全てがその中にある「Colbo」からコミュニティを広げたい|Colbo タル・シルバースタイン
イスラエルのテルアビブ出身。<HED MAYNER(ヘド メイナー)>でのデザイン・ブランディング経験などを経て、2021年にRyan Dougherty(ライアン・ドハティ)とDaniel Reitten(ダニエル・ライテン)と共にニューヨークのロウアーイーストサイドに<Colbo(コルボ)>を設立。1980年代のイタリアンデザインやスピリチュアルな美学からインスピレーションを受け、リラックス感がありつつもシーンを問わないユニセックスなウェアを展開している。
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ブランドの考えをそのまま表した「Colbo」という名前
—<Colbo>のスタートは2021年でした。シルバースタインさんが自身のブランドを設立した経緯を教えてもらえますか。
シルバースタイン:自分がこれまでの人生で経験してきたことや学びによって得た知識、さらには夢に見てきたことをインスピレーション源として表現に落とし込みたい想いがあったんです。私はファッションからアート、音楽、ホスピタリティを愛しています。それらに対する情熱を融合させた総合的なライフスタイルブランドを手がけたいという気持ちから<Colbo>をスタートさせました。
—2021年といえばコロナ禍でもあり新しい挑戦に適したタイミングとも思えませんが、そのような時期にスタートさせたことには理由はありますか。
シルバースタイン:コロナ禍によって一人で過ごすことが増えたと思うんです。親しい人と会うこともできない、体験を共有することもできない、その反動で人とのつながりが強く求められた時期でもあったと思います。<Colbo>はブランドであると同時にコミュニティを大切にする人が集まる場所でもありたいというのが私の想いでした。コロナ禍だったからこそコミュニティスペースの役割も果たすような<Colbo>を誕生させることに大きな意味があると思いました。
—ファッションを通じたコミュニティについてどのような考えをお持ちですか。
シルバースタイン:パンデミック以降はリテールも従来の販売型よりもコミュニティ型、体験型へと変わっていき、コミュニティの重要性がどんどん高まっていると感じています。それはとても素晴らしいことだと思っているので<Colbo>でもイベントやコラボレーションを積極的に行っています。
—<Colbo>では多くのブランドを取り扱っているので、それもひとつのコミュニティですね。
シルバースタイン:同じ空間を共有している人やブランドはある意味で隣人です。同じ場所を共有し、同じ考えを持つ人々と関わることで服そのものや空間そのものを超えた文脈が与えられ、ブランドのコンセプト、服、人とのつながりに、さらに深いレイヤーが生まれると思っています。「人は服だけではなく、その背景にある人間的なつながりまで求めている」というのが私の考えです。
—<Colbo>というブランド名の由来と意味を教えてください。
シルバースタイン:私はイスラエルのテルアビブ出身なのですが、私の国の言葉で「Colbo」は「everything in it(全てがその中にある)」という意味を持ちます。「Col」は「全て」、「Bo」は「その中に」という意味です。また、デパートやジェネラルストアなど、さまざまなアイテムを扱うショップを表す言葉でもあります。つまり、多くのものが集まるショップということです。<Colbo>のショップでは私のブランドだけでなく、コーヒー、レコード、ジュエリー、ホームグッズなど、多くのブランドを取り扱っています。今ではワインバーもありイベントスペースとしても機能しています。なので「全てがその中にある」という考え方は、<Colbo>のブランドアイデンティティそのものなんです。
—<Colbo>が拠点にしているニューヨークのロウアー・イースト・サイドはどのような街でしょうか。
シルバースタイン:さまざまな文化が混ざり合った街です。ずっと住み続けている人たちもいれば、新しいライフスタイルを持ち込む人たちもいます。変わらないものと変わっていくものが共存したニューヨークらしさが凝縮された特別なエリアだと思います。とてもクールでクリエイティブなコミュニティがありますし、新しくてユニークなショップ、レストラン、バーもたくさんありますよ。
—聞いているだけで訪れたくなりました(笑)。
シルバースタイン:とてもオープンマインドで多様性を受け入れる街なので、きっと歓迎してくれるはずです。クリエイティブでありながらニューヨークらしい少し荒削りな雰囲気や歴史も残っているとても好きな街です。
—ロウアー・イースト・サイドという街がブランドに与える影響などもありますか。
シルバースタイン:おもしろい質問ですね(笑)。ロウアー・イースト・サイドという街が<Colbo>に与える影響について、今すぐに正確に説明するのは難しいです。ですが、街での生活やショップに訪れてくれる人々との関わりからは多くの影響を受けています。ロウアー・イースト・サイドの多様な文化や環境に日々触れて、感じることが大きなインスピレーションになっています。
