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吉田美月喜 – 人間として生きる

Jan 27, 2023
映画『あつい胸さわぎ』で主演を務める吉田美月喜。
今、立て続けに主演作が公開される19歳の魅力に迫った。

吉田美月喜 – 人間として生きる

Jan 27, 2023 - FILM
映画『あつい胸さわぎ』で主演を務める吉田美月喜。
今、立て続けに主演作が公開される19歳の魅力に迫った。

客観的に考えすぎないようにすること

― 唐突な質問なんですけど、吉田さんのプロフィールを見たら、方言が関西弁だと書かれてて……。

はい(笑)。

― 東京都出身ですよね?

ちょっとでもアピールできるものがあれば良いなと。関西弁を使う役をやらせていただく機会が多かったこともあって。

― なるほど。後天的に学んだんですね。

そうですね。今も勉強中です。話せる方言が増えてくると演技の幅も広がるし、方言に気を取られずに演じられるのは大きいと思うので。

― 本作『あつい胸さわぎ』で吉田さんが演じた千夏は標準語ですよね。

でも(常盤貴子さん演じる)お母さんと話すときは関西弁です。

― 標準語になるところと関西弁になるところの切り替えがすごく自然だなと思ってました。

本当ですか。ありがとうございます。

― さかのぼって、2017年に芸能界入りするまではどういう子供でしたか?

小学校2、3年生のときに、モデルをやってみたくて事務所に入ろうと思ったことが1回あったんです。でも、そのときは母から「あなたにはチャンスがまたきっと来るから、今は勉強に集中しなさい」と言われて入りませんでした。

それからはそんなことがあったことも忘れて、スポーツに明け暮れていました。日焼けして肌も真っ黒で、髪もベリーショート、メガネで短パンTシャツみたいな感じで。中学校の終わりぐらいから身長が伸び始めて、メガネをコンタクトに変えてから、少しずつ声をかけていただくようになって、今度はモデルでなく演技をやってみたいなという気持ちが芽生えていきました。

― そのときにはご両親から反対はなく?

やってみればと、言ってくれました。

― 背中を押してもらえたんですね。一方、映画では常盤さん演じるお母さんの少し過保護な面も描かれていました。

常盤さんとのシーンには共感できる部分が多く、特に大切に演じました。私自身も母と仲が良くて、喧嘩もするんですけど姉妹みたいだねって言ってもらえることが多くて。「ちょっと過保護じゃないの?」ってときもあったり、でも結局そんな母に頼らなきゃいけなかったりするところも、同じような親子関係だなと思いました。

― 千夏とご自身で似ているところはありましたか?

撮影当時は千夏と同じ18歳だったということもあって、大人になりきれない感覚は同じで。だからすごく役作りをするというよりは、ありのままの私で千夏のキャラクターを作っていけました。

― 本作に限らず、どのように役作りをしていくのでしょうか?

キャラクターによって全然違いますけど、まず自分が共感できる部分や共通点から探していくことが多いです。中には共感できない部分が多い役もあるんですけど。

以前、『ドラゴン桜』というドラマで、初めてライバル役をやらせていただいたときに、どうやったらお客さんから嫌われるように見せられるかがわからなくて。どうしても自分をよく見せようとしちゃう部分が出てくるんですよね。

そのときに、周りからどう見られるかを考えるんじゃなくて、自己中心的なままでいれば、自然と嫌なキャラクターに見えるからと助言してもらえて、なるほどと。そういうふうに今も徐々に学んでいる最中です。

― 演技をするうえで大切にしていることは?

客観的に考えすぎないようにすることです。まだ私は自分を客観的に見て演じられるほどの技術に達していないなと思っていて。“人間として生きる”ということを中心に考えて演じているかもしれません。

― 意外とそれが難しいですよね。ついつい俯瞰してみたり、自分でブレーキをかけてしまったり。

そうなんです。見え方とかも考えてしまうと……。でもとりあえず今の私にできるのは、役のことを考えて、役のことだけで演じることだと思っています。

 

ずっと憧れている芯のある女性像

― 先ほど千夏は等身大で演じられたとおっしゃっていましたけど、常盤さんと実際のお母さんも似てたりして?

全然似てないですよ! ただ、映画の中での親子の距離感、姉妹のようだったり、ちょっとすれ違いが起きたり、そういう関係性は私と母にも重なる部分を感じでいました。

― 常盤さんとは初めての共演ですか?

