット、テニスコートのひみつ
取材協力:ユーロライブ
7月30日生まれ。千葉県出身。書籍・単行本の企画構成、文筆、イラスト、マンガ等での共著、雑誌への寄稿、アニメーションなどの映像制作、たまにCM出演。
8月10日生まれ。愛知県出身。アニメ『LINE OFFLINE サラリーマン』『LINE TOWN』へのシナリオ提供、『ジュニアのススメ』(スカパー!)へのイラスト提供など。
7月26日生まれ。東京都出身。法廷画の描画で多くの事件の絵を新聞社に提供。 アニメの脚本なども手がける。
武蔵野美術大学に在学中、神谷圭介、小出圭祐、吉田正幸の3人が結成したテニスコート。コント公演をベースにしながら、NHK Eテレの「シャキーン!」に構成作家として参加(たまに出演)するほか、ドラマの脚本を手掛けるなど、活動の幅を広げている。
お笑い芸人でも、俳優でもない彼らは、いったい何者なのか。はじめて観たときから感じる、そこはかとない“オシャレ感”はなんなのか…。
テニスコート結成当時のエピソードから、ネタ作りについて、さらには衣裳やポスターなど、彼らを取り巻くさまざまなクリエイションについてきいた。
予備校時代、漫才で2回噛んだことが、人生でいちばん悔しくて
−みなさんは武蔵美時代の同級生ということですが、3人の出会いについて教えてください
神谷:吉田くんと僕は美大を目指す予備校から一緒で、小出くんとは大学に入ってから出会いました。僕らが通っていた予備校には、浪人すると一泊二日の旅行に行くというイベントがあって、夜に一芸を披露する宴があるんです。みんなそれが嫌で絶対浪人したくないという(笑)。結局僕らは浪人して、吉田くんと漫才をやることに。それが人前で何かやるということのいちばん最初でした。
吉田:その舞台で、僕2回くらい噛んでしまったんです。それが、それまで生きてきた中でいちばん悔しくて。当時19歳とかかな。絵で失敗したときよりも悔しかった。それからお笑いって面白いんだなって思うようになって。
−受験に失敗したときより悔しかったということですね?
神谷:だとしたらホントおかしいですよね(笑)。でもたしかに、予備校時代に笑いに関する作品を作るみたいなことをはじめていました。
吉田:そんなふうにお笑いに対する興味が出てきたときに大学で小出くんに出会って、彼はいろんなことを知っていて、教えてくれるんです。シティボーイズさんとか演劇のこととかいろいろ。
−小出さんは自分がやるというより、観るのが好きだった?
小出:人としゃべるのが全然できないんで…。
神谷:彼、全然しゃべらないんですよ。最初出会ってから半年くらい、話しかけられたことなかったです。それくらい寡黙なんだけど、家にいくと面白そうなものがいっぱいあって。
小出:性格的に自分ではできないな、と思いながら好きで観ていて。小劇団とか単館映画とかにふたりを誘ったり。
神谷:そのうち自分らでもやりたいね、という話になって、はじめは映像を作ったりしていました。上野公園のブルーシートビレッジを、ブルーシートで作ったスーツを着て練り歩くみたいな映像とか。3.4年生くらいから人前でコントをするようになって、いまにつながっている感じです。
お笑いとも演劇ともつながらないガラパゴス的な環境
−コントのネタはどのように作っているのですか?
小出:むかしは誰かが台本を書いてきて、それを覚えてやる感じだったけど、そのうち誰かが書いた台本にみんなが意見して変えていくスタイルになって。最近ではアイデアの時点から3人で話して、やりながら形を変えていく感じですね。
神谷:即興で出てきたものを整理する、ということを繰り返しているので、時間はかかります。
小出:作り方はいろいろ変わってきているけど、“ついやっちゃうこと”とか、“これがこういうふうに動くと面白い”とか、そういうのをきっかけにして作っているのは変わらないかも。
神谷:僕らが美大に行っていたことがいまにつながっているとしたら、美術的観点というか、普段当たり前に目にしていることが、角度を変えると違って見える、みたいな視点はあるかもしれません。
小出:お笑い芸人さんと話していると、芸人さんは養成所とかがあって、お笑いの作り方にロジックがある。そういうのとは違う作り方をしていると言われます。それはもしかしたら美術的な見方なのかもしれない。
神谷:芸人さんには劇場があって、そこでお客さんに観てもらえるけど、僕らは自主的な公演を打つだけなので、すごくガラパゴスなところでやっていたのかもしれないと後になって気付きました。あんまりどこともつながってなかったんですよ。演劇ともつながってなかったし、芸人さんともつながってなかった。だから、なんか新しい島が見つかったみたいな感覚なんですかね。養成所とかだともっと洗練させるための指導があったのかもしれないけど、ホントに洗練されないままきてしまった。そのよさもあるのかもしれませんが。
−いや、十分洗練されているし、オシャレ感すらあると思います。美大卒という共通項からかもしれませんが、ちょっとラーメンズさんに近いというか。
神谷:これは、うれしいやつでしょ?
