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ART/DESIGN

「B面」から浮かび上がる多面性の魅力|モデル事務所がプロデュースした「new build~」

Apr 22, 2026
モデルエージェンシーのBARK in STYLEが「絶え間なき構築」をテーマにプロデュースした、その名も「new build~」というイベントが旧池尻中学校の「HOME/WORK VILLAGE」で開催された。QUI編集部はイベントに関するリリースを受け取っていたが、その実態や目的を掴みきれているとは言い難い。そこで、自らの目で確かめるためにイベント当日に会場に足を運ぶことに。来場者と会話する、展示スペースを巡る、出展作品の意図を読み解くうちに、時間は瞬く間に過ぎていった。

「B面」から浮かび上がる多面性の魅力|モデル事務所がプロデュースした「new build~」

Apr 22, 2026 - ART/DESIGN
モデルエージェンシーのBARK in STYLEが「絶え間なき構築」をテーマにプロデュースした、その名も「new build~」というイベントが旧池尻中学校の「HOME/WORK VILLAGE」で開催された。QUI編集部はイベントに関するリリースを受け取っていたが、その実態や目的を掴みきれているとは言い難い。そこで、自らの目で確かめるためにイベント当日に会場に足を運ぶことに。来場者と会話する、展示スペースを巡る、出展作品の意図を読み解くうちに、時間は瞬く間に過ぎていった。

会場選びからコンテンツ案までを仕切ったのは「new build~」の発案者である一人のマネージャーだ。そのマネージャーもかつてはメンズモデルとしてBARK in STYLEに所属していたそうだが、後にアパレル業界へと転身し、現在はBARK in STYLEでマネージャー職に就いている。「自分がモデルだった頃はオーディションで合格するために外見を磨くことを第一に考えていました。それがアパレルで働くようになり自社ブランドのビジュアルに起用するモデルを選ぶときに見た目よりもパーソナリティを重視するようになりましたし、個を感じられるモデルほど一緒に仕事をしたいと思うようになったんです」。そのような心境の変化が「new build~」というイベントを思いつくきっかけになったという。

モデルとしてクライアントから選ばれる側だったのが、ブランドとしてモデルを選ぶ側になった。そこに、どのような心境の変化が生まれたのか。「かつての僕自身がそうでしたが、「見た目がいい」ということだけで選ぶことは少なく、モデルの内面や多面性に魅力を見出してキャスティングをする企業は確実に増えてきているように感じます」。クライアントとモデルというのは契約がベースにありドライな関係性とも言えるかもしれないが、人と人が交わればコミュニケーションが生まれ、交流も築かれる。だからこそモデルが内に秘めている想い、普段は見せていない一面などをより深く知りたいというのは自然なことかもしれない。

「new build~」の会場にはBARK in STYLE所属のモデルが手がけた作品が展示されていた。クライミングにまつわる写真展などを開催している影山友哉は会場が「HOME/WORK VILLAGE」ということもあり「思い出」と「学校」をテーマにしたフォトアートを、作家デビューを志す川真田友聖は3編の自作小説を、高校卒業後に渡米してSantaMonica Collegeで学んだLEAHはアート作品を出展。さらに、ヒップホップクルーの「interplay」でラッパー兼ビートメイカーとして活動する高橋元はオリジナルビートを披露した。それらのクリエイティブな領域は、全員がモデル業の合間に片手間でやっているわけではないという。取り組みへの熱量は本業と同等であり、作品を通じて「モデルが秘める未知なる一面に触れてもらう」、つまり「B面」を知ってもらうことが「new build~」の目的でもあったのだ。


「クライミングと同時に写真も初めて6年になります。学校というのは楽しいこと、うれしいこと、驚いたことなど、たくさんの思い出が生まれる場所です。それは僕が夢中になっているクライミングにも通じるものがあり、無我夢中で岩を登る姿を見て、みんなが応援してくれて、喜んでくれて、時には一緒に悔しがってくれる。最高に楽しくて、面白くて奥深いからこそ思い出も生まれます。今回の展示がみなさんの思い出のひとつになってもらえたら」
BARK in STYLE 影山友哉