初めてです。本当にかっこいい方で、私がずっと憧れている芯のある女性像だなと思いました。「芯のある女性」というのは母からもずっと言われてきた言葉なんですけど、まさにその通りで。

― 常盤さんは関西弁ネイティブですよね。

そうですね。常盤さんの関西弁のおかんが本当に素敵すぎて。暗くなりそうなシーンも、暗くならずにちょっとクスッと笑えるような雰囲気にする間の取り方、細かな表情など、本当に勉強になることがたくさんで、すごくかっこいいなと思っていました。

― 脇を固める、前田敦子さん、奥平大兼さん、佐藤緋美さん、誰もが素晴らしい演技でした。

本当に。映画を観ていても、私の演技は周りにすごい助けられてるんですよね。でもそれは千夏が周りの人たちからずっと支えられているという部分にもつながっているようにも感じました。

前田さんはお姉ちゃんのようにフレンドリーに話してくださったり、緋美さんと奥平くんはすごく似ている部分があって、天才肌で堂々としていてすごいなと思ったり。刺激をいっぱいもらえた現場でした。

― できあがった作品をご覧になった感想を伺えますか?

作品を撮り終わったあとに、原作となった演劇ユニット・iakuさんの舞台「あつい胸さわぎ」の再演を(まつむらしんご)監督と2人で観させていただいたんですけど、本当に素敵で。この舞台のファンの方たちが、私の演じる千夏を観て受け入れてくださるのかすごく不安でした。

ただ、東京国際映画祭のワールドプレミア上映で、皆さんと一緒に後ろで観させていただいたときに、皆さんのリアルな反応を感じられて、すごくホッとしました。映画版もすごく良かったと言ってくださる舞台のファンの方もいるので、公開が楽しみです。

― では最後に、将来どういう俳優になっていきたいか、理想とする俳優像があれば教えてください。

2021年から2022年にかけて『あつい胸さわぎ』『メイヘムガールズ』『カムイのうた』という主演映画を撮らせていただきました。私の中で主演というのは、その人がいるだけで安心感があって、現場の雰囲気を良くして、みんなをまとめる人というイメージがあったんですけど、私は全然主演らしいこともできず、ただひたすら助けられての撮影だったなと思ってて。

勉強できたこともたくさんあったんですけど、まだしばらくは自分の役のことでいっぱいいっぱいになってしまうかもしれません。でも、将来的には吉田美月喜がいるから安心だよねと言ってもらえる女優になりたいというのは、最近の新しい目標になりました。

 

 

Profile _ 吉田美月喜(よしだ・みづき)
2003年3月10日生まれ、東京都出身。近年の出演作品に、Netflixシリーズ「今際の国のアリス」(20)、「ドラゴン桜」(21)、日本テレビ系「ZIP!」内ドラマ「サヨウナラのその前に」(22)、映画『たぶん』(20/監督:Yuki Saito)、『メイヘムガールズ』(22/監督:藤田真一)、鴻上尚史作・演出舞台「エゴ・サーチ」(22)など。主演映画『カムイのうた』(監督:菅原浩志)、『パラダイス/半島』(監督:稲葉雄介)が23年公開予定。2月25日から放送予定の日本テレビドラマ「沼る。港区女子高生」にもメイン出演が決定している。

Instagram

cardigan ¥46,200 / TAN (contact@tanteam.jp), blouse ¥18,700 / ADIEU TRISTESSE (03-6861-7658), skirt ¥33,000 / O’NEIL OF DUBLIN (BUCOLIC & FROLIC 03-5794-3553)

 


 

Information

映画『あつい胸さわぎ』

2023年1月27日(金)より、新宿武蔵野館、イオンシネマほか全国ロードショー

出演:吉田美月喜、常盤貴子、前田敦子、奥平大兼、三浦誠己、佐藤緋美、石原理衣
監督:まつむらしんご

脚本:髙橋泉
原作:戯曲「あつい胸さわぎ」横山拓也(iaku)

映画『あつい胸さわぎ』公式サイト

©2023 映画「あつい胸さわぎ」製作委員会

  • Photography : Madoka Shibazaki
  • Styling : Junko Okamoto
  • Hair&Make-up : Yoko Tanaka
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)