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“整えすぎない”ことで浮かび上がる輪郭、SHISEIDO HMA パリ・ファッションウィーク 2026 A/W のメイクアップ

May 7, 2026
ランウェイビューティーを語る上で欠かせない存在、SHISEIDO HAIR & MAKEUP ARTIST(SHISEIDO HMA)。株式会社資生堂が誇る約40名のヘアメイクアップアーティストで構成されたスペシャリスト集団は、世界のファッションシーンで確固たる地位を築いてきた。
本記事では、パリ・ファッションウィーク 2026 A/Wの期間中、SHISEIDO HMAがメイクアップを手がけたブランドにフォーカス。それぞれのコレクションに寄り添いながら、“整えすぎない”ことで美しさの輪郭を浮かび上がらせたメイクアップのアプローチをひも解いていく。

“整えすぎない”ことで浮かび上がる輪郭、SHISEIDO HMA パリ・ファッションウィーク 2026 A/W のメイクアップ

May 7, 2026 - BEAUTY
ランウェイビューティーを語る上で欠かせない存在、SHISEIDO HAIR & MAKEUP ARTIST(SHISEIDO HMA)。株式会社資生堂が誇る約40名のヘアメイクアップアーティストで構成されたスペシャリスト集団は、世界のファッションシーンで確固たる地位を築いてきた。
本記事では、パリ・ファッションウィーク 2026 A/Wの期間中、SHISEIDO HMAがメイクアップを手がけたブランドにフォーカス。それぞれのコレクションに寄り添いながら、“整えすぎない”ことで美しさの輪郭を浮かび上がらせたメイクアップのアプローチをひも解いていく。

Vautrait ー シアーマットな肌と低めのチークで、素朴さに今の空気を添える

2026年3月2日、<Vautrait(ヴォートレイト)>が、パリで2026年秋冬コレクションを発表。ブランドが重視する“時間の経過”や“自然な風合い”を背景に、ノスタルジックな要素と現代的な構造を掛け合わせたコレクションが展開された。
田舎の素朴さや懐かしさを感じさせるニットを軸に、メンズジャケットを思わせるオーバーサイズのシルエットが並ぶ。そこにレザーのツヤやビビッドなカラーのインナーが加わることで、落ち着いたトーンの中に適度なエッジが差し込まれていた。構築的なテーラリングやボリュームのあるフォルムは身体を包み込むように設計され、強さを強調するというよりも、あくまで静かに存在感を示すバランスに。素朴さとシャープさが共存することで、過去の空気感を残しながらも、現在的な視点へと更新されていた。

メイクアップチーフ 伊藤 礼子

「洋服が持つ素朴さや懐かしさのニュアンスを大切にしながら、メイクではあえて洗練しすぎないことを意識しました。作り込みすぎず、自然な質感を残すことで、全体の空気に調和するようにしています。ベースはシアーなファンデーションで整えたあと、マットなルースパウダーを丁寧に重ね、子どもの肌のようなふんわりとした質感に仕上げました。ツヤを抑えつつも、決して重くならない軽やかさを大切にしています。チークはオレンジとグレージュをミックスし、頬の中央からやや低めに、大胆に広くぼかすことで素朴な印象を強調しました。眉は毛流れを活かしながら、足りない部分だけを補い、あえて整えすぎず少し野暮ったさを残しています。ボーイッシュでヘルシーなニュアンスを意識しました。リップはチークと同じトーンのオレンジベージュを使用し、輪郭をぼかしながらふんわりと塗布しています。全体として、ナチュラルさの中にさりげない個性がにじむような、素朴でありながらも今の空気を感じるメイクに仕上げました。」

Runway Makeup Highlights

シアーなファンデーションとルースパウダーで仕上げた、ふんわりとしたシアーマットな肌。

オレンジとベージュをミックスしたチークを低めに広くぼかし、素朴な血色感を演出。

RUOHAN ー フローレスな肌を主役に削ぎ落とし、彫刻的な静けさを印象づける

2026年3月6日、<RUOHAN(ルオハン)>が、パリ・サンジェルマン地区の新拠点にて2026年秋冬コレクションを発表。各ルックを間近で体験できるサロン形式で行われた。「FOURTY GESTURES」と題され、形や動き、素材といった断片的な要素から構築されたコレクションは、現代的なミニマリズムをベースに、過度な装飾に頼らず、仕立てや素材の質感に焦点を当てた。
身体のわずかな傾きや動きから生まれるラインを起点に、フォルムが形成されていくという印象的なアプローチで、服は静止したものではなく、構造として立ち上がるプロセスが強調されていた。また、立体的なキルティングや上質なファブリックによって、リラックス感のあるシルエットの中にも控えめなラグジュアリーが感じられる仕上がりに。ニットと織物の境界を曖昧にする素材使いも見られ、軽やかさと構築性がバランスよく共存していた。

