「同志が集える場」を生み出す——QUI代表が語る創刊5年とこれから
共通の趣味を持つ同志が集えるような「場」を作りたかった
—QUIを立ち上げたのはいつですか。
2020年です。
—QUIというメディアをスタートさせたのはどういう目的からですか。
新しいコト、モノ、ヒトとの出会いなど、未知との遭遇ってなんでもワクワクするものですよね。自分が見過ごしていたことを見直して初めての経験や体験をするだけでも楽しい。すでに知っていることでも、それを深掘りしたらもっと楽しくなると個人的に思っています。未知でも既知でも、さらに先まで探っていかないのはもったいない気がするんです。
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—その先がもっとおもしろいのに手前で止めてしまうのはもったいない。
そうなんです。QUIはファッションがメインですが映画、アート、音楽、ライフスタイル系まで取り上げているのはQUIのメンバーが多趣味で興味の対象が幅広いからです。自分たちが好きなカルチャーについてもっと深く知りたいというのがQUIというメディアの基本方針と言えるかもしれません。
—ファッションをメインにしているのは理由があるんですか。
シンプルにファッションが好きだからです。そして映画でもアートでも音楽でも、ファッションと関係が深いカルチャーだと思っているので、QUIで取り上げているコンテンツは全てファッションだと思っています。もしもQUIが映画メディアを名乗ったとしたらアートや音楽のコンテンツは扱いづらくなる。
—ファッションデザイナーのクリエイティブは映画やアート、音楽の影響を受けているケースは多いです。
取り上げていくカルチャーに関してはアクティビティやランニング、トラベル、モータースポーツなど、今後はもっと増やしていきたいと思っています。装いとしてのファッションを軸にしていくことに変わりはありませんが、常にファッションに軸足を置いていくことで対象を広げても編集方針はブレないと思っています。
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—自分たちの興味の対象について深く知りたいというモチベーションは理解できますが、それはメディアを立ち上げなくても個人の趣味としても叶うと思いますが。
僕たちが「おもしろい!」と思ったことを多くの人に同じように「おもしろい!」と思ってもらえたらうれしいからです。例えばクリエイターにインタビューをするとそれぞれの生き方、考え方に触れることができ感動することも、思わず唸ってしまうようなこともあります。それを独り占めするのではなく多くの人にも知ってほしい。QUIの読者と直接会うことは少ないですが、コンテンツの向こう側で僕たちと同じように感動してくれた人がいたとしたら、それだけで同志が増えたような気持ちになれます。同じ趣味の楽しさを共有できるって幸せなことだと思うんです。僕自身も10代、20代の頃はカルチャー雑誌を読み漁り、それについて毎日のように仲間と語り合っていました。そんな同志が集えるような「場」を生み出したくてQUIを立ち上げたんです。
—現時点でQUIは何人のスタッフで運営しているのでしょうか。
代表として編集長のような役割を担っている僕を含めて現在は10名です。QUIを本格的に始動させる前の構想段階から関わっているエディターの1人は古くからの友人で、立ち上げの際はファッションやカルチャーが好きなメンバーが集まったのですが全員がメディア経験とは無縁でした。その後、前職が百貨店でレディースファッションやコスメの販売、広報を担当していたスタッフと、エディター志望でこれまたかなりの服オタクが新卒でジョインしてくれて、最近ではメディア経験者も増えています。QUIを立ち上げるときに広告制作会社に協力してもらった縁で現在もアートディレクター、ライター、映像ディレクターなどに企画に参加してもらっています。クリエイティブチームを中心に運営していることもQUIの特徴と言えるかもしれません。
一般の読者にコンテンツが届いていることがいちばんの喜び
—QUIのABOUTには「つぎに注目すべきファッション、カルチャーを発信する」とあるように、新進気鋭のクリエイターを取り上げているイメージが強いです。その方針は最初から決めていたことですか。
絶対的な方針というわけではないですが、そういう構想は持っていました。というのも学生時代に服好きの仲間と集まったときにあまり知られていないブランドについて情報交換するのがいちばん盛り上がったからです。世の中的には知名度は低い、でも自分はいち早く目をつけているってちょっとした優越感がありますよね(笑)。
