EMPORIO ARMANI 2026年春夏メンズコレクション、自己を飾ることの本質を投げかける
アイデンティティを巡る「ORIGINS」がテーマ
これまでのジョルジオ・アルマーニのコレクションは、「服は着る人を引き立てるものであるべき」として装飾を控えてきた。しかし今季は、長年大切にしてきた異文化への関心を起点に、「自分を飾る」ことの意味を再定義する。 「自己装飾は虚栄ではなく、生命力の表れ」と語り、異文化に触れること、自分を飾ることは、どちらも“他者”を通じて自己を見つめ直す行為であり、それが生きる力の源だと提案する。
ジョルジオ・アルマーニの考える「現代のエレガンス」とは
今回のコレクションでは、<EMPORIO ARMANI>と<EA7>の2ラインから異なるスタイルが発表された。
<EMPORIO ARMANI>が提案したのはクラシックで洗練されつつも色気を感じるスーツスタイル。異文化への関心というテーマの通り、中東や北アフリカの文化を想起させるモチーフが多く見られ、砂漠の色調、巻き布風のスタイリング、幾何学模様やストライプが印象的だった。また、モロッコのモザイクを思わせるセットアップ、ベルベルのテントから着想を得た柄、儀式的なスモッキング刺繍やビーズワークが、文化への敬意と知的好奇心を象徴していた。
中でも、スーツに民族的ストールを重ねるスタイルやタッセルチャームをボタンに引っ掛けたスタイルは、異文化との“接触”をレイヤーで表現した象徴的なルックだった。
アクティブで機能的な提案が目を惹いたのが<EA7>。フード付きウインドブレーカーやショーツなど、動きやすさと都会的な洗練さを両立させていた。サンドベージュのセットアップに黒のメッシュトップスを重ねたスタイルやカーキの撥水ジャケットとパラシュートパンツのコーディネートは、現代の都市生活者の軽やかさと力強さを体現していた。
“壁”や“分断”が生じやすい現代社会において、ジョルジオ・アルマーニは「異なる文化が交わることで新たな美が生まれる」とのメッセージを発信する。彼が提案したエレガンスとは他者と関係を築こうとする知的な姿勢、そして内面の豊かさに根ざしているのだろう。自己を飾ること、他者を受け入れることは、どちらも一人では完結しない行為であり、服を通して自分自身と他者、そして世界との関係を見つめ直すことの大切さを、今季のコレクションは教えてくれた。
- Text & Edit : Yusuke Soejima(QUI)