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黒木華 × 宮藤官九郎 – 後悔を抱えて前を向く

Aug 25, 2026
誰もが選択を間違え、後悔を抱えながら、それでも生きていく。中島哲也監督の8年ぶりとなる映画『時には懺悔を』は、それぞれの“罪”を背負った人々の姿を通して、人間の弱さと強さ、その先にある小さな光を描き出す。
ともに2度目の中島組への参加となった黒木華と宮藤官九郎は、この作品に何を感じ、どう向き合ったのか。ふたりの言葉から、人が前を向くために必要なものを探った。

黒木華 × 宮藤官九郎 – 後悔を抱えて前を向く

Aug 25, 2026 - FILM
誰もが選択を間違え、後悔を抱えながら、それでも生きていく。中島哲也監督の8年ぶりとなる映画『時には懺悔を』は、それぞれの“罪”を背負った人々の姿を通して、人間の弱さと強さ、その先にある小さな光を描き出す。
ともに2度目の中島組への参加となった黒木華と宮藤官九郎は、この作品に何を感じ、どう向き合ったのか。ふたりの言葉から、人が前を向くために必要なものを探った。

 

 

 

 

 

互いに感じる、俳優としての“すごさ”

― おふたりは共演こそ少ないですが、演劇という共通のルーツがありますよね。お互いの印象、俳優として感じる“すごさ”について教えてください。

黒木:まず、ご自身で作品を作れることがすごいなと思っています。私にはできないことなので。作られるものすべてが面白いですし、私もいつか作品に出させていただきたいです。

お芝居では、演技をしようとしていないところがすごいなと。今回の役もどこか憎めなくて、人間のだらしなさや弱さを備えながらもチャーミングに見せられる。こんなにも役を魅力的に演じられるのはなんででしょうか。

― 不思議ですよね。役者として入っているときは、作品をそこまで俯瞰で見ているわけではないでしょうし。

黒木:宮藤さんはどのようなものの見方をして、人をどのように捉えているのか気になります。

― 宮藤さんから見た、黒木さんの印象はいかがでしょう?

宮藤:難しい役や大変な役をやることが、もしかして好きなんじゃないかな。たとえば、いっぱいセリフがあるとか、あるいは逆にひとつもセリフがないとか、ハードルが高ければ高いほど燃える人なんだろうなと思います。

― 宮藤さんも?

宮藤:あ、僕は全然そんなことないです(笑)。できれば楽なほうがいい。

― 今回のように難しい役であっても、その高いハードルを当然のように飛び越えてくるのがすごいですよね。

宮藤:僕と黒木さんがすれ違ったシーンで、現場では表情が見られなかったんです。仕上がった映画を観たら、そこに至るまでのストーリーをすべて踏まえた表情をしていて、改めてすごいなと思いました。

 

それぞれが抱えるものの先にある希望

完成した作品を最初にご覧になったときの率直な感想をお聞かせください。

宮藤:僕はほとんど、しんちゃん(しんすけ)としか絡んでなくて、他の皆さんが僕を見張っている、という映画じゃないですか。だから自分がどう見えているのか、すごく気になっちゃって。最初に出てきたときは、自分の身体があまりに貧相で、まずびっくりしました(笑)。

黒木:私も自分の芝居が気になりました。これで合っているのかな、浮いていないかな、皆さんの流れを潰していないかなと。

宮藤:黒木さんも、誰かとがっつり絡んでいるわけじゃないですもんね。

黒木:そうなんです。

宮藤:それで、この貧相な人のことを(観客に)好きになってもらわなきゃいけないのに大丈夫かなと観ていたら、ちゃんとそういう作りになっていて。それぞれに事情を抱えた人たちが、明野と新をこういうふうに支えてくれていたんだなと分かって感動しました。すごくいい映画だなあって。

黒木:私もいい映画だと思いました。みんなが日々選択しながら生きている中で、誰もがその選択を間違えてしまうときがある。それぞれ抱えているものはあるけれど、私はこの映画を観終わって、希望といいますか、光のようなものを感じることができました。

黒木さんは、尋津民恵という役をどのように捉えて演じましたか?

黒木:複雑な感情の揺れがある役だったので、それを大事にしたいなと思いました。ひとつだけの感情で動かないようには意識していました。

宮藤さんは重い障害のある少年・新を育てる明野哲夫を演じましたが、台本を読んでいたときとは感じ方が変わりましたか?