「小説は哲学書でも思想書でも歴史書でもありません。文学は社会学でも人間学でも心理学でもありません。読めばそこにひとつ世界が読者の中で蠢き出す、そういうものだと思っています。僕が描く世界は、僕の話でもなければ誰かの話でもなく、僕が想像して創造した物語です。僕が心の底から愛している小説の素晴らしさに気づいてもらいたい。僕が描いた作品が、そのきっかけになってくれたらうれしいです」
BARK in STYLE 川真田友聖


「美学者の今道友信への共感を起点に、「美しくある術」としての美術とは何かを問い直しました。古事記や日本書紀に象徴される本来の精神性が教育や記憶から薄れていく過程を燃えゆく書物や巻物として表現しました。意味が完成する前に崩れ続ける現代において、なおも内面と外形を一致させようとする意志、言っていることではなくやっていることこそがその人の正体であり、その信念を貫く勇気が、美の根拠となりうるのではないかということを問うために構想期間3カ月、制作期間3週間を費やした作品です」
BARK in STYLE LEAH


「多くの人の前で即興での音の制作は初めてのことでした。いろんな会話が飛び交うライブならではの空気感のなかで、普段とは異なる感性を刺激されながらのビートメイクは最高でした。自分のプレイを観て、少しでもサンプリングという文化に興味を持っていただけたら幸いです。集まってくださった皆さん、ありがとうございました!!」
BARK in STYLE 高橋元

「new build~」にはBARK in STYLEのバックアップだけでなく、外部のクリエイター、アーティスト、ミュージシャンも協力の手を差し伸べている。「new build~」の構想段階から携わりイベント開催へと導いたクリエイティブディレクターは『MIDORI so NAKAMEGURO』メンバーのWANDA、展示を担当したのは『out of museum』の小林眞、校庭をステージにライブを行ったのは打楽器奏者の角銅真実。それらの人選にも明確な理由があったという。「来場者の方々に感度の高いコンテンツに触れてほしくてWANDAさん、小林さん、角銅さんに協力してもらいました。会場に足を運んでくれたモデルたちもいろいろな刺激を得たのではないでしょうか」。QUIでは過去にBARK in STYLE所属のモデルであり、ヴィジュアルディレクターの中本健士郎とスタイリストのLisasからなるクリエイティブデュオの「beans.」を取り上げたが、「クリエイターとしての経験をモデル業に活かし、モデルだからこその発想をクリエイティブに派生させる」というのが二人の意見だった。「本業以外からも感性を磨く機会を得た方がモデルとしての成長につながる」というのがBARK in STYLEの考えなのかもしれない。

「beans.」の取材記事はこちら

FASHION
NEW GENERATIONS vol.19 - Kenshiro & Lisas|Creative Duo“beans.” / Model
Aug 19, 2025


Street Archaeology:存在の平等
物には二つの生がある。
第一の生
機能と価値によって定義された生。
資本主義的秩序の中で、序列づけられ、消費され、廃棄される生。
第二の生
その役割を失った後、足元で静かに輝く生。ここではもはや新旧も優劣もない。
ただ純粋に存在することだけが真実となる。
この展示は、廃棄物の第二の生を捨て拾うことで、社会的ヒエラルキーの虚構を映し出す。
同時に、その虚構の外に垣間見える、本来的な平等と自由の可能性を提示する。
ここに並ぶものたちは、もはや物ではなく、証人である。
ヒエラルキーなき世界は存在可能か、という問いへの答えが、路上に落ちているのだ。
out of museum 小林眞


「HOME/WORK VILLAGE」では初めての試みとなった野外ライブ。夕暮れのムードと同調するような角銅の穏やかな歌声と幻想的な音色が聴衆を魅了した

「イベント名の「new build~」には「〜」が付いていますけど、あそこに全ての想いが込められていると言っても過言ではないです」。イベント名はどうやって決めたのかという質問に立案者のマネージャーは力強くそう答えた。「この会場は何かが完結する場所ではなく、何かが始まる場所なんです。ここからであり、これからでもあるので「〜」なんです」。同じ事務所に所属するモデルが手がけた作品に刺激を受け、自身もクリエイティブな活動に目を向けるモデルもいるだろう。このようなイベントをプロデュースしたことでBARK in STYLEに抱いていたイメージが一新するクライアントもいるだろう。この場所から新たな交流が生まれた人もいるだろう。「絶え間なき構築」とはどういうことか。会場を訪れたことで、それが理解できた気がした。

  • Edit : Ryota Tsushima(QUI)

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