メイクアップチーフ 中村 潤

「今シーズンは“彫刻家”がテーマということで、メイクでも何かを足すというよりは、削ぎ落としながら形を整えていくようなアプローチを意識しました。ベースは素肌感を大切にしながら、適度なカバー力とスキンケア効果を兼ね備えたファンデーションで均一に整えています。とにかくクリーンでフローレスな肌をつくることに注力しました。眉やアイ、リップにはほとんど手を加えず、あくまで肌そのものを主役にしています。仕上げに加えた白いペイントは、クレイパックのような質感のものを使用していて、乾くことで石膏のようなマットな表情に変化します。彫刻家が作品を形づくるプロセスを、さりげなく顔の上で表現しました。主張は強くないけれど、印象に残る。そんな静かな存在感を目指しました。」

Runway Makeup Highlights

均一でフローレスに整えたベースメイクが主役のミニマルなルック。

石膏のような質感へと変化する白いペイントで、彫刻的なニュアンスをプラス。

JennyFax ー にじみやはみ出しを残し、“整わなさ”で個性と違和感を引き出す

<JennyFax(ジェニーファックス)>は、パリにて2026年秋冬コレクションを発表。ブランドらしい独特のかわいらしさと遊び心を軸に、今シーズンも日常と非日常が交差する世界観が提示された。プレゼンテーションでは、親子のような関係性を想起させるモデルたちが、トランプをしたり会話を交わしたりする空間がつくられ、日常の一場面のようでありながらも、どこか現実からずれた空気が漂っていた。
コレクションには、個人的な記憶や体験を思わせる要素が取り入れられ、親しみやすさの中にわずかな違和感が残る構成に。整っているようでどこか均一ではないシルエットやスタイリングが、その感覚を視覚的に表現していた。かわいらしさと違和感が同時に存在することで、日常の延長線上にある独特のリアリティを感じさせた。

メイクアップチーフ 進藤 郁子

「今回は“メイクが得意ではない人が自分でメイクをしたように見せる”というコンセプトを設定しました。あえて未完成さやアンバランスさを残すことで、従来の整った美しさとは異なる魅力を引き出しています。アイメイクではマスカラをたっぷり塗布し、さらに部分的にダマを強調したつけまつ毛を加えています。まぶたについてしまったマスカラもあえて修正せず、そのまま残しています。リップは、輪郭からはみ出していたり、中央だけ色が抜けていたり、乾燥して皮がむけたような質感をあえてつくるなど、複数の“未完成”の表情を持たせています。また、それぞれのモデルに対してあえて似合わない色を選ぶことで、わずかな違和感を強調しました。ベースは素肌感を残しながら軽く整える程度にとどめ、クマなども消しすぎないようにしています。ツヤも抑え、自己流で仕上げたような自然さを意識しました。かわいらしさの中に少しの違和感が混ざることで、より印象に残る表情に仕上げました。」

Runway Makeup Highlights

マスカラのダマやにじみをあえて残し、“整っていない”目元を演出。

あえて似合わない色やはみ出したリップで、違和感を含んだ個性を引き出した。

Editor's Note

今シーズンSHISEIDO HMAが手がけたメイクアップに共通していたのは、“整えすぎない”という選択だった。
完成度を高めるのではなく、あえて余白や揺らぎを残すことで、服や人物の個性をより鮮明に浮かび上がらせている。

素朴さをそのまま活かす、削ぎ落として際立たせる、未完成のまま魅力に変える。
それぞれ異なるアプローチでありながら、いずれも“引き立てる”という姿勢に根ざしている点は共通している。

メイクが前に出るのではなく、そっと寄り添うことで生まれる美しさ。
その静かなコントロールこそが、いまのランウェイにおける新たなリアリティなのかもしれない。

SHISEIDO HAIR&MAKEUP ARTIST
https://www.instagram.com/shiseido_hma/

メイクアップアーティスト 伊藤 礼子
https://hma.shiseido.com/jp/member/ito/

メイクアップアーティスト 中村 潤
https://hma.shiseido.com/jp/member/nakamura/

メイクアップアーティスト 進藤 郁子
https://hma.shiseido.com/jp/member/shindo/

  • Photography(behind the stage) : Yas
  • Edit : Yukako Musha(QUI)

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