映画館で魚も鑑賞!?多彩な映画と出会える「新宿シネマカリテ」
約100年の歴史を誇る老舗映画館をルーツに持つという信頼性か。新宿駅東南口から歩いて2分という好立地か。それとも他に理由が? シネマカリテの秘密に迫るべく、支配人の諸井征彦氏をたずねた。
武蔵野興業株式会社 執行役員興行部長。2012年、新宿シネマカリテのオープン時からの支配人。シネマカリテの各部門を統括し、経営管理を担う。
上映する作品選びのコンセプトは「なんでもあり」
— シネマカリテのスタートは?
シネマカリテは1994年10月からの7年間、姉妹館である武蔵野館のある武蔵野ビル3階で、美術館を併設した3スクリーンのミニシアターとして運営されていました。2001年12月末に閉館したのですが、それから10年を経た2012年12月22日、ここ新宿NOWAビルでシネマカリテの名を継いで再スタートしました。
— 武蔵野館とはどのような違いが?
シネマカリテはミニシアターですが、武蔵野館はロードショー封切館として営業しています。大正9年(1920年)に映画館を始めた武蔵野館は、2020年でちょうど100周年を迎えます。それを記念し、今年2019年の6月から1年間、武蔵野館とシネマカリテの両館で記念上映を行います。通常の興行とは趣の異なる、古き良き時代の映画をぜひご覧になってください。
— 映画界の歴史を紐解くようなプログラムで、見応えがありそうですね。通常の上映プログラムの特徴は?
新宿という場所柄もありますが、老若男女さまざまな方に向けて色を決めることなく、なんでもありというのがコンセプトです。上映作品の選定は武蔵野館とシネマカリテをまたいだ2名で担当し、偏りのないようバランス良く編成しています。シネマカリテ=Cinema Qualiteという名称はフランス語で「ハイクオリティな映画」という意味合いなので、そういった作品をチョイスする一方、矛盾するようですが娯楽性に富んだ楽しい映画の世界もご紹介しています。
たとえば「カリコレ®」。こちらはシネマカリテで毎年開催し、2019年で6回目を迎える映画祭です。とくに遊び心のあるバラエティ豊かな作品を取り揃えており、世の中に埋もれた芸術映画やB級映画から、珠玉の名作まで上映しています。毎年来てくださるファンのお客さまも多く、レアな作品は平日でもチケットがすぐにソールドアウトしてしまうことも。意外な作品が人気を集めて、われわれも驚かされることがありますね(笑)。
— シネマカリテの上映作品でヒットしたものを教えてください。
調べてみたところ、2019年6月現在これまでの興行収入ベスト5が以下の作品です。
5位『6才のボクが、大人になるまで』(2013-14)
4位『博士と彼女のセオリー』(2015)
3位『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)
2位『勝手にふるえてろ』(2016-17)
1位『君の名前で僕を呼んで』(2018)
『君の名前で僕を呼んで』に主演したティモシー・シャラメとアーミー・ハマーの二大俳優はルックスも演技力も高く、女性からすごい人気で、パンフレットも飛ぶように売れましたね。その反響を受けて配給会社がスペシャル版のパンフレットを作ったんですが、そちらも入荷が追いつかないほどでした。
水槽にはピラニアをディスプレイしたことも!
— ロビーのディスプレイも趣向が凝らされていて、見応えたっぷりです。
そうですね。とくに特徴的なのは、ロビーの奥に設置した水槽「ヒーリング・アクアリウム」。上映中の映画の世界観を表現した水槽で、3〜4週間に1回、映画の内容に合わせて魚やディスプレイを変えています。たとえば先日上映した田中圭さん主演の『美人が婚活してみたら』という映画では、きれいな熱帯魚をそれぞれクリアの円筒に入れて展示しましたが、女性のお客さまから大好評!映画を見終わった後なら、水槽の演出の意味も伝わるかと思います。
— 鑑賞後にも楽しめる仕組みなんですね。
ホラー映画だと小さなピラニアを入れてみたり、ワニのような爬虫類を入れてみたり。ディスプレイの魚を選ぶ方が映画にも造詣が深いので、毎回おもしろい提案をしてくださっています。
— シアターの特徴は?
ここNOWAビルはもともと飲食ビルとしてオープンしており、現在シネマカリテとなった地下1階フロアではビアホールが営業されていました。その影響でスクリーン1のスクリーンが右に寄っていることが特徴です。とくに見づらいということはありませんが変わっていますよね。
その代わりといってはなんですが、座席の座り心地にはかなりこだわって、パリ・オペラ座やベルサイユ宮殿で使用されているフランス・キネット社の椅子を採用しました。ゆったりとご鑑賞いただけます。
また音響の設置をしていただいた専門家によると、たまたまですが劇場の形がスピーカーとすごく相性が良かったということで、音楽映画の上映でもお客さまから好評をいただいています。
— チケットカウンターには売店も?
いま販売しているのはビールとハイボールの缶、スナック、菓子パン、あとは海外のおいしそうなビスケットなどを揃えています。他のお客さまにご迷惑のない範囲なら持ち込みも問題ございません。
ちなみに毎週土曜日・日曜日と祝日、サービスデーである水曜日の朝には武蔵野館からポップコーンを10個限定で分けてもらっています。これは人気でわりと早くなくなってしまいますので、ポップコーン狙いの方はお早めに(笑)。
— ちなみに諸井さんご自身が好きな映画はなんでしょう?
「人生で最高の1本は?」なんて良く聞かれるんですが決めかねるんです。人生には良いときもあれば悪いときもあって、その時々で観たものが心に残っていますよね。父親が映画好きで一緒に見に行く機会も多く、大映の時代劇、東映のやくざ映画、東宝のゴジラなど特撮……。また高校時代になると盛んに名画座に通い、ジャンル問わずいろんな作品を見ました。
— 最後の質問です。諸井さんが考えるミニシアターの魅力とは?
ミニシアターで鑑賞する映画は、心にとってのおやつのように感じます。気持ちが沈んでいるときに、監督の個性が表現されたミニシアター系の映画を観ると、心に栄養が行きわたるような感覚があります。
映画館は足が遠のきがちですが、久しぶりに映画館で鑑賞したらまた観たくなったというお客さまの声は多いです。だからぜひ映画館に足を運んでくださいというのがわれわれの一番の思いです。シネマカリテの常連のお客さまには、観たい映画があるから来館されるのではなく、来てからおすすめの作品をスタッフに聞いて鑑賞される方もおられます。ぜひお気軽にお越しください!
新宿シネマカリテ
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目37-12 新宿NOWAビルB1F
TEL:03-3352-5645
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※全席指定席
- Text : Yusuke Takayama
- Photography : Miyuki Kuchiishi