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NEW GENERATIONS vol.16 – DISSONANCE|Shop

Aug 6, 2024
次世代を担う注目クリエイターやアーティストの新たな魅力を届ける「NEW GENERATIONS」。
第16回はスタイリストの森下リョウジとモデルやフォトグラファーなどマルチに活躍するモハメド アズハリ アフメド。共同で立ち上げたショップの「DISSONANCE(ディソナンス)」について「形態にはこだわらない」と話すふたりは今後のクリエイターとしての展望について包み隠さず語ってくれた。

NEW GENERATIONS vol.16 – DISSONANCE|Shop

Aug 6, 2024 - FASHION
次世代を担う注目クリエイターやアーティストの新たな魅力を届ける「NEW GENERATIONS」。
第16回はスタイリストの森下リョウジとモデルやフォトグラファーなどマルチに活躍するモハメド アズハリ アフメド。共同で立ち上げたショップの「DISSONANCE(ディソナンス)」について「形態にはこだわらない」と話すふたりは今後のクリエイターとしての展望について包み隠さず語ってくれた。
Profile
DISSONANCE
ショップ

2022年に渋谷にオープン。現在は土日のみの営業で、平日はアポイントメント制。ショップの運営だけではなく、ブランドのシーズンルックやビジュアル制作なども行っている。

 

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@dissonance.jp

森下リョウジ
スタイリスト兼DISSONANCEオーナー

学生時代に古着屋で2年働き大学卒業後は、アパレル企業に入社。販売員を2年間経験した後、2022年に「DISSONANCE」をオープンする。バイイング、ショップ運営のほかにファッションスタイリストとしても活動中。

 

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@_ryoji_morishita_

モハメド アズハリ アフメド
モデル、フォトグラファー兼DISSONANCEオーナー

モデル業の傍ら、WEBディレクターやフォトグラファーとして、主にファッション業界を中心に活動中。
 

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@mohamed.azhari.ahmed

熱いライバル心は胸の内に秘めていた子供時代

—おふたりはどちらの出身ですか。

森下:広島県です。

モハメド:僕は両親がスーダン人ですが、生まれも育ちも千葉県です。長男だったので幼少期はプレッシャーを感じながら過ごしていました。

—プレッシャーというのは「弟たちのお手本になりなさい」といったことですか。

モハメド:親がそれなりに厳しかったこともあって僕が勝手に感じていただけかもしれないですが。プレッシャーって長男あるあるですよね?

森下:うちも両親は堅い家でしたね。剣道が盛んな街だったこともあって小学校の一年生から習っていたのですがそれも親に道場に連れて行かれて気づいたら竹刀を振っていました。男の子のスポーツの習い事ってバスケやサッカーという時代だったのに親がやらせたいことが優先でした。

—おふたりとも家庭環境は厳格だったようですが森下さんはスタイリスト、モハメドさんはモデル兼フォトグラファー。いわゆる「お堅いお仕事」ではないですが子供の頃からクリエイターとしての片鱗は見せていたのでしょうか。

森下:クリエイターの資質に関係しているかわかりませんがクラスでも目立つような同級生に対して「あいつには負けないぞ」といった気持ちを強く抱く子供でしたね。でも表には出さずに胸に秘めていて、それも憧れの裏返しのようなところもありました。

モハメド:僕も近いかもしれないです。

森下:自分の気持ちや感情のようなものをわかりやすく表に出さない性格というのはスタイリストという仕事につながっているかもしれないです。

モハメド:僕もモデルをやっている時は「もう一人の別人格が表現している」という感覚で、自分を前面に強く押し出そうとしないのはリョウジ君と同じかもしれないです。

—モデルとして与えられた役割を演じるということですか?まるで役者のようですね。

モハメド:高校時代は演劇部でした。なのでモデルとして役割を演じることに抵抗はないのですが、どうしても受け身になるので表現の幅に限界がきて。それで自らの発想で表現できるフォトグラファーとしても活動を始めたんです。

—モデルはスカウトですか。

モハメド:そうです。弟がモデルを先に始めていて「なんか楽しそうだな」って。だから声をかけられた時は「ようやく自分にも」と思いましたね(笑)。

Pen Magazine 2021年11月号表紙より

Pen Magazine 2023年12月号より

実際にモデルは楽しいと思えましたか。

モハメド:現場ごとの試行錯誤が楽しいです。

森下さんはどうしてスタイリストに?

