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パリ・ファッションウィーク 2025年秋冬コレクションガイド — 境界を越えて生まれる新しいスタイル vol.2

Apr 24, 2025
2025年3月3日(月)〜3月11日(火)、パリ・ファッションウィーク 2025年秋冬コレクションが開催された。ジャンルや価値観の境界があいまいになり、より自由で多様性のあるコレクションが目立った今シーズン。世界的ブランドから気鋭のデザイナーまで、注目コレクションをvol.1からvol.3にわたってご紹介。

パリ・ファッションウィーク 2025年秋冬コレクションガイド — 境界を越えて生まれる新しいスタイル vol.2

Apr 24, 2025 - FASHION
2025年3月3日(月)〜3月11日(火)、パリ・ファッションウィーク 2025年秋冬コレクションが開催された。ジャンルや価値観の境界があいまいになり、より自由で多様性のあるコレクションが目立った今シーズン。世界的ブランドから気鋭のデザイナーまで、注目コレクションをvol.1からvol.3にわたってご紹介。

Acne Studios/アクネストゥディオズ

<Acne Studios(アクネストゥディオズ)>が発表した2025年秋冬コレクションは、「自然と都市の緊張感」を軸に、2つの世界が交錯する幻想的な対比を探る試みとなった。
北欧の静謐な風景と都市の構築的なエネルギーが交錯する空間の中、柔らかな曲線を描くアウターや、1970年代を彷彿とさせるドレープのドレス、視覚的錯覚を取り入れたプリントが、ひとりの女性の内面にある二面性を視覚化した。
手洗い加工のレザーやフロック加工のデニム、ぬいぐるみのようなブーツ、解体されたローファー、レトロシルクをリメイクしたトップスなど、マテリアルとフォルムの対話が、実験的でありながらも人肌に寄り添う温度感をもって表現されていた。
自然と人工、美しさと不確かさのあわいに生まれる「矛盾の美」を、繊細な質感の重なりとグラフィカルな意匠によって昇華し、現代の女性像を更新する意志を確かに感じさせた。

Acne Studios 2025AW WOMENS COLLECTION RUNWAY

GAUCHERE/ゴシェール

<GAUCHERE(ゴシェール)>が発表した2025年秋冬コレクションは、「空間」「物質性」「光」の関係性を掘り下げ、垂直性と反復をキーワードにミニマルな世界観を提示した。
レイヤーの重なりや透過性を通じて、色彩の移ろいを視覚化し、感覚に訴えるような奥行きある表現に挑戦していた。
カーゴスーツを軸とした構築的なシルエットや、複数ポケットが配されたテーラードブレザー、透明感のあるジャージー素材のトップスなどが印象的なアイテムとして登場。
素材や色の繊細な対比を通して、“静かなる主張”を纏う現代の女性像を描き出し、日常と非日常のあいだに新たな着こなしの可能性を差し込んでいた。

GAUCHERE 2025AW COLLECTION

Off-White™/オフホワイト

<Off-White™>が発表した2025年秋冬コレクション「STATE OF RESISTANCE」は、個性と連帯が共存する“コミュニティ”の在り方をテーマに掲げ、他者とともに生きる強さと誇りを衣服を通して表現した。
制服というシンボルを起点に、ガーナの象徴的モチーフやイギリスの制服文化から着想を得て、規律と自由がせめぎ合う構築的なシルエットを展開。
ウィメンズではペプラム仕立てのトラックジャケットや建築的なカッティングのドレス、メンズではツイードやプラスチックの質感を活かしたハイブリッドなアウターや構造的なパンツが登場し、「Sand Bag」などの小物も注目を集めた。
形式に抗いながらも共感を宿す衣服を通じて、現代社会における“抵抗”とは何かを問いかけ、ファッションを社会的対話の装置へと昇華させた。

Off-White™ 2025AW COLLECTION RUNWAY

rabanne/ラバンヌ

<rabanne(ラバンヌ)>が披露した2025年秋冬コレクションは、「壊すこと」と「守ること」の間にある力のせめぎ合いを通じて、人間の本質的な衝動に迫る詩的なビジョンを描いた。
ファーやキルティング、メタルメッシュなど異素材を交錯させながら、過剰さと静けさ、内面と外界が交差する造形美を追求し、装飾性と構築性の間に揺れる衣服の可能性を追求。
揺れ動く毛皮の尾がついたスカートや、スパンコールが溢れるドレス、戦略的に裂かれたテクスチャーが印象的なジャケットなど、感情の断片を縫い合わせるようなアイテムが並んだ。
“不確かさ”を受け入れながらも前進する姿勢を服に託し、繊細さと力強さが同居する装いによって、未来への扉を開ける鍵のようなコレクションを提示した。