—ニューヨークというのは刺激に満ちた都市というイメージです。
シルバースタイン:ニューヨークは常に多くのことが起きている街で、面白い出来事や驚くような状況があふれているのでインスピレーションは尽きません。新しいリテールストアやブランドも誕生し続けているので新鮮なビジネスやプロジェクトから刺激を受けるのですが、<Colbo>とはある意味で逆方向でもあります。刺激的で混沌とした街だからこそ、私はあえて少しリラックスした、クリーンで落ち着いた空間を生み出したいと思っています。街から影響を受けながらも、同時にその街に対して異なる空気感を生み出しているような感覚です。
—現在のニューヨークのファッションはどのような感じですか。
シルバースタイン:ニューヨークのファッションはとてもクールで多様です。現在は新しいブランド、新しいリテールストア、マルチブランドストア、コミュニティスペースが増えていてシーンとしてどんどん面白くなっています。ニューヨークは文化の中心地であり、クリエイティブな場所です。ファッション、ホスピタリティ、音楽、アートなど、さまざまな分野が自然に交わります。凝縮された街であり、歴史も深いからこそ、そうした溶け合っていくような交差が起きるのだと思います。私たちもニューヨークのレストランのユニフォームを作っていますが、ファッションと街の文化を繋げていくことはとても楽しいです。
年齢や性別に縛られないオープンな服を作っていきたい
—服をデザインするときに、どのような人物像を思い浮かべていますか。<Colbo>の服をどのような人に着てほしいですか。
シルバースタイン:着る人に楽しんでもらい、快適に感じてもらうことを最も重要に考えています。<Colbo>が目指しているのは年齢や性別に縛られない服であり、着る人が自然にそのアイテムとつながれるようなオープンな服です。デザインは生地や素材から直感的に考えることも多いです。デザインを考えるときは日本のこともよく頭に浮かびますよ。
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—日本のどのようなことが頭に浮かぶのでしょうか。
シルバースタイン:日本の方は職人技を活かした服や素材に対して、とても深い理解と敬意を持っているイメージがあります。<Colbo>の服は日本のデザイン、イタリアのデザイン、地中海の文化、スピリチュアルな文化からも影響を受けています。最初は自分自身のために服を作り始め、それが他の人にはどうフィットするのかを確認して、そうやって学びながら進んできました。試して、失敗して、修正して、新しいものを作る。その繰り返しです。<Colbo>の服はクリエイティブなコミュニティの人たちに向いているのかもしれませんが、「さまざまな場面で着られる服」をコンセプトにしたいと思っています。コーヒーを飲みに行くとき、ビーチに行くとき、ディナーに行くとき、結婚式に行くときなど、いろいろなシーンで着られる服。どんなシーンでも映えて、誰にでも開かれている服。それが私が理想とするコンセプトです。
—<Colbo>といえばアースカラーの印象がありますが、カラーパレットにはどのようなこだわりを持っていますか。
シルバースタイン:<Colbo>にアースカラーが多いのは、私にとって落ち着く色だからです。エネルギーを穏やかに放ち、強すぎず、自然で、空気感があり、視覚的にもとてもリラックスできます。私は山の暮らしや原始的でシンプルな生活にも惹かれます。私が憧れる生活はアースカラーのような自然な色がとても合います。ニューヨークという大都市での生活だからこそ、私は地球や自然とつながれるような色を日常に取り入れたくなるんです。
—デッドストック生地も特徴のひとつですが、それらを好んで選ぶ理由はなんでしょうか。
シルバースタイン:なかなか出会うことができず、ユニークで、希少な存在のデッドストック生地を探すことは、私にとってヴィンテージアイテムを発掘する感覚に近いです。デットストック生地を使用することで、服に一点物のような特別感が生まれます。私自身が各地に足を運びますが、チャートだけを見て注文するよりも実際に触って選ぶ方がずっと直感的で個人的なプロセスだと思います。デッドストック生地は廃棄される可能性があり、それを無駄にすることなく利用したいというサステナブルな観点もあります。
—イタリア製の生地も選んでいることが多いですよね。
シルバースタイン:イタリア製の生地から感じるのは素晴らしい職人的なアプローチです。織りから洗いの加工、トリートメントなど、さまざまなカスタマイズができる点が魅力的です。どれだけカスタマイズできるのか、どれだけ特別なことができるのか、そして品質の素晴らしさまで、知れば知るほど魅了されていきました。
—日本の生地を使用することもありますか。
シルバースタイン:もちろんです。お気に入りの生地工房もあって、そこはヴィンテージウォッシュのような加工や30日間も太陽の下で生地を乾燥させるような加工を得意としています。イタリアも日本も独自の加工技術に秀でた国なので、イタリア製と日本製の生地をミックスすることもあります。