森下:服が好きで販売員もバイヤーも経験したのですが100%満足していたかといえばそうではありませんでした。でもディスプレイ用のスタイリングを組むのだけは楽しくて、それにお客さんが反応して売れる喜びはありました。そこで服との向き合い方として自分がやりたい方向性が見えてきて、SNSで自分の私服で組んだスタイリングをどんどんアップしていったんです。

—それはまだスタイリストとしてのお仕事ではないですよね。

森下:完全に個人の活動でしたがSNSを見てスタイリストとして仕事を依頼したいという方が現れるようになりました。それで即行動しました。

即行動ってすごいですね。迷いがないというのは森下さんの強みですか。

森下:決断力、実行力の速さは強みと言えるかもしれません。やりたいことが頭に浮かんできたらそれを温存するのではなく、とりあえずやってみる。そこで失敗したら次の手を考えて、またすぐに実行する。その繰り返しです。でも、それは同時に弱みにもつながっているんですけど。

弱みとは?

森下:お世話になっているスタイリストの先輩から「投げる球は豪速球なのに、コントロールがガバガバだ」と言われたことがあります。思いついたらすぐに実行するスピード感は優れているけど、きっちり考える前に行動を起こすから失敗が多い。得意なことは完成度も高くできる、苦手なことは何もできないといった感じで僕の強みと弱みは表裏一体ですね。

—でも「あそこはあいつに任せておけば間違いない」とチームに一人はいてほしいタイプですね。

森下:苦手なことは周囲にサポートしてもらってます。僕ができないことはモハメドが全部できるので。

モハメド:僕は思いついたら即実行ではなくて、まずは理詰めで考えて行くタイプです。それは強みかもしれませんが、裏を返せば神経質すぎるという弱みかもしれないです。なのでリョウジ君のスピード感というのは僕にはない生まれ持った素質だと思います。彼は天才肌ですね。

—モデルやスタイリストの方というのはファッション好きでおしゃれへの目覚めが早いイメージがありますが、おふたりはどうでしたか。

モハメド:僕はファストファッションばかりでブランドなどへの関心は薄かったですよ。ただ、モデルを経験したことで服そのものというよりも「着こなすことが楽しい」ということに気づけたと思っています。

森下:僕はおしゃれへの目覚めは明確に覚えています。高校の修学旅行が制服ではなくて私服だったので「おしゃれに決めてやろう」とどんなコーディネートで修学旅行に行くかの試行錯誤が始まりました。兄が服好きだったのでブランドのこともよくわかっていないのに服を借りて、そこから急速にファッションへの関心が生まれました。

ふたりの名刺代わりとしての「DISSONANCE」

森下さんとモハメドさんのそもそもの出会いはなんだったのでしょうか。

モハメド:僕がモデルでリョウジ君がスタイリストとして参加したショーでした。その当時の僕はモデルを起用せずにファッションシュートができるかという構想があったので、リョウジ君と一緒ならできそうと作品撮りに誘ったのがきっかけです。

森下:その時に一緒に取り組んだ試みが「DISSONANCE」の立ち上げにも繋がるんです。

モハメド:作品撮りのためにたくさんの服を集める必要があったのですが、撮影するだけでなく、そのまま販売できたらいいなと考えたんです。なので「DISSONANCE」で取り扱っているアイテムを撮る時は服の新しい見せ方を試行錯誤しています。

「DISSONANCE」はショップとして認知されていますが、おふたりからするとクリエーションの実験の場のような感じですね。

森下:本当にそんな感じです。「DISSONANCE」もショップをやりたかったわけではなくて、僕とモハメドのクリエーションを知ってもらうための名刺代わりになるような箱が欲しかったんです。

モハメド:僕やリョウジ君のことはよく知らなくても、SNSで発信している世界観を気に入ってくれて「DISSONANCE」を訪れるお客さんもいます。

「DISSONANCE」に依頼すればこんなクリエーションで応えてくれそうだとむしろ同業の反応もありそうですね。

モハメド:そうなることが理想で、名刺代わりというのはまさにそういう意味なんです。

—ショップとしての「DISSONANCE」のアイテムラインナップはどんな感じですか。

森下:自分たちが好きであること、長く着続けられる服であること。完全に個人の趣味、嗜好ですがそれがセレクトの基準です。

モハメド:基本は日常着。僕たちが私服にしたいと思うような服だけを取り扱っています。

—SNSで発信している服の見せ方は飛躍していても、アイテムはベーシック中心なんですね。お客さんはどんな方が多いですか。

森下:年齢層としては若いお客さんが中心で、ファッション好きが多いと思います。

モハメド:僕とリョウジ君は「内秘め系」と呼んでいます。

気持ちを内に秘めるのはおふたりと同じじゃないですか。

森下:ファッションへの熱量はすごいけど、それを表には出さない。「DISSONANCE」で取り扱っているのはどれもベーシックだから、それを好むのは「内秘め系」なのかなと。

—ショップを移転する計画があると聞きました。

森下:もっと空間を活かした見せ方にも取り組みたいですし、服以外も取り扱いたいですし、新しいデザイナーのフックアップの場にもしたいし、自分たちの撮影スタジオとしても活用したい。そのために現在よりも広さがほしくて移転を決めました。