—どんな事業も最初から軌道に乗ることは少なくて、当然ながら苦労もあったはずですよね。
もちろんです。取材したいブランドにアポイントを取ろうとしても「QUIって何者ですか?」って感じでした。立ち上げから1年、2年はずっと低空飛行でした。
—現在は取材を断られるということも少ないと思いますが、転機のようなものはあったんですか。
山縣良和さんが手がける<writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)>のビジュアル撮影をQUIで企画したのですが、ルックやコレクションを紹介するだけではなく、「どのように解釈して、どのような世界観を生み出すか」というクリエイティブが評価されて、そこからQUIの知名度も信頼度も少し上がった気がしています。こちらが取材をして深掘りをしたいと思っていてもブランドやメーカー、クリエイター側がそれを望まなかったら本末転倒なわけです。でも<writtenafterwards>の企画が好評だったおかげで「このクリエイティブができるメディアだったら取材OK」と思ってもらえるようになって、ブランドやメーカー、クリエイターに、とりあえずはQUIの企画案について話を聞いてもらえるようになったのは大きかったです。
—メディアとして知られるようになっても「次世代を担う才能をフックアップする」という方針は変えていない感じですね。
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それはファッションでも映画でも音楽でも俳優でも、才能があふれた存在を多くの読者に知ってもらいたいという思いがずっと変わらないからです。QUIの読者の世界や視野を広げていきたい、そこに尽きます。なので初対面の方に自分たちがQUIをやっていることを伝えると「いつも見ています」って言われることもあって、それは大きな喜びです。ファッション業界やWEBメディアとは無関係な人がQUIを知ってくれていることがいちばんうれしいです。
—業界内で評判になることも重要ですよね。
もちろんそうですが、業界の方は仕事としてQUIをチェックしているかもしれません。なので業界とは無関係の人にもQUIのコンテンツが届いていると実感できた時が「QUIを続けてきて良かったな」と思える瞬間です。取材をさせてもらって記事化した以上はそれが多くの人の目に留まってほしい。どこにも届かなかったらメディアとして存在している意味はないですよね。
—「続けてきて良かった」と同時に「続けていく大変さ」もあると思いますが。
読者が増えていくほどコンテンツの独自性を求められるので、メディアのクオリティを維持し続けることの難しさは常に感じています。プレッシャーはあるのですが、その期待に応え続けていきたいという気持ちが原動力にもなっています。QUIのコンテンツ制作に協力してくれている多くのクリエイターの存在があってこそ成り立っているので、その関係性には本当に感謝していますし、これからも一緒に良いものを作っていきたいと思っています。
—クリエイティブに関して基本方針のようなものはありますか。
すでに多くのメディアに露出しているブランドやカルチャーであっても、QUIはできる限り別の切り口で取り上げたい。無理に独自性を出したいわけではなく、QUIとしての興味や疑問をそのままブランドにぶつけたい。なのでそのコンテンツ内容にふさわしいクリエイティブをするべきだと思っています。QUIという「メディアの意思」をクリエイティブで表現したいという気持ちは強いです。
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コンテンツ制作とクリエイティブ提案に秀でたチームになる
—QUIのコンテンツ制作に関わりたいというクリエイターも多いと聞いています。
ありがたいことに問い合わせは増えていく一方ですが、全てのクリエイターの作品に目を通したり、お会いすることはできていないので申し訳なく思っています。問い合わせがきっかけで一緒に仕事をしたクリエイターも何人かはいるんですけどね。
—QUIが仕事をお願いしたいと思うのはどんなクリエイターですか。
特に明確な基準はないですが、自分たちも常に感度を磨いていくことを意識しているので、クリエイターの作品を目にして瞬間的にピンとくるようなことがあれば、その感覚は信じるようにしています。稀にですが「こういうモデルで、ヘアメイクで、ロケーションで、撮影で」と企画から考えて、そこに自分はこういう役割で参加したいというクリエイターもいます。その企画がおもしろいと思ったら実際に会って具体的な話をすることもあります。