—日本の生地工場とも直接仕事をすることはあるのでしょうか。
シルバースタイン:日本の工場との取り組みは本格的には始めていませんが、日本のクラフトマンシップは正確でエレガントなので日本とのモノづくりをもっと広げていきたいという思いは強いです。現時点では距離や時差の問題によってコミュニケーションが簡単ではないので、そこをいかにクリアできるか模索中です。
<Colbo>の世界観を網羅した大きな空間を作り上げたい
—日本のファッションや文化に対してどのような印象を持っていますか。
シルバースタイン:私は<COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)>、<ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)>、<Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)>から大きな影響を受けています。デザインやスタイリングの発展が素晴らしいですし、オリジナルの生地まで開発する姿勢をとても尊敬しています。先ほども話しましたが、細部にまで丁寧にこだわるクラフトマンシップは日本ならではだと思います。それはファッションだけでなく、リテール、食、ホスピタリティにも表れています。物事を大切に扱う姿勢がユニークかつ素晴らしいと思います。温泉のようなウェルネスやケアの文化もすごく好きです。
—日本の<Colbo>のファンについては。
シルバースタイン:大好きです!日本のお客様は品質やスタイルに対するこだわり、細部への関心、リスペクトの姿勢が素晴らしいです。私の服を選んでくれる日本のファンの方々には感謝しかありません。日本で<Colbo>を展開することは私にとって夢でもありました。
—エストネーションというショップについてはどうですか。
シルバースタイン:今では日本での親友のような存在だと思っています。彼らがいるからこそ私は日本で活動することができています。私はショップやスタッフと仕事をするときは取引をするだけでなく、しっかりとしたつながりを持ちたいと思っています。エストネーションとは、そのつながりを築くことができています。エストネーションは<Colbo>にとって日本で初めてのクライアントですが、そこに自分のスペースを持つことができているのは本当に素晴らしい。「これは現実なのか?」と自分でも思ってしまうぐらい大きな出来事です。
—これからの<Colbo>の発展をどのように思い描いていますか。
シルバースタイン:<Colbo>が提案する体験やストーリーテリング、コミュニティ、イベント、コラボレーションをもっと充実させたいです。ブランドを成長させながら音楽、デザイン、ホームグッズなどファッション以外の分野も展開していきたいと思っています。最も大きな目標は<Colbo>の世界観を全て表現した大きな空間やコンセプトを作ることです。
—それはどのような空間、コンセプトをイメージしていますか。
シルバースタイン:そこには自然に近い環境、ガーデニング、リトリート、ウェルネスセンター、スタジオ、小さなアトリエ、ワークショップなどが含まれます。自分の頭の中にある世界を大きな空間として表現する。今やっていることをもっと大きくしていくイメージです。アメリカ、日本、ヨーロッパでブランドを成長させていき、<Colbo>の考え方をできるだけ多くの場所に届けたいと思っています。
—今後、日本でやってみたいプロジェクトはありますか。
シルバースタイン:やりたいことだらけです(笑)。今回のエストネーションとの取り組みは日本での最初のステップです。日本の地方でのプロジェクトにも関心があります。日本の地方には大きな可能性があると思っているので。日本のブランドとのコラボレーションにも興味がありますし、日本の工場ともっと仕事をして、日本で商品を生産できるようにもなって、日本のクラフトマンシップをもっと探求したいです。私は場所、人、ブランド、コミュニティの間で文化が交流することがとても好きです。日本とも文化交流によって良い関係を築いていきたいと思っています。
Colbo
ニューヨークを拠点とする<Colbo(コルボ)>の特徴は、大胆でオーバーサイズのシルエット、アーストーンのカラーパレットで、全てニューヨーク市のガーメント・ディストリクト製造される限定コレクションを展開している点だ。ファウンダーであるタル・シルバースタインによってデザインされ、80年代のイタリアンデザインとスピリチュアルな美学からインスパイアを受け、リラックスした雰囲気でありながら、カジュアルにもフォーマルにも着こなせるアイテムを作り上げている。<Colbo>はシーズンごとに限定コレクションを発表し、様々なブランドとコラボレーションも行っている。
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- Photograph : Junto Tamai
- Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLe)
- Edit : Miwa Sato(QUI)