小出:ほめてもらって。
神谷:(すごく小声で)まぁ、ふつうにやってたらそうなっただけ…(笑)。
小出・吉田:笑
たくさんの“いい人”に関わってもらえる。美大って、便利
−ポスターやフライヤーもほかとちょっと違いますよね
神谷:おかげさまで、いろいろな“いい人”たちに関わってもらっていると思います。それこそラーメンズの片桐仁さんとも話したんですけど、ラーメンズさんも美大出身で周囲に美術とかできる方が多いから、美大って便利だよねって(笑)。
−衣裳もかわいいです
吉田:必ずほめられますよね、このシャツのこと。公演終わった後に。
神谷:それはもうheso*さんのおかげですよね。ネタの感想よりシャツのこと言われるっていうのはあります。
*heso…女性4名によるデザインチーム。プロダクトデザインから空間プロデュースまで幅広く手がける。
吉田:そのときは、ネタはあんまりだったのかな…って思うよね。
神谷:わかりますもん。言うことないとき、なにか探しとくじゃないですか(笑)。
−hesoさんも武蔵美つながりですか?
小出:僕らは以前、グラフィックデザイナーの立花文穂さんにポスターとかフライヤーを作ってもらっていて、立花さんが武蔵美で空間演出デザイン学科の先生をやっていたときの生徒さんがhesoメンバー。その流れで出会ったんです。
どんな空間にいても、舞台美術として成立するシャツ
−そもそも衣裳を作ろうと思ったきっかけは?
神谷:自分たちの公演以外でイベントに呼ばれることが増はじめた頃、それまでコントによっていろんな衣裳を着替えていたんですが、荷物が増えるし、着替えにも時間が掛かるしで、ユニフォーム化したものがあったほうが楽だなと思って。落語と同じで、刑事の格好しなくてもそういう“テイ”で観られる。それでhesoさんにお願いしたんです。
−デザインはどういうオーダーを?
神谷:とにかくいろんな場所でコントをやるので、どんな会場だったとしても、僕らが着ているものが舞台美術として成立するものにしてほしいとオーダーしました。どの空間にいても僕らの感じが出るように。
−「テニスコート」という文字をシルクスクリーンで刷って、その生地からシャツを仕立てているんですよね?
神谷:そうですね、だからシャツによって柄の出方が変わってきます。アイコン的なわかりやすさがあるし、僕らの名前も覚えて帰ってもらえるのがいい。これまでグッズにしたことがなかったので、今回はじめて、この白×青のバージョンとベージュ×白のバージョンでバッグを作ったんです。買ってください。
新作ライブでは、とにかく出汁を出し切りたい
−グッズがお目見えする新作公演も来週にせまっていますが、完成度は何%くらいですか?
神谷:もう、おそろしいです。言いたくないです。
小出:輪郭がぼんやり…。
神谷:薄目で見ればなんとなく全体像が見えてきたかな…くらいの。
小出:『出汁が出る出る』っていうタイトルにしたんで、いちおうそれに沿うように出汁について考えていて…
神谷:まぁ、いままでちょっと出汁について無頓着だったもんね、僕ら。ほんと出汁ってね、奥が深くてね…。
小出:いや、でもいつもにくらべたら出汁について考えている感じにはなっているので、その結果を見に来てほしいです。
神谷:なにを発表をしてるんだよ(笑)。まぁ、とにかく出汁を出し切りたいです。むずかしいですよね、出し切るのって。歯磨き粉でもなんでもね…
記事内にYouTube「昔かたぎ」を紹介したものの、最初はぜひ生(ライブ)で観ていただきたいテニスコート。彼らのコントを未体験という人は、これから“はじめてテニスコートを観たときの衝撃”を味わうことができると思うと、少しうらやましい気持ちにすらなる。新作ライブ『出汁が出る出る』は、11月20日(水)からユーロライブにてスタート。
テニスコートのコント『出汁が出る出る』 @ユーロライブ
11/20水 19:30
11/21木 19:30
11/22金 19:30
11/23土 14:00/18:30
11/24日 14:00