宮藤:変わりましたね。読んだ時点では(登場人物の中で)自分の役だけがよく分からなかったんです。なぜ誘拐して、なぜ面倒を見るのか。けど実際にやってみたら、そりゃこうなるよな、と。役から教えてもらった感覚です。

黒木さんの役も西島(秀俊)さんの役も子どもに障害があって、観ている人が「あんただったらどうする」って試されるような話じゃないですか。

まさにそうですね。

宮藤:それぞれが深い後悔を抱えている中、僕の役だけが何も考えていないんですよ。ただ、目の前の子がちょっとでも笑ってくれたり、ご飯を食べなかったり食べてくれたり、そんなことで一喜一憂している。何も考えずにそういう生活をしているだけで、なんだか尊く見えてくる。

でもああ見えて、明野も後悔抱えていたんですよね、きっと。

宮藤:そうですね。

 

後悔をガソリンにして生きていく

― 宮藤さん自身は、後悔どういうふうに向き合ってますか?

宮藤:最近は、だいたい起きたらすぐ後悔です(笑)。なんで俺、昨日あんなことしたんだろうとか、ああしとけばこんなことにならなかったのにとか。結局考えちゃうんで、後悔から逃げないようにしています。考えきらないと次の段階に行けないので。

切り替えるというより、ひたすら悔い続ける

宮藤:でもあのときは、あれでいいと思ったんだよな……っていうのを、寝起きで繰り返していると、だんだん意識がはっきりして、大丈夫、大丈夫、大丈夫となってきますね。

― 黒木さんも後悔することが?

黒木:ありますよ。仕事では、毎回この芝居でよかったのだろうかと考えちゃいます。

― そういうときは、どうやって気持ちを切り替えるのでしょう?

黒木:どうしても悩んでしまうので、どこかで忘れるといいますか、いい意味で捨てていく。次はもっとよくしていこうと切り替えます。

― とはいえ、なかなか難しいですよね。やっぱり過去に囚われてしまう。

黒木:そうですね。ふと思い出して恥ずかしくなったりすることもありますが、こういった感情も、芝居をするうえで使えるのかなと。経験したことは絶対に積み重なっていくので、こういうことも大事なのかなと思うようになりました。

― 宮藤さんは、人が前を向くために必要なものは何だと思いますか?

宮藤:この映画には、ご飯を食べながら話しているシーンがすごく多いですよね。辛い話や重い話をしているときでも、とにかくいっぱいご飯を食べながら喋る。セリフが不明瞭になっても、とにかく食べてくださいという監督の演出だったんですけど。

完成した映画を観ていたら、この人たちは生きたいんだな、ということが伝わってきました。もういっぱいいっぱいだと言いながら、席につくなりご飯を食べ始める。それは生きることへの執着なんだろうなって。

― やっぱり人間、食べることが生きることなんですよね。

宮藤:台本を読んだときはそう思わなかったんだけど、あんなにご飯を食べて、酒を飲んで、タバコを吸って、倒れて、また起きてってことをくり返して。たぶん、後悔をガソリンにして生きているんでしょうね。

自分はだめだったから、せめて他の人はそうならないでほしい。自分にできなかったことを、やっている人がいることが嬉しい。その思いが彼らのエネルギーになっているんだと思いました。

― 人間はどんな状況でも前を向けるんだと思わせてくれる作品でした。ストレートで濃密で、これまでの中島監督の映画とはちょっと違った印象も受けました。

黒木:中島さんの、人間への愛を感じました。

 

Profile _ 黒木華(くろき・はる)
1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」でデビュー。2014年には映画「小さいおうち」でベルリン国際映画祭 最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。近作にドラマ「銀河の一票」、映画「マジカル・シークレット・ツアー」、舞台「NORA」などがある。今年の待機作に、映画「本当にあった話(の話)」(10/2公開)、映画「日曜のあと」(11/20公開)が控えている。
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Profile _ 宮藤官九郎(くどう・かんくろう)
1970年7月19日生まれ、宮城県出身。脚本家・監督・俳優として幅広く活動。最近の主な脚本作に、映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」、ドラマ「不適切にもほどがある!」などがある他、Netflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」が10月配信予定。また、出演映画「ルックバック」が9月11日公開。

 


 

Information

映画『時には懺悔を』

2026年8月28日(金)全国公開

出演:西島秀俊 満島ひかり
黒木 華 宮藤官九郎
毎熊克哉 鈴木 仁 烏森まど 山﨑七海
唯野未歩子 野呂佳代 長井短 しんすけ 山下舜太 諸角優空
柴咲コウ
塚本晋也 片岡鶴太郎/佐藤二朗
役所広司
監督:中島哲也
原作:打海文三『時には懺悔を』(角川文庫/KADOKAWA)

映画『時には懺悔を』公式サイト

©2026 映画「時には懺悔を」製作委員会

  • Photography : Shoichiro Kato
  • Styling for Haru Kuroki : Lim Lean Lee
  • Hair&Make-up for Haru Kuroki : RYOKI SHIMONAGATA
  • Styling for Kankuro Kudo : Chiyo
  • Hair&Make-up for Kankuro Kudo : Mariko Igusa
  • Edit&Text : Yusuke Takayama(QUI)