＜KAMIYA＞のダウンジャケット – RECOMMEND by 編集部 副島

＜KAMIYA（カミヤ）＞の2025年秋冬は、これまでブランドが大切にしてきたルードでボーイッシュな精神を、よりストレートに生々しく押し出したシーズンとなった。きっかけは、フィリップ・ビアロボス（Philippe Bialobos）による写真集『Messenger Style』。都市を疾走するメッセンジャーたちの、荒くれたスタイルと軽やかな即興性は、過酷な環境に晒されながらも懸命に生きる彼らの人生の痕跡が刻まれており、その姿が＜KAMIYA＞の服づくりの核心と重なった。

なかでもひときわ目を引いたのが、一見ダメージ加工を施したように見えるダウンジャケット。デザイナー自身が長年着続けたパーカーを実寸でスキャンし、ナイロンタフタにそのままプリントしたものだという。ほつれや汚れ、色落ちまでもが高精細に再現されているが、表面には一切の加工が施されていない。見た目と触感のギャップが、意表を突くユーモアを生み出している。

中綿はダウン90%、フェザー10%という本格仕様にもかかわらず、外観はただのくたびれたダウンジャケットにしか見えないというギャップも＜KAMIYA＞らしい。少年がずっと着続けたお気に入りの一着を、テクノロジーと遊び心で再構築したような一着だ。どこか不器用で、けれど確かなスタイルがそこにはある。＜KAMIYA＞が大切にしてきた「時間」と「人間性」が息づいたアイテムと言えるだろう。

KAMIYA 2025AW COLLECTION RUNWAY

＜SATORU SASAKI＞のニードルパンチのバイアスチェックのコート – RECOMMEND by 編集部 武者

デザイナーの人柄も含めて注目しているブランド＜SATORU SASAKI（サトル ササキ）＞。今季のランウェイは病床におり、見ることが叶わなかったものの、コレクションで気になるアイテムを発見。遠目ではペイントかな？と思うような味のあるチェック柄が印象的なニードルパンチのバイアスチェックのコート。はっきりした柄なのに柔らかさを持ち合わせているのはニードルパンチの手法ならでは魅力だと思う。一点一点手作業で作られており、コート本来の暖かさ以上に、心の温もりを与えてくれそう。ブラックのパンツも素敵だけど、インディゴブルーのジーンズとの合わせも良さそうと妄想しています。

SATORU SASAKI 2025AW COLLECTION RUNWAY

＜Chika Kisada＞のアヴァンギャルドな立体スカート– RECOMMEND by 編集部 佐藤

「GARDEN新木場FACTORY」で発表された＜Chika Kisada（チカ キサダ）＞2025年秋冬は、ブランドが掲げる「強さ」や「パンクの生命力」に焦点を当てた、力強い演出が印象的でした。これまで、穏やかなピアノの旋律や上品なチェロの生演奏が響き渡る静謐な空間を作り上げてきた同ブランド。しかし今シーズンは一転、暗闇を切り裂くようなけたたましいビートが鳴り響き、モデルたちは荒々しくランウェイを闊歩する演出に良い意味で期待を裏切られました。

特にファーストルックで登場したアヴァンギャルドなスカートは、立体的な構造や露わになった裏地、そして何層にも重なるチュールのダイナミズムが、ブランドの精神性と呼応していて、荒々しさと優雅さという相反する二面性が窺えます。まるで感情がぶつかり合うような力強い存在感を放っているアイテムでした。

Chika Kisada 2025AW COLLECTION RUNWAY