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ファッションデザイナーの目。レザー職人の手。岡部慶|LIM DESIGNデザイナー

Apr 21, 2019
ミニマルなデザインと機能性。毎日持つレザーグッズにほしい要素を過不足なく備え、長く使うほどに愛着のわくアイテムを生み出すレザーブランド、LIM DESIGN(リムデザイン)。すべてのアイテムをデザイナーの岡部慶がハンドメイドで作りあげている。洋服のデザインからレザー職人へと転身した経歴をもつ彼の、もの作りに対する想いをきいた。

ファッションデザイナーの目。レザー職人の手。岡部慶|LIM DESIGNデザイナー

Apr 21, 2019 - FEATURE
ミニマルなデザインと機能性。毎日持つレザーグッズにほしい要素を過不足なく備え、長く使うほどに愛着のわくアイテムを生み出すレザーブランド、LIM DESIGN(リムデザイン)。すべてのアイテムをデザイナーの岡部慶がハンドメイドで作りあげている。洋服のデザインからレザー職人へと転身した経歴をもつ彼の、もの作りに対する想いをきいた。
Profile
岡部慶(おかべ・けい)
LIM DESIGNデザイナー

2003年文化服装学院卒業後ロンドンに留学。2004~2006年、ロンドンのブランドKei kagamiでアシスタントを務める。2006年後半にベルリンに生活を移し、2007年に帰国。2008~2013年、アパレルメーカーに勤め、企画、生産管理や営業を担当した後、2014年に独立しLIM DESIGNを立ち上げる。現在はLIM DESIGNを展開しつつ、他ブランドのレザー商品の企画提案から生産まで携わる。

原点は、裏原にはまった高校時代

僕はとにかく洋服が好きで。ブランドにはまったのが高校1年生のときなんです。ちょうど1995年とか96年。裏原全盛期ですよね。『asayan』っていう雑誌に、藤原ヒロシさんとアンダーカバーのジョニオさん、ベイシング エイプのNIGOさんの3人が、今はまってるものなんかを紹介する“LAST ORGY3”というページがあって。それを見て、ただただ興奮してた(笑)。当時はお店に大行列ができて、本当に買えなかったですよ。ネットオークションとかなかったけど、Tシャツが6万円とか値上がる時代。その異様な熱にはまっちゃったんですね(笑)。高校時代にどっぷり洋服にはまって、そのまま文化服装学院に進学。アパレルデザイン科という、レディスの洋服をデザインする学科に入りました。

 

2年の海外生活を経て帰国

在学中に、一人でタイを旅行したんですが、そのとき英語がまったくしゃべれなくて、めっちゃくちゃ苦労したんです。だから、卒業のタイミングで1年ビザを取ってロンドンに語学留学に行くことにして。そこで、ロンドンで活動されている加賀美敬さんという日本人デザイナーに出会って、Kei kagamiにアシスタントで入ることになりました。そういう機会に恵まれたので2年目も延長してロンドンに。最後はベルリン経由で日本に戻ってきました。ベルリンって、世界からいろんなアーティストが集まる場所だったし、面白そうだなって思って。ドイツにも洋服のブランドさんたくさんあるので、本当は少し働きたかったんですけど、タイミングが合わずに叶いませんでしたね。

 

消耗される服に違和感を感じて…

日本に帰ってきてからは、アパレルブランドに入社して、洋服の営業と生産管理、企画部でデザインもやっていました。当時28歳くらいでしたが、まだそのときはレザーに興味なかったんですよ。日本のアパレルで2社働いて、32歳で会社を辞めて、それからレザー。なんか、洋服って毎シーズンどんどん切り替わっていくじゃないですか。それが消耗されているように感じて、ちょっと疲れちゃったというか。なんか違うんじゃないかという違和感を感じていて。革には擦れたり経年変化で味が出るみたいな、洋服とは違う概念がある。消耗されるものじゃなくて、長く愛用できるものを作りたいと思うようになっていたんですよね。

 

「Less is More」という言葉が響いた

それでLIM DESIGNを立ち上げたのが2013年。ブランド名は、近代建築家のミース・ファン・デル・ローエの言葉「Less is More(より少ないことは、より豊かなこと)」から頭文字を取りました。洋服の企画をしているときも、みんな何か付け足しで考えてる。これだとシンプルで売れないから、ここにポケット付けようとか。そういう“無理やり感”が自分の性格上あまり好きじゃなかった。有名な言葉だったので知ってはいたんですが、ちょうどそのタイミングで響いたんでしょうね。より少ないことが逆に豊かなことだっていう。

 

作りたいのは、機能的で味わいが生まれるもの

最初はミシンとか大きい物は買えないので、手縫い。友だちのレザー職人に教えてもらいながら、ちょっとした道具で作れるものからはじめました。でも本当は、手縫いってジャンルはあまり好きじゃなくて。縫い糸の麻紐が擦り切れちゃったり、厚みが出ちゃったりするので。デザインと同じくらい、機能性も重視したいんです。極力強度があって、薄いのがいい。財布だったら、最低限のカードは全部入るようにするし、あと小銭入れ。小銭入れが狭いと一番ストレスじゃないですか。だから大きく開いて取り出しやすいように。素材は基本的にはベジタブルタンニンのものを使っています。日焼けで色が変わったり、水がシミになったりもするけど、それが味になると思うんですよね。育てていく感覚というか。

 

服からスタートした原点は変わらない

デザインに関しは、縫い目も極力減らしたいくらいだし、あんまり前面には出していないです。割とユニセックスな感じで考えていますね。あと、レザーをデザインするときも、僕は洋服のスタイルから考えだす感じなんですよ。こういうファッションが好きな人は、どういうものを持つかな…とか。だから、街やお店でもあんまりレザー小物に注目してない。僕の中ではやっぱり洋服が原点だし重要。いまも洋服は変わらず好きだし、それがレザーのデザインにも生きていると思います。

 


 

洋服のデザインからは距離を置いたものの、いまでもファッション大好き。同業者からもそのオシャレぶりを讃えられる岡部さん。最近のファッションシーンについて語るときの笑顔も、革に向き合う真摯なまなざしも、どちらも岡部さんのもの作りに欠かせないものだと感じた。

 

あなたにとってファッションとは?

「自己表現と自己満足」

 

その他のデザイナーインタビューはこちら

  • Text : Midori Sekikawa
  • Photography : Kei Matsuura

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