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祷キララ – いびつな部分を伸ばしていこう

May 17, 2026
人生で立ち止まった3人が、偶然に出会ったことから始まる映画『トランジット・イン・フラミンゴ』に出演する祷キララ。
遠回りすること、好奇心に従うこと、そして自分のいびつさを肯定すること。映画のテーマとも重なる、彼女の歩みに迫った。

祷キララ – いびつな部分を伸ばしていこう

May 17, 2026 - FILM
人生で立ち止まった3人が、偶然に出会ったことから始まる映画『トランジット・イン・フラミンゴ』に出演する祷キララ。
遠回りすること、好奇心に従うこと、そして自分のいびつさを肯定すること。映画のテーマとも重なる、彼女の歩みに迫った。

 

 

 

 

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何をなしてもなさなくても自分ってものは変わらない

― 偶然出会った3人が一緒にフラミンゴを探すというユニークな作品でしたが、祷さんはアカリという役をどのように捉えて、何を大切に演じましたか?

(山下リオさん演じる)サエは、これから結婚して一緒に幸せな生活を送っていこうとしていた人がいなくなってしまったり、(細川岳さん演じる)リュウタロウは、周りの人たちがどんどん家庭を築いていく中で、自分は何をしたらいいのかわからなくなっていたり。そうやって歩みが止まってしまった人たちが出会う物語なんですけど、アカリは自分の意思で止まらないといけなかった人なのかなと私は捉えました。

生きていくことが大丈夫じゃなくて、限界だったアカリにとって、自分を救ってくれた親友がキョンちゃんでした。だからキョンちゃんが亡くなったときには、また生活できなくなるくらいのショックを受けるんじゃないかと思っていたんです。でも意外と、ご飯も食べられるし、仕事にも行ける。立ち止まらずに生きていけちゃうんですよね。

そのまま進んでいくこともできたけど、そうすると自分の人生にとってすごく大切なものをこぼしたまま生きていくことになってしまう。そんな直感があって、自ら立ち止まって旅に出た人なのかなと思いました。

― 山下さんと細川さんとは初共演だったんですか?

初めてでした。今までいろんな俳優の方と仕事をしてきましたけど、おふたりは特に映画を作ること、その中で俳優という仕事をすることが大好きなんだなと感じました。だから変な緊張や余計なことを考えずに手を取り合っていける、そのスピードが本当に早かったですね。

― 物語の舞台は、奈良県の宇陀市。映像からも素敵な空気感が伝わってくるロケーションでしたね。

撮影は2年前だったんですけど、自然が本当にのびのび豊かな時期でした。街も奈良というイメージどおり、なんでも新しくせず、歴史のあるものが共存していて。そういう自然や歴史に毎日触れていると、ポジティブな意味で、自分ってちっぽけだなと。そう思えたことにすごく元気がもらえる場所だなと感じました。

― 完成した作品をご覧になったのはいつでしたか?

劇場公開のバージョンは数日前に観ました。

― 撮影から時間も経っているので、ある程度客観的に観られたかと思いますが、率直な感想をいただきたいです

やさしい映画だなと思いました。直行便じゃなくてトランジットで乗り継いで、待ち合って、同じ目的地に行く。合理的なことや効率的なことが当たり前になっている世の中で、遠回りをすることや、ただ待つ時間を経ることでしか見つからないものがあるんですよね。

映画の中で、3人で大きな桜を見に行くシーンがあるんですけど、でも花は散って緑になっていて、それを見たアカリが「桜って咲いているときだけが桜じゃないから、これも一応桜ですもんね」みたいなことを言うんです。先日、そのセリフが心に残ったと言ってくれた人がいたんですけど、たしかにこの映画を表している言葉のような気がして。人間も、こんな評価を受けたとか、こんなことを成し遂げたとか、こんなものを持っているとか、そういうことで華やかに見える瞬間もあるけれど、どんなときも自分であることは変わらなく続いていく。何をなしてもなさなくても自分ってものは変わらないという、シンプルで大事なことを思い出させてくれる映画だと思いました。

 

面白い人生を生きることで、面白い表現を生み出したい

― 本作を観ていると、どんなときでも笑うこと、笑えることって大事だなと感じたんですけど、祷さんが普段の生活で大切にしていることはありますか?

忙しいときも、今やらないといけないことと全く関係のないことをやってみるということを最近はやっています。

― たとえば?

ドラムを習ってみたり、自分のことを知らない人たちがいっぱいいる場所に旅行してみたり。この曲のドラムがかっこいいから叩いてみたい、この景色を実際に見てみたい、そういうふうにちょっと心が動く瞬間ってあるじゃないですか。そういう子どもみたいに無邪気な気持ちをきっかけに行動してみる。

― 好奇心に蓋をせず、ですね。本作でも旅がひとつのテーマとなっていますが、祷さん自身の印象的な旅の記憶は?

2年前にこの撮影が終わって数ヶ月後に、生まれて初めて一人で海外に旅行に行きました。カンボジアとタイに行って、私って一人で海外に行ってもなんとかなるんだ、みたいなことをいろいろ発見できました。

― 次はどこへ旅してみたいですか?

アラスカが気になっています。星野道夫さんの『長い旅の途上』という本を読んで、自分が東京で何かに追われている同じ時間に、アラスカではカリブーが群れを成して移動しているんだとか、想像するようになって。そしてきっと想像以上にスケールの大きい自然が広がっていると思うので行ってみたいです。

― デビューが2010年と、長いキャリアの中でモチベーションをどのように保っていますか?

俳優を始めたのは早かったですが、本格的に仕事を始めたのは18歳ぐらいで。そこからの数年はいろんなことに必死だったんですけど、最近はそれをぶち壊し始めていて、そうするとどんどん自由になってくるんですよね。

これまでは立派な人になろう、ちゃんとした人になろうとしていたけど、そうじゃなくて、自分の持っているいびつな部分をもっと伸ばしていこうと思い始めて。この映画でもそうですが、自分を制御せず下手くそなままでいこうというか、上手いか下手は気にしないで一生懸命やろうと思えたらすごく楽しいです。

― 俳優として目指すところはありますか?

職業的な俳優ではなく、人間的な俳優を目指していきたいです。最近は踊りをやったり、音楽をやったり、自分が興味を持ったいろんなことをやっていて。技術を伸ばしていくというよりは、人として面白い人生を生きることで、面白い表現を生み出していけるようになりたい。

まずは自分の意思に耳を傾けて、どんどん冒険をして、広い世界をたくさん見る。その上で人の心の小さな動きにも寄り添い、見つめられるようになりたいと思っています。

 

Profile _ 祷キララ(いのり・きらら)
2000年3月30日生まれ、大阪府出身。映画『Dressing Up』(安川有果監督)で主演を務め注目を集める。以降、『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)、『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督)、『忌怪島/きかいじま』(清水崇監督)などに出演。2026年5月22日(金)〜5月31日(日)シアタートラムにて舞台 玉田企画『光る』へ出演。2027年公開予定の映画『パンジーな私にハッピーエンドを。』(増澤璃凜子監督)への出演も控えている。
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Information

映画『トランジット・イン・フラミンゴ』

2026年5月15日(金)公開

出演:山下リオ、細川岳、祷キララ、三浦誠己、田中隆三、古川琴音 (声の出演)
監督・脚本:堀内友貴

映画『トランジット・イン・フラミンゴ』公式サイト

© 2026 "Transit in Flamingo" NARA INTERNATIONAL FILM FESTIVAL

  • Photography : Kyohei Hattori
  • Styling : Miri Wada
  • Hair&Make-up : Eriko Yamaguchi
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)

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