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ART/DESIGN

CHANEL「la Galerie du 19M Tokyo」、メティエダールが紡ぐ創造と記憶の物語

Sep 8, 2025
「la Galerie du 19M Tokyo」が、この秋六本木に期間限定で登場する。会期は2025年9月30日(火)から10月20日(月)まで、会場は六本木ヒルズ森タワー52階のTokyo City Viewと森アーツセンターギャラリー。

CHANEL「la Galerie du 19M Tokyo」、メティエダールが紡ぐ創造と記憶の物語

Sep 8, 2025 - ART/DESIGN
「la Galerie du 19M Tokyo」が、この秋六本木に期間限定で登場する。会期は2025年9月30日(火)から10月20日(月)まで、会場は六本木ヒルズ森タワー52階のTokyo City Viewと森アーツセンターギャラリー。

「la Galerie du 19M」は、<CHANEL(シャネル)>が職人技術を守り未来へつなぐために2021年、パリ北部オーベルヴィリエに設立した複合施設「le19M(ル ディズヌフ エム)」内に位置する。招聘するクリエイターとの対話を通じて、職人たちの唯一無二の技術を受け継ぎ、展示する無料のオープンスペース。11のメゾンダールと、卓越したサヴォアフェールを誇る約700名の職人が集うこの拠点では、メティエダールが脈々と継承され、次世代へとつながっている。

© le19M / Photo: Gael Turpo

今回の「la Galerie du 19M Tokyo」は、建築家・田根剛率いるATTA(Atelier Tsuyoshi Tane Architects)が手がけるインスタレーション展示 「le Festival(フェスティバル)」、そして 2つの展覧会「Beyond Our Horizons(未知なるクリエイション、その先へ)」「Lesage, 100 Years of Fashion and Decoration(刺繍とテキスタイル、100年の物語)」の三つの展示で構成される。さらに職人実演やワークショップなどの文化プログラムも加わり、歴史と創造を多角的に体験できる内容となっている。

le Festival(フェスティバル) ― 創造の歓びを讃える没入型インスタレーション

「le Festival(フェスティバル)」と題されたこの没入型インスタレーションは、歓びと豊かさに満ち、尽きることのない創造のエネルギーが会場いっぱいに広がる。le19Mのメゾンダールが誇る専門技術を映し出す場でもあり、その多彩なクラフツマンシップを体感できる。原材料や道具、サンプルからはじまり、やがて完成間近の名品へと至る旅路に来場者は誘われる。世代を超えて受け継がれる職人の手仕事は、細部へのこだわりを宿し、非凡なものへと高めていく魔法のようだ。

© le19M / Photo: Jonathan Llense

Beyond Our Horizons ― 手仕事を結び、新たな地平をひらく

「Beyond Our Horizons」は、le19Mのメゾンダールと、日本各地のアーティスト、職人、アトリエ、工房を結ぶプロジェクトだ。約30名の作り手が参加し、世代や地域を越えて「手仕事」を共有する。

会場は「クリエイティブヴィレッジ」と呼ばれる6つの展示空間で構成され、それぞれが素材や記憶、伝統と再解釈、身体と想像力の交差点となる。象徴的な存在となるのは「le Rendez-vous(ランデブー)」。日本の数寄屋大工とle19Mの職人たちが共同制作した作品で、サウンドインスタレーションとともに展示され、異なる文化や技術を結びつける瞬間を提示する。

© le19M / Photo: Camille Brasselet

空間全体は風・水・火・土といった自然の要素にインスパイアされ、質感や光の中にその力が息づく。来場者は五感を通じて空間を巡り、予期せぬ発見に出会うだろう。

本展で紹介されるのは、自然や時間、受け継がれた技術、そして実験的アプローチが重なり合って生まれた作品群だ。そこには「美」「創造性」「分かち合い」への強い意志が宿っている。ひとつひとつの出会いが、心に余韻を残しながら、新たな地平へと視線を導いていく。

Lesage, 100 Years of Fashion and Decoration ― 刺繍の記憶と革新の旅路

森アーツセンターギャラリーで開催される「Lesage, 100 Years of Fashion and Decoration」は、刺繍と織物の世界で100年にわたり卓越性と革新を追求してきたルサージュの歩みをたどる招待状だ。