—企画力やクリエイティブな発想が大事ということですね。
QUIはファッションメディアではなく、クリエイティブプラットフォームと名乗っているので企画力も発想力も豊かな方々の力をお借りしたいといつも思っています。企画力や発想力はQUIのエディターたちにも求めていることです。
—コンテンツ案にしても「これはQUIらしい、これはQUIらしくない」というのはどうやって決めているのですか。
それもロジカルな思考はあまりなくて感覚で決めていることが多いです。読者と同じ視点でいるためには感覚的であることの方がいいのかなと。「カルチャーとして魅力的だけど取り上げるのは今じゃない」みたいなタイミングの見極めはそんなにズレていないと思っています。「そもそもこれはQUIが取り上げる必然性がない」という感覚も外れてはいないと自分としてはそれなりの自信を持っていますし、もちろんエディターたちの感覚も信頼しています。
—クリエイティブプラットフォームということはクリエイティブ提案を求められることもありますか。
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それはすごく増えてきています。ブランドやショップからビジュアルの撮影やイベントのプロデュースをしてほしいとか、キャンペーンのための企画を提案してほしいとか。QUIとしては自分たちがおもしろいと思えるコンテンツを制作していきたいですし、クリエイティブの提案もできるチームでもありたいので、そこは両軸として力を入れていきたいです。
新たなカルチャーを生み出すメディアになるのが最大の目標
—服好きとしてメディアから情報を受け取っていた側から発信する側になったわけですが、自身のファッション感に変化などはありますか。
「ファッションってなんだろう」って永遠に答えが見つからないようなことを考えるようになりました(笑)。同じジャンルでカテゴライズされているけれど、あのブランドとあのブランドのフォーカスしているポイントは全く別物だなとか。そんなことを考える必要はないのかもしれないですけど、自分なりに整理をしておかないとブランドやデザイナーの取り上げ方を間違いそうな気がするんです。
—ブランドやデザイナーにしても「取り上げてくれたらそれでいい」というわけではないでしょうからね。
取材をさせてもらってコンテンツにするということは、そのブランドやデザイナーの知名度を上げるため、服を売るため、技術力を広めるためのお手伝いをしているということだと思うんです。なので、このブランドやデザイナーにとってどういう企画や編集がベストかを判断するために「ファッションってなんだろう」を考え続けている感じです。
—2020年立ち上げということは6年目に突入ですが、やりたいことはやれているのでしょうか。
やりたいことはあるけれど、やれていないことの方が多いかもしれないです。
—「やりたいこと」というのは具体的には。
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考えていることはいろいろあるのですが、自分たちがやりたいことを優先していくのではなく、まずは世の中に認めてもらえるメディアになる必要があると思っています。認知度も信頼度も上げていきたいですし、カルチャーに精通する人から興味を持ち始めた初心者まで、どんな人でも訪れたくなるようなメディアでありたい。大きなことを言うと「新しいカルチャーを生み出せるようなメディア」になりたいです。
—確かにファッションでもライフスタイルでもブームを生み出してきた雑誌も存在します。
まさにそういう存在になりたいです。ファッション好き、映画好き、アート好き、音楽好きがQUIをきっかけに増えていったらいいなと思っています。そのためのコンテンツをブランドやクリエイター、アーティストと一緒に楽しみながら作っていきたいです。発信の場が自分たちのチャネルだけではなく、「一緒に何かやりませんか」といろんなメディアから声をかけてもらえるようになりたいです。
—それはメディアとして当然目指すところでしょうけど、壮大な目標でもありますね。
「QUIが夢中になっている、注目しているモノ、コト、ヒトは絶対にかっこいいです!」と編集部の主観を多くの人に押し付けていきたいです(笑)。
メディアとして QUI が果たすべき責任は、読者へ常に新たな出会いを提供することです。
それは、知らないブランドや場所、人との出会い。そして、既知のものの見方を変えることで新たな楽しみを見出すこと。
ひいては、日本のクリエイティブシーンを盛りあげたい。
それが 「QUI」の願いです。
QUI 代表 岡部 俊
- Edit : QUI Editorial Team