服以外のアイテムというのはどいうものを考えていますか。

モハメド:まだぼんやりと考えている段階ですね。

森下:とにかく自分たちが好きだと思うものですね。僕もモハメドも自由に好き勝手にセレクトすると思いますが、共通項のようなものが自然とあって、やっぱり「DISSONANCE」らしい世界観が生まれるかもしれないです。

移転することは決まっていてもそれによって「DISSONANCE」がどうなっていくのかは未知というのも、それはそれで楽しみですね。

モハメド:どうなっていくのか自分たちがいちばんワクワクしています。

森下:オリジナルをやっていくことは明確に決めていて、第一段階としてベーシックなアイテムを販売する予定です。

モハメド:ふたりとも試行錯誤が好きだから、ショップが大きくなればいろんなアイデアが生まれてくると思っています。

得意と苦手が全く異なるから補完し合える関係

—これからもやってみたいことが次々と生まれてくるとは思いますが、現時点でのおふたりの興味、関心はなんでしょうか。

森下:最近では映画の画角ですかね。「あの映画のあのシーン、あのアングルすごくいいよね」って、最近はふたりでそんな話ばかりしています。ストーリーについてはお互いひと言も触れずに(笑)。

モハメド:結局はそれも「DISSONANCE」の見せ方について、自分たちが試行錯誤しているからなんですよね。なので自然とそこに興味、関心が向かっていく。映画で目に留まった画角を静止画に変換したらどうなるか。それを考えるのも楽しいです。

—いろいろお話を聞いていると森下さんとモハメドさんはクリエーションの源泉が同じようで、いいコンビだと思います。周囲からはどのように見られているんですか?

モハメド:理由はよくわからないですけど、変人扱いされることは多いです(笑)。

森下:自分のことを的確に評してくれるような人は周囲にいないかも。知り合いは多いのですが友達は少ないので(笑)。

友達が少ないというのは、なんでも話せるような相手が少ないということですか。

森下:そうかもしれないです。いろいろ考えているのはわかるけど、その考えを明かしてくれないとはよく言われます。僕はさらけ出しているつもりなんですけどね。

—モハメドさんは森下さんの第一印象を「天才肌」だと言っていましたが、森下さんは最初にモハメドさんに会った時にどう思ったんですか。

モハメド:それ、聞いたことないかも。

森下:モデルだけじゃなくてフォトグラファーもやっていると聞いて、一緒に作品に取り組んだりして、とにかく器用だなって思いました。僕ができないことをなんでもできるじゃんって。「DISSONANCE」にしても僕が得意な仕事がモハメドは苦手だったりして、そうやって補完し合える関係も良かったです。

森下さんは得意なのにモハメドさんが苦手なことってなんですか。

モハメド:バイイングはかなり苦手です(笑)。

森下:それでも目標として向かっているところは同じなんですよね。

—クリエイティブのチームとしては最高の関係じゃないですか。

モハメド:毎シーズン、ショーもコレクションもルックブックもたくさん見ますけど、それを自分なりに噛み砕いて「今季はこれがいい」と感じ取ったことについて意見交換をしますが、それも同じように捉えていることが多いですね。

森下:僕たちの「今季はこれがいい」が「DISSONANCE」のお客さんが求めている服と一致することも多いです。

モハメド:だからお客さんとも話がすごく合うんですよ。

森下:そうそう、確かに。

—チームとしても素晴らしいですが、おふたりは一人のクリエーターとしてどうなっていきたいですか。

森下:個人的な願望というよりも「DISSONANCE」に撮影依頼がきて、僕らのディレクションでクリエーションが完結する。「DISSONANCE」がそんなプラットフォームのようになっていけばいいと思っています。

「DISSONANCE」はショップ名ではありますが、森下さんとモハメドさんの共同創作の際の名刺のようなものでもあるんですね。

森下:ショップという形態は入口に過ぎないので、それをずっと続けていくかはわかりません。

モハメド:何年後かには「DISSONANCE」がクリエイティブユニットの名刺の役割としてだけ残っていることも十分にあり得ると思いますよ。むしろその可能性は高いんじゃないでしょうか。

 


Profile _ DISSONANCE(ディソナンス)
ベーシックなアイテムを中心にブランドアーカイブをセレクト。定期的にPOPUPや展示会なども開催する。

営業時間:毎週土日 13:00-19:00
平日はアポイントメントのみの営業
DMまたはEメールよりアポイントをお取りください。

INFORMATION
スタイリング、ビジュアル制作、新規取扱ブランドについてのご相談などはこちらよりご連絡ください。
HP:https://dissonance.jp/
contact@dissonance.jp

  • Photograph : Junto Tamai
  • Text : Akinori Mukaino
  • Edit : Miwa Sato(QUI)

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