rabanne 2025AW COLLECTION RUNWAY

Rick Owens/リック オウエンス

<Rick Owens(リック オウエンス)>の2025年秋冬ウィメンズコレクション「CONCORDIANS」は、デザイナー自身の20年以上にわたる創作の根源と対話する、極めて個人的かつ内省的な旅の記録ともいえる提案だった。
レザー、ウール、ラバーなど多様な素材とアーティザナルな技術を交差させ、厳格な構築性とフェティッシュな質感を併せ持つ衣服が、空間と身体の間に新たな関係性を築いていた。
編み上げられたレザードレスや、ピラルクレザーを用いたスカート、<RIMOWA(リモワ)>とのブロンズキャリーオンに至るまで、あらゆるアイテムが物語性と素材の誠実さを内包している。
本コレクションは、ラグジュアリーの再定義を試みながら、誇張や装飾ではなく、記憶・土地・倫理に根ざした静かな力強さを持って、現代におけるクラフツマンシップの真価を問いかけている。

Rick Owens 2025AW WOMENS COLLECTION RUNWAY

Isabel Marant/イザベル マラン

<Isabel Marant(イザベル マラン)>の2025年秋冬コレクションは、ブランドのシグネチャーである自由なスピリットとニュー・ウェーブの反骨的エネルギーを融合させた挑発的なコレクションに仕上がった。
シースルーのギピュールレースや分解されたテーラリングを中心に、伝統と解体、官能と構築が交錯しながら、都会の夜に響く女性像を描き出した。
赤のタータンチェックと重ねたピンストライプベスト、レースのラッフルと合わせたタキシードジャケット、花柄フィッシュネットやアーティザナルなアクセサリーなどが、マスキュリンとフェミニンの境界を揺るがした。
本コレクションは、エレガンスの定義を再考し、ロマンティシズムと現代的反骨精神を巧みに共存させることで、ブランドが常に問い続けてきた「女性らしさの現在地」を再び鮮やかに更新してみせた。

ISABEL MARANT 2025AW COLLECTION RUNWAY

ISSEY MIYAKE/イッセイ ミヤケ

<ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)>が発表した2025年秋冬コレクション「[N]either [N]or」は、抽象と具象、身体と彫刻、自然と人工の狭間に漂う美を探求するもの。
衣服を通じて視覚や触感の既成概念を撹乱し、見る者・着る者に新たな感覚の揺らぎをもたらす構成は、エルヴィン・ヴルムのアート的発想を起点に、曖昧さの可能性を問いかける。
「KNIT (AS IT IS)」や「LIKE TORSO LIKE SHIRT」など、写真のプリントや和紙の質感、構造的なニット、視覚錯覚を用いたストライプ柄など、多彩な素材と加工技術が駆使され、衣服と彫刻の境界を意図的にあいまいにしている。
本コレクションは、衣服というメディアを通して身体と空間の関係性を詩的に彫刻し、「着る」という行為の本質に立ち返ることで、ファッションの枠を超えた美の新しい可能性を見せた。

ISSEY MIYAKE 2025AW COLLECTION RUNWAY

KENZO/ケンゾー

<KENZO(ケンゾー)>が2025年秋冬コレクション「Lucky Me? Lucky You!」を発表し、アーカイブと現代文化の融合を通じて新たな女性像を創り上げた。
コレクションは、テーラードの重厚さとランジェリーの軽やかさ、90年代音楽カルチャーや英国のカウンターカルチャーなど、時代や文脈をまたぐエレメントが交差し、あたかもパーソナルな空間に紡がれた多層的な物語のように展開された。
ベルベットのショールラペルを備えたブレザー、耳付きジャケット、刺繍入りスノーパーカー、スタッズ付きデニムのミュールスリッパなど、ディテールに至るまで意匠が施されたアイテムは、伝統と実験精神が共存するブランドならではの手仕事の美を体現している。
恋するウサギたちに象徴されるように、本コレクションは「装うこと」を通じて親密さやユーモアを共有することの価値を問いかけ、ファッションがもたらす個と集いの新しい関係性を鮮やかに描き出した。

KENZO BY NIGO 2025AW WOMENS COLLECTION RUNWAY

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パリ・ファッションウィーク 2025年秋冬コレクションガイド ー 境界を越えて生まれる新しいスタイル vol.1
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