1924年、アルベールとマリー=ルイーズ ルサージュがアトリエを設立。このアトリエは1858年創業のミショネ刺繍工房を継承して誕生した。1930年代にはエルザ スキャパレリとの協働で注目を集め、独自の地位を築いた。

1949年にアルベールが亡くなり、息子フランソワ ルサージュが20歳でアトリエを継承。1950年代初頭には新世代のクチュリエが台頭し、ディオール、バルマン、ジバンシィ、カルヴェンらの依頼を受けるようになる。この頃ルサージュは革新的な刺繍技法を発明し、瞬く間に名声を確立した。

フランソワはハリウッド映画の衣装や数々のオートクチュールを手がけ、1980年代以降はジャン=ポール ゴルチエやティエリー ミュグレーとも密接に協働した。1983年にカール ラガーフェルドがシャネルのアーティスティックディレクターに就任すると、両者の関係は一層深まり、1998年にはシャネルのプレタポルテにツイードを提供。2002年にメティエダールに加わり、2021年にはle19Mに拠点を移した。

© le19M / Photo: Clarisse Aïn

現在のルサージュは、7万5000点を超える世界最大級の刺繍アーカイブを有し、シャネルをはじめディオール、ヴァレンティノ、ジャックムスらのために年間10回のコレクションを制作している。伝統を守りながら革新を重ね、レーザーや3Dといった新技術も取り入れつつ、常に新たなデザインを切りひらいている。

初の国際展開となる本展は、ルサージュと日本が長年築いてきた絆にも光を当てる。初期の日本人デザイナーとの協働から新進気鋭の才能への支援に至るまで、その交流は深く根付いてきた。1989年に東京で開催されたフランソワ ルサージュによる展覧会を経て、今回の取り組みは日仏の工芸・アート・ファッションの関係をさらに豊かなものへと広げていくだろう。

手仕事を“体験”に変換する文化プログラム

今回の展覧会では、職人による実演やトーク、ワークショップなど、多層的なプログラムが準備されている。来場者は展示を“鑑賞”するだけでなく、職人の手仕事の過程に触れることで、伝統を自らの体験として感じ取ることができる。そこで立ち現れるのは、完成品の静かな美しさではなく、創造が生まれる瞬間の力強さである。

© le19M / Photo: Margaux Salarino

継承と革新が交差する東京で

「la Galerie du 19M Tokyo」が提示するのは、職人の技術を未来につなぐ意志と、百年の歴史を体験として共有する姿勢だ。「le Festival(フェスティバル)」では創造の過程が、「Beyond Our Horizons」では文化と自然が交差する実験が、「Lesage, 100 Years of Fashion and Decoration」では100年にわたる刺繍とテキスタイルの歩みが、それぞれ異なる視点から職人技術の価値を照らし出す。シャネルが東京でひらくこの短い祭典は、鑑賞者にとって「まだ見ぬ感覚」と「織り込まれた記憶」を同時に呼び覚ます体験となるだろう。

© le19M / Photo: Yukinori Hasumi

開催情報

展覧会名:la Galerie du 19M Tokyo
会期:2025年9月30日(火)–10月20日(月)
会場:六本木ヒルズ森タワー52階 森アーツセンターギャラリー/東京シティビュー
開館時間:10:00–18:30(最終入館17:30)※金・土・祝前日は19:30まで(最終入館18:30)
休館日:会期中無休
観覧料:入場無料(4歳以上は事前の日時指定予約が必要、9/8予約開始
URL:https://www.chanel.com/jp/fashion/event/opening-gallery-19m-tokyo-2025/

【文化プログラム詳細】
ワークショップ:チャーム制作(事前予約制、年齢制限なし/小学生以下は18歳以上の保護者同伴)
トークイベント:
・9/30 15:00 - 16:00「ルサージュについて」
・10/11 15:00 - 16:00「コラボレーションにおけるチャレンジ」
・10/18 15:00 - 16:00「継承におけるチャレンジ」
※日時とテーマは変更の可能性有り

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